後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年1月13日

(令和5年1月13日(金) 10:54~11:34  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 それでは私のほうから3点申し上げたいと思います。
 第1点は、経済財政諮問会議の特別セッションについてでございます。世界的な経済の減速やウクライナ侵略の継続など、内外の経済情勢や社会環境が大きく変化する中、中長期的な経済財政運営の全体像とリスクへの処方箋等を明らかにすることで、官民連携の下で、持続可能で力強い成長と分配の好循環を拡大していくことの重要性が高まっております。
 こうした中で、昨年12月22日の第16回の経済財政諮問会議において、関係する分野に知見を持った有識者の方々にも参加いただく特別セッションを開催して、第一に中長期を見据えたマクロ経済運営の在り方、第二に成長と分配の好循環の実現に向けた考え方、第三に目指すべき経済社会構造の在り方について、議論を深めるように総理から指示がありました。
 その審議に加わっていただく有識者について、お手元の資料のとおりとすることとしましたので、お知らせをいたします。
 今後、骨太方針の策定に向けまして、有識者の方々を交えた特別セッションを数回程度開催する予定でございます。有識者の方々には、それぞれご経験やご知見を生かしていただきまして、ご議論に参加いただきたいと考えております。
 それから第2点でございますが、来週1月17日火曜日から1月19日木曜日にかけて、私は、スイスに出張し、世界経済フォーラム年次総会、ダボス会議に出席いたします。
 ダボス会議では、日本の経済政策に関するセッションにパネリストとして登壇しまして、マクロ経済政策や新しい資本主義の取組など、日本がどのような経済財政運営を目指しているかを中心にご説明する予定であります。
 また、本年のTPP委員会議長国であるニュージーランドのオコナー貿易・輸出促進担当大臣と、CPTPPに関する会談を行う予定でございます。詳細は事務方にお尋ねをいただきたいと思います。
 それから日本学術会議の所管大臣といたしまして、本日の閣議において、「令和5年度に日本学術会議が共同主催する国際会議について」を口頭了解をいたしました。
 令和5年度は、9件の国際会議について日本学術会議が関係の学術研究団体とともに共同で主催することといたしております。
 日本学術会議の重要な役割の一つは、学術分野における国際的なネットワークの構築でございます。これらの国際会議の開催などを通じまして、学術研究分野における一層の発展に貢献して、国民の皆さまから理解・信頼され続けるような学術会議にしていただきたいと考えています。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)冒頭ありました特別セッションの関係で、2点お伺いをします。1つ目です。諮問会議、現在民間の方が入られて、民間議員としてもいらっしゃると思うんですが、ここをあえて別枠を作る理由というのをお伺いしたいんですが。やはりこれは、来年の世界経済のリスクというものは、これまでにないリスクだということなのか。もしくは国内においてもマクロ環境の変化というのは、かなりこれまでにない規模で変わっていくという認識なのか。そのあたり、危機感とか認識を改めてお願いできますでしょうか。
(答)まず、従来から4人の民間議員で経済財政諮問会議ができているわけでありますが、世界的な経済の減速、ロシアのウクライナ侵略の継続など、内外の経済情勢、社会環境、大きく変化しておりまして、これまでに延長線上にない政策対応も求められている現状でございます。
 そうした中にあって、先ほど申し上げたような中長期を見据えたマクロ経済運営の在り方、成長と分配の好循環の実現に向けた考え方、目指すべき経済社会構造の在り方等につきまして、関係する分野に知見を持った有識者にご議論に加わっていただいて、様々な観点から幅広く議論していく必要があると考えたものであります。経済財政諮問会議の特別セッションということでありますが、経済財政諮問会議の会議としてこれは開かれるものでございます。
(問)もう1点です。同じテーマで、マクロ経済政策という意味では、今年23年は、次期日銀総裁の下での金融政策の在り方をどうするか、あとは歳出拡大の方向性が次々打ち出されていますが、財源確保も含めた財政運営も大きなテーマになると思います。この特別セッションを通じて金融と財政、この2点はどういう議論を期待するのかをお願いできますでしょうか。
(答)財政、検討する内容については今、申し上げたとおりでありますが、もちろん財政と金融のポリシーミックス等、そうしたことについて議論をいただく、そういうスコープに入っていることは当然でございます。
