後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年3月29日

(令和5年3月29日(水) 19:35~19:49  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは、私のほうから第15回新しい資本主義実現会議について申し上げます。
 本日は、6月に改訂する新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画について、その方向性を確認しました。また、今後、新しい資本主義において重点的に取り組むテーマについても議論を行っていただきました。
 具体的な内容は以下のとおりでありまして、第一に、三位一体の労働市場改革、リ・スキリングによる能力向上、そして職務に応じた適正なスキルの評価、自らの選択による労働移動の円滑化の3点について、6月までに指針を取りまとめる。
 個々の企業の実情が異なるので、企業の実態に合った改革が行えるように、指針は、自由度を持ったものにする。
 そして、構造的賃上げを通じて、同じ職務であるにもかかわらず、今、日本企業と海外企業との間に存在する賃金格差を、国ごとの経済事情の差も勘案しつつ縮小することを目指す。そういうような問題意識を持っています。
 また第二に、科学技術・イノベーションの推進につきましては、対話型のAI、ChatGPTみたいなものですが、実装に向けた開発など、戦略的な重点投資を行う。また、日本の誇るべきクリエイターへの支援を検討するという内容。
 それから、また第三に、GX・DXなどの産業構造転換を進めるために、参入と退出の障壁を低くしていく。
 それから、昨年末の「スタートアップ育成5か年計画」を深掘りして、ストックオプションの活用に向けた環境整備などを具体化する。
 また、企業経営者が経営不振の事業から退出を決断した場合の退出支援について、M&Aも含めて多面的な検討を行う。
 第四に、社会課題の解決に向けては、インパクトスタートアップ・NPO・既存企業の関連部門などの連携強化を図るとともに、インパクトスタートアップに対する総合的な支援策も検討していく。
 第五に、不確実な国際環境において、成長の水準の向上のみではなく、ショックを危機へと拡大させないような振れの拡大防止が課題である。レジリエンス上の日本の国土の優位性を生かして、観光に加え、高度外国人材の呼び込みや企業立地促進を含めたインバウンド全体の促進を図っていく。
 このような点で具体的な内容の議論が進みました。
 岸田総理からは、「実行計画の改訂に向けて、議論を加速していく」という御発言がありました。
 以上です。

