第90回 消費者委員会 議事録

日時

2012年5月29日(火)16:00~18:33

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
河上委員長、山口委員長代理、小幡委員、川戸委員、
田島委員、夏目委員、細川委員、村井委員、吉田委員
【説明者】
経済産業省資源エネルギー庁 糟谷電力・ガス事業部長
片岡電力市場整備課長
東京電力株式会社 村松執行役員企画部長
鈴木執行役員電力契約部長
太田康広 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
大塚良治 湘北短期大学総合ビジネス学科准教授
梶川 融 太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員
水上貴央 弁護士(第一東京弁護士会所属)
消費者庁 黒田消費者政策課長
金田消費者安全課企画官
【事務局】
原事務局長、小田審議官

議事次第

1.開会
2.電気料金について
 (1) 東京電力による家庭用電気料金の値上げ申請に関するヒアリング
○説明者: 経済産業省資源エネルギー庁  糟谷電力・ガス事業部長
片岡電力市場整備課長
東京電力株式会社  村松執行役員企画部長
鈴木執行役員電力契約部長
 (2) 電気料金に関する有識者からのヒアリング
○説明者: 電気料金問題検討ワーキングチーム
 太田 慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
 大塚 湘北短期大学総合ビジネス学科准教授
 梶川 太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員
 水上 弁護士
3.消費者基本計画の検証・評価・監視について
4.食品安全基本法第21 条第1項に規定する基本的事項の改定について
○説明者: 消費者庁  金田消費安全課企画官
5.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:8KB)
【資料1】 東京電力の家庭用電気料金値上げに係る質問関連資料 【資料2】 御質問事項への回答(経済産業省資源エネルギー庁提出資料)(PDF形式:707KB)
【資料3】 家庭用電気料金値上げに係るご質問への回答(1)(東京電力株式会社提出資料) 【資料4】 消費者基本計画の改定素案(平成24 年4月)等に対する意見(案)(PDF形式:155KB)
【資料5】 食品安全基本法第21 条第1項に規定する基本的事項関連資料
(資料5-1) 食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項の改定について(PDF形式:485KB)
(資料5-2) 「食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項」の改定案新旧対照表(PDF形式:733KB)
(資料5-3) 食べ物による窒息事故にご注意ください(PDF形式:374KB)
(資料5-4) こんにゃく入りゼリー製造等事業者の製品改善等の取組状況について(PDF形式:147KB)
(資料5-5) 食べ物による窒息事故防止のための情報提供について(PDF形式:209KB)
(資料5-6) 検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方(PDF形式:203KB)
(資料5-7) 平成24年度輸入食品監視指導計画(PDF形式:433KB)
【参考資料】 委員間打合せ概要(PDF形式:51KB)
【追加資料】 食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項の変更について(案)(PDF形式:12KB)

≪1.開会≫

○河上委員長 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会(第90回)」会合を開催いたします。
本日は、所用により稲継委員が欠席と予定されています。
続きまして、配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。

○原事務局長 配付資料ですけれども、議事次第と書かれた下の段に配付資料の一覧を掲げております。
資料1といたしまして、「東京電力の家庭用電気料金値上げに係る質問関連資料」、枝番がついていますけれども、いずれも消費者委員会が提出している資料です。
資料2といたしまして、消費者委員会から質問いたしました事項への回答ということで、経済産業省の資源エネルギー庁からご提出いただいた資料。
資料3につきましては、同じように質問への回答ということで、東京電力株式会社から御提出いただいた資料。
資料4といたしまして、「消費者基本計画の改定素案等に対する意見(案)」。
資料5といたしまして、「食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項関連資料」です。
最後に参考資料といたしまして、この間、委員間打合せを5月22日に開催しておりますので、その概要をおつけしております。
資料、不足のものがございましたら、審議の途中でお申出いただければと思います。
では、よろしくお願いいたします。

≪2.電気料金について≫

○河上委員長 それでは、議題に入ります。
初めに、「電気料金について」であります。本議題につきましては、二部構成にしております。前半は、経済産業省の資源エネルギー庁と東京電力においでいただきまして、東京電力による家庭用電気料金値上げ申請に関するヒアリングを行いたいと思います。後半は、前半の議論の内容を踏まえた上で、電気料金に関する有識者からのヒアリングを行いたいと考えております。


