附属資料

目次

一 地方法人課税に係る改革の必要性

1.地方分権推進計画(抄)

平成10年5月29日
閣議決定

第4 国庫補助負担金の整理合理化と地方税財源の充実確保

4 地方税財源の充実確保

(1) 地方税

ア 地方税の充実確保

(ア) 国と地方の歳出純計に占める地方の歳出の割合は約3分の2であるのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約3分の1となっており、歳出規模と地方税収入との乖離が存在している。

地方税については、基本的に、この地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図る。

(イ) 今後、地方分権の進展に伴い、地方公共団体の財政面における自己決定権と自己責任をより拡充するとともに、住民の受益と負担の対応関係をより明確化するという観点から、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る。

この場合、生活者重視という時代の動向、所得・消費・資産等の間における均衡がとれた国・地方を通じる税体系のあり方等を踏まえつつ、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築について検討する。

平成10年度においては、事業税の外形標準課税の課題を中心に、地方の法人課税について総合的な検討を進める。

これらの検討と併せて、地方税と国庫補助負担金、地方交付税等とのあり方についても検討を加える。

(ウ) このような考え方に立って地方税の充実確保を図っていく必要があるが、当面は、国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても引き続き当該事務の実施が必要な場合や国から地方公共団体への事務・権限の委譲が行われた場合において、その内容、規模等を考慮しつつ、地方税等の必要な地方一般財源の確保を図る。

2.道府県税及び市町村税の税収の構成比(平成9年度決算額)

3.法人事業税の概要

(1)課税団体

都道府県

(2)納税義務者

都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人

(3)非課税

・国及び公共法人等の行う事業

・林業及び鉱物の掘採事業

・特定の農事組合法人が行う農業

・公益法人等の行う事業の所得等で収益事業に係るもの以外のもの

(4)課税標準

各事業年度の所得及び清算所得(ただし、電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業にあっては各事業年度の収入金額)

なお、外国に恒久的施設を有する場合においては、外国の事業に帰属する所得又は収入金額を控除した額。

(5)課税標準の算定の方法

[1] 所得

各事業年度の所得は、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額によるものとし、法令で特別の定めをする場合を除くほか、当該各事業年度の法人税の課税標準である所得の計算の例によって算定する。

[2] 収入金額

電気供給業及びガス供給業

各事業年度において、その事業について収入すべき金額の総額から、国又は地方公共団体から受けるべき補助金、固定資産の売却による収入金額等を控除した金額

生命保険業

例えば、個人保険については、各事業年度の収入保険料に100分の24を乗じて得た額

損害保険業

例えば、船舶保険、運送、積荷保険、自動車賠償責任保険及び地震保険を除く損害保険については、各事業年度の正味収入保険料に100分の40を乗じて得た金額

(6)税率等(税率は標準税率;制限税率は標準税率の1.1倍)

(7)税収(平成9年度決算)

48,295億円

4.事業税の沿革

5.シャウプ使節団の日本税制報告書(昭和24年9月)(抄)

第十三章 その他の地方税

A節 事業税

(前略)

都道府県が企業にある種の税を課することは正当である。というのは、事業および労働者がその地方に存在するために必要となって来る都道府県施策の経費支払を事業とその顧客が、援助することは当然だからである。たとえば、工場とその労働者がある地域で発展増加してくれば、公衆衛生費は当然増大して来るのである。

従って、われわれは事業税の存続を勧告するものではあるが、それは次の二つの目的を達成するように改革すべきものであると考える。即ち、第一に、純益を課税標準として累積的に圧迫することを幾分緩和すること、第二に、賦課徴税方法を一層簡易化し、原則として国税の賦課徴収の結果に依存しないようにすること。の二つである。

最善の解決方法は、単に利益だけでなく、利益と利子、賃貸料および給与支払額の合計に課税標準を拡張してこれに税率を適用することである。

右の課税標準を別な方法で定義すると、それは全収入額から、資本設備、土地、建物等他の企業からの購入の金額を差引いたものがそれである。この差引額は、原料等、他の事業から購入したものの価値に、その企業が附加したところの額である。

(後略)

6.昭和25年~26年に法制化された付加価値税

7.外形標準課税に関するこれまでの税制調査会答申等

「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」についての答申(昭和39年12月)

3 事業税

(1) 現在、事業税は、法人の行なう事業のうち電気供給業、ガス供給業、生命保険事業及び損害保険事業については収入金額、法人の行なうその他の事業及び個人の行なう事業については、所得金額を課税標準として課税されているが、事業税の性格や事業の所得に対する課税の累積にかんがみ、事業税の課税標準を所得金額としていることは適当であるかどうかについて、検討を加えた。