 お尋ねの趣旨が、日銀の出口政策の具体的な対応等について議論するのかということまで含めたご質問であるとすれば、そこまで考えているわけではありませんが、少なくともマクロ経済の基本的な議論をする時に、金融と財政のいわゆるポリシーミックス等については議論をするというスコープの中に入っているということであります。
 またそういう形で、全体としての日本の経済、物価高とか世界の景気動向だとかいうことを考えれば難しい状況にあります。まずはしっかりと経済を立て直して、それに加えて、その後の財政健全化も含めた全体としての経済財政運営にどう取り組んでいくのか、そういうことを全体として話をしていくということになります。
(問)2点お伺いしたいんですけれども。まず1点目なんですが、今のお話に関連して、特別セッションで具体的な金融の出口戦略についてまでは考えていないというお話のご趣旨だったかと思うんですけれども。今回の有識者の方を見ると、非伝統的な金融政策に対する知見の深い方が複数いらっしゃるわけですけれども、こういった直下する金融緩和などについて、どういった議論を期待されていらっしゃるのかお伺いしたい。併せて、アコードの検証・見直しというのも、経済財政諮問会議では年末の会議でも議論が出たかと思いますけれども、こういった点について今後、どういった議論を考えていらっしゃるのかお伺いできればと思います。
(答)金融の問題について言えば、これはもう財政金融、マクロ経済政策としてのご議論は、有識者の皆さま方、それぞれ幅広い知見を持っておられる方を今回、新たに学識者、有識者としてお招きをして議論に参加していただくので、自由に意見を言っていただくことを期待いたしております。
 いずれにしても、やっぱりマクロ経済政策、財政政策も重要でありますし、金融政策も重要でありますし、規制改革、行政改革、そうしたことも重要でありますから、それぞれのいろいろな観点をトータル議論していただきたいと、幅広い方を選考させていただいているつもりであります。マクロ政策に非常に業績を上げられている方、あるいは成長と分配等について知見のある方、幅広くお願いをしているつもりであります。
(問)アコードについても、今回のセッションの候補に入っていらっしゃるのかどうか。
(答)経済財政諮問会議は、元々アコードについて検証を定期的にしていくことになっております。そういう意味で、経済財政諮問会議でアコードについての定期的な検証という形での議論ということはありますが、今あるアコードについての議論をこの新しい特別セッションでどうしていくかということについて議論をするというようなことは、少なくとも今の体制の中で考えているわけではありません。
 ただ、アコード自身は、経済財政諮問会議はその内容について定期的に検証することにはなっているので、もちろんアコードの定期的検証については常時、経済財政諮問会議においてはするということではありますが、アコードを新たに作ることとか、そういうことについてまで含めてのそういうご質問であるとすれば、そういうことを考えているわけではありません。
(問)もう1点お伺いしたいんですけれども、先日、東京都区部のCPIが4%になりまして、今後、全国でも高い伸びが想定されますし、2月以降さらなる食品の値上げなんかも想定されているわけですけれども。これまで政府ではエネルギーの対策を中心に経済対策を打ってこられて、今後、一定程度のCPIの引き下げも予定されているわけですけれども、食品などの生活必需品の値上がりが加速しているような状況について、どのように対応していかれるお考えか、お伺いできればと思います。
(答)東京都区部の12月の消費者物価指数の速報値が出まして、「総合」、「生鮮食品を除く総合」、いわゆるコアがともに前年比プラス4.0%となっております。
 ご指摘のように食料品や光熱費など、日常生活に密着した品目で値上げが続いているという状況にありまして、物価上昇から国民の生活を守る必要があると考えています。
 これまで政府においては、累次にわたって重層的に物価高対策に取り組んできています。総合経済対策と補正予算で盛り込んだ各施策、去年3、4、6、9とやってきたいろんな対策、そういうことを進捗管理を徹底しつつ、しっかりと着実に実行していくっていうことだと思います。具体的には、今ご指摘のあった1月からは電気・ガス料金上昇の負担緩和策について支援を開始しまして、エネルギー価格高騰対策を強化することにいたしております。
 それから、今現在の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することだと考えていまして、当面の賃上げ促進のため、拡充した中堅・中小企業等への賃上げへの支援策を速やかに実行するとともに、独禁法や下請代金法等により厳正な執行を行うなどして、価格転嫁対策も強化していくということで進めてまいります。
