第1回 日本の国際平和協力@PKOなう!

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2012年3月30日
国際平和協力研究員
とちばやし のりまさ
栃林 昇昌

日本が行う国際平和協力 - 3つの活動、2つの形

今年は、日本の国際平和協力法制定・施行20周年の年です。この20年間、日本は「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(PDF形式:234KB)PDFを別ウィンドウで開きます、通称「PKO法」の下で、いわゆるPKO参加五原則」[1]に則って、国際平和協力を実施してきました。
 日本の国際平和協力は、3つの柱で構成されています。すなわち、1)国連平和維持活動(国連PKO)、2)人道的な国際救援活動、3)国際的な選挙監視活動です。これら3つの柱が、PKO法で定める日本の国際平和協力の活動領域となっています[2]PKO法が制定された1992年には、まずアンゴラカンボジアに要員が派遣されました。
 特に活発に行われている活動が、国連PKOです。2012年4月現在に展開されている国連PKOのうち、日本は、国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)国連東ティモール統合ミッション(UNMIT)国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)の4つのミッションに要員を派遣しています。
 人道的な国際救援活動は、難民、国内避難民への裨益を目的としています。過去の実績を振り返ると救援物資の空輸活動が多いですが、1994年にルワンダで行った活動では医療、給水、防疫などの支援を、難民に対して国際機関を通じて行った実績もあります[3]
 PKO法の枠組みの下で、紛争終結後の国で行われる選挙や住民投票に監視団を派遣することもあります。国際的な選挙監視活動と呼ばれるものです。最近では、2011年に行われた南部スーダンの独立を問う住民投票の監視活動に15名の文民を派遣しました。監視団には政府関係者のみならず、有識者、NGO関係者といった民間人も多く参加しました[4]
 日本の国際平和協力は、大きく2つの形態に分かれます。人的協力と物的協力です。人的協力では、上述の3つの柱で掲げられている活動に対し自衛官(自衛隊の部隊を含む)や文民を派遣し、現地で日本人による直接的な貢献を行います。この人的協力のことを、PKO法では「国際平和協力業務」と呼んでいます[5]。 もう一つの形が、物的協力です。すなわち、国連PKOに対して、必要とされる物資を提供したり、紛争に起因する難民、国内避難民に人道支援活動などを行う国際人道機関に支援物資を提供したりするというものです。PKO法では「物資協力」と呼びます[6]

国際平和協力業務(人的な国際平和協力)

日本は1992年から現在まで、国際平和協力業務を27回実施しています。内訳は、国連PKOが13回、人道的な国際救援活動が5回、国際的な選挙監視活動が9回です[7]。 2011年末までに、延べ人数で合計7,811名が国際平和協力業務に派遣されました。その多くは自衛官で7,478名に上り、その他は(文民)警察官78名、文民251名です[8]。 これまでの実績を振り返ると、自衛官と警察官は主に国連PKOと人道的な国際救援活動へ派遣され、文民は選挙監視団あるいは住民投票監視団として派遣されています。
 自衛官を派遣する際の形態には、2つの種類があります。1つは、部隊派遣という形です。自衛隊の海外派遣と言う際に、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがこの形態です。部隊の派遣は規模が大きくなるので、国連PKO受入国において存在が目立つ上、道路補修のように人手や資機材を必要とする活動を担う場合が多く、実績をわかりやすい形で残すことができます。
 もう一つの形態は、個人派遣と呼ばれるものです。文字通り、部隊としてではなく自衛官個人を国連PKOに派遣します。派遣先の国連PKOでは、東ティモール国際平和協力業務のように軍事連絡要員(MLO)として現地の村々を訪問するような活動が中心の人がいるほか、南スーダン国際平和協力業務のように司令部において情報幕僚や兵站幕僚、施設幕僚としてデスクワーク中心の任務にあたる人もいます。

物資協力(物的な国際平和協力)

 物資協力は、国際平和協力の3つの柱に掲げる活動に対して、その活動に必要な物資を無償もしくは時価よりも低い対価で提供し、それぞれの活動で役立ててもらおうというものです[9]。 紛争のために困っている人々のいる所へ行って直接モノを配るわけではありませんが、国連PKOや国際人道機関を通じて、間接的に人々に裨益しています。日本は国連PKOに6回、人道的な国際救援活動に15回、合計21回の物資協力を行った実績があります[10]
 特に、紛争が原因で人道危機に瀕している人々への支援に役立ててもらうため、国際人道機関に迅速に物資を提供する仕組みを整えています。「人道救援物資備蓄制度」です。日本はこの制度に基づき、主要5品目(テント、毛布、スリーピングマット、給水容器、ビニールシート)を、アラブ首長国連邦にある備蓄倉庫にて常時備蓄しています[11]

変化する国連PKOへの対応

 以上のように、日本は1992年以降PKO法に基づき、国連PKO、人道的な国際救援活動、国際的な選挙監視活動を人的、物的両側面から行ってきました。一方、国際情勢はこの20年間で大きな変化を続け、国連をはじめとする国際社会は対応を迫られてきました。そうした現状は、国連PKOの変化に如実に表れていると言えるでしょう。国連は、変化する紛争の性質や紛争後に必要な活動の多様化に対応すべく、PKOのマンデート(任務)を拡大する傾向にあります(第4回を参照)。日本を含む国連PKOに要員を派遣する国々では、こうした変化に対応することがますます重要になっています。

[1]PKO参加五原則」とは、1)停戦の合意が存在している、2)受入国などの同意が存在している、3)中立性を保って活動する、4)上記1)2)3)の原則のいずれかが満たされなくなった場合には、一時業務を中断し、さらに短期間のうちにその原則が回復しない場合には派遣を終了させる、5)武器の使用は要員等の生命又は身体の防衛のために必要な最小限度に限る、の5つです。

[2]内閣府 国際平和協力本部事務局.平和への道―我が国の国際平和協力のあゆみ 平成24年度版.内閣府 国際平和協力本部事務局, 2012.

[3]内閣府 国際平和協力本部事務局. 平和への道―我が国の国際平和協力のあゆみ 平成22年度版.内閣府 国際平和協力本部事務局, 2010,p.18.

[4]内閣府 国際平和協力本部事務局.スーダン住民投票監視国際平和協力業務.内閣府 国際平和協力本部事務局2011-01.(参照 2012年3月14日)

[5]国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律(第三章)(PDF形式:234KB)PDFを別ウィンドウで開きます

[6][5]と同.(第四章)(PDF形式:234KB)PDFを別ウィンドウで開きます

[7][2]より筆者集計

[8]第3回国際平和協力シンポジウム2012年1月19日(参照 2012年3月14日)PDFを別ウィンドウで開きます

[9][2]より筆者集計

[10][2]より筆者集計

[11][2]と同