後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年5月16日

(令和5年5月16日(火) 19:55~20:05  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 今日は、2つこちらからお話しすることがあります。一つは、新しい資本主義実現会議。本日は、「三位一体の労働市場改革の指針」の取りまとめを行いました。
 三位一体の労働市場改革では、構造的な賃上げを通じ、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国ごとの経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指すということであります。
 また、改革の第一の柱は、「リ・スキリングによる能力向上支援」につきまして、個人への直接支援を拡充し、教育訓練給付については、高い賃金・就業可能性の向上が期待される分野について、補助率や補助上限の拡充を検討する。
 また、在職者によるリ・スキリングを強化するため、雇用調整助成金については、例えば30日を超える雇用調整となる場合には、教育訓練を求めることを原則とするなどの取りまとめを行っています。
 第二の柱は、「職務給、ジョブ型人事の導入」であり、人材の配置・評価方法、リ・スキリングの方法、賃金制度などについて、中小・小規模事業者の事例も含めて、年内に「事例集」を作成し、個々の企業の実態に応じた導入の参考となるようにするということであります。
 第三の柱は、「労働移動の円滑化」です。求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を集約、共有して、キャリアコンサルタントが、情報に基づいて、個人のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制を整備するということを指摘いただいています。
 また、失業給付制度について、「自己都合」離職の給付要件を緩和し、例えば1年以内にリ・スキリングに取り組んでいた場合などについて、「会社都合」離職と同じ扱いとするということの取りまとめもいただきました。
 これらの三位一体の改革を進める際に、「格差の是正」も大切です。最低賃金の引上げを図るとともに、中小・小規模企業の賃上げ実現のため、労務費の転嫁の在り方についての指針を年内にまとめるなど、価格転嫁対策を強化するという取りまとめもいただきました。
 最後に、公務員についても、育成や評価に関する仕組みをアップデートすることとし、その在り方について検討を進めるという取りまとめになりました。
 本日取りまとめたこの指針について、新しい資本主義の実行計画の改訂や骨太方針に反映してまいります。
 総理からは、私をはじめとした関係閣僚への検討の取りまとめの指示がありました。
 本日頂いたご意見については、今後の新しい資本主義実現会議での議論を継続していまいります。
 2番目でございますが、CPTPPについて申し上げます。5月13日にブルネイがCPTPP発効のための国内手続を完了した旨を寄託者であるニュージーランドに通報いたしました。これにより、7月12日、同国がCPTPPの11番目の締約国となる予定です。
 重要なパートナーであるブルネイが締約国に加わること、また、これをもって全てのCPTPP参加11か国についてCPTPPが発効し、協定のメリットの実現が更に進むことを、大変喜ばしく思っております。
 以上2点でございます。

2.質疑応答

(問)労働市場改革の件で伺いたいことを1点お願いいたします。今回、日本企業と外国企業の賃金差を縮小していくという文言が入ったのですが、いつ頃までにどれぐらいといったスケジュール感や規模感が示されていないと思いまして。既に賃金差の拡大によって日本の優秀な労働力が海外に流出してしまうという事態も現時点で起きてきているわけでして、これは喫緊の課題だと思うのですけれども、そういった、いつ頃までにどれぐらいというのをこれからお示しになる予定はありますでしょうか。
(答)今、御指摘いただいたように、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業との間に、賃金格差が存在する点については、2月15日の新しい資本主義実現会議において事務局から提示した基礎資料2ページに示しているとおり、例えばITであれば、米国は日本企業の1.63倍、データアナリティクスであれば、米国は日本の1.64倍、技術研究であれば、米国は日本の1.56倍ということで大きな賃金格差があります。これは米国だけではなく、ドイツ、フランス、イギリスといった国や韓国と比較しても存在するという事態になっております。
 今お尋ねの、いつまでに縮小できるかということでありますが、いつまでに縮小できるかは、どの程度の期間をかけて日本の大企業の中でジョブ型の人事制度が普及するかにかかっているわけです。ただ、このジョブ型の人事制度をどういうふうに普及していくかということは、これは企業の自由度を尊重すること、これは労使双方からも求められておりますし、期限を設けるということは適切とは言えない事柄であると考えています。
 今、人的資本こそ企業価値向上の鍵との新しい資本主義の認識に立てば、御質問にもあったように、企業には変化への対応をできる限り急いでいただきたいと考えておりますが、期限を設けていない理由はそういう事情であり、実質的な賃金の格差をなくしていく方向の日本の賃金引上げの努力と、それから、こうした制度の担保、それを併せて、できる限り急いで進めていきたいと考えています。
(問)本日の朝開かれた、物価問題に関する関係閣僚会議についてお伺いします。6月からの電気料金の値上げについて了承されたと思いますが、今後、電気料金が引き上がることによって、消費者物価に対する影響ですとか、また、それを踏まえて消費に対する影響について、大臣としてどのように考えていらっしゃるか、今後の対策なども含めてお伺いできればと思います。
(答)ご質問の電気料金の値上げが物価に与える影響については、本日の関係閣僚会議に提示された上昇率の値のみでは消費者物価指数の上昇率を精緻に試算することはできないので、精緻に物価上昇についてお答えするということは困難ではあるわけですが、今回の電力料金の値上げを含めた物価の動向や、国民生活、事業者への影響を注視しつつ、これまでの物価高対策の着実な執行を含めて、引き続き経済運営に万全を期してまいるということだと思います。

(以上)