 加えて、リスキリングの支援など、「人への投資」の施策パッケージの5年間で1兆円の拡大だとか、労働移動の円滑化に向けた指針の取りまとめなど、「構造的な賃上げ」の実現にも取り組んでいきたいと考えています。
 いずれにしても、物価高を克服して、民需主導の力強い成長経路に乗せていくことで、日本経済の再生、日本経済の拡大の中で、こうした物価高等をしっかりと乗り切っていく必要があると考えています。
(問)確認ですけれども、この有識者メンバー、特別セッションを開きますと総理が昨年発表された時とか、今年年始の総理のあいさつを聞いていますと、やはりスタグフレーションの可能性をも懸念するというご発言、結構はっきりおっしゃっていたと思うのですが、今回のこの特別セッションでのテーマもデフレ脱却、デフレに戻さないことは引き続き重要だけど、昔に比べてスタグフレーションの心配が出てきたので、さらに深い議論が必要と、そういう背景で今回、選ばれたというふうに理解してよろしいでしょうか。間違っていたら申し訳ありません。
(答)先ほど申し上げたように、中長期を見据えたマクロ経済運営の在り方、それから成長と分配の好循環の実現をさらに推進していくための方策、考え方、そして目指すべき経済社会構造の在り方ということを考えているわけで。今、特にスタグフレーションの心配のために今回、セッションを開くことにしたという認識ではありません。
(問)賃上げに関連して伺います。ユニクロなどを経営するファーストリテイリングが最大4割引き上げると発表しました。賃金を大幅に国際基準に近づける狙いがあるということですが、これについての受け止めと、また加えて、他の企業にもこのような動きが広がるとお考えだろうか。それについてお伺いください。
(答)今申し上げたように、目下の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することでありますし、新しい資本主義を、成長と分配の好循環を実現していくためにも賃上げ、これが非常に重要だと考えています。
 こうした中で、個別企業の取り組みそのものについてのコメントは差し控えさせていただきますが、今ご指摘のあった企業も含めて、積極的な賃上げ方針を打ち出す企業について報道が相次いでいると認識していまして、そのことについては前向きに評価させていただきたいと思っています。
 また賃上げ自体は、それぞれの企業の支払い能力を踏まえながら、個別に労使が交渉して合意した上で決定されるべきものでありますが、そうした中で最大限の賃上げを期待していきたいと思います。
 そして政府としても、総合経済対策において、その取り組みを後押しするために事業再構築、生産性向上等と一体的に行う賃金の引き上げへの支援の拡充や、転嫁拒否を行っている事業者に対する独禁法に基づく企業名公表などの価格転嫁対策の強化等も実施することとしておりますし、今後、労働移動の円滑化、リスキリング、これらを背景とした構造的賃金引き上げという、3つの課題の一体的改革をしっかり進めていきたいと思います。
 具体的に、労働移動円滑化のための指針を6月までに取りまとめるとともに、リスキリングをはじめとした、5年間で1兆円の人への投資の支援を着実に実行していきたいと考えています。
(問)昨年、内閣府が今通常国会で打ち出した学術会議法改正法案に関してお聞きします。お聞きしているとは思いますけれど、昨年に行われた学術会議の総会では、非常に会員の方たちからこの改正法案に対しての批判が噴出しておりました。特に聞いていて気になったのが、選考の中に第三者委員会なるものを設置するということで、いわゆる利益相反ではないかとか、この客観性をどう担保するのかとか、そもそも選出方法、コ・オプテーション方式というのは世界のアカデミーが幅広く採用しているやり方で、私が取材している限りは非常に透明性の高い、各分野の方たちの論文のよさと、また社会に与える影響等々を考えた上で、ジェンダー平等の観点なんかも考慮しているという意味で、このコ・オプテーション方式の何が問題なのかという点について、学術会議の総会でも相当総合政策推進室室長に質問が入ったんですけれど、ほとんどここに的確な答えを総合政策推進室室長がされていませんでした。
 大臣として、この改正法案、これだけ批判の声が会員たちおよび会長からも挙がっていることをどう受け止めているかということと、そもそもこの法案を作る前に自民党PTと内閣府、総合政策推進室室長以下の方たちが相当議論は重ねたようですが、全く学術会議側との、アカデミア側との話し合いがないまま、突如ああいう法案を出したこと。この姿勢自体がそもそもかなり問題ではないかと思うのですが、この点について大臣の見解をお聞かせください。
(答)まず第三者委員会の点でありますけれども、学術会議が、国の機関でありながら職務を独立して行うということになっている以上、国民から理解され、信頼される存在であり続ける必要があります。そのためには、活動および運営の透明化にとどまらず、活動を担う会員や連携会員の選考も、やはり透明かつ厳格なプロセスで行われる必要はあると考えています。