(1) 東京電力による家庭用電気料金の値上げ申請に関するヒアリング

○河上委員長 まず、前半の値上げ申請に関するヒアリングでございますけれども、経済産業省資源エネルギー庁と東京電力におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
消費者委員会におきましては、今般の東京電力による家庭用電気料金値上げ申請について、5月10日付で委員長声明を発出いたしまして、適切な審査体制の確保、公聴会の適切な開催、適時適切な情報提供ということを経済産業省に対して求めているところでございます。
また、今般の申請についての審査過程全体を見渡して、決定過程の透明性及び消費者参画の機会が適切に確保されているか、更に消費者にとって必要な情報が開示されているかといった手続面を中心に、公共料金の担当委員、委員会の中では、小幡委員、細川委員、山口委員長代理でございますが、この担当委員と専門的な知見を有する外部有識者によるワーキングチーム、すなわち「電気料金問題検討ワーキングチーム」を開催して検証を行うことにしております。これまでワーキングチームでの議論におきまして、今回の値上げ申請について、消費者の視点から見てよりわかりやすい説明、情報公開が必要ではないかというふうに考えられる点について、「東京電力の家庭用電気料金値上げに係る質問」という形でとりまとめていただいております。
本日の委員会の資料1-1として配付しているものがそれに当たるものですけれども、この質問について、今回の委員会の準備のために経産省及び東京電力にも事前にお送りして、本日の委員会でできる限りの対応をお願いしたということであります。
経産省及び東京電力におかれましては、この質問に対する回答について委員会の場で御説明をいただくとともに、議論のポイントについて、一般消費者にもわかりやすい形で情報発信を行っていただければと思います。この消費者委員会は公開の場でございますので、その意味では消費者の目にも十分触れる機会でございます。できるだけわかりやすい形で説明をお願いいただければと思います。
また、経産省におかれましては、現在、本件についての議論を行っている「電気料金審査専門委員会」に対して、本日の議論のポイントを含めた消費者委員会の問題意識を、是非ともお伝えいただきますようお願いしたいと思います。
それでは、御説明に入りたいと思います。まず、経済産業省から総括的に御説明をちょうだいし、その後、東京電力から、質問 I の2と II の1(3)辺りについて、補足的に御説明をお願いいたします。また、 II の1(2)の部門別収支に関する詳細につきましては、次回、6月12日開催の委員会で説明をいただく予定ですけれども、最近の報道を踏まえまして、本日はその概要についても御説明をお願いしたいと思います。限られた時間ですので大変かと思いますけれども、よろしくお願いいたします。
では、説明をお願いします。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の糟谷と申します。よろしくお願いいたします。
まず、お手元の資料2に従いまして、質問事項をいただいた内容について御説明申し上げます。表紙をめくっていただきまして、まず3ページ目でございます。
質問といたしまして、中立的な機関によるチェックを行うこと、十分に時間をかけて審査を行うことなど、「適切な審査を行うこと」ということをいただきました。これについて、まず申し上げます。
3ページのマル1ですが、「電気料金審査専門委員会」という、第三者、外部の専門家の方に委員になっていただいた委員会を設置いたしまして、専門的かつ客観的な観点から、料金査定方針等の検討を行うということで進めております。これまで2回開催いたしまして、いずれの回も消費者団体にオブザーバー参加をいただいております。この専門委員会のメンバー、オブザーバー参加いただいた消費者団体の委員の方については、11ページの参考6をごらんいただければと思います。中央大学の安念先生を委員長といたしまして、合計6名の方に委員になっていただき、消費者団体の方、消費者庁の担当課長にオブザーバーとして出席をいただいております。
今後、これをずっと公開で行います。委員長の御判断で非公開にする可能性は留保しておりますけれども、今のところ、どこで非公開にするということを具体的に予定しているわけではありません。可能な限り公開で進めていきたいというふうに思っております。
4ページ目をごらんいただきまして、適時適切な情報提供を行うことという委員長声明の部分であります。マル3のところです。これにつきましては、従来の電気料金情報公開ガイドラインを今年の3月末に改正いたしまして、認可申請書類について、即時、申請があった日にインターネットを通じて公表を行ったところでございます。
質問事項 I の1のマル2でいただいております、公聴会の適切な開催につきましては、公聴会の運営改善をいたしております。具体的には相応の回数・時間をとって公聴会を開催するということで、東京で6月7日、埼玉で6月9日、2回にわたって公聴会を行うこととしております。
意見陳述人の方について、5月14日から23日まで公募を行いましたところ、ちょっと少なかったのですが、合計で15人ほど、陳述したいという方がおられました。この方々についてはすべて、意見陳述をお願いすることとしております。傍聴の方については、現時点で186名の方の希望が上がっておりますが、この方々全員について傍聴をしていただくということで考えております。
