後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年2月24日

(令和5年2月24日(金) 11:26~12:01  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 まず二つ、私のほうから申し上げます。
 本日開催された物価対策本部において、総合経済対策等の進捗状況を確認いたしました。
 私から、足下で着手段階の事業が6割半ばに達し、年度内にはほぼ全ての事業が着手段階となるなど、補正予算の1,300全事業について取りまとめた最新の進捗状況を報告しました。また、私が担当する住民税非課税世帯への5万円の給付金については、対象の約8割に給付が実施された旨、進捗状況を報告しました。その他、各大臣から、各担当施策の進捗状況について報告がありました。
 岸田総理からの締めくくりの発言については、お聞きいただいたとおりとは思いますけれども、エネルギーについて、大手電力会社からの規制料金の改定申請に対して、あらゆる経営効率化を織り込み、直近の為替や燃料価格水準も勘案するなど、4月という日程ありきではなく、厳格かつ丁寧な審査を行うこと。その上で電力料金の抑制に向けた取組等について、3月中に検討結果をまとめること。
 食料品について、経営環境にある酪農や養鶏など、幅広い農業者の負担軽減を図る飼料価格高騰対策の具体化を進めて、本年4‐6月期以降も見据えた激変緩和対策を講じることや、4月以降の輸入小麦の売渡価格の激変緩和対策を講じること。
 賃上げについて、労働者の7割を占める中小企業に賃上げの流れが波及するよう、原材料やエネルギーコストのみならず、賃上げの原資も含めた適正な価格転嫁の慣行をサプライチェーンで定着させるべく、価格転嫁対策の強化の取組を進めること。また、公共工事設計労務単価5.2%の引上げが現場に着実に届けられるように万全の対応を進めること等について、御発言がありました。
 本日の総理の発言を踏まえまして、エネルギー、食料品の価格高騰対策をさらに進めるとともに、特に中小企業については、「取引価格を上げられないから賃上げができない」というのではなくて、賃上げの原資の確保も含めた適正な価格転嫁の慣行を共存・共栄の視点を持って、サプライチェーン全体に広げていくべく、「パートナーシップ構築宣言」の更なる拡大や、公正取引委員会や下請けGメンの増員による独禁法や下請法の執行強化など、価格転嫁策の強化等を進めてまいりたいと思います。
 また、総理からは、「世界的な物価高騰に引き続き警戒が必要であり、今後の動向は予断を許さない」ことから、「エネルギー・食料品価格等の動向や国民生活・事業者の影響を注視し、与党とも連携し、今後、引き続き機動的に対応していく」旨の御発言がありました。
 これを踏まえ、私としても、関係大臣とともに、日々の物価・経済動向や国民生活・事業者の状況等をしっかり把握して、与党とも連携しつつ、今後の機動的な政策対応に万全を期してまいります。
 2番目でございますが、本日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」が閣議決定されました。
 この法律案は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑みまして、いわゆるフリーランスについて、事業者として業務を受託する個人を「特定受託事業者」と定義し、その取引の適正化のために、特定受託事業者に業務委託をする事業者に対し、給付の内容等を明示や、支払期日を設定し、その期日までに報酬を支払うことなどを義務付けるとともに、その就業環境の整備を図るために、特定受託事業者に業務委託をする事業者に対し、募集情報の的確な表示や育児介護等に対する配慮、ハラスメント行為に係る相談体制の整備の義務等を定めることといたしております。
 今回の法整備により、いわゆるフリーランスが事業者として、受託した業務に安定的に従事することができる環境を整えてまいります。
今後、本国会において、速やかに御審議いただくようにお願いをしたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)特定受託事業者受託取引の適正化法についてお伺いします。今国会で成立を図られるとのことですが、当初は臨時国会で提出予定だったとのことで、また、その後法案の中身を微修正されて、正式名称からフリーランスという名称を取るなどの整理もした上で提出となると思います。この修正の理由や経緯というのをまず1点お聞きしたいです。また、働き方改革の多様化に対応するという法案の趣旨ということですが、今国会の審議を通じて、政権としての働き方改革の方向性をどのように訴えていくかについてもお聞かせください。お願いします。
(答)まず、本法案でフリーランスを特定受託事業者とした理由は何なのかというお話がありましたが、近年、特定の組織に属さず、一人で業務を行うものが一般的に「フリーランス」と呼称されているわけでありますが、フリーランスという働き方は社会の変化に合わせて出現してきているものであり、今後も様々な形態が出現することも想定されますし、概念の外縁が明確でないという御議論等もありました。