 会員以外の有識者からなる第三者委員会を学術会議に設置しまして、選考に関する規則、あるいは選考についての意見を述べることによりまして、プロセスの透明化を図るものとして第三者委員会というものを考えています。
 学術会議においても、会員選考における透明性の向上や、説明責任の強化に取り組んでいるものと承知をしておりまして、選考過程に外部の目を入れることの重要性については、学術会議側においてもご理解をいただけているものとは考えてはいます。
 第三者委員会の委員は、一定の手続きを経て会長が任命するものと考えておりまして、会員等の候補者を最終的に決定するというのも学術会議であることを今、検討している法案で想定しているわけでありますけれども、選考における学術会議の独立性を妨げるものではなくて、むしろ学術会議が国民から理解され、信頼されるための一つの手続きとして重要なツールになるのではないかと考えています。
 「日本学術会議の在り方についての方針」を12月6日に公表し、また21日に「具体化検討案」というのを学術会議の総会で説明をさせていただいております。いろいろなご意見が出ていることについても十分に承知をしておりますし、今後とも学術会議のことは十分に意見を交わしていきたいと考えています。
 党のほうでは、元々学術会議は世界標準で見れば、国そのものではなくて、独立した民間の団体として独立した活動を行っている学術会議がほとんどなわけであります。そういう中にあって、党の議論は、取りまとめがされたのは、世界と同じように、独立した民間の独立した組織として独立した活動をするべきではないのかということではございましたが、従来からの学術会議からのご意見もあり、政府としては、まずは国の中にあって、しっかりと人選だとか、あるいは国民から信頼されるような、そうした対応がとれるように、まずは法的な根拠にしっかり基づいて信頼される、そういうものにしていくべきだということで関連法案の通常国会への提出、これは今年の秋には任期を迎えるので、新しい委員の選考については、やはり新しいルールで、しっかりと国民に信頼されるような透明な手続きにおいてやっていったほうがいいのではないかと。あくまで第三者委員会もコ・オプテーション方式を変えるという、あるいは否定するというものではなくて、それを補うものであると考えているところであります。
(問)外部の目を入れることに理解を示してくれるという点なんですけれど、これは昨年末、会長が抗議声明を出した時にもあるように、やはりこのコ・オプテーションの問題を指摘せずに、プラスそこに今、補う形で第三者委員会を作るってことですけれども。この第三者委員会って、やっぱりコ・オプテーション方式自体が、各分野の相当専門性の高い人たちに論文を含めて業績の評価をしてもらい、そこからプラスアルファ、ジェンダーの問題とか、社会的にどういう活動をされているかとか総合的に判断していくということなので、ここの何が一体問題でこの第三者委員会を作ると言い出したのかが説明できていない。これは今、大臣がいろいろおっしゃいましたけれど、最終的にこの第三者委員会の承認を会長がやるからいいんだっていうことではなくて、非常に専門分野でどういう業績を上げて、かつ社会的にどういうインパクトを与えているかということを判断するっていう、この第三者委員会ってあっさり言いますけれど、非常にどう判断するのかって難しいですし。
 そもそも、お分かりのように、第3条にあるように、独立して職務を行うという意味では、政府が設置するような有識者会合とか審議会のメンバーとは、また全然事を異にする。研究者として、いわゆる国益のためではなくて世界平和のためにとか、普遍的な真理は何かという立場から政府にもいろんな助言ができる、もしくは時々においては政府の方針にも異を唱えられるって、そういう立ち位置でこの会議法3条があったり、7条があったりするんですが。こういった3条がありながらも、これをつぶしてしまうような改正ではないかっていう声が挙がっているんです。
 補うものであるから第三者を作ればいいって簡単に言いますけれど、やはり利益の相反性とか、第三者委員会を誰がじゃあ推薦するのかとか、そこに内閣府の事務局が関わってくるとなると、これはやはり独立して行うとか、形式だけの任命だったという、これまでの大臣や閣僚の歴代の政権が踏襲してきた答弁から全く事を異にするような学術会議に、やはり作り替えられようとしてしまうんじゃないかって。ここは、もう本当にたくさんの声が出て会長声明が出たと思うんですけれど。
 すみません、これ重なって一方通行になってしまうとよくないんですが、第三者委員会っていうのは非常に問題が今後、出てしまう可能性が高いと思うんですが、これは会長が任命するからそこは問題ないんだという一言で済ませられる問題なのか、そこはどうお考えですか。