傍聴については、会場、いろいろな準備の関係で、差し障りがない限り、引き続き、傍聴の希望があれば受け付けて傍聴いただきたいというふうに考えております。
意見陳述人の方とは別に、参考人といたしまして、消費者団体、学識経験者、地方自治体、中小企業団体の方に来ていただいて、御意見をいただくことにしております。現在、何らかの形で経済産業省宛てに、東京電力の料金値上げについていろいろ御意見をいただいた団体について、参考人としていらっしゃいませんかというお話を申し上げているところであります。
5ページ目にまいりまして、議事の進行役に中立的な第三者を選任することにいたしております。役所の事務方がやるということではなく、意見陳述人からの陳述の際、議事運営の中立性がより確保されるようにするため、安念先生、一橋大学の山内先生に議事運営をお願いしております。
事前に十分な情報提供を時間的余裕をもって行って、なおかつ、公聴会の際に時間の範囲内で質疑応答の場を設けることといたしております。
議論の内容ですが、これはインターネットで掲載する、消費者委員会へも提供するということで、この公聴会についてはプレスフルオープンで行うこととしております。消費者委員会、消費者庁におかれましても、オブザーバー参加をいただくということでお願いしております。
公聴会で出た意見につきましては、「国民の声」とあわせて、電気料金審査専門委員会で審議の上で回答を公表する予定でございます。
マル4は「国民の声」の募集ということで、公聴会に来られない方についても、インターネット等を通じて意見を出していただくということで、5月11日から6月9日までの間、意見の募集を行っております。昨日現在で306件の意見が寄せられております。この意見については、公聴会での意見とあわせて回答を公表する予定でございます。
これが、 I の関係で対応しているところでございます。
続きまして、資料の12ページ、13ページですが、部門別収支について。これは、具体的な数字等については東京電力から御説明があると思いますが、料金の規制部門と自由化部門の分け方の考え方について、ざっと御説明を申し上げます。
まず、13ページでございます。規制料金についての認可申請がきているわけですが、他方で自由化分野の料金がございます。自由化分野のコストが規制分野の料金に乗せられることがないように、規制分野の料金認可申請を受けた審査に当たっては、自由化分野も含む費用全体について、まず原価を総ざらいいたします。表の左側からでありますが、すべての原価につきまして水力発電費、火力発電費等々を分けまして、そのうち一般管理費については、ABC会計手法というやり方で水力発電費、火力発電費などに分けるということをいたします。その上で、更にその費用の内訳を見まして、送電に関係するコスト、関係しないコストに分けて、それをそれぞれ小売の規制料金、小売の自由化料金、託送料金に割り振る。大ざっぱに言いますと、そういう考え方であります。これをやることによって、自由化分野のコストが規制料金に乗せられることがないように、適正に査定するという考え方でございます。
ちょっと細かくなりますが、14ページに、ABC会計手法、固定費の配分方法について書いてございます。ABC会計手法といいますのは活動基準原価計算ということで、直接帰属できる費用については、各部門、例えば水力とか火力とか、そういうことで帰属をいたします。そうでないものについては、何らかの合理的な基準を設定して各部門に配分する。例えば、一般管理費の人件費を人数割でそれぞれの部門に配分をするというようなことでございます。
直課とか帰属では整理できない費用については、それに代わる代理的な比率を用いて各部門に配分する。例えば委託費を、各部門の例えば床面積の割合で配分するとか、そういう何らかの比率を用いて、それぞれの部門ごとにコストを割り振っていくということをいたします。
固定費につきましては、2:1:1方式、2:1方式。細かくなりますので割愛いたしますけれども、こういうやり方で配分をするということでございまして、部門別に分け、それを送電コスト、送電に関係しないコストに分け、最終的に小売料金。小売料金の中でも規制料金と自由化料金、託送料金に分けていきます。そういう考え方だけの御説明を申し上げます。
続きまして、質問の2.で、事業報酬について幾つか御質問をいただいておりますので、それも考え方について御説明を申し上げます。
まず、事業報酬という名前から、報酬というのは全部利益であるかのように思われるわけですが、実際に事業報酬といいますのは、その中から借入金の金利の支払いを行い、配当を行う会社であれば株主に対して配当を行い、残ったお金を内部留保するということになります。これについて、現在、レートベース方式というのを採用しております。1960年以前は積み上げ方式というのをやっていたわけですけれども、積み上げ方式ではいろいろと問題があるということで、レートベース方式に切りかえています。ちなみに、ほかの公益事業、ガスや鉄道等についても同様の方式が用いられています。
