第17回 国連PKOと国連カントリーチーム@PKOなう!

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2012年7月27日
国際平和協力研究員
さとう みお
佐藤 美央

国連カントリーチーム(UNCT)とは

 国連平和維持ミッション(国連PKOミッション)が派遣される国では、ほとんどの場合、国連システムを構成している国連諸機関[1]が、既に現地で活動を行っています。国連諸機関には、国連開発計画(UNDP)、国連世界食糧計画(WFP)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)など[2]があります。ある一つの国で活動を行っている国連諸機関は、そこで国連カントリーチーム(UNCountry Team,UNCT)を形成しています[3]UNCTには、その国で活動を行っている国連諸機関の国事務所代表に加えて、世界銀行や国際移住機関(IOM)などの国際機関の国事務所代表が加わることもあります。
 UNCTは、現地で活動する国連諸機関間の国レベルでの連携と意思決定を確実に行うためのもので、現地政府の開発課題に沿って、各機関の活動が具体的な成果に結びつくように、計画、実施段階を通じて一緒に協力していくことを目指しています[4]。ただし、国連諸機関は、UNCTに属していても組織として常に独立した存在であり、それぞれに与えられている任務や説明責任、活動諸原則などは変わりません。

UNCTの代表

 グループとしてのUNCTの代表者は、国連常駐調整官(UNResident Coordinator,RC)で、RCはその国における国連事務総長の代表として任命されます[5][6]。多面的な国連PKOミッションが派遣される場合には、新たに事務総長特別代表(SRSG)が任命され、SRSGがその国における国連PKOミッションとUNCTの活動を合わせた国連全体の代表者となります。その場合、UNCTの代表であるRCは、さらに国連PKOミッションの人道・開発問題を担当する事務総長副特別代表(DSRSG)に任命され[7]SRSGの指導のもと国連の活動全体が一貫性のあるものとなるよう、国連PKOミッションとUNCTとをつなぐ役割を担います[8]

国連PKOミッションとUNCT

 紛争後の複雑で困難な環境に展開する近年の国連PKOミッションは、それぞれの専門分野を持って活動しているUNCTと密接な協力関係を築きながら幅広い多面的なマンデートを効果的に実施していくことが求められています[9]。国連PKOミッションが派遣される前から現地で活動を行い、国連PKOミッション終了後も活動を継続するUNCTと、軍事部門を伴って比較的大きな規模で展開する国連PKOミッションとが確実に連携し、現地の国連全体が一貫性のある支援戦略や支援活動の内容や優先順位に関する共通の理解を持つことで、国連PKOミッションの貢献がその国のより長期的な開発目標と両立するものとなることが期待されています[10]

[1]国連システムを構成する機関については、国連広報センター「国連の活動:国連に関するQ and A」に簡潔な説明があります(http://www.unic.or.jp/know/image01.htm)。

[2]国連諸機関を含む国連の機構図は、国連広報センター「国連の活動:国際連合機構図」で入手可能です(http://unic.or.jp/know/pdf/organize.pdf)。

[3]現在、国連カントリーチームは136か国にあり、国連の事業が実施されている180か国すべてをカバーしています。http://www.undg.org/index.cfm?P=1257を参照のこと。

[4]詳細は、"Guidance Note on Resident Coordinator and UN Country Team Working Relations"(2009年1月29日に国連開発グループによって承認)を参照のこと。

[5]同上参照のこと。

[6]ある国における人道支援の調整は、第一義的にはその国の政府の責任ですが、国際的な支援が必要な場合には、国連人道調整官(UN Humanitarian Coordinator,HC)が任命されて、国連カントリーチームを含む関係諸機関による人道活動の調整を行います。HCの役職には、その国におけるRCが任命される場合もあります。RCHCの役割については、"Handbook for RCs and HCs on Emergency Preparedness and Response,"Inter-Agency Standing Committee(IASC) 2010を参照のこと。

[7]近年の多面的な国連PKOミッションは、国連カントリーチームのRCかつHCDSRSGの役職を兼務する統合ミッションの構造を持つことが多く、このような役職についている人を「3つの帽子(triple hatted)をかぶっている」と言います。RCHCDSRSGの役割については、"Note of Guidance on Integrated Missions"(2006)を参照のこと。

[8]詳細は、"Note of Guidance on Integrated Missions"(2006)を参照のこと。

[9]国連平和維持活動の変遷については、@PKOなう!第4回「拡大する平和維持活動」を参照のこと。

[10]詳細は、"Note of Guidance on Integrated Missions"(2006)を参照のこと。

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