[解決事例02]常勤でない医師も診療所の管理者と認められる旨の明確化により、医療提供体制の充実に寄与

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[地方に対する規制緩和]

(通知 診療所の管理者の常勤について(令和元年9月19日 医政総発0919第3号、医政地発0919第1号))

ポイント

医師が不足しているへき地等の診療所の管理者について、管理者責務の確実な履行を前提に、常勤でなくとも管理者として認めることができることが明確化され、当該地域の医療の確保に寄与

詳しくは提案募集方式データベース「R1年」管理番号「37」で検索!

提案実現までの流れ

常勤でない医師も診療所の管理者と認められる旨の明確化により、医療提供体制の充実に寄与することを説明するイラスト

取組の概要

島根県の位置を示す地図

都道府県等の判断権限の明確化により、へき地等の医療の確保に寄与

  • 診療所の管理者は、「当該診療所における管理の法律上の責任者であり、原則として診療時間中当該診療所に常勤すべきことは当然」とされているほかは、具体的な考え方が示されていなかった。(管理者の常勤しない診療所の開設について 昭和29年10月19日 医収第403号)
  • へき地や医師少数区域である過疎地域、離島等では、医師の高齢化や後継者不足により、常勤の管理者の確保が困難になりつつあり、診療所の存続について危機感を有していたが、上記の通知により、常勤でない医師を診療所の管理者として認めることができるかどうかが不明確であった。
  • このため、島根県は、診療所の管理者の常勤について、個別事例は都道府県等の判断によることの明確化を求める提案を提出。この提案には複数の地方公共団体の追加共同提案があり、同じ思いを有していた地域の存在を浮き彫りにした。
  • 提案の結果、都道府県等は、医師が不足している地域で常勤の医師の確保が困難である場合等には、管理者責務の確実な履行を前提として、例外的に常勤でない医師も診療所の管理者として認めることができるとの考え方を示した通知が、令和元年9月に厚生労働省から各都道府県宛に発出された。
  • これにより、都道府県等は、地域の実情に応じて、常勤でない医師を診療所の管理者として認めることを明確に判断できるようになり、早急な地域医療の確保対策に着手することができるようになった。

取組の成果

  • 島根県では、令和元年10月以降、常勤の管理者が不在となった複数の診療所において、他の病院に在籍する常勤でない医師を管理者として認め、診療所を存続させている。
  • 少子高齢化、過疎化が進展する地域において文字通り生命線となる支障を解決できたことは、島根県と国のスピード感を重視した対応が生きた成果といえる。

島根県における事例をご紹介します

  1. 国民健康保険五箇診療所(島根県隠岐の島町)
    令和元年10月1日~令和3年3月31日までの期間、管理者の確保ができず、五箇診療所と同じ島内で20km程度の距離がある隠岐広域連合立隠岐病院に在籍の医師が管理者となる。
  2. 国民健康保険池田診療所(島根県大田市)
    令和3年3月31日で管理者が退職し、後任の管理者の確保が困難であったことから大田市立病院の院長が管理者となる。
 

関係者からの声

「早くも県内で成果が出ています!提案してよかったです!」

安井大輔氏の写真
島根県健康福祉部
医療政策課
主任主事 安井 大輔 氏

当県は中山間地域や離島が多く、地域医療維持は最重要課題のひとつでした。一方で医師の人数には限りがあり、高齢化も進む中で、常勤できる医師の確保は困難になっていく事態が次々と現実化していきます。「診療所の管理者の常勤性の判断は都道府県ができる」ことを明確化しない限り、この課題にしっかり立ち向かうことができないと悩んでいたところに「地方の声で国の制度を変えられる、明確化できる」提案募集制度を知り、内閣府に相談したところ、当県の提案はその年のうちに実現することができました。その結果、早くも成果が出てきており、担当として大変満足しています。

大事なことは、地域のリアルな現状を我々地方公共団体が危機感をもって訴えることだと思います。

 

「今後他の地域で生じる課題解決の糸口になればと思います」

助永親彦氏の写真
隠岐広域連合立隠岐病院
島の医療人育成センター長
副診療部長・麻酔科部長
助永 親彦 氏

隠岐広域連合立隠岐病院所属の医師でありながら、1年間国民健康保険五箇診療所の管理者を務めていました。離島へき地における常勤医確保は非常に厳しい状況であり、従来の解釈では診療所の開設継続自体が危ぶまれていました。これは一診療所の存続の問題だけではなく、地域包括ケアシステムに大きく関わる重要な課題でした。

今回医療圏の中核病院の医師が診療所を管理することで病診連携が強化されるなどのメリットも実感できました。今後様々な地域で生じてくるであろう離島へき地における診療所管理者問題の解決の糸口にしていただければありがたいです。

 
五箇診療所の写真
五箇診療所
五箇診療所での診療風景の写真
診療風景
 

「通い慣れた診療所を維持して住民の皆さんに安心して暮らして頂きたい」

西尾祐二氏の写真
大田市立病院
院長 西尾 祐二 氏

令和3年3月末に、大田市内三瓶地域にある国民健康保険池田診療所の管理者が退職されるにあたり、後任確保が困難であったため、私が引き受けることに致しました。過疎地域での診療所の消滅は、住民の健康管理の劣化に直結し、生活の質の低下や過疎化の加速にも繋がります。通い慣れた診療所を維持することで、住民の皆さんが、これからも安心して暮らして頂けるよう、微力ながら頑張って参ります。

 
池田診療所の写真
池田診療所
池田診療所での診療風景の写真
診療風景
 

「身近な診療所は生活の基盤、市立病院との連携もうれしい」

関係者のイラスト
池田診療所を利用
されている方々の声
  • 身近に診療所があってとても助かっている。
  • 若い先生方でとてもエネルギーを感じる。家族の事もよく分かってもらえてありがたい。
  • まちが存続するための基盤として病院が重要な要素だと強く感じる。
  • 市立病院と繋がっていて病気によっては直ぐに市立病院へ治療の橋渡しをしてもらえる。
  • 市立病院で治療を受けた時のデータを見ることができるため診療所でも治療が継続できて助かる。
 

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