第95回  アフリカ早期展開支援の現場から(後編)

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

2016年8月26日
国際平和協力研究員
あらい りさ
新井 里彩

こんにちは、内閣府国際平和協力研究員の新井里彩です。
アフリカ早期展開支援第一回本格訓練も無事に終了し、8月上旬に帰国しました。
前回のコラム(アフリカ早期展開支援の現場から(前編))に引き続き、アフリカ早期展開支援の後半部分について、現場の様子をお伝えいたします。

学科の補講を通訳する新井研究員

ARDECの現地での様子

前回もお伝えしたとおり、日本の教官団18名は、ケニア軍の隊員31名に対して、道路構築をするために必要な重機の使い方を教えています。前半4週間は、学科で重機の操作に必要な知識を教育したほか、重機を使っての走行そして基本操作の練習を行いました。訓練の後半4週間は、第7週目に予定されていた術科試験の合格を目標に重機を使った操作の練習を繰り返し実施しました。

第5週目も前週に引き続き重機操作の練習を繰り返し行います。前週よりも少しレベルを上げた操作に挑戦です。以下の写真でわかるように、第4週目ではバケットローダーによる積み込みは、ダンプの高さを想定した木の杭と糸で練習していました。第5週からは、実際のダンプへの積み込み作業を行いました。ほかの機材についても、少しずつレベルアップを図り、ケニア軍隊員も着実に実力をつけていきます。

(左の写真)第4週目の練習 ダンプへの積み込みを想定 (右の写真)第5週目の練習 実際にダンプへの積み込みを実施

第6週目には、翌週に控えた試験の模擬試験を実施しました。これまでの練習の成果を発揮できるよう、学生たちも真剣です。ケニア軍の准将も激励の視察に訪れました。ケニア軍からも本訓練に対する高い関心と感謝が見られます。

(左の写真)視察の様子 ンデリツ准将(IPSTC所長)からの激励 (右の写真)模擬試験の様子 受験するケニア軍隊員と採点する教官

第7週目、ついに総合試験が実施されました。内容は、学科試験および重機操作手としての能力を判定する術科試験です。教官そしてケニア軍隊員たちの努力が実り、学科試験、術科試験共に全員が合格しました。

(左の写真)学科試験の様子 ケニア軍隊員と試験監督を行う教官 (右の写真)術科試験の様子 3名の教官が色々な角度からケニア軍隊員のレベルを判定

そして迎えた最終週、第8週目です。これまでは訓練場での練習をしていましたが、習得した技術をもとに実践の訓練に入りました。訓練を実施していた訓練センター内の道路を実際に整備し、実践的な能力を養います。また、試験で高いスコアを得たケニア軍隊員を選抜し、閉講式でデモンストレーションも披露しました。賓客もケニア軍隊員の上達ぶりに、感嘆されていました。

(左の写真)実践教育の様子 実際の道路を整備するケニア軍隊員への指導 (右の写真)デモンストレーションの様子 選抜されたケニア軍隊員による重機の操作

まとめ

8週間の訓練を通じて、ケニア軍の隊員たちは重機操作の多くの経験と技術、知識を手に入れました。しかしながら、機械操作手として最小限の能力を身に着けたにすぎません。今後、さらなる訓練・練成を通じてより高い技術を身に着けた後に、PKOの現場で活躍することができます。

日本の施設部隊の技術は、国連の施設部隊マニュアル作成を任されるほど高いものです。彼らによる施設技術の基礎教育は、今後応用技術を身に着ける礎となります。日本の自衛隊による「マンツーマン」の丁寧な教育、そして必要であれば休日にも補講を行い、必ず被教育者のレベルを一定の水準まで向上させる「献身」、「忍耐力」は、ケニア軍からも国連関係者からも高い評価を得ました。

現在、第二回本格訓練が開始され、ナイロビで同様の訓練を行っています。日本の誇る技術力そして教官一人一人の熱心な教育姿勢により、さらに多くのアフリカ施設部隊の能力が向上されていくことでしょう。将来、PKOの現場で、日本が教育した施設部隊が活躍し、国際的に高い評価を得ることを目標に、今後も能力構築支援は続けられます。

閉講式での全体集合写真