後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年8月31日

(令和5年8月31日(木) 17:44~18:02  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは、私から冒頭、新しい資本主義実現会議について発言をさせていただきます。
 本日は、今年の春闘が決着し、また8月18日に今年度の最低賃金額が決定されたことを受け、賃金や投資を含む成長と分配の好循環の基本的な進め方について、議論を行っていただきました。
 我が国の実質GDPは4-6月期の速報値で年率換算6%の成長率となりましたが、エネルギー・食料品価格が高騰する中で、内需主導の経済成長を実現していくためには、「賃上げが当たり前となる経済」、そして、投資促進が鍵となるということだと思います。
 今年の賃上げ率は3.58%、中小企業に限っても3.23%であり、30年ぶりの高い水準となりました。また、今年度の最低賃金額は全国加重平均で1,004円ということで、目標の1,000円超えを達成いたしております。
 最低賃金については、更に、着実に引上げを行っていく必要があると考えます。引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の引上げ額についてしっかりとご議論をいただき、その積み上げによって2030年代半ばまでに全国加重平均が1,500円を目指すとの方針が総理よりも示されたところでございます。
 賃金及び最低賃金の安定的な引上げが必要であり、そのためには中小・小規模企業の労務費の円滑な転嫁が必要でありまして、政府公正取引委員会は実態調査の結果を踏まえて、年内に発注者側のあるべき対応も含めて、詳細な指針を策定、公表し、周知徹底を行ってまいりたいと思います。
 また、賃上げに向けた中小・小規模事業の支援のために、直ちに今日の会議でも取り上げました事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金および業務改善助成金について、要件緩和を実施いたします。
 また、現場のご意見を十分に受け止めた上で、今後取りまとめる新たな経済対策において、生産性向上、省人化・省力化投資の支援措置などの抜本強化を図ってまいります。
 さらに、国内投資促進に向けた更なる政策的な対応として、本日の新しい資本主義実現会議でも大変多くの方から発言がありましたが、戦略的重要な分野であるけれども初期投資コストやランニングコストが大きい、そういう分野について集中的に支援する税制や、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促す税制を検討していくとともに、新たな経済対策において、地方において賃上げが可能となるように中堅・中小企業による投資促進策を強化していくことが必要であるということであります。
 これらにより、賃金や投資を含む「成長と分配の好循環」を拡大していくということでございます。
 委員の皆様の協力を得て、こうした方針に基づいて政策を進めるよう、私を含む関係大臣へ総理からの指示がありました。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)先ほどの冒頭のお話ともちょっと重なる部分があるとは思うんですけれども、最低賃金の更なる引上げということで大きな目標を掲げられたと思うんですけれども、目標達成に向けてどういった課題があって、どういった方針で進めていくのか、改めて大臣のお考えをお聞かせください。
(答)今も申し上げたとおりですが、2023年度の最低賃金額が全国加重平均で1,004円となり、目標の1,000円超えを達成したところであります。
 最低賃金については、更に着実に引上げを行っていく必要があります。
 最低賃金の決定につきましては、ILO条約において、使用者及び労働者が同数で、かつ、平等の条件で参加しなければならないということがいわれており、これに基づき、我が国では、公労使三者構成の最低賃金審議会において審議し、検討することとされています。
 したがって、総理からも発言がありましたが、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の引上げ額についてしっかりと議論をしていただくということが前提であり、その積み上げにより、2030年代半ばまでに全国加重平均が1,500円となることを目指すというのが今日示された方針でございます。
 今後につきましては、この方針を踏まえ、最低賃金法に定められている労働者の生計費、これは物価の状況ですが、それに賃金(春闘の結果)、そして通常の事業の賃金支払い能力(企業の収益状況)、こうした3点、最賃の3要素を十分に考慮した上で、毎年同審議会で審議をいただいて、定めていくこととしまして、その結果、2030年代半ばまでに全国加重平均が1,500円となるように目指していくということとしたいと思います。
 政府としては、第一に、賃金及び最低賃金の安定的な引上げのためには、中小・小規模事業者の労務費の円滑な転嫁が必要であることから、年内に労務費の転嫁の指針を策定・公表いたします。
 そして、中小・小規模事業者企業の支援のために、直ちに事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金および業務改善助成金について、要件緩和を最賃関連で実施するとともに、今後取りまとめる新たな経済対策において、生産性向上、省人化・省力化投資の支援措置などの抜本強化を図って環境整備に努めていくこととしたいと考えています。
(問)最低賃金に関連してですけれども、引き上げると一方で、よくパートの、特に女性などが、年末にかけて年収の壁を意識して、自分の働く時間を減らして、元々人手不足の事業者が更に人手不足に陥るという状況になるということも見受けられると思います。
