第35回 DDR(1):武装解除@PKOなう!

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2012年12月7日
国際平和協力研究員
わくがわ いづみ
湧川 いづみ

武装解除・動員解除・社会復帰(DDR

 紛争の終焉を迎え、和平プロセス開始時に真っ先に取り組まれる活動の一つに元戦闘集団や武器を持っている市民の武装解除があります。通常、この活動は「武装解除・動員解除・社会復帰」(英語では、Disarmament,Demobilisation,Rehabilitation:DDR[1])という一貫した流れ作業で実施されます。国連によるDDRの位置づけは、武装解除・動員解除を通じて治安を確保し、紛争後の復興・開発が促進される環境を整えることとされています。DDRが実施される時期は、和平合意が結ばれた後であり、当事国当局が主体となり実施されますが、当事国にDDRに関した知見が欠如している場合が多いので、国連が当事国の要請を受け、支援に入ることが多々あります。本稿では、最初の作業にあたる武装解除について見てみましょう。

武装解除(Disarmament

 第59回国連総会(2005年5月)において報告された事務総長の告示 (A/C.5/59/31)に、DDRの活動内容が明記されました。同告示によると、武装解除とは「元兵士および一般市民の所有する小火器、実弾、爆発物や小型・重火器を回収、記録、管理および処分することである。また、確実な武器管理プログラムの展開も含まれる」とされています[2]。この活動は4つのフェーズに分類されて行われます[3]
1) フェーズ1では、情報収集および武装解除の実施計画が立案されます。情報収集では、対象者となる元戦闘員などに関するあらゆる情報(人数、民族の構成、活動地域や武器の数やタイプなど)を集め、それらを基に元戦闘員の武装解除計画を立てます。
2) フェーズ2では、実際に武器を回収します。これは、これまでの紛争で自分が使用していた武器を手放すことによって、戦闘員から一市民となり社会復帰をしていくために必要な、象徴的なイベントです。
3) フェーズ3では、回収済みの武器などを安全に管理します。回収された武器と実弾の即時処分が理想ですが、それが無理な場合には処分されるまでの期間、安全に管理をしなければなりません。国連PKOが支援要請を受けている場合には、国連の提供する武器管理用コンテナに武器を保管します。
4) フェーズ4で、最終的に武器を破壊します。武器破壊の開始は、和平プロセスやDDRプロセスへの信頼度を高めるためにも、また元戦闘員が一市民としての第一歩を踏み出すためにも、大変象徴的な意味を持ちます。そのため、武器破壊の式典が開かれ、多くの関係者や報道機関を招待して行われることが多く見られます。

日本国際平和協力隊のネパール国連政治ミッションにおけるDDR貢献

 2007年1月に立ちあがった国連ネパール政治ミッション(UNMIN)のマンデートに、元毛沢東派兵士の武装解除を監視するという要項が入れられました。日本も、国連の要請のもとネパール国際平和協力隊を設置し(平成19年政令第106号)、UNMINへ軍事監視要員を派遣しました[4]。6名の陸上自衛官が国際平和協力隊として一年の任期で、平成19年3月にUNMINへ派遣されたのを始めとし、UNMINの任務終了の平成23年1月までに逐次、第4次要員まで派遣され、毛派キャンプ等において武器および兵士の監視業務を実施しました。この派遣は、日本の国際平和協力活動として国連ミッションのもと、武装解除に関わった貴重な経験となりました。

[1] DDRRの部分は、本稿ではRehabilitation(社会復帰)としていますが、場合によってはReintegration(元戦闘員の国軍への統合または再統合)と置き換えられて実施されることもあります。Rの部分が社会復帰になるのか、(再)統合となるのかは、和平交渉の結果に左右されます。

[2] 第59回国連総会事務総長の告示 (UN General Assembly Secretary General's Note)A/C.5/59/31

[3] Operational Guide to the Integrated Disarmament,Demobilisation and Reintegration Standards(IDDRS),United Nations Inter-agency Working Group on DDR,UN 2006

[4] 我が国のネパールへの国際平和協力貢献は、ネパール国際平和協力業務実施要領(概要)(PDF形式:19KB)別ウインドウで開きますおよびネパール国際平和協力業務の実施の結果(PDF形式:195KB)別ウインドウで開きますを参照。

【参考資料】
1)Second Generation Disarmament,Demobilisation and Reintegration(DDR)Practices in Peace Operations,UNDPKO,January 2010
2)DDR in peace operationsa retrospective,UNDPKO,September 2010
3)Disarmament,Demobilisation and Reintegration of ex-combatants in a peacekeeping environment-Principles and Guidelines,UNDPKO,December 1999