 それから1点、同じ目的を共有するみたいな文言もあって。ここについても、今、政府はこれだけ安全保障とか軍事研究になるべくシフトしてほしいという、防衛省や先進技術推進制度みたいなのが出た中で、それに対して若干、軍事研究と一体化していく研究者ということに、やや慎重な姿勢を示している学術会議に対して、こういったものを政府がやろうとしているんだから同じ方向を向いてくれと。こういう方向に変えるためにこの改正法案が出ているんじゃないかと。私もそういう意図しかないのかなというふうに感じるんですが、この点についてもご回答いただけますか。
(答)まずコ・オプテーション方式を否定しているわけでもありませんし、基本的に言えばコ・オプテーション方式が続くということだと思います。ただ、その時に、今ちゃんとやっているかどうかということですが、第三者委員会でどういうような手続きや、どういうようなチェックをしていくのかという、そういうルールの整理や、それが正しく行われているかどうかということをチェックしていくということは、それはコ・オプテーション方式として独自に選んでいくということと、逆に言うと頭から第三者委員会を入れるとコ・オプテーション方式が否定されているというおっしゃり方に対しては、必ずしもそれは否定するものではなくて、それをきちんとやる手続きを透明化して国民に示すことだと考えています。学術会議の独立性について、何ら変更を加えようと考えているわけでもありませんし。
 それから、例えば共有できるかできないかという議論もありましたが、問題意識等の共有というのは、別に政府と結論の共有を求めているわけでは決してありません。政府等への科学的な助言を公務として、日本の学術会議は、そういう意味では世界の学術会議とは違って国の一機関でありますから、科学的助言を公務として行うことを役割とするということであるとすれば、受け手の問題意識、時間軸や現実に存在する様々な制約等も十分踏まえながら審議を行っていただく局面も当然出てくるわけでありまして、そういったことについての共有を求めていくということであります。
 学術会議も、「より良い役割発揮に向けて」という令和3年4月に取りまとめた文章におかれても、「政府ならびに広く社会や人々との対話を通じて課題選定及び内容の妥当性を高めるための試みを強化するなどのガバナンスの強化に取り組む」、「提言等に一層実効性を持たせるために、実際に政策立案・実施に当たる担当者との協議が欠かせない」というふうに述べておられるので、そういう意味で、対話機能の強化に向けて学術会議の取り組みを後押ししていきたいと考えています。
 それから、今回の法律改正が、今のご指摘でいえば軍事研究にシフトしていくことを後押しするような改正に見えるというようなご発言があったように思うのですが、それにつきましては全くそういう意図はないということは、はっきり申し上げたいと思います。
 従来から学術会議の声明等を巡っていろんな議論が行われているのは、軍事研究を後押しするか、後押ししないかっていうことではなくて、正確に言えばデュアルユースの問題をどう考えるかということは大きな検討課題だったとは思います。それは、要は軍事転用されるような技術をアカデミア、大学等が研究を行うべきでないというような声明については、今は先端産業においては、いわゆる民生用の技術と、それから将来軍事に転用されるかもしれない技術、それをしっかりと区分けすることはできないと。
 そういうことで、このことは会長のほうからも政府に対する回答として、デュアルユース、厳格な意味で軍事転用されるか、されないかっていう可能性を論ずることは、今の先端科学においては議論していくこと自体が困難であると、その区分けをすることはできないというようなお話も伺っているわけであります。ですから申し上げたいのは、軍事研究にシフトしていくために第三者委員会で学術会議の独自性に手を入れるための改正ではないのかという、そういう立論でございましたけれども、そういう趣旨では全くないということであります。
(問)すみません、しつこくて恐縮なんですけれども、独立性に手を入れるつもりはないということですけれども、これだけアカデミアの団体が今回の法案に、事前に何の打診や対話もないまま、あのような法案が出てきたことっていうことに、学術会議や多くの研究者が政府のやろうとしている方向性に非常に危機感を持っている。
 私が心配なのは、本来は、必ずしも同じ目的が一致しなくても双方がそれぞれの立場を尊重し、理解しあえるという関係性が一番望ましいと思うんですが、このような法案を強行に、もし今国会で通していくとなると、多くの研究者対の政府に対する信頼がやはり揺らいでしまう。やはり政権に対する非常に不信感というのが今、強まっていると感じるんです。
