令和7年国際平和協力シンポジウム「今後の国際平和協力の在り方」結果概要

 2025年6月27日(金)、内閣府国際平和協力本部事務局(以下「事務局」という。)は、国際平和協力シンポジウム「今後の国際平和協力の在り方」を国際文化会館にて開催したところ、結果概要は以下のとおりです。

1 出席者

  • (1)ジャン=ピエール・ラクロワ 国連事務次長(平和活動担当)(オンライン)
  • (2)キハラハント 愛 東京大学大学院教授
  • (3)井上 実佳 東洋学園大学教授
  • (4)坂根 宏治 島根大学教授(元JICAスーダン事務所長)
  • (5)ナッケン 鯉都 国際移住機関(国連IOM)駐日代表
  • (6)西田 一平太 笹川財団上級研究員
  • (7)松村 五郎 国際安全保障アナリスト(元陸上自衛隊東北方面総監)
  • その他、聴衆として、オンライン参加を含め、実務者、研究者、大使12名を含む在京外交団、国際機関関係者等約120名が参加しました。

2 概要

  • (1)冒頭挨拶では、森川徹事務局長が、日本の国際平和協力の歩みや国際紛争の変化も含む国際情勢の変容に触れつつ、2025年3月から3回にわたって開催された「今後の国際平和協力の在り方に関する研究会」の実施背景と意義について説明し、今次国際平和協力シンポジウムが、研究会での議論の共有とそれらを踏まえた更なる議論の深化の場となることを期待する旨述べました。
  • (2)次に、ジャン=ピエール・ラクロワ国連事務次長(平和活動担当)が基調講演(オンライン参加)を行い、第二次大戦以降で最も多くの国家間・国内紛争が発生し、多極化する世界において戦後の国際秩序や多国間主義が揺らいでいる中、地政学的分断によってかつての「平和維持の黄金時代」とは異なり、加盟国の統一的支援を得ることが難しくなった現状を指摘し、そのような中で平和維持予算への全額・期限内拠出と司令部要員の派遣を継続し、安定的に国連平和維持活動(PKO)に貢献する日本への謝意を述べました。そして、国連PKOの究極目的は紛争の「政治的解決の支援」であると強調し、国連事務局としても国連80イニシアティブを進めながら、「PKO のための行動(Action for Peacekeeping (A4P))」及び「PKOのための行動プラス(A4P+)」を更新していき、加盟国とともに多国間主義と強固なパートナーシップに基づく国連PKOを強化していく旨述べました。
  • (3)続いて、日髙麻里絵事務局参事官から、研究会の「議論概要」について報告を行い、その後、キハラハント教授から国際的議論を踏まえた当該研究会の議論の意義や注目すべき点について解説が行われました。
  • (4)さらに、キハラハント教授のモデレートによるパネル・ディスカッションが行われ、フロアからも積極的な質疑がある中で、以下のような論点が共有されました。
  • ● 日本が国際平和協力に取り組む意義として、自国および国際社会の安全保障の確保に資するとともに、日本の国益、国際社会との相互依存の推進、国際政治におけるプレゼンスと発言力の維持に繋がるとの指摘がありました。
  • ● 国連加盟国として国連PKOに貢献することの当然性、またそれが国際秩序を支える価値観の表明として重要であることが改めて確認されました。
  • ● 国際平和協力は、自衛隊の運用能力の維持・向上、新たな知見の獲得の機会としての役割も果たしているとの明確な見解が示されました。
  • ● 日本の国際的な立場・強みに関して、国連分担金を着実に拠出する誠実な姿勢、政治・政策の安定性による信頼性、アフリカ連合(AU)や欧州連合(EU)を含むグローバルサウスや同志国との連携の重要性が挙げられました。
  • ● 地域主導の平和活動を補完する形での協力の必要性や、三角パートナーシップ・プログラム(UNTPP)の意義についても具体的な意見交換がなされました。
  • ● 人道・開発と平和の連携(HDPネクサス)の観点から、戦略的な関与や、日本の価値観を反映した人道分野への貢献推進など、今後の政策形成に資する重要な示唆が示されました。
  • ● 施策面では、EUの共通安全保障・防衛政策(CSDP)ミッションとの連携、物資協力品目の国連統一規格への整合、政府安全保障能力強化支援(OSA)を活用したUNTPP訓練のホスト国支援、参加国への重機提供などの具体的提案がありました。
  • ● 平和協力に対する世論の関心の低下への対応、一般向けの広報強化、自衛官に限らず文民の一層の活躍促進といった今後の課題についても議論が行われました。
  • (5)閉会の挨拶では、吉田孝弘事務局次長が、上記議論が今後の国際平和協力政策の立案・遂行における大きな指針となる旨強調しつつ、関係省庁と連携しながら、引き続き我が国の国際平和協力のより実効的かつ戦略的な在り方を模索していく旨述べました。

参考リンク 「今後の国際平和協力の在り方に関する研究会」第1回会合/第2回会合/第3回会合/議論概要の公表

本シンポジウムのフライヤー

(シンポジウムの様子)


森川徹事務局長による開会挨拶

ラクロワ国連事務次長による基調講演
 

研究会「議論概要」の報告

パネル・ディスカッションの様子①
 

パネル・ディスカッションの様子②