(2) 事業税の課税の根拠は、事業が収益活動を行なうに当たつては、地方団体の各種の施設を利用し、その他の行政サービスの提供を受けていることから、これらのために必要な経費を分担すべきであるとする考え方によるものであるが、課税に当たつて事業そのものを課税客体としているのは、事業が収益活動を行なつている事実に着目してその担税力を見出そうとするものであるからである。したがつて、事業税は事業の規模ないし活動量あるいは収益活動を通じて実現される担税力をなんらかの基準によつて測定して課税することが望ましいと考えられる。このような意味において、現行の事業税が、大部分の事業について、所得金額を課税標準としていることは、法人税又は所得税の附加税的な色彩をもち、所得に対する課税の重複とみられる等問題があると考えられる。

したがつて、事業税の課税標準については、事業の規模ないし活動量あるいは収益活動を通じて実現される担税力を表わす何らかの所得金額以外の基準を求めて、これを課税標準とすることが適当であると考える。

(3) 所得以外の基準としては、(イ) 収入金額、(ロ) 収入金額から固定資産、原材料、商品等の購入費等を控除して附加価値額を算定するいわゆる控除法による附加価値額、(ハ) 所得金額に給与、利子、地代、家賃の金額を加算して附加価値額を算定するいわゆる加算法による附加価値額等が考えられる。これらのうち、収入金額については、事業の段階ごとに課税の累積が行なわれるという欠点があるほか、たとえば卸売業、小売業というような物品販売業については、他の事業に比し負担が過重されるので均衡ある負担を求めえないという難点があり、控除法による附加価値額については、課税標準額を算定するという目的のみのために別種の帳簿を作成しなければならないという欠点があるほか、事業の設備投資の状況により、事業税の負担が激しく変動し、事業の担税力を反映しないうらみがある。したがつて、加算法による附加価値額によることが、事業の規模ないし活動量あるいは収益活動を通じて実現される担税力を適正に示すということからも、また納税者に新たな帳簿作成の負担を与えないという点からも、適当であると認めた。

(4) 事業税の課税標準を合理化するために、付加価値要素を導入する場合においては、事業税負担のあり方、現行事業税の負担の実態との関連等を考慮するならば、(イ)所得金額と加算法による付加価値額を併用する方法と、(ロ)所得金額に代えて加算法による付加価値額を課税標準とし、この付加価値額を構成するもののうち所得金額とその他の部分を区分して、所得金額に負担の比重を多くする方法とが考えられる。いずれにしても、所得金額部分とその他の部分に対する比重のおき方については、おのおの2分の1ずつとすることを目途として、今後具体的な検討を進めることが適当であると考えられる。

(以下略)

長期税制のあり方についての答申(昭和43年7月)

3 事業税

(1) 当調査会は、さきの中間答申において、事業税は、事業がその活動を行なうに当たつて地方団体の各種の施設を利用し、その他の行政サービスの提供を受けていることから、これに必要な経費を分担すべきであるという考え方に基づいて課税されるものであるので、その負担については、事業の規模ないし活動量あるいは収益活動を通じて実現される担税力を測定することのできる基準を課税標準とすることが望ましいということを指摘し、このような見地から、その課税標準については、現行の所得金額のほかに付加価値要素を導入することが適当であると答申した。

(2) 当調査会は、引き続き、事業税の課税標準に付加価値要素を導入する場合における仮案を次の要領により想定し、その内容、具体的な実施方法について審議を行なった。

[1] 課税標準は、各事業年度の所得の金額及び加算法による付加価値額とする。

(イ) 各事業年度の所得の金額は、原則として、法人税法の規定による各事業年度の所得の計算の例により算定する。

(ロ) 各事業年度の付加価値額は、各事業年度の所得並びに当該事業年度中において支払うべき給与、利子、地代及び家賃の額の合計額とする。

(ハ) 各事業年度の付加価値額の計算上生じた赤字の額は、その後5年間の各事業年度の付加価値額から控除する。

[2] 税率は、全体として現行の事業税額と同程度の税収入を得、かつ、課税標準である所得金額及び付加価値額からそれぞれ同額の税収入を得られるように定めるものとする。

[3] 付加価値要素を導入することによる各企業の負担の変動を緩和するため、3年程度の経過措置を設け、当初においては付加価値額によるもののウェイトを低くし、漸次これを引き上げていくこととする。