事業報酬の考え方ですが、最初に、資本コストの考え方について御説明させていただきたいと思います。20ページをごらんください。企業が事業を行いますときには、借入金で行う場合と、株を発行することによって資金を調達する。つまり、企業の事業を行うための資本としては借入金と株、2つあります。それぞれのコストを算定する考え方が、コーポレートファイナンス、企業金融の考え方でございます。この考え方に事業報酬の算定の仕方は準拠しております。
まず、この考え方を御説明いたしますが、借入金、これは負債ですが、その負債のコストを計算いたします。それから自己資本のコスト。自己資本というのは端的には株を発行して得たもの、エクイティですが、それのコスト。これをそれぞれ計算して、それを加重平均して、加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital)というのを試算いたします。これを計算するやり方を、ちょっと技術的になりますが、御説明申し上げます。
まず、負債のコストについては借入金の金利を基本的に用います。それを加重平均いたします。次に資本コストです。この計算が少し解説が必要であります。税率についてはとりあえず除いて御説明を申し上げます。
負債については必ず一定の金利と共に元本が返済されます。元本がきっちりと決まった金額でありまして、返済がされます。他方で株については、元本、額面はありますけれども、これは株式市場で変動いたします。つまり、債券よりも株の方が変動のリスクが高いということでありまして、変動するリスクは高ければ高いほど、それに見合うリスクプレミアムがマーケットでちゃんとつくはずだ、そういう考え方であります。
左下の絵を見ていただきますと、rfというのは債券の、ちゃんとこれは返済されるという前提であれば貸し倒れリスクはゼロであります。そのときの金利をrfとしております。右に行けば行くほど、より株式市場で変動する株です。変動の可能性が高ければ高いほど、それに見合うリスクプレミアムがつくということで計算をする考え方であります。
その考え方でありますが、株式市場全体の変動に対して、個別の株の変動がどれくらい大きく変動するかということを見ます。その比率がβです。つまり、株式市場1上がったときに同じように1だけ上がる株。これは、株式市場全体と同じように上がったり下がったりしますので、βは1になります。他方でリスクの高い株は、株式市場が1上がったときに2上がったり、1下がると2下がるということになります。その場合はβが2になります。βが1の株よりもβが2の株の方が、よりリスクプレミアムは大きくあるべきだ。つまり、資本コストが1の株よりも2の株の方が高くあるべきだ、そういう考え方でございます。
それをリスクプレミアムということで、株式市場の平均リターン(rm)、とリスクフリーレート(これは公社債とか国債を使いますが)との差分、これにβを掛けて資本コストを出すということでございます。
十分おわかりいただけたかどうかよくわかりませんが、一言で言いますと、資本コストについては、株式市場全体の変動に比べてよりリスクが大きいもの、変動のリスクが大きければ大きいほど株の対価、つまり資本コストは大きくあるべきだ、そういう考え方でございます。そういうことで右側の加重平均資産コストという式ができているわけです。
最後に、1-tcということで税率を引いていますが、要するに金利はコストとして、損金として引いた上で法人税が課されますので、したがってマイナスtcという操作を行うということであります。
十分御説明できたかどうかわかりませんが、もし御不明な点がありましたら、後で御質問いただければと思います。これが、国際的に一般に言われているCAPM(資本資産価格モデル)に基づく加重平均資本コスト(WACC)の試算方法でありまして、基本的にこの考え方に準拠して事業報酬を計算するという考え方でございます。
具体的にどういう計算をするかということでありますが、22ページをごらんいただけますでしょうか。自己資本の報酬と他人資本の報酬とに分けて計算いたします。まず他人資本の報酬からごらんいただくのが早いと思いますが、これは借入金の金利ですので、10電力会社の平均有利子負債の利子率を使っています。
自己資本の報酬率につきましては、リスクフリーレートとして、公社債利回りの実績値、実際には10年物の国債、地方債、政府保証債、これらの利回りを平均しています。これを使って、1-βを掛け、全産業の自己資本利益率にβを掛けた数字ということで計算いたします。βについては、電気事業の株の変動の割合、つまり、株式市場全体が1上がったり下がったりしたときに、電気事業の株、電気株がどれぐらい上がるか、この係数をβとして用います。それによって、先ほどの考え方に従って自己資本の報酬率を計算するということでございます。
次に、加重平均をするときに、自己資本比率を30%とし、他人資本比率を70%と置いております。これについて、23ページで御説明申し上げます。これは、平成7年に料金制度部会というのをやったときのとりまとめでございます。3つ目のマルですが、「適正な自己資本比率は、10社の実績平均値ではなく、一般電気事業の特性に応じた適正な自己資本比率を算定することが必要となる」ということで、類似の公益事業の自己資本比率を計算いたしまして、適正な自己資本比率を30%として、30%対70%という比率を用いているということでございます。
その上で、24ページ、電力会社のβ値について、去年の12月段階の数値を参考までに載せております。実際の料金の査定に当たりましては、もっと直近の数字で再計算をすることになろうかと思います。