 本法案においては、事業者間取引、BtoBの取引において、業務委託を受ける個人について、不当な不利益を受けるといった取引上のトラブルが生じている現状に鑑み、あくまでこのような事業者としての個人を保護対象として、取引適正化等の措置を講ずるものであることから、その趣旨がより一層明確になるように、法律上の保護対象の呼称を「フリーランス」とするのではなくて、より明確に定義をして、「特定受託事業者」とすることといたしております。
 法律の内容等につきましては、こうした定義を修正したりはいたしておりますが、その法案の考え方そのものは変わっているものではないと臨時国会のときから議論を続けてまいりましたけれども認識をいたしております。
 また、今回は事業者間取引、BtoBにおいて、業務委託を受けるフリーランスの方々が不当な不利益を受けるといった取引上のトラブルが生じている実態があることから、フリーランスの方々が安定的に働くことができる環境を整備する必要があるということで、この特定受託事業者に係る取引の適正化に関する法律案の提出をさせていただいております。こうしたフリーランスの方々が不当な不利益を受けることなく安定的に働くことができる環境を整える、そういう意味で働き方の多様化に対応した法案だと思っています。
 また、働き方全般についてのことで少し申し上げるとすれば、今回法案として提出をさせていただいているのは、このフリーランスの働き方についての法案でありますが、今全体として、労働市場の問題、あるいはそれぞれの働く方の能力を向上させ、そしてそれに適切な評価、日本型職務給の導入だとか、あるいは柔軟な労働移動の実現とか、そうした労働市場の新しい取り組み方で、働き方の新しい形態、あるいはより自己実現のできる働き方、そうしたことも一体として考えています。
 その中で、フリーランスのような働き方をしている方についての不当な不利益を受けることのないような働き方の担保をしっかりしていくということで、そうしたものは一つの働き方改革という意味での連携を持っているものだと考えています。
(問)私からは地方創生臨時交付金の関係でお伺いいたします。食料価格の高騰を背景に、小・中学校の給食の値上げを防ぐため、地方創生臨時交付金を活用する自治体が相次いでいます。こうした中で新年度も新たに予算を確保して、交付を延長する検討をしているのか教えていただけますでしょうか。
(答)地方臨時創生交付金は岡田大臣のほうの担当になりますから、岡田大臣に聞いていただきたいと思いますが、その交付金自身は、必要があれば対応すべきものだと当然考えています。
(問)やはり今後も必要となってくる措置ということでしょうか。
(答)物価高騰、また国民の暮らしを守っていくために必要な対応については、政府としてはそれにしっかりと対応していくことだと思います。
 8つの典型的な事例、推奨されるべき局面とか、いろんな形でお示ししておりまして、それぞれの自治体、地方において、的確に国民の生活を守るために重要な対策であると思っています。
(問)学術会議の法改正についてお伺いいたします。2月19日付で国内のノーベル賞、フィールズ賞受賞者8名が連名で法改正につき熟慮を求めますとの声明を出しました。政府に対し、性急な法改正を再考し、日本学術会議との議論の場を重ねることを強く希望しますとの内容ですが、政府の説明や考えが学術会の中にうまく伝わっていない、理解されていないことをどう受け止められますか。声明の受け止めと、法改正のスケジュールや内容について変更をするお考えがあるか伺います。
(答)御指摘の声明は、国際的に評価される素晴らしい業績を上げられた科学者の皆様の見解としてしっかりと拝読させていただいております。
 一方で、学術会議については、諸外国のアカデミーが民間の団体として独立して運営されているのと異なって、日本では主要先進国では唯一国費で賄われる国の機関として独立して職務を行っております。このため、学術会議が国民から理解され、信頼される存在であり続けるためには、活動や運営の透明化、ガバナンス機能の強化を図る必要があると考えています。
 学術会議の見直しについては、学術会議自身においても、昨年3月、4月の「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」に基づいて改革を進めておられるところであると承知していますが、その中で改革の必要性や方向性として、行政、産業界、地方公共団体等との対話機能の強化、中長期的・俯瞰的・分野横断的・科学的助言機能の強化、会員選考における透明性の向上、そうしたことを述べておられるわけであり、改革の必要性や方向性は政府と共有されているものと認識をいたしております。
 その上で、設置形態については、諸外国と同じように民間の法人として独立して活動すべきではないかという強い意見もある中で、政府としては、学術会議の意見も踏まえて、国の機関のまま存置した上で、学術会議に必要な改革を進めていただくこととしたものであります。
