後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年9月13日

(令和5年9月13日(水) 14:03~14:18  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 先ほどの閣議で辞表を提出してまいりました。昨年10月25日の就任以来、新しい資本主義の実現、経済財政政策、経済再生、感染症危機管理、全世代型社会保障制度改革等の重要課題に担当大臣として全力で取り組んでまいりました。退任にあたり、これまでの取組について振り返らせていただきたいと思います。
 まず、マクロ経済政策について申し上げますと、足下で30年ぶりとなる高い水準の賃上げや、企業部門における投資意欲など、前向きな動きが現れており、こうした動きを更に加速するための取組を進めてまいりました。
 その基本的な考え方は、第一に、「賃金と物価の好循環」であり、賃金も含めたコストの適切な転嫁を行うことによりマークアップの確保を進め、それが更なる賃金上昇をもたらすという、「賃金と物価の好循環」へとつなげるものを目指すというものであります。
 四半世紀にわたり、我が国のマクロ経済政策運営においては、常にデフレとの闘いがその中心にありました。国内では需要の停滞や新興国との競争等があり、海外市場を求めて海外生産比率を高めたり、国内投資が不足する事態が起きました。こうした中、売上高は伸び悩み、人件費が抑制されて、デフレが継続してまいりました。この悪循環を放置したままでは、未来に向かう成長への道は拓かれることはありません。悪循環を断ち切るために、これまでの経済社会の前提となっていた考え方を変えていくことが必要だと考えております。
 このため、3月には、政労使の意見交換を行い、原材料費やエネルギーコストのみならず、労務費の転嫁を通じた取引適正化が不可欠であることを実質的に合意したわけです。あわせて、下請け取引の適正化や、労務費を含めた価格転嫁を促進するとともに、企業の生産性向上を支援する等、賃上げの環境整備を進めてきました。その上で、最低賃金の引上げや、同一労働同一賃金の徹底に取り組んできております。
 第2に、サプライサイドの強化が重要であることです。労働の面からは、「構造的賃上げ」の実現に向けて、「三位一体の労働市場改革の指針」を取りまとめました。
 資本の面からは、グリーン、あるいは経済安全保障などの市場や競争に任せただけでは過少投資となりやすい、そうした分野について、官が的を絞った公的支出を行い、これを呼び水として官と民が協働して社会課題を解決しながら、成長のエンジンとして持続的な成長に結び付けていくということが重要であります。
 これらの実現のために、まずは、昨年の秋の補正予算で7兆円の予算を確保しました。また、広島で行われたG7サミットでも各国首脳とも意見を共有したように、日本としても更なるサプライサイドの政策、すなわち「新しい資本主義」をさらに推進していくことが重要であり、画期的な「スタートアップ育成5か年計画」も、こうした「新しい資本主義」の考え方を体現するものであります。
 このように、賃金も含めたコストの適切な転嫁を通じたマークアップの確保とサプライサイドの強化により、「成長と分配の好循環」の実現に向けた取組を今後とも推進することが重要です。「骨太方針2023」、「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」は、こうした考え方に基づいてまとめたものであり、今後、着実に実施されることを期待するものであります。
 私が担当した個別分野について申し上げますと、新型コロナ対応については、第一次岸田内閣の厚生労働大臣に就任して以降、医療提供体制の確保、また、感染拡大防止対策など、様々な仕事に取り組んでまいりました。特に、厚生労働大臣のときから成案づくりに関わってまいりました、感染症危機管理の司令塔機能を担う内閣感染症危機管理統括庁の発足などの司令塔機能の強化については、法律が改正し、この9月1日に統括庁ができたことを大変感慨深く思っております。
 また、全世代型社会保障制度改革につきましては、昨年12月にこども・子育て支援の充実や働き方に中立な社会保障制度の構築等の検討の方向性を示した報告書を取りまとめるとともに、今年6月には、こどもの加速化プラン実行のための財源対策を取りまとめるとともに、次元の異なる少子化対策の実現に向けて取り組むべき政策強化の方針を「こども未来戦略方針」として取りまとめました。
 CPTPP協定につきましては、英国の加入作業部会議長国として、関係国の合意を取りまとめて、本年7月にニュージーランドで開催されてTPP委員会において、英国の加入議定書への署名という大きな成果を上げたと考えております。
 我が国における働き方の多様化を踏まえ、いわゆるフリーランスの方が安定的に働くことができる環境を整備するために、フリーランス・事業者間取引適正化法等を成立させております。
 公益法人・公益信託制度につきましては、有識者会議を開催し、現行の公益法人制度創設以来となる大がかりな制度改革の方向性を取りまとめ、来年の通常国会に法案を提出することといたしております。
 デジタル市場競争会議では、本年6月に「モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告」を取りまとめております。
 また、日本学術会議の在り方の見直しについては、「国から独立した法人とする案等を俎上に乗せて議論し、早期に結論を得る」という骨太の方針の記述を踏まえ、新たに有識者懇談会を開催し、学術会議に求められる機能や組織形態の在り方に関する議論を開始いたしております。
 このほかにも幅広い分野を担当してまいりましたが、全ての課題に対して、私なりに丁寧に、一生懸命取り組んでまいりました。多くの仕事にしっかりと取り組め、仕事を前に進めることができたのは、内閣府・内閣官房の多くの優秀なスタッフ、職員のおかげであります。彼らの力強い使命感、そして懸命に取り組んでくれたおかげだと、心から感謝いたしております。
 また、記者の皆様にも、日々の報道や記事を通じまして多くの有益な発信をいただきました。この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。
 ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