(3) この仮案については、(イ) 現行の受取配当益金不算入制度を前提とした場合における付加価値額算定上の受取配当と受取利子等との間の取扱いの相違、(ロ) 銀行等の金融機関の支払利子の取扱い、(ハ) 所得金額部分に対する軽減税率の取扱い、その他中小法人の負担を過重ならしめないようにする措置、(ニ)各企業の負担の変動を緩和するための経過措置等の諸点についてなお審議を続ける必要があると考えられるので、今後引き続き、この仮案をもとにして検討を進めることが適当である。

なお、事業税についてその課税標準に付加価値要素を導入しようとするのは、事業税の課税標準に所得金額のほかに事業の規模ないし活動量をあらわす外形基準を用いることとすることが事業税の性格にかんがみより適切であるとの考え方に基づくものである。ところで、わが国の税体系全般に関する問題として、一般売上税ないし付加価値税を今後採用することの可否について当調査会が行なつた検討の内容及びその結果については、さきに述べたとおりであるが、この問題との関連もあり、事業税の課税標準に用いる付加価値要素の内容については、なお検討を加えることが必要であると考える。

(以下略)

法人課税小委員会報告(平成8年11月)

第1章 基本的考え方

(中略)

三 地方の法人課税のあり方

(中略)

4.法人事業税の外形標準課税

[1] 従来から、事業税については、外形標準課税の問題が議論されてきた。事業税に外形標準課税を導入することは、事業に対する応益課税としての税の性格の明確化に加え、都道府県の税収の安定的確保、赤字法人に対する課税の適正化にも資するものと考えられる。

[2] この問題は、現行事業税の創設以来長年にわたり議論されてきた経緯もあるので、今回、これまでの議論を整理するとともに、幅広く検討を行った。

地方消費税の導入によって事業税に外形標準課税を導入する問題の現実的な解決になるのではないかとの指摘があるが、両者は税の性格や課税ベース、税収の帰属地が異なっていること等から、理論的には別の問題であると考えられる。

いずれにしても、外形標準課税の問題は、業種別税負担や都道府県別税収の変動、消費税や地方消費税との関係など、第2章において後述するように、なお検討すべき課題が多い。今後、これらの課題について更に検討を深めることが適当である。

(中略)

第2章 課税ベースに関する個別的検討

17.事業税の外形標準課税

事業税に外形標準課税を導入することの意義等については、既に述べたところである。この問題については、昭和39年の「今後におけるわが国の社会、経済進展に即応する基本的な租税制度のあり方についての答申」や昭和43年の「長期税制のあり方についての答申」などをはじめとして、これまで長年にわたり検討が行われてきた。

(1) 外形基準

[1] 事業税に外形標準課税を導入する場合の具体的な外形基準としては、一般的に面積、資本金、従業員数、売上高、付加価値などが考えられる。昭和39年の上記答申以来、外形基準としては、付加価値、その中でも所得に給与、利子及び地代等を加算する付加価値(いわゆる加算法による所得型付加価値)を中心とした検討がなされてきた。

[2] 今回、再度検討を行ったが、事業税が公共支出から受けた便益に対する負担であるとすれば生産段階において課税すべきであることから加算法による所得型付加価値を採るべきであるとの意見や、国際競争力の維持という観点から輸出免税を考えるならば控除法による消費型付加価値を基本とすべきではないかとの意見があった。

[3] 外形基準については、これまでの検討経緯や、事業の人的・物的活動量を的確に表すこと等から、今後とも、加算法による所得型付加価値を検討の中心としながら、引き続き幅広く検討することが必要であると考える。

[4] なお、加算法による所得型付加価値を外形基準とした場合には、消費税及び地方消費税と付加価値に対する課税という点で同一となり、税の簡潔性からみて問題があるのではないかとの意見があった。

(2) その他の検討課題

[1] 以上述べた外形基準の問題のほか、事業税の外形標準課税については、次のような検討課題があり、今後、これらについて更に検討を深めることが必要であると考える。

イ 付加価値に占める利潤の割合や赤字の大きさ等により、業種別の税負担に変動が生じること

ロ 付加価値に占める利潤の割合が高い企業が都市部に多いと考えられることから、一般的には都市部の税収が減り、その他の地域の税収が増えるものと考えられること

ハ 赤字法人にも税負担が生じることに伴う税負担能力との関係

ニ 外形標準で課している他の地方税との関係

ホ 付加価値に対する課税が主として支払給与に対する課税とも考えられることによる雇用等への影響

ヘ 個人や中小法人の取扱い

ト 納税事務コストへの配慮

チ 金融業や不動産貸付業を営む法人の利子や地代の取扱い

リ 派遣社員の給与、リース取引の賃借料、法人税法におけるいわゆる相当の地代の取扱い等

[2] なお、諸外国においても、アメリカのミシガン州の単一事業税、ニューハンプシャー州の企業事業税、ドイツの営業税、フランスの職業税など、地方税の外形標準課税の例がある。それぞれ外形基準の選択やウェイト付け、労働集約型企業や個人・中小企業への配慮などに様々な工夫がみられることから、外形標準課税の検討に当たっては、これらを参考とすることが適当である。

