後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年3月31日

(令和5年3月31日(金) 10:25~10:45  於:中央合同庁舎第8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは私から3点申し上げます。
 まずは、英国のCPTPP加入交渉の実質妥結についてでございます。CPTPPへの英国加入プロセスについては、2021年6月のプロセス開始以降、日本が議長を務める加入作業部会(AWG)のもとで、継続的に議論・検討が行われてきましたが、先ほど開催されたオンラインでのAWG閣僚会合を受けて、この交渉が実質的に妥結した旨の閣僚共同声明を発出いたしました。関係各国の御尽力に改めて感謝を申し上げたいと思います。
 詳細については声明を御覧いただきたいと思いますが、今回の実質的な妥結によって、英国のCPTPP加入プロセスは重要な節目を迎えました。CPTPPは、ルールの面でも市場アクセスの面でも、最も包括的かつ野心的な貿易協定の一つであります。英国の加入が実現すれば、環太平洋地域にとどまらず、自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム、経済統合を更に促進していく上で、非常に大きな意義を有するものであると考えます。
 我が国との関係では、英国から日本への輸入に関しては、現行のCPTPPを超えない範囲で妥結したところでありまして、我が国が譲歩したものは一切ありません。日本から英国への輸出に関しては、日英EPAでは得ていなかったものとして、新たに精米等の関税の撤廃を獲得いたしました。世界的な和食ブームの中で、我が国の輸出重点品目の一つとして位置づけられていますコメなどの輸出に一層弾みがつくものと期待いたしております。
 今後は、早期の署名を目指して、関係各国と緊密に連携して、加入議定書等の必要な作業を進めてまいりたいと考えております。これが第1点でございます。
 第2点ですが、新型コロナ対策について1点申し上げます。新型コロナの感染症法上の位置づけ変更以降の基本的な感染対策については、厚生労働省において、専門家の意見も聞きながら検討が進められ、今般、お手元の資料のとおり示されたところです。
 基本的感染対策については、これまで、「三つの密」の回避、「人と人との距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗い等の励行」、「換気」等の実施を求めてまいりました。
 これまでの国民・事業者の皆様の感染対策への御協力に改めて感謝申し上げます。5月8日の位置づけ変更以降、これらの感染対策については、政府としては一律に求めることはせず、個人や事業者の判断に委ねることを基本とします。
 個人や事業者は自主的な感染対策に取り組んでいただき、政府は必要な情報提供を行ってまいります。
 具体的には、「マスクの着用」については現在と同様、個人の判断に委ねることを基本に、一定の場合に着用を推奨すること。
 「手洗い等の手指衛生」、「換気」については、引き続き有効であること。
 「三つの密」の回避や「人と人との距離の確保」については、「流行期には、高齢者等の重症化リスクの高い方は混雑した場所などを避けることが有効」という情報提供を行っていきたいと考えています。
 こうした見直しを踏まえて、個人や事業者においては、感染対策上の必要性だけでなくて、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮して、感染対策の実施を判断していただきたいと思います。
 特に、事業者においては、これまで、業種別ガイドライン等に基づき、入場時の検温、入り口の消毒液の設置、パーティションの設置など、様々な感染対策を実施いただいてきました。
 今後は、こうした対策についても、今申し上げた観点から、その要否を判断していただきたいと思います。
 5月8日の位置づけ変更以降は、業種別ガイドラインは廃止となりますが、各業界が、それぞれの事情により、必要と判断して独自の感染対策の手引きなどを作成することを妨げるものではありません。
 今回の基本的感染対策の見直し内容について、関係府省を通じて各業界にしっかり周知するとともに、各業界からの御相談には丁寧に対応して、5月8日の位置づけ変更が円滑に進められるように取り組んでまいります。
 詳細は内閣官房コロナ室へお尋ねいただきたいと思います。