 今年、政府のほうでは支援策をやっていくということでしたけれども、今後2030年半ばまでにこれだけの最低賃金の引上げをしていくと、更に人手不足が進む可能性もあると思うんですけれども、これについて問題意識はあるか、また、どういった解決策が必要と考えていらっしゃるか、お聞かせください。
(答)本日の新しい資本主義実現会議の中でも、この問題については複数の議員から発言が出ているところです。今、例えば流通をはじめとしたそうしたところでは、今おっしゃった収入の壁の問題があって、働き止めが行われているケースが非常に見られてきているということを指摘されたところです。
 今後、労働市場において、女性が、そして、あらゆる形の労働を追求する人たちがしっかりと働いていける、自分が希望するだけ働ける市場をつくっていく、あるいはそういう経済をつくっていくためには、そうした制度的な制約、収入の壁、年収の壁みたいなものがやはりきちっと解決されていくということが、健全な労働市場や国民の健全な働き方につながっていくものだと考えます。
 そういう構造的な観点からこうした問題を考えていく必要がある。それが賃金を人手不足の中で上げながら、しっかりと労働市場や経済、そして国民生活を回していくことにつながっていくと考えます。
(問)この1,500円という目標、これは芳野委員の資料だと、いろいろ計算した結果1,500円というふうになっているのですが、どういった根拠を基づいて1,500円という決定がなされたのか、教えていただけますでしょうか。
(答)2016年の時には、「年率3%を目途として、名目GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1,000円となることを目指す」ということで、単年度のある程度年率の目安を示して1,000円という目標を示したという過去の経緯はございます。
 ただ、他方で現状を鑑みると、当時と比べて現在はエネルギー・食料品価格が非常に高騰している状況にありまして、毎年の目途となる上昇率を示しにくい状況であることもあります。それから、先ほど申し上げた、最賃法に定める3要素に基づいてしっかりと議論をしていただくということも必要であります。
 そういうことから、今回、総理の御発言においても「2030年代半ばまでに」ということで、幅があるという数字としてお示しをしていると思います。年限の幅、また毎年の目安、そうしたことについても幅を置いておりますが、単純に技術的に2035年半ばと仮置きして計算すれば、年平均の引上げ率は約3.4%ということにはなるわけですが、ここは年限の幅の問題、あるいは毎年毎年にどれだけやっていくのか、そうしたことも含めて、今後よく毎年毎年の最低賃金審議会でのしっかりとした議論を積み上げていくとともに、政府の目標としても経済の状況、物価の状況、支払い能力の状況、国民の生活の状況、3要素はもちろんのことですが、そうしたことを含めて判断をしていくということだと思います。
(問)賃金は企業が払うというのが原則だと思うんですけれども、1,500円に上げるということはその余力がないともちろん駄目なわけですよね。企業側に1,500円を払い続けるという。政府はそれをどうやって担保するというふうに認識されているのですか。
(答)最低賃金というのはこれは強制賃金になりますから、最賃法に基づく最低賃金を定めれば、これは全ての企業がそれを払わなければならないという強制法規のルールになります。ですから、我々はそういうことを前提として、支払い能力も、そして物価の状況も、あるいは生活の状況も含めて、3要素を含めて判断をしていくということになります。
 そして、多くの企業がそうした最賃が守っていけるように、例えば生産性投資をしっかりしていくとか、あるいは賃金支払いが可能となるような適正な労務費を含めた価格転嫁が可能なような、そういう適正な取引環境をつくっていくとか、そういう前提条件を政府としては政策としてしっかりやっていきながら、強行法規としての最賃を設定していくということです。決めた以上は、これは日本の企業は守らないといけないということになります。
(問)今、平均で年3.4%賃上げを達成すれば10年後ぐらいには1,500円ということなので、そんなに意欲的というか、妥当な感じもするんですけれども、1,500円という額だけ見ると、おおっと思うんですけれども、新浪さんがおっしゃったようにもっと早い段階で1,500円に達するべきだというようなお考えよりも、もうちょっと現実を見て1,500円にされたのでしょうか。
(答)今、もうちょっと私の言い方が舌足らずだったかもしれませんが、2030年代半ばまでにと言っているので、できれば早く到達できることについて、これは可能性も残していますし、そういう条件が可能であれば、もちろん最賃が2030年代半ばまでに前倒しで実現されていく日本経済の今後の道筋が見えれば、それはより好ましいことであると考えています。
 1,500円ということ自体は、今のヨーロッパ諸国の最賃の水準等から見て、目標として掲げることについては是非関係者の皆さんに御理解をいただきたいし、いただける数字だと思って、政府としては発言いたしております。
(問)もう1点、各都道府県の最低賃金の額の差を縮めていくということも一つの課題だと思うんですけれども、それについてはどのように今後取り組まれていく予定でしょうか。
(答)これは最賃を議論する答申が出た段階でも、徐々に格差を縮めていくということでありまして、格差を縮めていくことについては方針であります。
 もちろん今回も1,000円に達していない地域もあることは御指摘のとおりであります。今、最賃は地域それぞれにおける賃金の状況や、あるいは支払い能力、あるいは生活の実態等も丁寧に3要素を判断して議論していくということになっていますが、しかし、御指摘のように、賃金というのは市場は別に県の境があるわけでもありませんし、そうした点にしっかりと取り組んでいく必要があるということを政策的にも述べておりますし、毎回毎回の改定で地域格差は解消される方向で今、調整が進んでいます。

(以上)