平成10年度の税制改正に関する答申(平成9年12月)

二 平成10年度税制改正の課題

1 経済構造改革と法人税制改革

(5) 地方法人課税

今回の法人課税の見直しにおいては、地方の法人課税についても検討を加えました。地方公共団体にとって重要な財源となっている法人事業税については、その税の性格などから、従来から、外形標準課税の問題が議論されてきた経緯があります。事業税が外形基準によって課税されることとなれば、事業税の性格が明確になるとともに、税収の安定性を備えた地方税体系が構築されるなど、地方分権の推進に資するものと考えられます。また、これに伴い、法人課税の表面税率(調整後)の引下げや赤字法人に対する課税の適正化にもつながるものと考えます。この場合において、具体的な外形基準については、利潤、給与、利子及び地代等を加算した所得型付加価値など、引き続き幅広く検討することが必要と考えます。その際、中小法人の取扱いや税負担の変動、他の地方税との関係などの課題についても検討すべきです。

地方の法人課税については、平成10年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要です。

(以下略)

平成11年度の税制改正に関する答申(平成10年12月)

三 今後の検討課題・抜本的見直し

4 法人課税

(1) 外形標準課税

(中略)

法人事業税については、平成11年度税制改正において、その税率を10年度に引き続き更に引き下げる一方で、現下の経済情勢等に鑑み、外形標準課税の導入については見送ることとされたところです。

しかしながら、外形標準課税は地方に適した税体系の一つであり、導入を急ぐべきであるとの意見が多く出されており、当調査会としては、都道府県の税収の安定化を通じて地方分権の推進に資するものであること、応益課税としての税の性格の明確化につながること、税負担の公平化に資すること等の観点から、早急にその方向性を示すべく、引き続き検討を進める必要があると考えます。

そのため、引き続き、地方法人課税小委員会を中心に、法人事業税に外形標準課税を導入することについて、具体的な外形基準のあり方や税制度の簡素化の工夫、企業経営や雇用への影響などの諸課題を含めて、精力的に検討を進めることとします。

8.全国知事会における法人事業税外形課税実施要綱(昭和52年12月)

1.目的

事業税の物税としての性質を明確にし、行政サービスに対する法人の税負担の適正化及び都道府県税収の安定化に資するため、法人事業税の課税標準に外形基準を導入するものとすること。

2.課税の形式

地方税法第72条の19に基づく特例条例の設定によるものとすること。

3.納税義務者

主として製造業を行う法人で資本の金額若しくは出資金額が5億円以上のものとすること。

4.課税標準

次の所得と外形標準を併用するものとすること。

[1] 所得の金額は、地方税法における所得の計算の例により算定する。

[2] 外形標準の額は、所得並びに給与、利子及び賃借料の合計金額とする。

なお、外形標準額の計算上生ずる欠損については、5年間の繰越控除を認める。

5.税率

次により定めるものとすること。

[1] 所得については、現行税率の2分の1とする。

[2] 外形標準については、全国的な平均である100分の1.3を基準とする。

6.分割基準

従業者の数によるものとすること。

7.経過措置

次により4年間の経過措置を行うものとすること。

[1] 実施後2年間は、所得によるものを9割、外形標準によるものを1割とする。

[2] 実施後3年間は、所得によるものを7割、外形標準によるものを3割とする。

8.実施

実施は、全国知事会議の決議に従って、全都道府県が統一して行うものとすること。

9.平成11年度改正による恒久的な減税(法人課税)

10.諸外国において所得以外の基準で課税している地方税の例

二 外形標準課税の意義

1.主要税目の税収の対前年度増減率の推移

2.都道府県税収と法人事業税収の推移

3.法人事業税の都道府県別収入額の推移等

4.地方公共団体の行政サービスと法人の事業活動の関係

5.利益法人及び欠損法人の状況

三 望ましい外形基準のあり方

1.主な外形基準(例)

