後藤内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年11月24日

(令和4年11月24日(木) 19:49~20:09  於:中央合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 本日、スタートアップ育成分科会におきまして、スタートアップ育成5か年計画を取りまとめました。今後、次回の新しい資本主義実現会議で決定することといたします。
 主な内容は以下のとおりでございまして、スタートアップ5か年計画を着実に実行することによりまして、日本をアジア最大のスタートアップハブとすること。そのための目標として、まずスタートアップへの投資額を現在の8,000億円規模から、5年後の2027年度には10兆円規模と10倍増にする。さらに将来においてユニコーンを100社創出し、スタートアップを10万社創出することを目指す。このような目標を立てております。
 そして、目標達成に向けまして3本柱の取り組みを一体として推進をすることといたしております。第1にスタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築。起業経験者が助言役となるメンターによる支援事業の育成規模を、年間70人から5年後に500人に拡大をする。併せて、海外に起業家の拠点となる「出島」を創出して、5年間で1,000人規模の若手人材を派遣していく。また、海外トップ大学の誘致によるグローバルスタートアップキャンパス構想を実現するなどを挙げております。
 第2にスタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化でございます。創業者などが個人として保有する株式を売却して、スタートアップに再投資する場合の優遇税制を整備すること。また、ストックオプション税制の権利行使期間の延長を行うことなどを議論しております。
 第3に既存の大企業からスタートアップへの投資を図るオープンイノベーションの推進。特にスタートアップの成長に資するものについて、スタートアップの既存発行株式の取得に対しても税制措置を講じる。そうしたようなことを内容といたしております。まずこれが第1点でございます。
 それから第2点は月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要のご報告でございます。今月は「景気は、緩やかに持ち直している。」と、先月の判断を維持しております。これは個人消費が外出機会の増加等を背景にサービス消費の改善が続くなど、緩やかに持ち直していること。設備投資が好調な企業収益や、積極的な投資意欲等を背景に持ち直していることなどを踏まえたものでございます。
 先行きにつきましては、ウィズコロナの下で、景気が持ち直していくことが期待されております。
 ただし、世界的な金融引締め等が続く中で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっております。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分留意する必要があると考えております。
 この他、会議の詳細については後ほど事務方からご説明をいたしますので、私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)2点お願いします。まず1点目ですが月例経済報告についてお伺いします。基調判断は、「景気は、緩やかに持ち直している。」ということで判断維持となりましたが、一方で足下では物価上昇ですとか世界経済の後退リスクもあります。これらを踏まえて、国内経済の下振れリスクと今後の対応策について、大臣のお考えをお願いします。
(答)物価上昇の下で実質賃金の低下が続いていて、海外景気の下振れも懸念されるというご質問でございましたけれども、今回の月例経済報告においてお示ししているとおり、我が国経済の先行きは、ウィズコロナの下で景気が持ち直していくということが期待されるものの、ご指摘のように、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっていること。物価が上昇する中で、実質所得の減少による家計への影響や、コスト上昇による企業への影響等に十分注意する必要があると考えています。
 物価高への対応としては、これまで講じてきた累次の対策に加えて、今回の対策においても前例のない負担緩和対策を講じる。また、物価高に対する最大の処方箋は、これまでも申し上げておるとおり、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することであると考えておりまして、賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充するとともに、価格転嫁対策等も強化するということで取り組むことといたしております。
