「第11回国際平和協力シンポジウム」の開催について

令和7年3月14日(月)に第11回国際平和協力シンポジウムを開催しました。
本シンポジウムは、国際平和協力研究員(以下「研究員)という。)がその業務を通じて調査・研究した成果を発表し、国際平和協力分野の関係者に広く周知するとともに、有識者の方々とのディスカッションを通じて、その調査・研究を一層深化、発展させることを目的として開催しております。
今回も、対面形式とオンライン形式のハイブリッド形式で開催となりました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

  • 日時:令和7年3月14日(月) 14:30~18:00
  • テーマ:揺らぐ国際秩序と我が国の国際平和協力活動をめぐる現状と課題-国際平和協力研究員からの報告
  • 主催者:内閣府国際平和協力本部事務局
  • 参加費:無料
  • 言語:日本語
  • 開催方法:一般参加の方はオンライン(Zoom)
プログラム:
14:30‐14:40   開会挨拶 森川徹 内閣府国際平和協力本部事務局長
14:40‐15:00   基調講演:山本忠通 立命館大学客員教授/元国連事務総長特別代表
15:00‐15:45   梅津茜 国際平和協力研究員
「武力紛争後の環境修復における国連PKO及び日本の貢献可能性」
  中野美緒 国際平和協力研究員
「国連三角パートナーシップ(TPP)の現状と課題-国連PKO工兵要員の育成状況と今後の展望」
15:45-16:00   質疑応答 (ハジアリッチ秀子 UNDP駐日代表/山下光 静岡県立大学教授)
16:00‐16:15   休息
16:15‐17:00   小宮理奈 国際平和協力研究員
「「ハイブリッド・ピース」と難民支援:平和構築の新たな視座」
  三橋利佳 国際平和協力研究員
「現金給付によるレジリエンス強化:貧困削減と最低の生活保障~ブラジルのFOME ZERO政策を例に~」
17:00‐17:15   質疑応答
(ハジアリッチ秀子UNDP駐日代表/福島安紀子 東京財団政策研究所主席研究員/山下光 静岡県立大学教授)
17:15‐17:30   特別報告:吉井愛 在オランダ大使館一等書記官
(国際平和協力研究員OG)
17:30‐17:55   自由討論(モデレーター:福島安紀子 東京財団政策研究所主席研究員)
17:55‐18:00   閉会挨拶 吉田孝弘 内閣府国際平和協力本部事務局次長

研究員の発表タイトル及び概要

※本シンポジウムの発表内容はあくまでも研究員個人のものであり、我が国政府や当事務局の見解を代表するものではありません。

氏名 梅津 茜(うめつ あかね)
タイトル 武力紛争後の環境修復における国連PKO及び日本の貢献可能性
概要 従来、紛争汚染の浄化を含む環境修復活動において、活動が開始されるまでには、多くの時間とプロセスを要してきた。そればかりでなく、効果的な対策がなされないまま放置される例も多い。本研究では、紛争汚染の概況を整理した上で、汚染物質拡散防止及び緊急支援を目的とし、「非常時」である紛争時またはその直後にどのような対策を取ることが可能か、検討を行った。また、紛争直後の除染等に関する最新の動向及び日本で開発された新規技術を概観することにより、国連PKO及び我が国においてどのような貢献が可能か検討を行った。現段階でのこれらの結果を、提言の形で報告する。
氏名 中野 美緒(なかの みお)
タイトル 国連三角パートナーシップ(TPP)の現状と課題-国連PKO工兵要員の育成状況と今後の展望
概要 国連PKOの能力構築事業である国連三角パートナーシップ(TPP)は、2015年に創設されて以来、日本が継続的に教官を派遣し、アジア・アフリカ諸国における平和維持要員の育成を牽引してきた。本事業は、第1回PKOサミットにおいて安倍首相(当時)の提案により発足し、国連において日本が旗振り役として推進している。国連PKOへの要員派遣が年間6名(2024年末時点)であるのに対し、国連TPPへの派遣は年間68名(2024年実績)にのぼり、日本の主要な貢献と位置付けられている。国連においても平和維持要員の能力構築は主要な課題であり、日本の存在感が増している分野である。本研究では、日本が過去9年間に渡り実施してきた国連TPPの事業評価(施設分野に限定)を行い、成果、課題、教訓をまとめる。
氏名 小宮 理奈(こみや りな)
タイトル 「ハイブリッド・ピース」と難民支援:平和構築の新たな視座
概要 本研究の目的は、難民主導組織(Refugee-led Organization、以下RLO)が行う平和構築活動の実態を調査し、国連や政府によるRLOの能力強化を通じた「ハイブリッド・ピース」型平和構築の可能性を探ることである。従来、国連などの国際機関や政府は、脆弱国家に対して市場経済や民主主義などの価値に基づく平和構築支援を行ってきた。しかし、自由主義的介入アプローチ(リベラル・ピース)がさらなる紛争や暴力を引き起こしたとの批判から、現在、現地の資源やアクターを活用する「ハイブリッド・ピース」型アプローチが提唱されている。この視点に基づき、本研究では、難民が自らの経験や専門知識を活かしてコミュニティを支援するRLOと、その草の根の平和構築活動に焦点を当て、RLOと国連や政府との協働を可能にする方法・スキームを模索する。
氏名 三橋 利佳(みつはし りか)
タイトル 現金給付によるレジリエンス強化:貧困削減と最低の生活保障~ブラジルのFOME ZERO政策を例に~
概要 本研究の目的は、開発援助における「レジリエンス・プロジェクト」(コミュニティや個人が将来の困難に対して自立し、持続可能な方法で対応できるようにする支援活動)において、支援対象者の現場ニーズをどのようにプロジェクトへ反映できるかを探求することである。現状では、国際的に採用されている成果ベースの管理手法(RBM: Result-Based Management)が存在するにもかかわらず、多くのプロジェクトがその枠組みから逸脱し、期待される成果を十分に達成できていない。本発表では、ブラジルのルーラ政権下で実施された「FOME ZERO(飢餓ゼロ)」政策に着目し、この政策の一環として行われた現金給付プログラムがどのように地域社会に影響を与えたかを分析する。その成功要因を明らかにし、FAO(国連食糧農業機関)と共同で実施された同プログラムの国際的な適用可能性を検討する。現金給付には条件設定や運営体制が重要であるが、国家政策として実施されたケーススタディを通じて、他国のレジリエンス強化に応用可能な政策モデルを提案する。さらに、国際機関が資金調達をするドナー国の比較とODAによる役割を比較・分析し、日本が持続可能な形で国際開発に貢献するための道筋を探る。特に、インパクト投資や現地主体型のプロジェクトを通じた効果的な支援の可能性を検討し、こうした取り組みが今後の国際平和協力や地域社会の自立支援にどのように結びつくかを明確にする。