25ページでありますが、ほかの業種、公益事業についての計算の仕方です。ガスについてもレートベース方式で、ただ、ここは自己資本報酬率を35%と少し高めに置いております。鉄道についてもレートベース方式です。少しずつ細かいところで計算の仕方が違いますが、考え方は基本的に同じであります。水道については、積み上げ方式とレートベース方式を混在した形になっているということでございます。
以上が事業報酬についてのものでありまして、27ページで、レートベースと事業報酬率の考え方について、昨年度末、つまり今年の3月末にまとめていただいた「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議報告書」では、レートベースの対象資産について、長期停止発電設備については、緊急時の即時対応性など、将来の稼働の確実性等を踏まえて算入することが適当である。正当な理由なく著しく低い稼働率となっている設備については、レートベースから除外することが適当である、そういう御指摘をいただいております。
事業報酬率についても、震災後の状況を勘案しながら、適正な事業経営リスクを見極めた上で設定することが適当である、そういう報告書をいただいております。
次に、質問の II の「3.その他」の(1)、原価算定期間中の年度ごとの評価の方法ということで、事後評価について、29ページ以降をごらんください。昨年度末に行いました見直しを受けて、原価算定期間中の事後評価のやり方を充実させております。
従来は、自由化分野と規制分野の部門別収支については、自由化分野が赤字の場合のみ公表するということであったわけですが、29ページの右側にありますように、値下げ届出時においても、広告宣伝費、寄付金、団体費について説明するように求めたり、原価算定期間中においても、部門別収支については常に公表するようにしたり、原価算定期間の終了後、今回であれば3年間ということですので、3年たった後ということになりますが、規制部門と自由化部門に分けて評価をする。行政がそれを更に見まして、料金認可申請命令の発動の要否について、必要以上の内部留保の積み増しなどがある場合には、その発動の要否について検討する、ということとしたところでございます。
最後に、3の(2)、原子力損害賠償支援機構からの東電への資金交付、資本注入について、現行の制度について御説明を申し上げます。35ページをごらんいただくのが一番早いかと思います。
昨年8月に国会で成立いたしました原子力損害賠償支援機構法に基づきまして、資金交付、資本注入、2つのメカニズムが想定されています。まず、上の資金交付であります。これは、東京電力から原子力損害の被害を受けられた方々への賠償の費用について、原子力損害賠償支援機構が資金交付を東京電力に対して行うというものであります。そのための原資は、政府が国債の交付によって原子力損害賠償支援機構に交付いたします。
他方、電力会社は、原子力損害に備えて相互扶助の仕組みとしまして、毎年、一般負担金をお支払いいただくということです。ちなみに、昨年度分といたしまして815億円、原子力発電所を持っている電力会社から原賠機構に対して一般負担金を徴収することにしております。それに加えて、事故の原因者である東京電力については特別負担金を、いろいろな条件の下、つまり、必要な電力の安定供給等に支障を生じない範囲といった、ざっくりと言うとそういう条件で特別負担金を原賠機構に支払う、そういう仕組みであります。
本来は、事前に相互扶助で原賠機構に積み立てておいて、いざ事故が起きたときに、それをもとに資金交付をする、足りなければ政府から国債の交付を行うという仕組みでありますが、今回の事故については、事後的になりますが、一般負担金、特別負担金で支払われたものをもとに原賠機構が国庫納付をいたします。交付した国債の金額に至るまで国庫に納付する。それによって国民負担を生じさせない、そういう仕組みであります。
この一般負担金については、将来の事故に備えた原子力発電のコストということで、電気料金の原価として算入可能であるという考え方をしております。他方で特別負担金については、原価には算入しないという考え方でございます。これは国会でも答弁をいたしております。
これが、賠償関係の資金の流れでございます。
下の方が、賠償以外の資金の流れでありまして、これは、東京電力として廃炉の費用、事故処理の費用、原子力が止まって化石燃料を焚き増していることによるコスト、そういうものを賄うための資本注入ということで、原賠機構が政府保証の下で市中の金融機関から融資を受けまして、市中から調達した金銭をもとに、今回、株式の引受けをしようということでございます。賠償の資本の流れと、賠償以外の資本の流れとで2つ分かれているということでございます。
ちなみに、今回は下の方は資本注入だけですが、法律上は原賠機構から東京電力に対する貸付けもできることになっております。ただ、今回、東京電力は債権者に対しても責任を求めるという観点から、既存の債権者に対して従来の残高の維持、大口の債権者に対しては1兆円の追加融資を求めるということで、原賠機構から東京電力には融資は想定をしていないということでございます。
というのが、全体の仕組みであります。細かな御質問全部にお答えできたかどうかわかりませんが、足りないところはまた、御質問をいただいてお答えさせていただきたいと思います。