2.質疑応答

(問)先ほど行われた新しい資本主義実現会議では、三位一体の労働市場改革、科学技術・イノベーションの推進や社会課題の解決といった、5つの具体的な取組が示されました。これらの取組について、大臣として今後どのように進めていかれるか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)今、内容についてはお話をしたとおりでありますが、第一に、三位一体の労働市場改革は、構造的賃上げを通じて、同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と海外企業との間に存在する賃金格差を、しっかり見直していくということですが、国ごとの経済事情の差を勘案しつつ、成長と分配を機能させる上で極めて重要な役割を果たしますので、しっかりと取り組んでいく必要があると思っています。
 これはまずは期限を切っているわけですし、今後の賃上げをしっかりと継続的にしていくためにも、制度的な担保をしっかりしていく必要もあると考えています。
 また第二に、対話型のAI、ChatGPTの実装に向けた開発など、科学技術・イノベーションについての戦略的な重点投資が必要になるだろうと思います。
 また第三には、産業構造転換を進めていくための、今日も議論がありましたが、参入と退出の障壁の低減化、あるいは「スタートアップ育成5か年計画」の深掘りなど、重要だと思います。
 それから、社会課題の解決については議論もありましたが、インパクトスタートアップ、社会的起業家、あるいはNPOや既存企業との、そうした関連部門との連携支援策、そうしたものが重要かと思います。
 また、不確実な国際環境において、レジリエンスの確保、高度外国人材の呼び込み、こうしたことも重要だと思います。
 進め方については、まずは、6月に改訂する新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画に重点的なテーマを織り込むことが第一です。それに加えて、6月以降の新たなサイクルにおいて、重点テーマについて、具体的な検討をもう一歩進めていくということも必要であると考えています。
(問)今、海外との賃金格差の縮小というようなお話がありましたけれども、日本は長らくの低成長の中で、1人当たりのGDPなんかも、かなりOECD平均から下回るような状況になってきておりますけれども、これをどうやって反転させていく、縮小させていくということが可能か、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)これはいつもお話をしていることではありますが、まずは生産性を上げる、付加価値を生み出すということが大事です。それの中には、例えば社会課題の解決みたいなものももちろん重要でもありますし、生産性をしっかり上げていくような、そういうイノベーションを進めていくということが一つ重要だと思います。そして得られた付加価値を分配していくということだと思います。
 それから、もう1つは、今も足下の賃上げも含めて申し上げている、過去30年の日本の経済の状況を反省してみた上で、振り返ってみた上で、やっぱりサプライチェーン全体の中で的確な価格付けを行っていく。そして、そうした価格付けの中で物価に負けない賃金の引上げや、あるいは転嫁をしっかりとできる支払いを行っていくことによって、前向きな好循環を生み出していく。そうしたことで成長と分配の好循環。その前提にはもちろん社会保障制度だとか、あるいは格差のない、あるいは格差が固定化しない、分厚い中間層を生むような、そういう社会を作っていって、全体としてのレベルアップを図っていくということが必要だと思います。
 それに加えて、今、正に話の出ていたところの労働市場改革、これも制度的にしっかりと格差を埋めて、さっき言ったのは、いずれにせよ海外との格差を縮めていくこと自体は日本の賃上げにとって必要ですが、職務給の議論をするようなときは、特にしっかりと具体的な経済の環境や、あるいは各国の状況にも配慮しながらやっていく必要もあるだろうという話を御紹介もしたし、私もそういう必要があるだろうと思っています。
 ただ、いずれにしてもリ・スキリングをすることによって、それも主体的にリ・スキリングをすることによって、自らが新しい挑戦の条件を作っていくとともに、実際に職務給が明確になることによって、一体どういうことが達成できるのか、そこが見えていること。そして、それに向かって実際に内部的なものも、社内的なものも、会社を越えた社外の労働市場も含めて、そこが切れ目なくつながっていくようなかたちで生産性の向上につながるように、またスムーズな労働移動ができていくようにしていく、そういう構造改革はもちろん労働市場改革として重要だと思います。
 今日申し上げた話は、全般として経済が元気になり、そして、そのことが基本的には労働分配を可能にしていく、前向きな気持ちになっていくということがそれにつながることだと思います。
(問)もう1点、お願いします。先ほど今後の進め方という質問で、具体的な検討を一歩進めていくというお話がございましたけれども、先ほど、対話型AIの実装であるとかインパクトスタートアップなどに関してお話がございましたけれども、今後、例えば、昨年ですとスタートアップ5か年計画ですとか資産所得倍増プランのように、各論で議論もされたと思うのですが、そういった各論での議論も今後検討されていくのかどうか、お聞かせください。
(答)特に今、特定のテーマについて絞って、特定の検討をしていくということを決めているわけではありません。
 既に発表しているところの三位一体の労働市場改革の問題だとか、「スタートアップ育成5か年計画」のようなものは深堀りをするということでしっかりと取り組んでいくということになりますが、それぞれ、例えばインパクトスタートアップにしても、金融の分野や、あるいは新しい分野ということで、政府の中でも検討は進んでいるところもありますから、何でもここの手元で独立した検討をつくるというのではなしに、そういう政府のそれぞれの場所で検討していることも含めて、これは有機的につなげることもありますし、また、議論次第によっては特別なチームを作って、それを検討していくということもあり得ると思いますが、今の段階でスタートアップや三位一体の労働市場改革のように、パッケージとして近々にまとめていくということで決めているということはありませんが、問題意識は非常に強く持っていますので、少なくとも新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画の中ではしっかりとまとめていくようにしたいと思います。

(以上)