後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年8月29日

(令和5年8月29日(火) 11:17~11:32  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは、私のほうから2点申し上げたいと思います。
 まず、本日の閣議におきまして、「令和五年度年次経済財政報告」を報告いたしました。
 副題を「動き始めた物価と賃金」としているように、今、日本経済はデフレ脱却の正念場にあります。
 デフレ脱却を確実なものとするためには、賃金も含めたコストの適切な転嫁を通じたマークアップ率の確保を進め、「賃金と物価の好循環」を広げていくとともに、サプライサイドの強靱化を進め、潜在成長率を高めることが求められ、こうした取組を通じて「成長と分配の好循環」を実現することが重要であるということを指摘しています。
 また、少子化については、その経済的側面を整理し、子育て世代の構造的な賃上げの環境の実現、子育て負担の軽減、「共働き・共育て」のための環境整備が重要であることを示しております。
 本報告での客観的データに基づいた定量分析が、デフレ脱却や少子化の克服など、我が国が抱える本質的な課題の解決に資することを期待しております。
 それから、第2点でございますが、「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」の開催について申し上げたいと思います。
 日本学術会議が、学術の進歩に寄与するとともに、国民から理解され信頼される存在であり続けるという観点から、「経済財政運営と改革の基本方針2023」を踏まえ、日本学術会議に求められる機能及びそれにふさわしい組織形態の在り方について検討するため、私の下に、さまざまな分野から、学術に広い関心、広い経験と高い識見をお持ちの有識者の方々に御参加いただき、「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談 会」を開催することといたしました。
 先ほど、私も第1回目の懇談会に出席し、ご挨拶させていただいたところです。
 議論は現在も続いているところかと思いますが、日本学術会議に求められる機能及びそれにふさわしい組織形態の在り方について、丁寧に議論を進めていただくことを期待しております。
 有識者懇談会での議論については、発言者の名前入りで、詳細な議事録を発言者の確認が取れ次第速やかに内閣府ホームページで公表することとしておりますので、御覧いただければと思っております。
 以上、私から2点です。