○河上委員長 それでは、東京電力の方から補充的にお願いいたします。

○東京電力(株)村松執行役員企画部長 それでは、私どもの方から簡潔に御説明させていただきます。
まず、御質問の I の2でございます。設備投資と需要抑制の関係でございますが、お手元の資料3-1、3ページをごらんいただきたいと思います。こちらが、原価算定期間でございます3か年平均の設備投資額を示したものです。設備投資額の合計は約7,000億円でございます。そのうち、電源、発電所の増強にかかわるところが1,774億円、ネットワークの増強にかかわるところが379億円でございます。これを合わせまして全体の約3割でございます。残りは発電所とネットワークの改良でございまして、全体の中で6割以上を占めてございます。
残りでございますが、見ていただきますと原子燃料というのがございます。390億円ですが、こちらは、この3か年の中で柏崎が順次運転を再開するということで見込んでおります。原子力の燃料は、一度装荷すると3年間もつということでございますので、装荷いたしました燃料について設備投資という扱いになってございます。そのほか、この390億円の中には、営業所とか業務設備の投資が入ってございます。
1枚めくっていただき5ページをご覧ください。これに対しまして、電力需要、ピーク需要でございますが、先行きの見通しを示したものでございます。平成22年のところを見ていただきますと、5,811万kWという数字がございます。これは一昨年の電力ピークです。電力ピークというのは、年間の毎時間の電力消費の中で一番大きい1時間を示してございます。ただ、その日の気候条件で毎年、条件が変わるということで、計画上は、一番大きいときから3日間の平均をとってございます。実際に出た最大電力は約6,000万kWですが、3日平均ということで5,811万kWでございます。
これに対しまして、先行きのところを見ていただきますと、下の紺のところが10年後の見通しです。これを見ていただきますと、平成33年で5,802万kWということで、この後の省エネ等を勘案いたしまして、実質的に最大電力、電力ピークについては、平成22年のピークを下回るということで考えてございます。その内容といたしましては、まず一つには、LED照明等をはじめとする省エネルギーの機器。それから、太陽光発電等によりまして需要そのものが減っていくといったことを示したものでございます。
その下の6ページでございます。ピーク需要抑制策というのがございます。ピーク需要抑制策というのは幾つかの種類がございますが、こちらに示したのはいわゆるデマンドレスポンスというものです。概要が右の箱の中に書いてございますが、お客様にその当日とか数日前、また、一番厳しい契約の中では、瞬時に自動的に負荷を抑制していただくといういろいろな御契約がございます。これによりましてお客様の方で需要を抑制していただく。電力ピークの時間帯の需要を下げていただくというものでございます。
これにつきまして、原価算定期間ではおおむね年平均120万kW、10年後は250万kWということでございます。120万kWと申しますと、原子力の最大のプラント一つの規模と同じでございます。10年後はそれが2基分ということで、これを抑制するということを取り込んでございます。
1枚めくっていただき7ページになります。需給調整契約ということで示させていただきました。デマンドサイドマネジメントには大きく2つございます。左側は計画調整契約でございます。これはお客様、特に産業用のお客様が夏の土日の休日を平日に振りかえていただくことによって、需要を減らしていただくものでございます。右側は、ピークの時間帯に、先ほど申しましたような形でデマンドレスポンスということで、需要をその時間帯を抑制していただくというものでございます。
こうしたことによりまして、8ページでございますが、ピーク需要につきまして、昨年の秋に第三者の専門家の皆様によって計画を策定いただきましたものに対して、先ほどの省エネ並びにデマンドレスポンスを織り込みまして、全体として電源の将来の増強計画を、平成30年度以降でトータル260万kW抑制してございます。
これによりまして、実際に設備投資の金額がどれくらい減ったのかというのを示したものが9ページです。今後、10か年で約1兆円の削減金額ということでございます。デマンドレスポンスを織り込むことによりまして需要抑制をする。また、節電から構造的な省エネルギーに変えていただくことを計画に織り込みまして、この結果、約1兆円の設備投資の削減を織り込んでございます。
競争入札に関しまして、1点だけ補足させていただきます。11ページをごらんいただきたいと思います。図が並んでおりますが、真ん中に紫色の棒グラフがございます。随意契約というものでございます。設備のメンテナンスにかかわる修繕費と業務委託費を合わせまして、約6,300億円のうちの85%、5,400億円程度が、現在、随意契約になってございます。今回の計画の中では、3年間で競争入札を3割に拡大することを計画してございます。
右側の棒グラフ、黄土色のところで赤マルで囲ってございますが、随意契約のうち約3割がグループ会社に対するもので、おおむね1,700億円あるということでございます。特に、グループ会社に対する随意契約につきましてもコストダウンが是非とも必要であるということで、まず、随意契約を3割、競争発注にすることとあわせまして、12ページでございますが、コストそのものにつきまして、これまで、随意契約から競争発注にいたしますと、単価が7%くらい下がるということでございます。これを踏まえまして、全体としまして、単価引下げ効果によって約10%、それ以外の深掘りということで、1,700億円のグループ会社に対する随意契約に対して、約20%のコストダウンを行うということで織り込んでございます。
これとあわせまして、最後のページでございます。競争入札に至らない随意である理由の最大のものが、つくったメーカーにメンテをしてもらうというのが約55%、緊急の不具合、事故対応が3割でございますので、この要因を更に深掘りいたしまして、より競争入札化を進めてまいりたいと考えてございます。
概略、以上でございます。