 今回法案に盛り込むことを検討している選考諮問委員会の委員は、学術会議会長が任命することといたしております。また、会員等の候補者の推薦は従来どおり学術会議が行うことといたしております。
 今回の見直しにおいて、学術会議法第3条に規定する学術会議の独立性に変更を加えるというつもりは全くありません。今回の見直しは、学術会議における改革の成果を着実に法律に盛り込むことで、今後の安定的な運用を担保しつつ、透明性を高める措置を講ずる趣旨でありまして、そのためには法改正は必要であると考えています。
 いずれにしても、学術会議に対して、一層丁寧に御説明をし、十分に意見を聞きながら、検討を進めるよう心がけていきたいと考えています。
(問)今のに関連してですけれども、再三同じ答弁をされています。国費だからということを繰り返していますけれども、3条にあるように、国費だからといって政府が介入していいということにはなっていませんよね。独立して職務を行うということが書かれています。
 これに関して、再三昨日の8人のノーベル賞等々の受賞者たちが声明で出したように、第三者委員会が科学者でないということが書かれている以上、これは独立性が毀損されてしまうということを多くのノーベル賞受賞した方たちさえもが言っているわけですね。それは毀損するつもりはないと言いながらも、こういった可能性として毀損しうるような委員会を設けていることに、これは学術会議歴代5人の会長も、そして8人のノーベル賞受賞者たちもそろって批判をしているわけです。
 ノーベル受賞者から相次いでこのような声明が出ること自体、日本の科学者団体が政府によって毀損されているというふうに言えると思います。こういう批判がこれだけ強く出ているのに、なぜ毀損することはない、独立性は担保されるということが言い切れるのか。これは非常に恥ずかしい話だと思うんですね。その答弁を何度も繰り返されていますけれども、そんな答弁で国会を乗り切るというおつもりなんでしょうか。これは非常に日本の政府の学術に対する姿勢が問われている問題だと思うんですね。是非大臣自身のお言葉できちんと言ってください。このことに対する反論を。
(答)今申し上げたとおりで、十分に伝わっていないのではないかと思うので、明確に政府の姿勢を御説明しているつもりです。何度も申し上げているのはなかなか伝わっていないのではないかという御指摘もこの会見の場でもあったとおりであって、そのことを丁寧に申し上げています。
 3条の独立性については、全く我々としても尊重するべきものであり、法律改正として何ら考えているところはありません。また、国費で賄われるところばかりをおっしゃるわけですが、要は諸外国の学術会議というのは、民間の団体であるということは、民間の団体として、ずっとアカデミーの代表として、国を代表するアカデミーとして認定されること、そして会をしっかりと透明に運営することも、そして財政的支援を国民から受けることも含めて、これを国民に説明できる形で民間団体としてのアカデミーは運用されていると思います。
 日本の学術会議は、国の一部の機関として、独立的に権限を執行し、公務員の資格で当然のことながら国費で賄われているというものであります。そういう意味で、選考の過程についても、例えばコ・オプテーション方式の従来のようなやり方に対して、少し国民に透明性を高めたような形のそうした選考をしていくことも、国民の理解をしっかりと得続けるためには必要なのではないかと。
 その限りにおいて、今回選考諮問委員というのを、学術に対して大変に理解のある方の中から、これは学術会議の会長が選ぶという形で透明性を高める、それは学術会議御自身が考えて改革案として述べられている、そうした内容にも沿うものだと考えています。
(問)今選考委員を選ぶのは学術会議だと言いましたけれども、選考委員を最終的に諮問委員会が出した人を認めるのが会長で、選ぶのまで学術会議がやるんですか。そこまで権限を持たせるというおつもりなんですか。
(答)選考委員については、学術会議の会長が選考いたします。選びます。
(問)選考諮問委員会の委員を。
(答)そうです。選考諮問委員会の委員については、学術会議の会長が任命をするということです。
(問)それは科学者から選ぶという形態なのか、科学者以外のところから選びなさいということなのか、そちらはどうなんですか。
(答)科学者についても、もちろん対象であると思いますし、科学技術について、意見を聞きたいと思う対象者を入れることも当然含まれていると思います。それは学術会議のほうにおいても、行政、産業界、地方公共団体との対話機能の強化、会員選考における透明性の向上、科学助言機能の強化と、こうしたことを御自身でも改革の必要性、方向性というふうに述べておられるので、そうした方向に沿うような形の人選を、これは学術会議の会長にしていただいたらいいという意味での選考諮問委員会であります。
(問)それは初めて出た話だと思うんですけれども。
(答)国会で何度も答弁はしています。
(問)そうなんですか、すみません。私が理解できていませんでした。