 また、インバウンド消費の速やかな回復、あるいは各種イベント、旅行支援による需要喚起等を講じるとともに、中小企業の輸出拡大や農林水産物の輸出拡大など、日本経済の稼ぐ力を強化すること、そうしたことも取り組んでいきたいと考えております。
 さらに、総合経済対策及び補正予算案において、さらなる物価高騰に引き続き万全を期していくために、4.7兆円の予備費を盛り込んだところでもありまして、こうした予備費も活用して、必要に応じて、引き続き機動的、弾力的な万全の対応を図っていきたいと考えております。
(問)もう1点ですが、スタートアップ育成5カ年計画についてお伺いします。今回3本柱の取り組みを軸に様々な項目が盛り込まれていますが、改めて大臣として注力していきたい分野ですとか、計画についてのお考えをお願いします。
(答)スタートアップというのは、課題解決をしながら、新しい資本主義、より一段高い成長軌道をつくっていくということで、まさに新しい資本主義を象徴する非常に重要な政策だと考えています。
 目標達成に向けて目標は提示しているわけでありまして、10兆円規模と10倍増に5年後にはする。ユニコーンを将来において100社創出して、スタートアップを10万社創出していく。こうした目標を具体的に掲げているわけですが、その目標達成に向けて、第1にスタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築。先ほど申し上げた、年間70人からメンターによる支援事業を5年後に500人に拡大することや、起業家育成の拠点となる海外の「出島」を創出して、5年間で1,000人規模の若手人材を派遣していくこと、グローバルスタートアップキャンパス構想、海外トップ大学の日本に対する誘致、そうしたことを実現して、人材ネットワークを構築していくということが第1点です。
 第2にスタートアップのための資金供給を強化、出口戦略を多様化していくということが重要だと考えておりまして、具体的な提案としては、創業者などの個人が保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合には、税制優遇措置を整備することや、ストックオプション税制の権利行使期間の延長を行うことなど、重要な提言内容だと考えています。
 また、既存の大企業からスタートアップへの投資を図るオープンイノベーションの推進が重要でありまして、特にスタートアップの成長に資するものについて、スタートアップの既存発行株式の取得についてもこうした措置を適用できるように拡大をしていくと。
 いろんなことが書かれていますので、今日も分科会で議論になりましたが、こうしたいろいろな提言を一つずつ確実に実行していくとともに、それを大いに発信することによって大きな新しい取り組みをつくっていく、そのことが大事だと考えています。
(問)3点お願いします。1点目なんですけども、本日の月例経済報告での関係閣僚会議資料の中にも、11月の食料の物価、日次物価が取り上げられていまして、急速に上昇しているような状況があろうかと思います。足下の物価上昇が続くような状況について、今後の見通しと対策、特に食料などについての対策をどのようにお考えか、お伺いいたします。
(答)我が国の消費者物価の総合ですが、光熱費や食料品を中心として、10月に前年同月比3.7%とプラスとなっています。上昇が続いております。また、より直近の動向を、スーパー等のPOSデータに基づく日次ベースの指標でみてまいりますと、食料品等の物価は11月になって伸びが高まっているということが分かります。
 これはメーカー各社で10月に実施された価格改定を、小売店等において11月の月初に店頭価格に反映する動きが大きかったこと、そうしたことが背景にあると考えられます。このため、11月の消費者物価の上昇率は10月よりも高まる可能性があるものと考えております。
 物価高に対し、どういう対応を取っていくのかということでありますが、これまで政府として燃料油価格の激変緩和措置や、1人当たり、低所得者に対する5万円のプッシュ型の給付だとか、家計支援等に利用可能な、地域の実情に応じた対応に対して交付金を創設するなどの対応を行ってきたわけでありますが、今、お尋ねのありました食料品の物価上昇に対しては、輸入小麦価格の年度内据え置き、配合飼料の価格安定制度の拡充、フードバンクやこども食堂等への支援強化とかといったような内容を講じてきたところであります。
 今回の総合経済対策につきましては、電気・ガス料金の上昇等に対する家計、企業の負担を直接的に低減する、前例のない対応を図っております。
