後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和5年1月6日

(令和5年1月6日(金) 10:55~11:15  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 (冒頭発言なし)

2.質疑応答

(問)幹事社から2点お願いいたします。
 まず1点目、本年も物価高対策や構造的賃上げの実現、国内の投資促進、新型コロナ対策など、様々な課題に取り組まれていくところだと思います。こうした様々な課題に取り組んでいく上で、今年の抱負をまずお聞かせ願いたいと思います。
 それから2点目ですけれども、賃上げというところで、ご回答のかぶる部分もあるかもしれないんですけれども、今日発表されました毎月勤労統計で、一人当たり実質賃金が前年同月比3.8%減少となりました。物価上昇に賃金の上昇が追い付いていない状況ですが、この結果について大臣の受け止めと、それから実質賃金をプラス転換させていくために政府としてどのように取り組んでいかれるか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。お願いいたします。
(答)まず2023年は、世界的な物価高の下で世界経済の減速が懸念されるものの、昨年策定した総合経済対策や補正予算、また新しい資本主義の実現に向けた施策など、早期かつ効果的に実行に移して、我が国経済を民需主導の力強い成長軌道に回復させていけるように、万全の経済財政運営を行っていきたいと考えています。
 具体的には、これまで累次にわたりまして重層的に講じてきました物価高対策に加えまして、電気・ガス料金上昇の負担緩和策をはじめとする、総合経済対策に盛り込まれた各施策の進捗管理をしっかりと徹底しつつ、迅速かつ着実にこれを実行してまいりたいと思います。その効果を国民の皆さんに実感していただけるように、事業者の皆さまの、また国民の皆さんのお手元に速やかに届くようにしていきたいと思っています。日々変化する経済状況を踏まえまして、引き続き、機動的なおかつ弾力的に万全の対応を今後とも図っていきたいと考えています。
 また同時に、我々が直面する様々な社会課題を成長のエンジンへと転換させる。その成長の果実を分配して、さらなる成長へとつなげる、「成長と分配の好循環」を実現する「新しい資本主義」の実現に向けた取り組みを加速していきたいと思っています。そのため、「人への投資」パッケージを5年間で1兆円に拡充するとともに、労働移動の円滑化に向けた指針を本年6月までにまとめて、我が国経済再生の鍵を握る構造的な賃上げを進めていきたいと考えています。
 また今春の春闘をはじめ、物価上昇に負けない継続的な「賃上げ」を実現することは、目下の物価高に対する最大の処方箋でもあります。そのためにイノベーションや人への投資を進めて、生産性や付加価値を向上させるとともに、適切な価格付けを通じて各企業や業界全体のマークアップ率を高めて、それによって物価上昇に負けない賃上げや下請け企業等がコスト上昇の転嫁をできるよう、適切な支払いをしっかり確保していく。このような連続的な拡大が続く、成長と分配の好循環を築き上げていきたいと考えています。
 投資については、総合経済対策における7兆円規模の国内投資の促進策に加え、昨年末には「スタートアップ育成5か年計画」や、「資産所得倍増プラン」を取りまとめたところでありまして、こうした施策を着実に進めていきたいと考えています。
 これらの施策を早期に実行に移して、統合的、一体的に運用することによって足元の物価高を克服し、民需主導の力強い成長経路に乗せていくことで、日本経済の再生につなげていきたいと考えています。
 それから物価に負けない、インフレ率を超える賃上げということでございますが、目下の物価高に対する最大の処方箋は継続的な「賃上げ」を実現することであり、この春の賃金交渉に向けて、先般総理からも発言があったように、是非インフレ率を超える賃上げの実現を労使の皆さんにお願いをしていきたいと考えております。令和4年度の消費者物価の実績、賃金交渉時の実際の物価上昇率等を踏まえながら今後、交渉が進んでいくわけでありますが、しっかりとご議論をいただきたいと思っています。