(答)ここでもさっきも言いましたけど。
(問)1回目の答弁でということですね。
(答)何度も国会では答弁していますけれども。何度も言ったほうが伝わるということだとは思います。
(問)そうすると、そうやって学術会議自身が毀損するという独立委員会のメンバーを選んでいるのだからこそ、選ぶということになっているからこそ、政府がそこに介入してくると余地はないんだと、独立性はだから担保されるんだという大臣の御見解なわけですね。
(答)学術会議が自ら出されたところの令和3年4月に「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」の改革の必要性や方向性は政府と共有されているというのは、そういう意味において、会員選考における透明性の向上とか、行政、産業界、地方公共団体等との対話機能の強化とか、そういうことを自らも提言をされているので、そういうことを生かされたような形で選考も従来からのコ・オプテーション方式をそのままするのではなくて、コ・オプテーション方式を前提としつつ、それに透明性を高める、そういうような形の手続を入れることは学術会議の意図ともそう違わないことではないのかと。
 その範囲内で 、国民に透明性を高める、そういう形での対応をすることが、学術会議にとってもよろしいのではないかと、私どもは考えております。
(問)コ・オプテーション方式の問題というのを再三言っていますけれども、これを問題視しているのは、ほぼ政府のほうだけではないかという気がするんですね。世界のアカデミーも、コ・オプテーション方式でやっているところがたくさんあるわけで、学術会議も見直していく段階でコ・オプテーション方式に行き着いていて、梶田会長が指摘されたように、なぜこれが、今やっているやり方のどこに透明性が欠けていて問題なのかということが分かりませんということをおっしゃっています。
 大臣は、そもそもなぜわざわざコ・オプテーション方式という透明性の非常に高いものがあるにも関わらず、透明性を求めるから諮問委員会をつくるんだということなのか。結局諮問委員会を選ぶのが学術会議なら、今あるコ・オプテーション方式だけのものでいいのではないか。わざわざ独立委員会を作らせ、それを尊重しなければならないというところまで書かせ、でもそのメンバーは学術会議が選びますからという、聞いていると一体何のためにこの諮問委員会をつくるのかの意味が全く分かりません。
 だから恐らく国会の審議を聞いていても、ノーベル賞の方たちも、歴代5人の会長たちもなぜこれがいるのかというところに結局戻っちゃうのかなと思うんですね。だからなぜコ・オプテーション方式がそんなに問題だというのか。
(答)日本もコ・オプテーション方式を取っていますし、そしてこれからもコ・オプテーション方式を前提のコ・オプテーション方式の選び方についての透明性のある手続を少し入れたらどうかということを申し上げているわけで。それに意味がないなら逆に、そんなに学問の独立性を侵害する恐れというようなことで、こういう御議論をされていないのではないかというふうに、逆に私のほうも思います。
 やっぱりそれは、それなりに会長が任命された、そういう選考委員によって、どういう視点で例えばどういう分野でどういう人たちを選ぶのかとか、そういうようなことについても、選考基準等についても、やっぱりある程度、学術会議が選考諮問委員会を通じて、きちんと議論しながら、そしてもちろんプロの学者の世界ですから、学者の皆さんが学者として、そして社会に対して責任のあるアカデミアの発言をする方として、適切な方を今の学術会議がコ・オプテーション方式で選ぶこと自体は、我々も当然の前提として考えているわけでありますが、その過程で今言ったような選考基準だとか、そうしたことを自主的にもう少し明らかにしながら、誰を自分の後に推薦していくのかということのルールを明確にするほうが、国民の理解を得やすいのではないかということを申し上げています。
 そして、そのことを入れる意味は、逆にあるからこそ、多くの皆さんの御質問もその一つだと思いますけれども、御意見につながっているのではないかと思うので、意味がないということではないと思います。
(問)1点だけお願いします。物価対策本部で総理から電力抑制に向けた追加の取組を3月中にまとめるようにという御発言がありました。これは何かしらの追加対策とか、電力抑制策とか、そういうものと受け取ってよろしいんでしょうか。それともとりあえず今のところまでやっているところをまとめただけということになるのか、どういったものを想定されているのか教えてください。
(答)総理自身からの話であれば、4月という日程ありきではなくて、直近の為替、燃料価格水準にも勘案して、電力料金の抑制、厳格かつ適切な規制料金の改定申請に対応しろという部分と、その上で電力料金の抑制に向けた取組等について、3月中に検討結果をまとめよというそういう御発言でありました。
