第3回国際平和協力シンポジウム

第3回国際平和協力シンポジウム
~我が国の国連PKO参加20周年を迎えての、さらなる国際平和協力分野の人材育成に向けて~を開催しました!

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国際平和協力シンポジウムは、内閣府国際平和協力本部事務局に勤務する国際平和協力研究員の研究成果の発信を通じた人材育成を目的として平成21年度から開始されました。第3回目となる今回は、平成24年1月19日(木)に国連大学ビル エリザベス・ローズ・ホールを会場として開催され、約100名が参加しました。プログラムはこちらから(PDF形式:149KB)別ウインドウで開きます

PKO法制定・施行20周年を迎える中で開催された今回のシンポジウムでは、今後のさらなる国際平和協力分野の人材育成の方向性を展望することをテーマとし、国際平和協力研究員に加えて、現場経験の豊富な多様な有識者からの発表に基づき、参加者からも多くの質問やコメントが出され、活発な議論が展開されました。

開会式

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羽田浩二・内閣府国際平和協力本部事務局長(左上写真)の挨拶に引き続き、元・国連事務次長で財団法人国際文化会館理事長の明石康氏(右上写真)から基調講演をいただきました。第2次大戦後における国連PKOの発展過程に触れつつ、この20年間における我が国のPKO活動参加の歩みを回顧されました。そして、PKOは並行・断続する平和構築活動なしでは単なるバンドエイドに過ぎず、継続的改善が必要あるとして、こうした視点から、国際平和協力研究員制度設立の由来などに触れつつ、人材育成の重要性を強調されました。

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また、ニューヨークの国連本部からは、国連平和維持活動局 政策・評価・訓練部長の中満泉氏がビデオメッセージにて、派遣要員数の拡大や業務の多様化といった現在国連PKOが置かれている状況の中で、PKO派遣要員の質の確保や文民の役割拡大などの必要性に対応すべく、人材育成が急務であることを説明されました。その上で、既存の考え方や業務のやり方にとらわれない幅広い視野と高い能力を持つ人材が求められているとして、我が国の人材への大きな期待を示されました。

なお、ビデオメッセージ及びシンポジウムについては、国連広報センターホームページに掲載されています。
国連広報センターホームページ別ウインドウで開きます

セッション1:国際平和協力における民軍連携と人材育成~ハイチの経験から~

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陸上自衛隊小平学校教官の井出匡則氏は、ハイチにおける自衛隊部隊の活動に関して、民軍連携案件の形成にかかる国連ミッション内における決定プロセス・業務の流れや、多様な関係者間での包括的な情報交換の場の設定の取組みなどに触れつつ、オリジナルのモデルを用いて民軍連携のありようを大きく整理されました。

難民を助ける会プログラム・コーディネーターの加藤亜季子氏からはNGOの活動について、民軍連携として取り組まれた盲学校プロジェクトなどを例にとりつつ、連携の在り方や、実施上の問題点などについて述べられました。難民を助ける会理事長で立教大学大学院教授の長有紀枝氏からは、NGOも特色や多様性があり、民軍関係の捉え方も様々であるため、民軍連携ありきということではなく、支援目的を達成するための選択肢の一つとして捉えていることが指摘されました。

最後に当事務局の佐藤美央国際平和協力研究員からは、民軍双方の立場を理解した上で、人材育成の視点として、平時からの民軍連携の研修や訓練への参加を通じた継続的な知識の獲得と関係性構築の重要性が述べられました。

セッション2:国連PKOへのより積極的な貢献~幹部人材養成の視点から~

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UNMIT国連事務総長特別代表を務められた長谷川祐弘法政大学教授は、国連PKOの活動や国連の価値観・理念などの紹介に続き、幹部人材に求められるのは自己を良く知ることであり、ミッションの方向性やそれに向けた能力の結集などを理解することであると述べられました。

続いて山下真理国連広報センター所長からは、政策決定の場に立ち会うことができるという視点からの幹部人材の重要性に触れつつ、幹部人材に求められる具体的な条件として、知名度、交渉・調停能力、国連関係の経験、幅広いネットワークを持つこと、などの指摘がありました。さらに、幹部ポストに日本人を増やすにあたり、政府、国際機関、民間など、幅広い分野から人材を発掘することの重要性も話されました。

最後に防衛省国際平和協力センター長の石橋克伸氏からは、自身のネパール国際平和協力隊員としての活動経験を基に、国連PKOが求める軍事要員の能力と、日本から派遣された要員の特性を対比させつつ、今後の自衛隊の教育訓練で重視すべき事項について私見が述べられました。

セッション3:紛争経験国支援への取り組みと人材育成~選挙支援、ジェンダーを例に~

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栃林国際平和協力研究員からは、東ティモールでの選挙支援の経験を基にして、国際選挙支援の重要性についての発表が行われました。その中で、市民・有権者教育を継続的に行っていくことが東ティモールの平和の定着に寄与するのではないかとして、今年同国で実施される選挙とその後の動きを観察していくことの重要性が強調されました。また、国際選挙支援に関連した人材育成として、国際選挙支援をする側の日本の人材育成のあり方についてもアイデアが提示されました。

与那嶺国際平和協力研究員からは、PKO活動におけるジェンダー主流化と人材育成に関して、女性のみの警察官の派遣が紛争後のリベリアの社会状況改善に役立ったことなどの事例が紹介され、自身の国内外におけるPKO要員訓練での講義経験などを踏まえつつ、人材育成のための研修や訓練の一層の強化の必要性や、ジェンダーの視点を持った我が国PKO要員が国連PKOミッションのために果たしうる役割・意義などが強調されました。

(財)人権教育啓発推進センター理事長の横田洋三氏は、両研究員による発表へのコメントの中で、現場経験を持つ実務者と学会との間での相互理解が少ない状況ではあるが、両方の視点を持つことが非常に重要であることなどを強調されました。

〈御来場いただいた参加者からのコメント〉抜粋(アンケート結果より)

  • 国連、NGO、研究者、陸上自衛隊等、多様なアクターの視点からの話を聞けて、総合的に国際平和協力を把握することができた。研究員の方の経験による考察が興味深かった。
  • 普段ニュースで聞いていることや本で学んだことが実際にどのようにつながっているのか、各組織が何を目標に活動しているのかが聞けて、貴重な時間だった。
  • 内容のバラエティーが広く、非常に興味深かった。現場の意見は傾聴すべきものがある。
  • 国連の求める人材、特に幹部人材に求められるものが理解できた。
  • 実際の現場の活動報告は説得力がある。
  • 総合司会の仕切りが素晴らしく、適度な緊張感が保たれたシンポジウムだった。
  • PKO等、日本の取り組みをもっと一般の人々へ分かりやすくPRすべき。
  • 国際協力における平和協力について、日本として戦略的に取り組む必要を感じる。

この他にも、たくさんのコメントを頂きました。御参加いただいた皆様、どうもありがとうございました。