 政府としても、総合経済対策において、その取り組みを後押しするために事業再構築や生産性向上等、一体的に行う賃金の引き上げの支援の拡充や、公正取引委員会の体制強化、転嫁拒否行為等をしっかりと、事業者に対する独禁法に基づく氏名公表のようなもの、企業名公表などで価格転嫁対策の強化も進めていくことにしています。
 また先ほどもちょっと申し上げましたが、労働移動の円滑化やリスキリング、これらを背景とした構造的な引き上げという3つの課題を一体的に進めていくということで、こうした賃上げをしっかりと進めるように後押しをしていきたいと考えています。以上です。
(問)毎月勤労統計の今回の結果の受け止めのところだけ。
(答)足元でありますが、消費者物価指数の実績が年末にかけて大きく消費者物価が上がっている状況の中でそういう数字になっていると受け止めていますが、今後とも春闘に向けて大きな賃金引き上げ、物価に負けない形で、インフレ率を超えるという目標に向けてしっかりと進めていけるように、政府としても労使双方にお願いもし、また政策における後押しもしていきたいと考えています。
(問)今のお話にありました、インフレ率を超える賃金の上昇のお話ですけれども、これは岸田総理が一昨日の年頭会見でおっしゃられて、これまでは結構「物価上昇をカバーする賃上げ」というふうな言い方をされていたので、より具体的だったのかなと思うんですけれども。そこの、踏み込んだかなというところに対する後藤大臣のお考えと、あと、そもそもインフル率を超える賃上げのインフレ率は何を指すのかというところで。例えば足元、最新の11月の消費者物価指数の3.7%を指すのか、例えば年間の、22年か23年の1年間のインフレ率を指すのか。どういったものを具体的に指すのか教えていただければと思います。
(答)賃上げの交渉、あるいは賃上げ自体は、これは一般に各企業の状況にも応じて個別に労使交渉が行われるわけでありまして、そうした労使の合意に基づいて行われるということでもありますから、政府のほうから具体的な数字を申し上げることは差し控えるべきだとも思います。令和4年度の消費者物価の実績や、賃金交渉時の実際の物価上昇率等を踏まえながら、毎年しっかりご議論をいただいた上で決めているということでありますので、そうしたことの中で。
 しかし、現在の経済の状況を考えれば、継続的な賃上げをしていくということは、今後の日本経済にとって欠くべからざる要素でありますので、そういうことについて労使双方にご理解もいただいた上で、是非インフレ率を超える賃上げの実現という、そういう考え方に従って今後とも進めるようにお願いをしているということであります。
(問)少し話変わりまして、自民党の甘利前幹事長が少子化対策を進めるための財源の一つとして、将来的に消費税の増税や引き上げを検討に入れるとの発言がありました。これについて、全世代型社会保障とも関わってくる話かなというふうに思うんですけれども、どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
(答)今後とも、どういう子ども、少子化対策をしていくのかというのは、基本的には子ども家庭庁のほうでしっかりと基本施策について議論することになっています。
 そうした議論を踏まえたところで、春以降に全世代型社会保障の議論の枠の中で議論を進めて、骨太までには少子化、子ども対策の倍増についての道筋を付けていくということになっています。その議論の過程に当たっては、政策の具体的な内容と、その安定的な財源ということを併せて議論をしていくということで道筋を議論していくということになっていますので、今後、そうした観点でしっかりと議論していきたいと思います。
 それぞれ、財源、あるいは安定的な財政基盤について今、お考えもあろうかと思うので、個別のご意見について私からコメントはしないでおきたいと思いますが、いずれにしても、そうしたことで骨太に向けて、それぞれの部局、また議論をしっかりと積み上げながら、責任のある道筋を付けていきたいと思っています。
(問)金利の上昇に関してお伺いできればと思います。昨日、10年物の国債の表面金利が0.2%から0.5%に上がりました。世界的にも金利上昇の流れというのもありますし、最近ではメガバンクも住宅ローンの金利を引き上げるといった動きもございますけれども、こうした金利上昇の動きの景気への影響ですとか、あと国債ですから財政負担への影響、このあたりについてどのようにお考えかお伺いできればと思います。