 それを実際にどうやってやっていくかは、総理の発言でも御指名のあった西村経済産業大臣でありますが、当然御発言の中には電力料金の抑制に向けた取組と、その前に言われたところの規制料金の改定申請に対する対応と、二つのことが入っていると受け止めるのが総理発言の読み方だと思います。
(問)何となくお話で分かる部分と、やはり問題であるからこそこれだけの声が出ているというところがあって、再三にわたって国費だからとか、それから民間として独立しろという意見があるとか、これは完全に自民党、与党、PTがずっと言ってきたことです。今の大臣の初めの答弁から聞いていると、国費で使っているんだと、独立すればいいのに、民間として独立しろという意見もあるのに、内閣府としてはそうじゃない方向で出すんだから、だからこそ言うことを聞けと言っているかのようにも聞こえます。
 国費で運営しているからといって、政府がやっていることにやはり科学者の立場でものを言う、言わせるということを、これは太平洋戦争の反省を踏まえて認めさせてきたわけですよね。今これだけ政府が軍事企業、武器輸出も含めて解禁をし、軍事研究に邁進しろという、先端技術支援制度なんかを整えている中で、これとは全く立場を異にする科学者団体が、その歴史法学、様々な知見の中から、今のこの政府の方向性を含めて、やはり助言を与えられる、そういった団体が非常に大切だと思います。
 いろいろ学術会議の人に聞きますと、今大学の学長人事なんかにも、経営委員会みたいな第三者機関みたいなのが入ったことで、全く大学の自治というものが毀損されてしまっていると。大学の経営にまさに財界とかの意向が非常にもしくはメディアの幹部なんかも入り込んでいますが、同じような状況になるんじゃないかという懸念が非常に強く出ています。
 選考委員を選ばせるから大丈夫だろうということとか、冒頭の国費なんだと、独立しろという意見もあるのにそうじゃないじゃないかというような言い方そのものが、本当に科学者団体に対する冒涜だと思いますし、それは太平洋戦争の反省を踏まえてつくられた団体であるということを、大臣がどこまで認識されているのか、ここをやはりもう一度お聞かせください。
(答)科学者の皆さんは、これまでも自由に発言をされてきていると思いますし、今後とも科学者の立場から自由に発言をしていただくことが、日本にとって好ましいことだと思っていますし、日本の社会はそうしたことを認めることを目標として、社会づくり、国づくりをしていっていると私は信じています。
 また、学術会議の問題と、大学の自治の話もありました。もちろん大学は大学の自治ということで、学問の府として自主的な運営をしてくということは我々も認めているわけでありますが、しかし大学も教育の一環として、社会の求められる大学の姿、国民の声に耳を傾けながら、大学の自治というものを守っていく必要があるだろうと思います。
 それは、自治ということは、一部の人たちの例えば学者自身の学者としての思いを実現するということだけではなくて、やはり国民の声、社会のニーズに合わせて、やはり大学の自治というものの位置づけもいつも見直されている、問り直されていることだと考えています。
 だからこそ、大学側もそうした大学の改革に自ら自治として取り組んでいただいているのではないかと考えています。
 それから軍事研究については、我々はアカデミアの皆さんに軍事研究をお願いしたいという意図は、これは全くありません。政府、それから私も第5期科学技術計画委員長もやっていましたから、やはりデュアルユースの問題は、日本の科学技術にとって、これは重大な問題だと思っています。
 今、先端科学においては、先端産業との交流みたいなことも含めて、どの技術が将来軍事に転用されるか、されないか、そうしたことを区分したり、分けて論ずることは、技術的にもできないし、今それをやろうということが無理だということは、これは学術会議自身が発表されていることであります。
 そういう意味で、6、7年前に発表されたデュアルユースについての声明についても、学術会議として先端科学技術研究において、将来においてその研究の成果が、軍事研究に転用されるか、されないかということを論じることは技術的にも無理だし、それを論ずることの意味もないということを言っていただいているので、その点については、政府の認識と共有をしているということで、昨年明確にしていただいたので、その点については政府も同じく意識を共有しているということだと思います。
 それが担保されていないと、本当に先端科学技術研究、自然科学の分野においては、科学技術の研究というのは非常に困難なことになるのではないかと心配しておりますので、学術会議と同様に、そうした問題が共有できたことはよかったと思っております。
 いずれにしても、我々学術の分野の皆さんが、科学技術だとか、そうした社会に役立つことということばかりはなくて、本当に人間がどう生きるかとか、そういうことも含めて、人間として役に立つことをしっかりと提案していただくことは学術として非常に重要なことだと考えているので、そうした提言をしっかり学術会議の皆さんには今後とも、あるいはそれぞれのアカデミアに属している学者の先生方にそうした提言をお願いできればと思っています。

(以上)