与那嶺涼子研究員コラム「PKOとジェンダー」

第1回 はじめに~「PKOとジェンダー」コラムについて~

はじめに

暑い夏がやってきましたね。節電の一方で、夏バテしないように工夫してくださいね。今月から始まるこのコラムではPKOとジェンダーについて紹介していきます。第一回目の今回は、コラムの紹介と今後の予定です。さて、国連PKOの派遣においては、国連安保理決議1325に基づき、事前にジェンダーの研修を受けることになっています。当事務局でも、PKO要員の派遣前研修において「ジェンダーとPKO」の講義を入れていますが、そもそも「ジェンダー」とは何でしょう? また、どのような関係があるのでしょうか? その背景から見てみましょう。

変化したPKO

 1989年にベルリンの壁が崩れ、90年代にはソ連が崩壊し、冷戦が終結しました。その後は民族自決、民族紛争に象徴される国内紛争が世界の各国で相次ぎ、国連のPKOも多くの国で展開されてきました。それまでの伝統的な停戦監視を主体としたPKOでは対応できない国や地域の事情も出てきたため、国際社会においてPKOの活動全体を見直す動きが出てきたのです。我が国は1992年のアンゴラ、カンボジアへの派遣を皮切りにPKO要員を派遣していますが、このような世界の変化とPKO活動の変化に伴なって、PKOを派遣する側、参加する側の意識と対応にも変化が求められてきているのです。

ジェンダートレーニング

 国際社会の支援、PKO活動の変化の一つとして、2000年の国連安保理決議1325において、「女性、平和と安全保障」に関する決議が初めて採択されました。以来、PKO要員は軍人だけでなく、警察、文民も派遣される前にジェンダーの研修を受けることが必須とされています。ジェンダーとは、一言でいうと「社会的・文化的な性差」です。これは国・地域によって、また時間軸でも変化しますが、同じく、PKO要員が派遣される国や地域の状況によってジェンダー状況は変わってきます。その状況を踏まえて職務に当たることは、その国の事情を深く理解し、踏まえるため、個人レベルの活動から、PKO活動全体のレベルでの職務遂行の向上につながることから、ひいては世界の平和安定によりよく貢献することになるのです。
 では、PKO活動において「ジェンダー」の視点を持って活動するとはどういうことでしょうか。今後、連載するコラム中で一つ一つ、具体例とともに出来るだけ分かりやすく皆さんにご紹介していきたいと思います。
 コラムのタイトルは以下の通り、2012年3月までの連載予定です(ただし変更する場合もありますのでご了承くださいね)。
 それでは皆さま、これから、しばらくお付き合いくださいますよう宜しくお願いします。

コラムのタイトル一覧

1.はじめに - 「PKOとジェンダー」コラムについて
2.性差 - ジェンダーとセックス - ジェンダーとセックスは違う

*当コラムの内容は国連PKO局のトレーニングマニュアルに基づいております。

(本コラムにある意見や見解は執筆者個人のものであり、当事務局の見解を示すものではありません。)