2.業種別・資本金別の法人数

3.外形基準の対前年度増減率の推移

4.各基準に係る課税ベース(全国総額)の状況

5.法人事業税の分割基準

(1)分割基準の意義

法人事業税は、法人の行う事業に対し、所得及び清算所得又は収入金額を課税標準として、その法人の事務所又は事業所(以下「事務所等」という。)所在地の都道府県が課することとされている。

この場合において、事業を行う法人の事務所等が2以上の都道府県に所在するときは、それら複数の都道府県が課税権を有することとなるため、当該法人の課税標準である所得及び清算所得又は収入金額を一定基準に従って事務所等の所在する都道府県に分割し、その分割された課税標準額について各都道府県が課税権を行使することとされている。

この分割の基準となるものを「分割基準」という。

(2)分割基準についての考え方

事業税の課税の根拠が応益原則にあることから、次のような考え方により分割基準が設定されている。

[1] 各都道府県内における事業の規模、活動量等を的確に表すものであること

[2] 税務実務上できるだけ単純かつ明確であること

このような考え方に基づき、社会経済情勢の変化に応じた事業活動と行政サービスとの受益関係を的確に反映させ、税源帰属の適正化を図る観点から随時見直しが行われてきている。

(3)分割基準一覧

6.個人事業税の概要

(1)課税団体

都道府県

(2)納税義務者

第1種事業(物品販売業、製造業等の37業種)

第2種事業(畜産業、水産業、薪炭製造業の3業種)

第3種事業(医業、弁護士業等の31業種)

(3)課税標準

前年中の不動産所得及び事業所得(原則として所得税の課税標準である不動産所得及び事業所得の規定の例によって算定する。)

(4)各種控除

[1] 事業主控除

個人事業税の税額の算定に当たっては、当該個人の事業の所得の計算上、290万円を控除することとされている。

(最近の改正経緯:220万円(昭和52年度~)、240万円(昭和60年度~)、270万円(平成5年度~平成10年度))

[2] 事業専従者控除

青色事業専従者 → 完全給与制

事業専従者(白色)→ 配偶者 86万円 その他 50万円

[3] その他の控除

損失の繰越控除

被災事業用資産の損失の繰越控除

事業用資産の譲渡損失の控除

事業用資産の譲渡損失の繰越控除

(5)税率

第1種事業5%

第2種事業4%

第3種事業5%

(ただし、第3種事業のうちあん摩、はり、きゅう等の医業に類する事業については3%)

(6)賦課徴収

個人の行う事業に対する事業税の納税義務者は、当該年度の初日の属する年の3月15日までに道府県知事に申告しなければならない。ただし、所得税の確定申告書を提出した場合には、個人事業税の申告が提出されたものとみなされている。

普通徴収の方法により、納期は、8月又は11月中(ただし、条例で定める金額以下であるものについては、いずれかの納期)による。

(7)税収額(平成9年度決算額)

2,709億円

7.法人事業税における収入金額課税のしくみ

8.地方税法第72条の19

現在、法人事業税は大多数の法人については所得(及び清算所得)を課税標準として課されているが、現行地方税法においても、下記のとおり外形基準による課税が採用され、あるいは採用可能とされている。

(参照条文)

(法人の事業税の課税標準)

第72条の12 法人の行う事業に対する事業税の課税標準は、電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業にあつては各事業年度の収入金額、その他の事業にあつては各事業年度の所得及び清算所得による。

(事業税の課税標準の特例)

第72条の19 法人の行う電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業以外の法人又は個人の行う事業に対する事業税の課税標準については、事業の状況に応じ、第72条第1項《事業税の納税義務者等》、第72条の12《法人の事業の課税標準》及び第72条の16《個人の事業税の課税標準》の所得及び清算所得によらないで、資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地積若しくは価格、従業員数等を課税標準とし、又は所得及び清算所得とこれらの課税標準とあわせ用いることができる。

※ 昭和50年に千葉県が地方税法第72条の19の規定により、一定の業種の売上金額を課税標準として課税するという構想を打ち出し、こうした動きも踏まえ、昭和52年に全国知事会が同条に基づき外形基準を導入する条例案を作成したが、実現には至らなかった。

(事業税の標準税率等)

9 道府県が第72条の19の規定によつて事業税を課する場合における税率は、第1項、第2項、第6項及び前項の税率による場合における負担と著しく均衡を失することのないようにしなければならない。

9.各地方団体が異なる課税標準や分割基準を定めた場合のイメージ

四 改革に伴う諸課題

1.業種区分ごとの欠損法人比率

2.外形基準の例として用いる各種要素に関する課税の状況(地方税)