2.質疑応答

(問)1年間、お疲れさまでした。岸田政権が掲げる賃金と物価の好循環について、日本経済の課題が何か残っているものがあるとしたら、もしお考えがあれば教えていただきたいです。また、その課題をどう解決していくか、所感を教えていただきたいです。
(答)四半世紀にわたって日本は、世界の先進国でも本当に珍しいことでありましたが、常にデフレとの闘いに明け暮れてまいりました。しかし、企業の価格転嫁が進み始めまして、40年振りの物価上昇、そして春闘では30年振りの高い水準の賃上げが実現するということで、新しい動きが出てきております。
 デフレ脱却に向けて、賃金も含めたコストの適切な転嫁を通じたマークアップ率を確保することで、「賃金と物価の好循環」を広げていくことが本当に重要だと思います。特に、この「賃金と物価の好循環」を確実なものとするためには、来年の春闘が勝負となると思います。しっかりと賃金の引上げ、適切な取引価格の設定、そうしたことが行われること、また、潜在成長率を上げることによって、しっかりとそうしたものが実現できることが、この動きを、確実に日本の経済を進めていくことになると思っています。
 また、潜在成長率を高めていくこと、これは非常に重要であり、民間投資の誘発、少子化対策など、中長期的な成長に資する分野での構造的な対応をしっかりしていくことが必要だと思います。
 サプライサイドの強化の政策については、先ほども申し上げたとおりでありますが、少子化も「待ったなしの課題」であり、6月に取りまとめた「加速化プラン」を確実に、着実に実行していくことが必要です。
 それから、足下のことで申し上げれば、新たな経済対策を早急に作っていくことになりますが、足下の物価高から国民生活を守り抜くとともに、構造的な賃上げと投資の拡大の流れをより力強いものにする、「成長と分配の好循環」を実現するための生産性向上、こうしたことにしっかりと取り組む、そうした政策を盛り込むことが必要だと思います。国民の命、安全・安心を確保するための取組等についても、経済対策の中で取り上げるべきだと思います。
 いずれにせよ、こうした、これまでいろいろ提示した政策を、責任を持って着実に実行していくことだと思います。
(問)大臣のおおよそ1年間の任期の中で、あえてお伺いするのですが、やり残したと思われていることは何か。あとは、これから差し当たりは党に帰ってまた自民党の議員として仕事をしていかれると思うのですが、そういったことも踏まえて、これから一人の政治家として取り組んでいかれたい仕事がもし特にありましたら教えてください。
(答)先ほども申し上げたみたいに、本当に30年振りの賃金の上昇、また、40年振りの物価の上昇と。この物価の上昇は行き過ぎていまして、国民生活を苦しめているという意味では対策も必要なわけでありますが、こうした新しい動きが、長らくデフレで苦しんできた我が国に起きていると。しかし、これを本当に「成長と分配の好循環」、これにつなげていくことが一番の今後の課題だと思います。
 そういう意味では、私自身、大臣を辞めても政治家として、また、それぞれの党の仕事の中で最大限を尽くして取り組んでいきたいと、そんなふうに思っています。
(問)担当されている内容の担務が本当に広くて、経済再生であったり、コロナの感染症対策であったりで、重い担務の中でいろいろやっていらっしゃったと思います。今後、後任の方に何かアドバイスなどあればお伺いできればと思ったのですが。いかがでしょうか。
(答)それぞれの大臣には自分のスタイルと、そしてまた、後任の新藤大臣も大変見識と経験の豊富な方なので、後輩の私からアドバイスというようなものはないですが、ともかく、それぞれ分かれてはいますが、スタッフも能力とやる気のある人たちに恵まれているので、しっかりと大臣の思いを実現できるように取り組んでいただければと、そんなふうに思います。

(以上)