 それから第3点でございますが地域就職氷河期世代支援加速化交付金の交付対象事業の決定について申し上げます。
 雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った、いわゆる就職氷河期世代の方々の中には、不本意ながら不安定な仕事に就いている方、無業の状態にある方、ひきこもり状態にある方など、様々な課題に直面している方が多くいらっしゃいます。
 これは、個々人やその家族だけの問題ではなく、社会全体で受け止めるべき我が国の将来に関わる重要な課題であり、内閣府では、地域における就職氷河期世代の方々の実態やニーズを踏まえた支援の取組を加速化させるため、令和2年度より「地域就職氷河期世代支援加速化交付金」を通じて自治体を支援してまいりました。
 令和5年度からは、複数の自治体の連携による広域的取組を強化し、自治体に対して強く働きかけを行った結果、事業実施自治体数は令和4年度の123から148へと拡大しました。
 この度、外部有識者による審査を経て、148の自治体が行う160事業、交付金額17.8億円について、4月1日付で第一次交付決定をいたします。
 本交付金を通じて各自治体の取組を後押しすることにより、一人でも多くの就職氷河期世代の方の就労や社会参加に結びつくことを期待いたしております。
 以上でございます。長くて申し訳ありませんでした。

2.質疑応答

(問)TPPについて伺います。今朝、イギリスの加入が実質的に決まりましたけれども、TPPには既に中国と台湾が加盟申請を行っています。この2か国に対しての加盟審査に対しては、日本政府としてどのような態度で臨みますでしょうか。また中国については、TPPの高いルール水準を守れるのか、合意内容を守れるのかといったところが不透明だというふうな見方もありますが、この点についてはいかがでしょうか。
(答)現時点では、御質問の中国、台湾に加え、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイの5つのエコノミーから加入要請が提出されています。CPTPPにおける加入プロセスに関する意思決定は、締約国によるコンセンサスにより決定されることとなっておりますが、今後のプロセスについては決まっておりません。
 CPTPPは、市場アクセスの面でも、ルールの面でも高いレベルの協定でございます。御指摘のとおり、我が国としては、加入要請エコノミーがこうしたハイレベルを完全に満たす用意ができているか、しっかりと見極める必要があると考えておりまして、戦略的観点や、国民の理解も踏まえながら対応していきたいと考えています。
(問)TPPの件で1つお尋ねします。英国との間では既に日英EPAも発効していたかと思いますが、EPAと比べて、今、TPPに発展したことで、この意味合い、意義を改めてお聞かせください。
(答)TPP自身は、自由貿易、開かれた競争的市場、ルールに基づく貿易システム、経済統合を更に促進していく上で、非常に大きな意義を有するものであると考えています。
 アメリカにつきましても、従来はこうした枠組みの中で検討してきているわけでありまして、米国によるインド太平洋地域の国際秩序への関与という戦略的観点からも、またより幅広く、先ほど申し上げたようなTPPの理念を拡大していくという立場から見ても、米国に対してもこうした立場で、首脳レベルでも一貫して米国に加盟の働きかけを行っているところであります。
 そういう意味では、様々なレベルで引き続きTPP復帰を粘り強く求めていくとともに、元々TPPはマルチの交渉でありますし、そのマルチの交渉の上に、日米に限らず各国との間でEPA交渉を二国間でも行っているということなので、こうした二国間の取組と、それから今回のようなマルチの取組、両面にわたってしっかり対応していく必要があると思います。
(問)TPPの関係で1点教えてください。先ほど大臣は、加入申請したエコノミーがハイレベルを満たせるかどうかというところが判断の基準になるとおっしゃっていたと思うのですが、中国の場合いうと経済的な威圧であったり、ルールが本当に守れるのかどうか不透明な状況であるということだと思うのですけれども、こうした状態が続けば、加入交渉入りすら現状としては難しいという、そういう捉え方になるのでしょうか。その点について教えていただけたらと思います。
(答)まず、加入交渉国とするかどうかということについても、締約国によるコンセンサスです。今回のイギリスの加盟に当たっても、イギリスとの間で締約国全体が加入交渉に入るというコンセンサスができた上で、英国の加入のプロセスは始まりました。
