第13回 アフリカ連合と国連PKO@PKOなう!

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2012年6月29日
国際平和協力研究員
おかだ えつこ
岡田 悦子

アフリカ連合について

 近年、アフリカでは、集団安全保障分野における地域機構の重要性が増してきています。アフリカ連合(以下、AU[1]は、数ある地域機構の中で最大であり、1990年代初頭以降、紛争解決メカニズムを強化してきました。平和安全保障分野に関しては、2003年に、AU首脳会合の常設機関として、加盟国の紛争予防や解決に向けた取り組みを強化することを目的とする平和安全保障理事会(以下、PSC[2]が設置されたほか、賢人パネル会合[3]、早期警戒システム[4]、アフリカ待機軍[5]、平和基金[6]等が設けられています。

国連PKOとの関係

 国連憲章第8章は、地域機構との関係について言及しています。また、1992年に発表された「平和への課題」(http://unrol.org/files/A_47_277.pdf)の中で、国連と地域機構との協力について言及していることをはじめとして、1998年の「アフリカにおける紛争の原因と恒久平和」[7]に関する国連事務総長報告書の中でも、地域機構と国連の連携を強化する必要性を強調しており、最近では多くの国連文書が両機関の連携強化を謳っており[8]、このような潮流[9]は今後も続くことでしょう。

国連との合同ミッション

 AUが今まで部隊を派遣[10]してきた中でも注目されるのは、初めて国連との合同ミッションとなったUNAMID(国連AUダルフール合同ミッション)[11]です。2004年、AUAMISAUスーダン・ミッション)をダルフール地方にも拡大し部隊を派遣しましたが、ロジ面や財政面での脆弱さ、通信機器、車両、石油等の不足により十分な活動ができない状況が続きました。

 上記のような事態を打開するため、国連は、2006年にUNMIS(国連スーダン・ミッション)をダルフール地方にも派遣することを決定したものの、スーダン政府の反対により実施することができませんでした。AUが参加することによって、同政府の了解も得られ、国連はAUと合同してUNAMIDの派遣を決定しました[12]UNAMIDの主な任務は、和平合意の履行監視と文民の保護です。2012年5月末現在、23,448人の要員[13]AU加盟国が全体の約77%を占める(18,155人))[14]がダルフール地方に展開しています。UNAMIDは、アフリカ色を前面に出しつつ、国連AU合同特別代表や副代表をはじめ、その全てがアフリカ出身国で占められています[15]。一方で、UNAMID展開中も、政府や反政府組織による要員の移動の制限や資機材不足(特にヘリコプター)といった問題が生じるなどの課題も見られます。

次回は、ECOWAS(西アフリカ経済共同体)と国連PKOについて取り扱う予定です。

[1]AUは、2002年7月9日に発足し(1963年に設立された前身であるOAU(アフリカ統一機構)は発展的に解消)、加盟国はモロッコを除く54か国・地域(南スーダンを含む)。AUの概要に関しては、外務省(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/oau/oau.html)を参照。AU設立法に関してはAUのウェブサイト(http://www.africa-union.org/root/au/aboutau/constitutive_act_en.htm)を参照。また、AUについての基礎文献は、S.M.MAKINDA,F.W.OKUMU, “The African Union?Challenges of Globalization,Security,and Governance”,Routledge, 2007.に詳しい。

[2]AU平和安保理事会(PSC)設立に関する議定書(2002年7月)に関しては、AUのウェブサイト(http://au.int/en/sites/default/files/Protocol_peace_and_security.pdf)【サイズ87KB】を参照。PSCには、国連安保理と同数の15か国のメンバー(その内、5か国が3年の任期、残り10か国が2年の任期)が地理的配分によって選出されるが、拒否権は有しておらず、決定は原則コンセンサスによってなされる。

[3]PSC議定書第11条

[4]PSC議定書第12条

[5]PSC議定書第13条。アフリカ待機軍に関しては、2010年までの設置を予定していたが、未だ完了の目途は立っていない。主な問題点は、装備方法や資金調達方法等である。ASFについては、'The African Standby force',inAfrica's New Peace and Security Architecture-Promoting norms,institutionalizing solutions-”,Ashgate, 2009.に詳しい。

[6]PSC議定書第21条。AU平和基金拠出金を通じた日本のAU支援については、(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/oau/shien.html)を参照。

[7]S/1998/318 (1998年4月13日)

[8]例えば、S/2009/470, “Support to African Union Peacekeeping Operations authorized by the United Nations”(2009年9月18日)、S/PRST/2009/3 (2009年9月18日)、S/2008/813, “Report of theAU-UNpanel on modalities for support toAUpeacekeeping operations”(2008年12月31日)、S/2008/186, “The Relationship between theUNand regional organizations”(2008年3月24日)等がある。

[9]AUの能力開発に関しては、AUの10か年能力構築計画等がある。なお、日本もAUミッション上級幹部養成(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/21/5/1192007_1097.html)を行っている。

[10]今までAU部隊は、ブルンジ、コモロ連合、コートジボワール、ギニアビサウ、ソマリア等に派遣された。

[11]AU-UNHybrid operation in Darfur、安保理決議第1769号により設置 (2007年7月31日)

[12]現在のところ、2012年7月末まで展開予定(安保理決議第2003号, 2011年7月29日)。

[13]UNMIDFacts and Figures(http://www.un.org/en/peacekeeping/missions/unamid/facts.shtml)

[14]UNMission's contribution by country,May2012

[15]特別代表は、ナイジェリア出身、副代表はソマリア、副代表(政務担当)はニジェール、軍司令官は、ルワンダ、警察官トップはガーナとなっている。