2.質疑応答

(問)本日公表された経済財政白書では、マークアップ率の動向について初めて焦点が当てられました。賃金と物価の好循環に重要なマークアップ率の向上に向けて、政府としてどのように後押ししていくか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)物価と賃金の好循環のためには、企業による価格設定行動、すなわち、賃金上昇分を含めたコストの適切な価格転嫁を通じたマークアップ率の確保が重要であります。
 こうした認識の下、今年の白書では、マークアップ率について、投資の拡大による製品差別化がマークアップ率の向上につながることや、マークアップ率が高い企業では、相対的に高い賃金によって収益を還元する傾向があること等をお示ししております。
 政府としては、物価上昇に負けない賃上げやコスト上昇の転嫁のできる適切な支払いをしっかり確保していく観点から、労務費を含めた適正な価格転嫁や下請け取引の適正化に向けて、取引先との共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」の拡大と実効性の向上、第2点として、公正取引委員会や中小企業庁における大幅な増員に基づく体制の強化、3番目に、価格交渉転嫁の状況について、親事業者約150社の交渉・転嫁の状況を一覧にして公表、また、4番目として、3月15日に開催した政労使の意見交換の場で、中小・小規模事業者の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である点について合意があったことも踏まえて、年内に公正取引委員会の協力の下で、労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査を行った上で、労務費の転嫁の在り方について指針を取りまとめる等、環境整備に取り組んでいくというようなことをしっかりと進めていきたいと思います。
 さらに、人への投資、グリーン、経済安全保障など、市場や競争に任せるだけでは過少投資になりやすい分野についても、企業の生産性や付加価値を向上させていくための官の投資を呼び水として、民間投資を大胆に喚起することなどにもしっかりと取り組んでいきます。新しい資本主義の実現に向けた取組等を着実に推進することにより、連続的に拡大が続く成長と分配の好循環を実現していきたいと考えています。
(問)学術会議の有識者懇談会について伺いたいのですが。今回の議論は、国から独立した法人とする案と、従来からの政府案が主に議論されていくかと思うのですが、議論の方向として、有識者会議のほうが、学術会議を国の機関として残す一方で、政府案とは違う内容、例えば法改正は不要であるというような結論になった場合、政府としては受け入れる考えはあるのでしょうか。
(答)まず、我々としては、学術会議の在り方につきまして、「経済財政運営と改革の基本方針」を踏まえて、学術会議に求められる機能、それにふさわしい組織形態の在り方について検討するために、有識者会議の皆様に参集していただいて議論をしていただく。その議論については、学術会議と十分に対話をしながら丁寧に議論を進めていただくということで、お話をお願いしているということであります。今、有識者会議の議論が始まったところでありますから、そういったことで丁寧な議論をお願いしたいと思います。
 政府案は、国とは別の法人にすべきではないかという意見もある中で、国の機関のままという学術会議の希望を尊重した上で、学術会議が示した改革方針にのっとって、国民から理解され、信頼される存在であり続けるためにという観点から、運営や会員選考の透明性を図るぎりぎりの方策を検討したものでありますが、この政府案は学術会議から強硬に反対されて見送りを余儀なくされた事情もございます。
 こうした事情を踏まえて、骨太の方針2023において、日本学術会議の見直しについて、これまでの経緯を踏まえ、国から独立した法人とする案等を俎上にのせて議論し、早期に結論を得るということになっておりまして、そうした姿勢で政府としては取り組んでいくということであります。
(問)対話ということなのですが、有識者会議の結論、何かしらこういう方向でという基本方針が出てくると思うのですが、これに対して、懇談会の場で学術会議と対話をしながら、合意形成しながら結論が出てくるのか、それとも、有識者会議として結論を出して、それをある意味、一方向性な結論を、学術会議が納得していないのであれば押しつけるという言い方はあれですが、有識者会議としてはこういう結論になりましたというふうな形になってしまうのか、どちらを想定されているのですか。
(答)いずれにせよ、学術会議と十分に対話をしながら丁寧に議論を進めていただきたいということを申し上げています。
結論として、特定の案でなければならないと、結論があらかじめ決まって議論をお願いしているものではないと思っています。ただ、従来からのいろいろな議論の経緯を踏まえて、国から独立した法人とする案などを俎上にのせて議論して、早期に結論を得ていただきたいということについてはお願いしているということです。
 有識者懇談会自身は、有識者懇談会としての意見をまとめていただくことになるわけですが、先ほど申し上げたように、学術会議と十分に対話をしながら丁寧に議論をまとめていただく。それは有識者会議としての議論をまとめていただくということです。
(問)今回の白書について1点伺います。今回、初めて一節を使って少子化について分析しています。政府として、他に少子化であったり子育て関連の白書というものもある中で、今回、少子化の分析に紙幅を割いた理由ですとか、併せて、検討を進めている少子化対策にどう生かすのかといった面も含めて伺えますでしょうか。
(答)急速な少子化は、我が国の経済のみならず、社会全体にとって非常に重要な問題であり、先送りのできない「待ったなしの課題」であると思います。2022年には出生数が77万人となり、ピークの3分の1以下に減少し、若者が急激に減少する2030年代に入るまでが少子化トレンドを反転できるかどうかのラストチャンスであると認識しています。こうした認識の下で、今年の経済財政白書では少子化について取り上げたところであります。
 具体的には、本白書では、少子化の経済的側面を整理して、客観的なデータに基づく定量分析につきまして、若年世代や子育て世代の構造的な賃上げ環境の実現、住居費や教育費用といった、子育て負担の軽減、保育所の整備や男性の育休推進などによる「共働き・共育て」のための環境整備が重要であるということを示しております。
 こども・子育て支援については、今年6月に「こども未来戦略方針」で3つの基本理念を提示してまとめているところであり、3つの基本理念に沿って、こうした経済的側面を整理した上で、客観的データに基づき分析したということになります。
 いずれにしても、政府としては今後、「加速化プラン」施策の実施等に向けて、戦略方針の具体化を進めて、「こども未来戦略」を年末に向けて策定するとともに、少子化対策の実現のためにしっかりと取り組んでいくことになりますが、そうした前提となるデータ等を提供するという形で、国の重要な課題、そして経済に関わりが非常に深い、経済社会問題の最重要課題である少子化についても分析を行っているということです。

(以上)