○東京電力(株)鈴木執行役員電力契約部長 続きまして、資料3-2をごらんいただきたいと存じます。御質問との関係では、 II の1の(2)、規制部門と自由化部門のコスト構造に関連する資料でございます。こちらにつきましては、最近のお客様の声、あるいはマスコミの報道等におきまして、自由化部門と規制部門の利益配分が大きく偏っているのではないか、こういった御質問、御意見等がございました。これに対してつい先日、ホームページに掲載させていただいた内容がこちらになっておりますので、この場で御説明させていただければと思っております。
まず、2ページでございます。これは、先ほどエネ庁さんの資料にもございましたとおり、そもそも電気料金の設定に当たりましては、個別の原価をそれぞれの部門に配分するルールが省令で定められておりまして、私どもはこれにのっとって料金設定の計算を行っており、あわせまして、その実績についても、部門別収支ということで、省令で定められている算定ルールにのっとって算定した結果を、監査法人の証明書を添えて経産省に毎年提出させていただいている、こういう内容になっております。
3ページをごらんいただきたいと思います。こちらは、自由化部門と規制部門それぞれ平成12年度にさかのぼりまして、各年度の利益率をグラフ化させていただきました。平成12年度から部分自由化ということで小売自由化が導入されまして、最初は特別高圧から導入されまして、順次高圧に拡大してきた、こういう状況になっております。自由化の当初は、特別高圧から導入されて順次高圧に拡大されているということで、規制部門と自由化部門の販売電力量の比率もそれに沿って変化してきております。また、先ほどの固定費の配分という御説明にもありましたとおり、規制部門と自由化部門で使用される設備の違い等によりまして、設備費用を中心とする固定費、これの配分につきましては、電力量の比率とは必ずしも一致しないという状況になっております。
そういった点も含めまして、各部門のそれぞれの売上高、すなわち料金収入、それに対する利益の割合がどうなっているかというのが、見方としてはわかりやすいのではないかということで、利益率という形でお示しさせていただきました。ごらんのとおり、濃い紺色のところが規制部門の利益率、グレーが自由化部門の利益率の数値になってございます。ごらんいただきますように、ほぼ同等の年もあれば、年によって大きく率が偏っている年もございます。これは料金改定以降、さまざまな状況変化に伴って、こういった偏りが生じているというのが実態でございます。
特に燃料費の変動は、自由化部門の方が電力量のウエートが高いということで、こちらに多く配分される一方、固定費の方は、使う設備が規制部門の方が多いということで、こちらの方にコストダウン等は大きく効いてくるというところがございます。
特に弊社の場合はこの10年余りの間に、原子力の不祥事、これは平成14年に発覚いたしましたけれども、それによって原子力がすべて停止したこと、加えて19年度には、中越沖地震によりまして柏崎刈羽の全号機が停止する、こういったことが生じまして、これに伴います火力の燃料費が大幅に増加いたしました。相対的に燃料費ウエートの高い自由化部門の方に配分されまして、利益が大きく圧迫された、こういった経緯がございます。ちなみに折れ線グラフは原子力発電所の設備利用率を示してございますが、それとの関係を見ていただけるかと存じます。
その典型的な例としまして、18年度と19年度、点線のところを詳しく説明しましたのが4ページでございます。18年度というのは、ちょうど4月1日に料金改定、値下げ改定を行いました。そのときに、先ほどのルールにのっとって、規制部門、自由化部門それぞれの料金を設定したということになっています。そのときは実績の部門別収支も、ごらんのとおり、規制部門も自由化部門もほぼ同等の利益率になっているということでございます。
ところが、その翌年に柏崎刈羽の全号機停止という事象が起こりまして、これに伴いまして、燃料費を火力の発電でカバーしたという状況になってございます。その結果、収入側は同じ18年に改定した料金のままで行ったわけですけれども、費用側が大きく偏ったということでございまして、ごらんいただきますように、売上は半々ぐらいのウエートですが、利益率の方は片や黒字、片や赤字、こんな結果になってございます。
仮に柏崎刈羽の全号機停止がなかりせばどうだったかもお示ししております。当時、原子力が止まった発電電力量および原子力と火力の燃料コストの差分により、燃料費の増を計算しますと4,200億円程度になっておりました。これを、それぞれの電力量に応じて規制部門と自由化部門に配分し直してみますと、仮にこの影響がなければ、枠で囲ってありますように8.9%と7.4%、ほぼ相互に均衡した数字になっていた、こんなことかと私どもは分析しております。
6ページをごらんいただきたいと思います。そうはいっても、家庭用などの規制部門と自由化部門とで料金単価が随分違うではないかという御質問もよくいただきます。ここでは、現行の料金が規制部門と自由化部門とでどのぐらいの水準になっているかというのをお示ししてございまして、規制部門はkWh当たり23円、一方の自由化部門はkWh当たり15円という水準になってございます。このうち燃料費等の可変費は、自由化部門は約9円、一方の規制部門は約10円。これは送電ロスの差がございますので、若干違っておりますが、kWh当たりほぼ同等の水準ということでございます。
