後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年3月17日

(令和5年3月17日(金) 10:34~10:56  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)2点お願いいたします。15日にあった春闘の集中回答日では、過去最高の満額回答など、大企業を中心に今までにない賃上げの動きが相次ぎました。大臣は、景気回復のためには物価上昇に負けない賃上げが必要であると繰り返し訴えてこられています。今回の賃上げに対する動きを、どう評価されるでしょうか。
 次です。また、大臣は成長と分配の好循環のためには、まず適正な価格付けが必要であると発言されています。一方で、中小企業の労働組合が多く所属するJAMの調査によると、取引停止を恐れて価格交渉協議を申し込まないケースや、3割の企業が依然として価格引下げ要求をされていると回答しています。
 価格転嫁が進まなければ安定的な賃上げを実現することは難しく、経済成長へと結びつかないと思われますが、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)まず、一昨日、自動車、電機などの民間主要組合に対して、使用者側から「春闘の集中回答」が行われ、金属大手(自動車や電機、造船等の51組合)の賃上げの平均は、昨年度を大きく上回る8,051円。ベア相当分が昨年度同期2,028円で、2014年以来最高水準であります。
 UAゼンセン、繊維、流通、サービス等多様な産業から構成される日本最大の産業別労働組合でありますが、その集計では、短時間労働組合員の引上げ率が総額5.90%ですが、正社員組合員の引上げ率、総額4.56%を上回っていると。その他大手企業でも、要求に対する満額回答や、昨年を大幅に上回る回答が目立つなど、賃上げの力強い動きが見られることは、前向きに評価をしております。
 今後、こうした動きを中小企業や小規模事業者にも波及させていく必要があることから、一昨日には、労使代表の皆さんと政労使での意見交換の場を開催いたしました。
 その際にも、中小・小規模事業者の賃金引上げの実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠であるという点について、基本的に合意ができました。
 我が国の雇用の7割近くを占める中小企業・小規模企業の賃金引上げに向けて、引き続き、価格転嫁対策や、生産性向上の支援などに取り組むとともに、継続的に三位一体の労働市場改革を進めていかなければならないと思っています。
 2番目の質問に関係がありますので、もう少し最後の部分を詳しく申し上げるならば、デフレ脱却、経済の好循環の実現のためには、原材料やエネルギーコストだけではなくて、賃上げ原資の確保を含めた適正な価格転嫁の慣行を各サプライチェーンを通じて定着させることにより、適切な価格付けを通じてマークアップ率を高め、「成長と分配の好循環」を実現していくことが重要であると。
 つまり、車の両輪として、生産性を上げることと、こうしたマークアップ率を高めて適切な価格付けを行って、しっかりとした賃金や支払いを行っていくことが「成長と分配の好循環」の2つの車の両輪だということを申し上げてきたわけです。このため今回も、今、JAMの話もありましたけれども、しっかりと適切な価格付けを行っていくということは重要だと考えています。
 そのために政府としてでありますが、中小企業の賃上げに向けて、これまで賃上げ税制や補助金等において、賃上げ企業の優遇や、中小企業の生産性向上のための支援を行ってきました。
 また一方で、エネルギーコストや原材料費のみならず、賃上げ原資の確保も含めた適切な価格転嫁や、下請取引の適正化などに向けて、取引先と共存共栄を目指す「パートナーシップ構築宣言」、公正取引委員会や中小企業庁における大幅な増員による体制強化と、それから例えば価格交渉転嫁の状況について、親事業者約150社の交渉・転嫁の状況を一覧にしてお見せするなど、賃上げの環境整備に取り組んできています。
 さらに、一昨日、総理からもご発言があったとおりで、今後、公正取引委員会の協力の下、労務費の転嫁状況について業界ごとの実態調査を行った上で、その調査の結果を踏まえて労務費の転嫁のあり方について指針を取りまとめること等もいたしております。
 こういったような形で、今後、中小企業の賃上げのための交渉、夏までに決まっていくわけでありますが、しっかりとメッセージを発信しながら、社会全体として、サプライチェーンの中で適正な価格を付けつつ、そして賃金の引き上げを行って好循環につなげていくと。そういう考え方、そういう方向で社会をできる限り動かしていかなければいけないと、そのように思っています。
