後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年2月21日

(令和5年2月21日(火) 18:10~18:22  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要を報告いたします。
 今月は、「景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、緩やかに持ち直している。」と、先月の判断を維持いたしております。
 先行きについては、ウィズコロナの下で、景気が持ち直していくことが期待されます。
 ただし、世界的な金融引締め等が続く中で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっており、また、物価上昇や供給制約等による影響にも引き続き十分な注意が必要です。
 加えて私から、閣僚会議で説明した内容のうち、賃金の動向について1点申し上げます。
 賃上げのモメンタムが継続・拡大する中において、中小企業でも過半が2022年度に賃上げを実施していますが、その中でも、賃上げ理由として「物価の上昇」を挙げる企業の割合が増加するなど、物価上昇を意識した賃上げの機運に高まりがみられます。お配りしている5ページ右下の図を参考にしていただくと、10.8から37.3に数字が伸びています。
 物価上昇を超える賃上げの実現に向けては、原材料やエネルギーコストのみならず、賃上げ原資も含めた適切な価格転嫁が重要です。
 さらにサプライチェーン全体として、共存・共栄の視点を持って、こうした価格付けが中小企業にも広がっていくことが、成長と分配の好循環の実現には必要です。中小企業で働いている方は7割を占めますので、こうした動きを広げていくことが必要だと思っています。
 政府としても、構造的な賃上げを伴う経済成長と「物価安定の目標」に向け、しっかりと取り組んでいきたいと思います。
 このほか、会議の詳細については、後ほど事務方から説明をいたします。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)月例経済報告についてお尋ねをします。今回はほとんどの判断、表現が維持されましたが、国内企業物価については、「上昇している」が、「このところ上昇テンポが鈍化している」に変更されました。これにより、景気の先行きにどのような影響があると考えられますか。
 また、消費者物価も含めた物価の最新の見通しを教えてください。よろしくお願いいたします。
(答)今月の月例経済報告においては、御指摘のように国内企業物価の表現を「上昇テンポが鈍化している」と変更いたしました。
 これは原油等の国際商品市況が、円ベースでみてロシアのウクライナ侵攻前の水準へと戻る中で、石油・石炭製品等が前月比で下落し、また電気代等の上昇幅が縮小したことにより、企業物価の上昇率が前月比で横ばいとなったことを踏まえたものでございます。
 物価の先行きについては、これまでの資源価格の下落が国内価格に反映されることが見込まれますが、消費者物価については、輸入物価の波及に時間がかかることから、当面は上昇が続くと見込まれます。
 こうした輸入物価の下落に伴って、海外からのコスト上昇圧力が弱まることは、企業のコスト低下を通じて、収益の改善、また将来的な消費者物価の下落を通じた実質的な購買力の向上につながることから、景気にとってはプラスであると考えられます。
 いずれにしても、政府としては、物価の動向が経済に与える影響について、引き続き注視してまいりたいと思います。
(問)2点お伺いしたいんですが、今日の月例経済報告の関係閣僚会議には、日銀の黒田総裁も出席されたかと思うんですけれども、御本人の人事についてですとか、今後の金融政策などについて、何か御意見はございましたでしょうか。
(答)人事の問題についての発言は、全くありませんでした。それから、日銀の説明は淡々と経済指標についての説明でありまして、金融政策について特別な発言はされませんでした。
(問)あともう1点、本日公明党の山口代表が、総理と面談後に記者団に対して、3月中に予備費を使った物価高対策の必要性というのを総理に求めたというふうな発言がございましたけれども、政府としては、こうした予備費の活用について、どのようなお考え、その規模や内容などについて、どのように活用されていくようなお考えがあるかお伺いできればと思います。
(答)政府としては、昨年の総合経済対策1,300にわたる事業、進捗状況を管理して、今その浸透に全力をあげているところであります。従来からよく経済の状況、物価高騰の国民生活に対する影響等をみながら、必要があれば躊躇なく弾力的な対応を行っていくということについては申し上げているとおりで、政府としてはというお尋ねに対しては、政府としてはそのように考えているということであります。
(問)先ほどの発言の中でもあった中小企業での賃上げにつきまして、いわゆる本当に小さい零細のところなどは、労働組合がそもそもない、春闘の労使の話し合いもそもそもなかなか進まない、できないというところもかなり多く見受けられると思います。そのようなところでも賃上げを進めていくためにはどのような取組が必要だとお考えでしょうか。
(答)中小企業の足下の賃上げを応援するために、中小企業の例えば戦略的な対応、あるいは投資等について、この支援も行っていますし、また転嫁をしっかりとできるような、そういう公正取引委員会や、あるいは中小企業庁のいろいろな調査も発表したりして、サポートをしているところであります。
 いずれにしても、先ほども申し上げましたが、中小企業は7割を占める方が働いておられて、やはりここのところで賃上げが進まないと、物価に負けない賃上げということがしっかりとした効果を上げることはできません。
 そのときに、やはり我々も中小企業団体等と話して、非常に強く思うのは、中小企業の皆さん、原材料とかエネルギーコストについては、これはある程度転嫁を認めてもらえる、価格交渉ができると思っておられる方が零細も含めて多いと思います。ただし、その賃上げ現象も含めて、適切な価格転嫁が、これが認められるかということについては、なかなか理解が進んでいないということだと思います。
 それで、今経団連等でも積極的に進めていただいていますパートナーシップ構築宣言を、経団連参加企業の1,500のうち、500近くが既にしていますし、パートナーシップ構築宣言自身については、18,000社が既に構築宣言を行っていますが、こうしたサプライチェーン全体を通じて、やっぱり共存・共栄でしっかりと売値を支えていく、価格付けを適切に賃上げ現象も含めて進めていくということが非常に大事になると思います。
 そしてそれは、我が国の経済全体の運営にも大きく関わることで、この30年間、コストカットをすることによって、価格が上昇しない、すなわち世界の先進国の中で日本だけがデフレ経済の中で、実質賃金が伸びず、そしてGDPが伸びないということが続いてきたわけですが、そうしたデフレ脱却のできない悪循環を前向きな好循環に変えていくためには、そこは生産性を上げること、イノベーション等をしっかりやるための投資を進めることと、そしてもう一つは適切な価格付けを行うことによって、物件費やエネルギー価格のほかに、賃金原資も含めて、しっかりと織り込むことによって、その賃上げを安定的に物価に負けない賃上げを進めていくと。
 物価に負けない賃上げというのは、基本的に言えば実質賃金を下げないということで、実質賃金を上げていくことになるわけですから、そうした形でプラスの好循環が生める、そういう経済の運営、あるいは社会の基本哲学をしっかりと共有することによって、プラスの方向に経済を向けていくように変えていく必要があると思います。
 そのことについては、今後政府をあげて私からも申し上げていますが、国民の皆さんにしっかりとそのことをお伝えしていく必要があると思いますし、そこは零細企業も含めて、そうしたことの哲学を何とか広げていくようにと思っています。
 もちろん、賃上げは労使の間のことであったり、あるいは企業の経営の状況にもよるわけですが、売値の変更なくして賃上げをお願いしているのではなくて、そこも含めて全体として考えていくべきだということを、中小企業の皆さんにも申し上げているところです。

(以上)