 今御指摘のように、中国の貿易慣行には様々な御意見があるということも、私も承知いたしております。先ほども申し上げたように、加入要請エコノミーから、こうしたTPPのハイレベルを完全に満たす用意ができているか、しっかりと見極める必要があると考えておりまして、戦略的観点や、国民の理解も踏まえながら対応していく課題で、今はコンセンサスはできていないということは申し上げました。
(問)学術会議法改正でお聞きいたします。今回出される予定の法案ですけれど、これは昨年12月に内閣府の室長から説明があった、もう既に今年の10月の会員選考に関しては、学術会議が今あるやり方で進めていますが、法案を通した場合、会員の任期を延長して、第26期、第27期の会員の改選は新しいルールの下でやっていくということなのか。もしそうした場合は、学術会議側は、独立して職務に当たる学術会議の会員選考への重大な介入ではないかと。一方的に任期を変更することは御都合主義ではないかと指摘しています。これに対しての大臣の御見解を。
 それから去年の8月3日、梶田会長との会見で、松野官房長官が、改正法に基づく会員選考という考えは、日本学術会議が今行っている選考方法の下で6人の再選考を行うという、こういった発言は官房長官自身の提案と相矛盾するのではないかという指摘も出ています。この点についても大臣の見解をお願いいたします。
(答)まず任期について、あるいは今進行中の学術会議が現行の手続に基づいて行っている作業について、どういうふうに扱っていくかということについては、いまだ検討中であります。ですから、そういう意味では、その問題について、まだ法案提出前の検討段階の今の状況で申し上げないということで、お答えにさせていただきたいと思います。
 ただ、いろいろ考えてみたときに、確かにこれまで学術会議が今までのやり方をそのまま踏襲するのではなくて、学術会議として、従来の会員やその他の会員の皆さんの推薦だけではなくて、外部の皆さんの推薦も得ながら学術会議の候補を選ぶという、そういう自主的な改革に基づく選考のプロセスを踏んでおられるということも承知していますから、そうしたことをどういうふうに受け止めるかということについては、これは御相談をしながら受け止めていく必要もあるだろうと思っています。
 それから6人の選考の問題については、これは既に先の総理の下で決着済みの案件だというのが現在の政府の立場です。
(問)会員選考の今回の法案に関して、フォローアップをするという提案が出ております。このフォローアップ制度というのが、6年ごとの見直しなどということがいろいろ書かれているのですが、こういったものを入れ込むこと自体が、いわゆる政府の独立行政法人などに適用されているような改革のフォローアップということなので、こういった部分も含めて、やはり学術会議を政府の独法化していくための一つの提案としてこういったものが出ているではないかという声もあります。これについてお願いいたします。
(答)どういう見直し規定、検討規定を置いていくのかどうかということも、これはまだ細部まで詰まっているわけではありませんし、決定してお示ししているわけではありませんから。
 そういう前提の下で申し上げると、今回、政府として検討しているのは、国に残るという形で、国民に対して透明な責任、あるいは透明な説明が可能となり、国民から引き続き信頼が得られるような、そういう組織として最低限どういうことをしていけばいいのか。それは学術会議自身が持っておられる自主改革についての考え方も踏まえた上で、法律としてそれに制度的な根拠も与えながら、世界の学術会議の中で唯一、国自身が公務員として、そして補助金や、あるいは国民からのチェックということではなくて、政府とは独立に活動をするという、非常に特別な立場にある日本の学術会議をどうしていくのかという御議論が一方である中で、政府としては、まずは国に残すという形で今回の改革でどうなのかということを申し上げているということになります。
 その後の民間への移行とかそういうことについては、今回の制度改革がどうなるかということを見極めた上で。もちろん制度問題についてどういうふうに考えていくかということの検討をどうしていくかということが検討規定の内容なので、将来のことについて、何ら予断をもって今回の附則の検討を進めているわけではありません。
 最後にもう一言言っておきますが、附則の検討内容も、今は検討中だという段階です。

(以上)