 もちろん交渉自身は、これは個別の企業と、個別の各組合等の交渉に基づいて、それぞれの事情に応じて決まることではありますが、そうした考え方が成り立つような環境整備を政府としてもしっかりと整えながら、そういう動きが広がっていくように強くメッセージを出していきたいと思っています。
 その上で、意欲ある個人の能力を最大限活かしながら、企業の生産性を向上させ、更に賃上げにつなげていく「構造的賃上げ」を実現すべく、リスキリングによる能力向上支援、職務に応じてスキルが適正に評価されて賃上げに反映される職務給の確立、成長分野への円滑な労働移動を進めるという、三位一体の労働市場改革に官民連携で今後、着実に取り組んでいく。そういうことも含めて、構造的な問題として進めていくということでやっていきたいと考えています。
(問)今の春闘の関連で、追加でお伺いしたいんですが。今、集中回答日の評価に関しては、賃上げに向けた力強い動きを前向きに評価されているというお話でしたけれども、今後は中小企業の交渉も本格化してくると思いますが、全体として、政府がこれまで目指してこられた物価上昇をカバーするような賃上げ、これの実現に関しては可能というふうに見ていらっしゃるかどうか。また具体的に、今後、中小も含めた賃上げ率をどの程度の水準だというふうに見ていらっしゃるか、お伺いできればと思います。
(答)今、個別の賃金水準、引上げ水準そのものについてのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
 今、賃金を念頭に置いた交渉を大手のほうでも、経団連をはじめとして傘下に呼びかけていただいていると、そしてそういう認識が広まってきているという御発言もあったと思いますけれども、そうした、今、物価の状況に応じて、いわゆる給与の引上げを考えていかなければいけないという考え方を、できる限り皆さんにしっかりとメッセージとして送るとともに、先ほど申し上げたような、それぞれの中小企業の賃金引上げが可能になる環境整備を、政府、関係者と連携しながらできる限り進めていくということだと思います。
 それぞれの賃上げそのものは、先ほども申し上げたように、それぞれの企業の支払い能力や、あるいは経営の状況、業態の状況、いろんな状況も踏まえながら、労働組合、あるいは働く皆さんとの間でしっかりと交渉をしていただいて、できる限り高い水準を目指していきたい。そのための条件整備をしっかりしたいと申し上げています。
(問)春闘では一定の大手を中心に回答が来ている状況ですけれども、これを踏まえて、今後サービスなども含めて、物価の水準上昇がどのように見通されるのかという点をお伺いしたいのと、それを踏まえて、個人消費などの動向をどのように見ていらっしゃるか、今後の見通しをお願いいたします。
(答)いまだに、物価の動向については非常にしっかりと見極めていかなければいけない高水準にあります。そして今、そういう意味で、政府としては物価高騰に対する対策の検討も正に行っているところでありまして、国民生活や、中小企業をはじめとした経済の状況に対して、しっかりと対応して、目配りをしていくことが必要だと思っています。
 一方で、輸入物価等につきましては、全世界的にエネルギー価格であるとか引き下がってきているという状況ではあります。日本の国内の消費者物価は、いまだに上昇傾向にありますが、しかし、そうしたことも踏まえて今後、日本の消費者物価、企業間の取引価格、そうしたものを丁寧に見ていく必要があると思います。
(問)物価高騰対策に関して伺います。先日、15日に自民・公明両党のほうから物価高に対する提言が政府のほうに提出されました。エネルギー価格の高騰ですとか、食料品の高騰ですとかいろいろありましたが、これに対する後藤大臣の評価を教えてください。
 また、その中には給付金、3万円と、子供がいる世帯には5万円というものが盛り込まれましたが、こちらに関して、やるのか、やられないとか、お考えを教えてください。
(答)15日に自民党・公明党の政調会長から、総理との間で面会もあり、正式な要望を承っておりますので、5万とか3万とかいう数字も承っていますので、今は検討中ということであります。
(問)もう1点だけ。物価対策は月内にも決定だということだと思うのですが、大体いつ頃、何日ぐらいになりそうかという目算はありますでしょうか。
(答)年度末に向けてというふうに申し上げています。
