第69回 「PKOとジェンダー」

本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局及び日本政府の見解を示すものではありません。

本コラムは、与那嶺元国際平和協力研究員が2011年に執筆しました。一部編集の上で、@PKOなうに掲載します

国際平和協力研究員
よなみね りょうこ
与那嶺 涼子

このコラムではPKOとジェンダーについて紹介します。さて、国連PKOの派遣においては、国連安保理決議1325に基づき、事前にジェンダーの研修を受けることになっています。当事務局でも、PKO要員の派遣前研修において「ジェンダーとPKO」の講義を入れていますが、そもそも「ジェンダー」とは何でしょう? また、どのような関係があるのでしょうか? その背景から見てみましょう。

 

変化したPKO

 1989年にベルリンの壁が崩れ、90年代にはソ連が崩壊し、冷戦が終結しました。その後は民族自決、民族紛争に象徴される国内紛争が世界の各国で相次ぎ、国連のPKOも多くの国で展開されてきました。それまでの伝統的な停戦監視を主体としたPKOでは対応できない国や地域の事情も出てきたため、国際社会においてPKOの活動全体を見直す動きが出てきたのです。我が国は1992年のアンゴラ、カンボジアへの派遣を皮切りにPKO要員を派遣していますが、このような世界の変化とPKO活動の変化に伴なって、PKOを派遣する側、参加する側の意識と対応にも変化が求められてきているのです。

ジェンダートレーニング

 国際社会の支援、PKO活動の変化の一つとして、2000年の国連安保理決議1325において、「女性、平和と安全保障」に関する決議が初めて採択されました。以来、PKO要員は軍人だけでなく、警察、文民も派遣される前にジェンダーの研修を受けることが必須とされています。ジェンダーとは、一言でいうと「社会的・文化的な性差」です。これは国・地域によって、また時間軸でも変化しますが、同じく、PKO要員が派遣される国や地域の状況によってジェンダー状況は変わってきます。その状況を踏まえて職務に当たることは、その国の事情を深く理解し、踏まえるため、個人レベルの活動から、PKO活動全体のレベルでの職務遂行の向上につながることから、ひいては世界の平和安定によりよく貢献することになるのです。

*当コラムの内容は国連PKO局のトレーニングマニュアルに基づいております。

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