(答)イールドカーブ・コントロール自身について言えば、従来の金融政策の枠組みを変えるわけではないということを日銀は言っているわけでありまして。ただ、そのイールドカーブを滑らかにすることや、あるいは安定的に金融緩和が続くような、そういう仕組みをしっかりと整えていくということで金融政策をやっているということであります。
 運用の変動幅については、ご承知のとおり0.5に上げるということになりましたから、指し値で買っている国債の金利がその時、その時、どういうふうに動くかという問題はもちろんあります。イールドカーブをきちんと整えないと、基本的には国債金利が10年物と8年物で逆転していたり、10年の新発債と20年の新発債の残存10年が、金利が0.25と0.4で開いているみたいな話や、先物の裁定が行われないということは、金融の場面においては企業の資金調達にはマイナスな影響も出るということになりますから。そういう意味で、安定的なイールドカーブに基づく金融市場をきちんと日銀が制御していってもらいたいと、そういうふうには思っています。
 そういう意味では、世界的に見れば今、金利が引き上げられていまして、諸外国はインフレや加熱を心配する状況も出ているわけであります。そういった意味で、金利の引き上げ自身が国際的な経済に対してマイナスの影響の危惧はみんなが持っているところであります。
 日本について言えば、やはりまだこうした経済の状況でありますから、金融緩和の基本的な姿勢というものは変えることなく、しっかりと対応していく。金融政策のみにかかわらず、財政政策等においても、このいろんな構造的な政策においても、日本の実体経済がよくなることをしっかりと取り組む。そういう中で、やっぱり金利の上昇を日本において抑えていくという必要は、一般的にはあるだろうと思います。財政金融、それぞれが最大限の機能を果たすことによって日本経済の実体をよくする、そのことにまず努めていくべきだと思っています。
(問)総理は年頭の会見で、新しい資本主義は賃上げと投資だとおっしゃった。成長と分配の好循環の中核というのは賃上げだとおっしゃった。逆に言うと、賃上げが実現しなかったら新しい資本主義というのは失敗だと、それぐらいの意気込みでおっしゃったと思うんですが。大臣は元厚労大臣ですけど、結局中小企業を含めて賃上げができるような状況をつくる、あるいは最賃を上げるようなこと、お金、要するに賃金を上げていけるのかということについて、まさに全体の総合調整の大臣としまして、特に最賃のことなど含めまして、その部分のかさ上げについて、どういうふうにお考えになっているのか伺いたいです。
(答)賃金の引き上げの一番の根本になるものはイノベーションであり、生産性の向上そのものだと思います。ですから、日本経済、構造的にはしばらく沈滞してきたわけでありますが、投資を進めてイノベーションを進めること、生産性を高めていくこと、これがまず基本だと思っています。
 それから先ほども少し申し上げたんですが、これは私、従来から、厚労大臣の時からも申し上げていることでありますが、物価の問題もありますが、やはり生産性の向上や、あるいはイノベーション、成長の果実みたいなものを分配していくことが基本ですけれども、それに加えて、やはり賃金を決める時に、物価に負けない賃金引き上げを基本として考えるような経済構造に対する考え方、あるいは合理化やいろいろな工夫によってのみ込むことのできないコストアップについては、やはり売値に乗せていくという、マークアップ率をしっかりと取ることも必要だと思っています。
 過去10年、20年、振り返ってみた時に、世界経済の中で日本の経済だけがそれほど悪かったという実態は本当はないと思います。ですけれども、日本がデフレであり、世界各国先進国はインフレであって、日本は実質賃金が伸びないけれども、諸外国においては実質賃金が伸びていると。こういうことは、拡大再生産的な経済運営をするのか、コストカッター的な意味で縮小均衡になっていくのか。そこは経済の構造という面から言うと、私は大きな違いがあると思っていまして。あくまで生産性の向上やイノベーション、こうしたものが根っこにあるわけでありますが、こういう構造的なことに加えて、やはりコストカッターをするんではなくて、適正なマークアップ率を確保することで実質賃金を確保し、支払いを確保していく。そういうことによって、自ら内需を打っていかないっていう、そういう経済構造をしっかりつくっていくことも大切だと思っています。

(以上)