(問)1点あるんですけれども。米国と欧州と両方で、銀行に対する懸念というのが大きく広がっていると思います。その中で昨日、欧州中央銀行は結構しっかり利上げをしたりしているんですけれども、もしお立場上可能であれば、御所見というか、日本経済に対する期待と不安も含め、お願いいたします。
(答)3月10日金曜日、シリコンバレーバンクの経営破綻について米国が公表し、その後、12日にはシグネチャーバンクの経営破綻についても公表されました。両件とも、米国当局によって預金保護等の迅速な対応が実施されたものと承知しています。
 また16日には、大手投資銀行のクレディ・スイスの株安が報じられまして、その後、本件についても、スイス中央銀行から最大で約7兆円の資金を調達する計画を発表するなど、迅速な対応がなされているものと承知いたしております。そういう意味では、資金繰り危機に対して、しっかりと各国の金融当局が対応していると思っています。
 現時点では、米国の銀行の経営破綻や、クレディ・スイスの資金調達、それ自体が我が国経済に大きな影響を及ぼすということは全く想定していません。引き続き国内外の金融資本市場の動向やそれらが世界経済・日本経済に与える影響等について、しっかりと注視していきたいと考えています。
 それから、御指摘のとおり、16日、ECBは0.5%の利上げを決定いたしております。しかし、スイス中銀のクレディ・スイスへの支援表明によりまして、世界的な銀行危機に陥るのではないかといった一時的な警戒感が和らぎまして、ECBの大幅利上げ決定への懸念が相殺されたと考えています。
(問)先ほどの大臣の御答弁で、もう少しお伺いしたいんですけれども。先ほど、物価高対策に関連して給付金への質問がありましたが、改めてこの給付金に関しましては、現在も公平性を含めて様々な批判もありますし、これまで何度も支給されてきましたけれども、その効果についてはまだ明らかになっていないところあると思います。現時点で、この給付金を支給する公平性、効果を含めてどのようにお考えなのか、大臣のお考えを教えてください。
(答)まさに今、検討中なので、私自身の考えを聞かれても、検討中であるとお答えしておきたいと思います。
 いずれにしても、これは総理から、物価高騰に際してエネルギーと食料品を中心に2点挙げられているわけでありますが、そうした中にあって、やはり生活困窮の方たち、あるいは緊急に対応すべき方たち対する配慮をどうしていくのかということについては、自民党、公明党の政調会長に対しても、必要な対策についての検討を依頼された上で今、両政調会長から御発言があり、御要望が来ているわけでありますから、そのことをしっかりと受け止めて、検討していきたいと考えています。
(問)お考えも検討中ということですけれども、この給付金が効果があるかどうかということは。
(答)今、それなりに説明したつもりです。
(問)物価高の対策として、給付金というのは効果があるというふうに大臣はお考えなのかどうかをお伺いしたいんですけれども。これからやるかどうかはまた別として、これまでもやってこられた給付金の評価というのをお伺いできますでしょうか。
(答)過去の給付金の評価ですか。それを聞かれたんですね。
(問)それも含めてです。
(答)それは、例えば5万円の給付金は2回やっていますが、我々、2回やった給付金というのは必要性があって対応したと思っておりますし、それなりに過去の給付金について効果があったと考えています。
 今検討しているのは、そういう意味で5万円をやるということになれば、もちろん3回目をやるのかとか、それから例えば子供と、生活困窮の方たちに対して、どういう対応をしていくのかとか、そういう検討については今、正にやっているんで、私の考え方は控えさせていただくと申し上げたので。
 過去政府がやってきた2回の5万円の対策や、その他の対策等も含めて、それはその時に必要性があったと思って政府はやったので、もちろんその効果については、効果の検証は必要だとは思いますが、意味のある政策として政府は行ってきたし、それなりの効果は上げているというふうに。そのことはもちろん、過去のことについては申し上げます。
(問)昨日、日韓首脳会談が開かれまして、韓国向けの輸出の厳格な管理が交わされることなども経産省のほうから発表されております。この対応の変化を受けまして、輸出入を通じて日本の経済に対して今後、どのような影響あるとお考えでしょうか。お願いします。
(答)個別の政策の内容については、所管のほうへ責任のある回答を求めていただきたいと思いますが、基本的に申し上げて、それは貿易のいろんな規制が相互の共通理解に基づいて減っていくということは、経済にとっていいことだということはもちろん申し上げたいとは思いますが、個別の政策判断についての御質問は、専門の所管のところに聞いていただければと思います。

(以上)