[解決事例06]放課後児童クラブ職員に関する基準を地域の実情に沿ったものにすることにより、柔軟なクラブ運営の実現に寄与

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[地方に対する規制緩和]

(法律 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(令和元年法律第26号)による児童福祉法の一部改正)
(省令 放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令(令和元年厚生労働省令第61号))

ポイント

放課後児童クラブの職員に関する基準が従うべき基準から参酌化されたことにより、国の基準を十分参照した上で、地域の実情に合った基準を条例で定めることが可能となり、柔軟なクラブ運営の実現に寄与

詳しくは提案募集方式データベース「H29年」管理番号「161」で検索!

提案実現までの流れ

放課後児童クラブ職員に関する基準を地域の実情に沿ったものにすることにより、柔軟なクラブ運営の実現に寄与することを説明するイラスト

取組の概要

延岡市(宮崎県)の位置を示す地図
  • 放課後児童クラブ数は増加している一方、待機児童も生じているなどニーズの高まりが生じているところであり、子育てと仕事の両立ができる社会の実現のためにも、放課後児童クラブでの子育ての受け皿整備・維持は重要な課題である。
  • 放課後児童クラブの職員の配置について、概ね40人以下を1単位として放課後児童支援員2名以上を配置しなければならないとされており、資格を有した職員の確保が困難であったり、利用児童が数人の場合も2名配置しなければならないなど、クラブの運営に支障や負担が生じる状況であった。
  • また職員の資格についても、保育士等の基礎資格の保有及び一定の研修を受講している必要があるとされており、放課後児童クラブで長年就労し経験豊富な人材であっても基礎資格がないため放課後児童支援員としての就労ができない場合や、人員不足により研修受講中の職員欠員が補えないといった課題が生じていた。
  • そのため、放課後児童クラブでのサービスの質は確保したうえで、地域の実情に応じて市町村が職員体制や資格について定めることができるよう、「従うべき基準」とされている職員に係る基準を見直すよう提案した。

取組の成果

  • 提案の結果、児童福祉法の一部改正が行われ、放課後児童クラブの職員(放課後児童支援員)の資格と員数に係る基準について「従うべき基準」から「参酌すべき基準」へと参酌化が実現した。
  • これにより、市町村が国の基準を十分参酌したうえで地域の実情に合わせて必要な人員体制を定めることや、市町村が適当と認めた方を放課後児童支援員とすることが可能となり、地域の実情に応じたクラブ運営の工夫ができ、子育ての受け皿整備の推進が期待される。

関係者からの声

「地域の状況を考慮した基準設定を行うことができました」

延岡市こども家庭課担当者のイラスト
延岡市こども家庭課
担当者

子育てと仕事の両立が可能な社会の実現が求められているなか、延岡市でも放課後児童クラブのニーズは高まっており、放課後児童クラブの受け皿について維持・拡大していくことは重要な取組の一つでした。

もとより市内の保育施設では、保育士の人材不足が続いており、運営する法人等にとっては、園・放課後児童クラブそれぞれでの人員確保が難しい状況があります。更に放課後児童クラブの職員においては、平日は午後、土曜日や長期休暇は1日の勤務となり、変則的なシフトになることから、人員確保が厳しい状態でした。そのため、今までは常時支援員を2名以上配置しなければならず、放課後児童クラブから人員確保の難しさを理由にたびたび相談を受けることがありました。

今回、提案実現により放課後児童クラブ職員の資格と員数に関する基準が「従うべき基準」から「参酌すべき基準」へ見直されました。延岡市においては、緊急時に速やかに複数人で対応できる体制を取ったうえで、利用児童数が19人以下の時間帯について、放課後児童支援員の1人配置を認めるよう条例改正を行ったことにより、クラブとして柔軟な対応が可能となりました。

 
延岡市における放課後児童クラブの状況を説明するグラフ

延岡市における放課後児童クラブの状況

 

「状況にあわせた職員配置ができて助かる!」

ゆりかごWEC児童クラブ職員のイラスト
ゆりかごWEC児童クラブ
職員

利用児童が19人以下の場合の放課後児童支援員1名配置については、特に平日より利用人数が少ない土曜日に行なっています。職員が土曜日に隔週で休みが取得できることで、平日に職員が休むことが少なくなるよう配置できるようになりました。平日は児童の送迎、多数の学校対応、習い事で迎えに来るバスの対応等、人手が必要で大変な状況だったので、クラブ運営において助かっています。

 

「お子さんのいる職員でも働きやすい!」

ひがしっこ児童クラブ職員のイラスト
ひがしっこ児童クラブ
職員

19人以下の場合について、放課後児童支援員の1名配置が可能となったことで、平日午後5時から午後5時30分の間で退勤できるシフトが組めるようになり、小学生のお子さんのいる職員が勤務しやすくなりました。その影響で新しい職員の確保という面でも、よい効果をもたらしています。

 
児童クラブを利用するお子さんたちの写真
児童クラブを利用するお子さんたち
児童クラブでの活動写真
児童クラブでの活動の様子

各市町村における放課後児童クラブ職員に関する基準について、参酌化に伴う条例の改正状況(令和2年9月末時点)

放課後児童クラブを実施している自治体1,623か所のうち、575か所(約35%)において、放課後児童クラブの職員に関する基準を改正。

(具体的な改正内容)

  • 放課後児童支援員等の員数に関する改正: 32か所
  • 放課後児童支援員の資格要件に関する改正: 10か所
  • 認定資格研修修了要件の経過措置延長:560か所
  • 職員の専任規定に関する改正: 3か所

全国での放課後児童クラブの実施状況(令和2年7月1日現在)

  • 登録児童数 1,311,008人 (令和元年:1,299,307人)
  • 放課後児童クラブ数 26,625か所 (令和元年:25,881か所)
    ※登録児童数、クラブ数ともに過去最高を更新
施設・公物管理基準を条例委任する場合の基準に関する用語について
従うべき基準 必ず適合しなければならない基準。法令の「従うべき基準」と異なる内容を定めることはできないが、当該基準に従う範囲内で、地域の実情に応じた内容を定めることができる。
参酌すべき基準 十分参照しなければならない基準。法令の「参酌すべき基準」を十分参照した結果としてであれば、地域の実情に応じて、異なる内容を定めることができる(「参照する行為」は行わなければならない)。

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