「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択」についての財務行政モニターの意見

本ページは、平成12年秋に、全国の財務行政モニターの方々を対象に行った、税制調査会の中期答申(「わが国税制の現状と課題―21世紀に向けた国民の参加と選択」平成12年7月)に関する質問に対して、文書で寄せられた256名からの意見を、基本的にそのまま掲載したものです。

なお、質問は、中期答申で示された主な論点の一部を図表を交えて紹介し、それに対する意見を求める形で行いました。

※財務行政モニターは、財務省の施策等にかかる意見や反響を把握し、施策等の企画・立案に資することを目的として、全国の財務局が、地域の幅広い方々に委嘱しているものです。

<意見1> 今後の公的サービスの水準とその裏付けとしての国民負担のあり方に関する意見

<意見2> 所得税、法人税、消費税や相続税の現状や今後のあり方に関する意見

<意見3> その他中期答申や税制の現状につき、自由に記載いただいた意見

※意見2、意見3における意見の分類は、財務省で便宜的に行ったものです。また、複数の税目について寄せられた意見については、それぞれの分類項目に重複して掲載しています。

Q1 租税の基本的考え方については、中期答申の中で次のように指摘されています。

今後の公的サービスの水準とその裏付けとしての国民負担のあり方について、どのような意見をお持ちですか。

租税の基本的な役割は公的サービスの財源を賄うことにあり、公的サービスが充実してきた現代社会では、租税は皆で広く公平に分かち合うことが必要です。

国民が必要とする公的サービスと租税は、国民全体としての受益と負担という表裏一体の関係にあり、租税は公的サービスを賄うのに十分な量であることが求められます。

つまり、国民負担を伴ってもなお必要な公的サービスの大きさは、最終的には私たち国民がどのような公的サービスの水準とそれに対応する国民負担の水準を選択するかにかかっています。

また、租税負担に社会保障負担を加えたものを国民負担といいますが、この国民負担の水準と公的サービスの水準の関係について諸外国と比較してみると、下図のように、現在、国民負担に財政赤字を加えた公的サービスの水準はヨーロッパ諸国に近い高い水準となっている一方で、国民負担はアメリカ以下の低い水準であり、そのギャップが大きな財政赤字となっています。このように、将来世代の負担において高い水準の公的サービスを享受しているのが実状です。

また、税収、歳出総額及び公債発行額は下図のとおり推移しており、今後自然増収のみによっては巨額の歳入・歳出ギャップを大きく改善することは困難な状況にあります。したがって、財政構造改革は避けて通れない課題です。その際、行財政改革を徹底して進めていかなければならないことは言うまでもありませんが、いずれにしても、財政構造改革を実現するためには、公的サービスによる便益の見直しか、その費用である負担の見直しか、あるいはその組み合わせか、選択が必要になります。

Q2 各税目についても、中期答申の中で次のように指摘されています。

所得税、法人税、消費税や相続税の現状や今後のあり方についてどのような意見をお持ちですか(一部の税目についてのみ記入していただいても結構です。)。

所得税や個人住民税については、累次の税制改革や景気対策としての減税を経て、その負担水準は下図のように諸外国に比べて最も低くなっています。また、課税最低限について様々な議論があります。課税最低限は、配偶者控除や扶養控除など様々な控除の積み重ねであり、各々の控除のあり方との関連で決まってくるのですが、公的サービスの負担は国民が皆で広く分かち合うことを基本に議論することも必要です。

さらに、少子・高齢化の進展や国民のライフスタイルの多様化な経済社会の構造変化が進む中で、控除や年金税制のあり方等について、公平性、中立性といった観点から検討することも必要です。

法人課税については、近年、企業活動の国際化が進む中で、わが国企業の競争力を確保する観点から、実効税率が大幅に引き下げられ、既に国際水準並みになっています。

経済活動において法人部門は大きな比重を占めており、法人課税のあり方は、企業活力の発揮や資源配分の変更を通じた経済全体の効率性の向上などに影響を与えるものであり、課税ベースの広い公正・中立な法人課税は、わが国経済社会の活力を維持していく上で重要です。

今後も、税体系全体における適切な役割を果たしつつ、国際化や情報化といった経済社会の構造変化に対応するとともに、公正・中立で透明性の高い法人税制を構築することが求められます。

消費税については、更に少子・高齢化が進展する21世紀を展望すると、勤労世代に偏らず、より多くの人々が社会を支えていくことが必要であり、その役割はますます重要なものになっていくと考えられます。また、消費税の中小事業者に対する特例措置、仕入税額控除方式などのあり方について、制度の公平性、透明性及び信頼性の観点から、事業者の実務の実態なども踏まえながら、検討を行っていく必要があります(制度改正の歩みは下図のとおり)。さらに、消費税と価格との関係について消費者の便宜を図る観点から、ヨーロッパのような「総額表示方式(個々の財貨・サービスごとに、値札などに消費税額を含めた支払総額が表示される方式)」の普及を図ることが適当と考えます。

総額表示方式の諸類型

10,290円(本体価格9,800円、消費税等490円)

10,290円(うち消費税等490円)

10,290円(本体価格9,800円)

10,290円(税込)

10,290円(税込10,290円)

9,800円

相続税については、バブル期における地価の高騰などを受けて、累次にわたる減税等が行われてきており、その負担水準は国際的に見ても決して高くない状況にあります。また、バブル崩壊後の地下の大幅な低下等もあり、平成10年の課税割合は死亡者100人当たり約5人とごく一部の資産家のみを対象に負担を求める税となっています。

税体系において個人所得課税の累進構造のフラット化が進み、消費税が重要な役割を果たすようになってきたこと、高齢化や経済のストック化の進展等により、高齢者層に資産の保有が集中する傾向があること等を踏まえれば、富の再分配機能を有する相続税について、より広い範囲に課税していくという方向での検討が必要です。今後、個人所得課税の抜本的見直しとの関連において、税率構造や課税ベースについて幅広く検討していくことが適当です。

注1 相続税の課税割合⇒昭62年 7.9% 平3年 6.8% 平10年 5.3%

注2 地価の下落率(3大都市圏・商業地の公示地価)⇒平成3年のピーク時に比べ平成12年は▲71%

注3 遺産のうち課税される部分の額の平均は3億円弱で、その際の負担率は7.5%(相続人が配偶者と子供3人の場合)

(備考)基準外国為替相場及び裁定外国為替相場による(平成12年下半期レート 1ドル=106円、1ポンド゛=169円、1マルク=52円、1フラン=16円)。

(注1)配偶者が遺産の半分、子が残りの遺産を均等に取得した場合である。

(注2)ドイツの税率は、単純累進税率である。