 そして、目下の物価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上げを進めていくことだと考えておりまして、そういう意味では賃上げに取り組む中小企業等への支援を大幅に拡充することや、価格転嫁対策を強化するなど、賃上げ促進策を強化いたしております。
 さらに、もう少し継続的、構造的な賃上げに向けては、常日頃から申し上げているとおりでありますが、イノベーションや「人への投資」を進めて、生産性や付加価値を向上させることで、適切な価格付けを通じて各企業や業界団体のマークアップ率を高めて、それによって賃上げや下請け企業等におけるコスト上昇の転嫁が可能な支払いをしっかり確保していく。そうした構造的な継続的な賃上げに向けた好循環というものをつくっていく必要があると思います。
 総合経済対策においては、人への投資を5年間で1兆円の抜本拡充することや、投資促進のための6兆円という前例のない規模の補正予算も計上しておりまして、日本経済の未来を切り拓くための大胆な施策を講じているところでございます。
 こうした施策を具体化する補正予算の早期成立に努めていきたいと思っております。
(問)2点目です。少し関連するんですけれども、最近の資源高等で、海外への所得の流出というのが、いわゆる交易利得の減少というのが続いて顕著になってきているわけですけれども、これに対する受け止めと、改善に向けての対策をどのように考えてらっしゃるか、教えていただければと思います。
(答)本年7―9月期の我が国の実質GDP成長率は、前期比でマイナス0.3%であるのに対しまして、実質GNI、国民総所得の伸びはマイナス0.7%となっております。GDPの伸びを下回っています。
 これは国内生産活動で得られる所得が、輸入物価上昇に伴う交易条件の悪化によりまして、海外に流出したかたち。今、お尋ねの交易利得の減少として捉えられるものであります。
 資源・食料の輸入国である我が国が、これらの価格変動による影響を受けやすい構造にあることは、これは認めざるを得ないと思います。しかし、資源・食料品の価格が上昇するために海外へ所得が流出するという状況は決して望ましいものとは言えないわけで、国際商品市況の影響を過度に受けない経済構造へ転換を進めていくということは、我が国にとって重要な課題だと考えています。
 今般の総合経済対策でも、足下の物価高対策に止まらない、経済構造の強靱化を図るための様々な対策も盛り込んでいるところであります。
 具体的には、エネルギー・食料品等の危機に強い経済構造への転換ということでいえば、省エネ対策の抜本強化、ゼロエミッション電源の最大限の利用のための対策、化学肥料の利用低減、肥料、飼料、穀物等の国産化、こうした政策への対策を講じているところです。
 また、価格転換策の強化とともに、インバウンド消費の高付加価値や研究開発の強化等による生産性向上や高付加価値化等を図ることをいたしております。総合経済対策を速やかに実行することで足下の物価高を克服するとともに、今おっしゃったような経済構造そのものについて、危機に強い経済構造を実現していく必要があると考えています。
(問)最後にもう1点、スタートアップ育成の関係でお伺いできればと思います。先日、経済財政諮問会議などでも、日本の成長に向けてアニマルスピリットをどう回復していくのかというようなところが議論にもなっていたかと思いますけれども、今回の育成計画を踏まえて、そういったアニマルスピリットのようなものを日本に取り戻していくようなことが可能なのかどうか、大臣のお考えをお伺いできればと思います。
(答)先ほど強調した、第1点のスタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築というところで申し上げましたが、やはり海外に起業家育成するための拠点をつくって、そこに5年間で1,000人規模の若手人材を派遣するのも、まさにそうした新しい起業やスタートアップをどんどん行っていくという、そういう人材や、そういうアニマルスピリットということで、こないだは経済財政諮問会議の委員からも話が出ていましたが、そうした前向きな起業活動、挑戦という姿勢をしっかりと育てるべきだと、そういうことにつながっていると思いますし、また海外トップの大学の誘致によりまして、日本の国内にグローバルスタートアップキャンパスをつくっていくという、そういう構想も、まさに世界のそういう風、そういう意欲に対して、挑戦するという日本の若い経営者や挑戦者を育てていくということだと思います。
 そして、メンターによる支援事業の育成っていうことも申し上げていますが、そうしたやる気を持った時に、どうやったらやれるのかという成功事例や、あるいはアドバイスというものをホットな形で提供できる。それが起業経験者が実際にメンターとなって指導する、そういう体制でありますから、まさに同じ発想に基づいて、アニマルスピリット、挑戦への姿勢というものを大切にしていこうということだと思います。

(以上)