 何度も総合政策推進室室長が総会で言っていたのが、いろいろご説明しても自民党の方々がとか、自民党PTの方々がと、いろいろなことを言われて、やはり学術会議がこういう状況になったのは政府、内閣府のガバナンスが利いてないからだというようなことも若干おっしゃっていて。そこはある種、総合政策推進室室長からすると板挟みになっているのかなと。自民党PT側の主張、要は独立させてしまえばいいのではないかということには、内閣府としてはあらがったのかなとは思うんですけれど、基本的にはPTの方たちのお話を聞いていると、なぜ政府は、デュアルユースっておっしゃいましたけど、先端技術研究推進制度というのをこれから防衛省の補助金制度だけでなく、いわゆる文科省、経産省も年間5,000億円ぐらいを出して経済安保に絡むような技術、これについては積極的にお金を出すので、研究者に手を挙げてくださいとかをやってくわけですよね。なので、デュアルだから民生と軍事の区分けがしづらくなっているっていうのはそのとおりですけれど、現在この先端技術支援なんかでやろうとしていることというのは、項目を見れば分かるように安全保障研究だったり、軍事と直結するような研究の中身が非常に多いんです。
 そうすると、そこで研究した成果というのは、内閣府の中に法律ができましたけれど、1年ぐらい審議して、やはり安保に関するものは特許は非公開になることもあり得るというふうになっています。となると、デュアルだからいいと簡単に割り切れるものではなくて、研究者からすると、その研究の透明性とか公開性という意味では、やはり安保研究になった場合には非公開になるものもたくさん出てくるってところもやはり懸念されている一つではあるんです。だから、必ずしもデュアルだから理解しろということではなくて、やはり安保とか、軍事研究につながっていくようなものに対しては、駄目だということではないけど、各大学で慎重に、各コンプラ委員会等々の中で審議しましょうという声明を出されました。
 こういう流れが今、政府の中ではもうちょっと安保研究等々に力を置いていきたいっていう方向がもう打ち出されている中で、やはり学術会議が目的を一にするとか、ああいう文脈があったり、会員選考の中でこういうやり方があったり、それを打ち出すに際しても、初めの質問でそうですけど、打ち出すにしても全くアカデミアに対する、こういう方向で今、改正法案を考えているけどどうかという議論が全くなく、逆に総合政策推進室室長からすると、自民党PTの先生たちがとかという話からすると、内閣府と自民党PTがよほどいろいろな議論をしたんだなっていうことは想像できるんですけど、今回、これだけアカデミアから反発が出てきている法案が出る前に、アカデミア側のほうとしっかり腹を据えて話し合うっていう、こういうのが結局全くなかった。
 こんな状況で今、この法案が通っても、結局非常に、日本のある種の知的財産として高めなきゃいけない彼らの信頼とか、政府に対する不信感を強めてしまうっていうことは、結果としては日本の政府にとってもマイナスになってしまうんじゃないかなと思えるんです。その点をご理解していただいているっていうんですけど、ご理解していただいていないから、あれだけの会長の批判の声明が出たんだと思うんです。会議も本当に怒りの声が噴出されていました。
 その点も踏まえて、いろいろご説明されているんですけど、やはり、であればもっとアカデミアに対して、こんな法案を出す前から、もしくは今回の法案を見直すという意味でも、もっと説明をする、そして議論を重ねるってことが一番大切なのではないかなと思うんですが。
(答)いずれにしても、学術会議のほうとしっかりと話をするつもりではおります。そういう意味で、しっかりと議論していきたいと思いますけれども。
 自民党のPTのほうは、正直言うと世界の標準である独立した学術団体とすべきだと。そして本当の真の独立した団体として、もちろん補助金等は考えられますけれど、独立した財政をもって独立した提言を行う団体とすべきなのではないかと。国という形で国の財政を使って、そして国そのものとして対応するんであれば、それなりに国民の皆さんからしっかりと信頼されるような、そうしたいろんな選考だとか、あるいは対応等についてもしっかり透明性を作って、理解が得られるようにしていく必要があるということであります。
 党とだけ相談してきたというわけでは決してなくて、時間が短いということについてのご批判は、そのことについてはしっかりと受け止めさせていただきますが、少なくとも今回、選考に当たっての透明性に関わる部分について改正を考えるというご提案をさせていただいておりまして、この学術会議の独立性だとか、そして自由な活動だとか、そういったことについて、一切これまでと違うことが法案の中に書かれているわけでも、我々として活動に対して政府が口を出すということも全く想定してないと。そのことだけは申し上げておきたいと思います。

(以上)