一方、設備費などの固定費関係につきましては、自由化部門は6円、規制部門は13円ということで、ここで大きく差が生じているというところでございます。これは、下にポンチ絵を示させていただいておりますけれども、電気の設備といいますのは、発電所で発電して御家庭にお届けするまでに、超高圧の送電線あるいは変電所、更には一次変電所、配電用変電所を順次介しまして、6,000Vの配電線、更に柱状変圧器等の変圧器で100V、200Vに減圧しましてお客様にお届けする、こんな流れになっております。したがいまして、御家庭用などの低圧のお客様が使われる設備としては、配電用変電所以降の電柱ですとか、柱状の変圧器、こういったものが自由化部門にはない設備として使われる。こんなことも影響しているところでございます。加えて、電気の使われ方、単位当たりの使用量が家庭用部門は少ないといったことも相まって、kWh当たりの固定費負担が違ってくる、こんな内容になってございます。先ほどの配分ルールに従って、適正に算定していると私どもは考えております。
以上、簡単でございますが、御説明でございます。
残りの御質問につきましては、大変恐縮でございますが、時間の関係もございまして、もう一度御説明させていただく機会があるやに伺っておりますので、そのときに、残りの宿題につきましては御説明させていただければと存じます。
以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
たくさん質問項目があったものですから、すべてにはお答えいただけていないので、また12日に追加的な説明をいただくことにしまして、ただいまの御説明の内容について、御質問あるいは御意見のある方は発言をお願いいたします。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 御説明、ありがとうございました。今の自由化部門と規制部門の料金の切り分けについては、なおよくわからない点もありますので、できればまた文書ででも質問させていただきたいと思います。
特に私の方で思っているのは、6,763億円の収支不足があるということで幾つかの費目が計上されていますが、人件費の節約、資材・役務の調達、修繕費などの節約、燃料費の節約、これはなお疑問がございまして、もう少し納得のいく説明をいただきたいのですが、本日は特に事業報酬の部門が2,815億円計上されております。これがもし計上できないで済むならば、大幅な値上げはしなくて済むと思うのです。
幾つか質問させていただきたいのは、自己資本報酬率3割を6.32%と見ているのですが、現在の東京電力の株主に、なぜ6.32%の配当を含む利益を考えなければいけないのか。現実に直近3年間について、株主配当を行うことを予定されているのでしょうか。更に、国が大株主になるようですが、そうなりますと、国に配当する予定というのはあるのでしょうか。株主責任という観点においても、少なくともこれから3年間については、自己資本報酬を電気料金によって賄うということについては納得が得られにくいのではないかと思いますが、その辺の考え方をお聞きしたいと思います。
それから、他人資本報酬率7割を1.61%と見ておられるようですが、端的に言えばこれは借金ですね。これをなぜ、1.61%計上する必要があるのかがわからない。政府が保証するという観点から見ますと、優良の公社債利回り程度の利息での資本調達が可能であるということだと思いますが、逆にこれは、利息がなくても政府の調達した借金で賄えるのではないか。なぜ1.61%を乗せる必要があるのか。
より根本的な問題として、株主への配当原資であり他人資本への利息原資である事業報酬を、電気料金になぜ約3,000億円も転嫁しなければいけないのか。この辺は金額も大きいものですから、どうしても素朴な疑問としてあります。これは後ほどでも結構ですので、わかりやすく御説明いただければと思います。

○河上委員長 時間も余りありませんので、ほかに委員の方で、これだけは伺いたいという御発言がございましたら、いかがですか。よろしいですか。
では、今の質問について、糟谷部長からお願いします。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 まず、借入の方ですけれども、先ほど資料2の35ページで御説明いたしましたように、原子力損害賠償支援機構が市中から政府保証で調達いたしますのは追加出資をするお金だけです。賠償のお金は35ページの上の方なので、これは別です。したがって東京電力は引き続き、今、発行している社債の金利は払わないといけません。金融機関については、残高を維持し、なおかつ追加の融資を求めるということになっております。
これだけ財務状況が悪化する中で、金利を極力抑えてということではありますが、従来よりは上がるという方向に通常は効いてきます。したがって、金融機関に対する金利は相当抑えるものの、少なくとも従来程度には発生してくるということでありまして、これは、政府保証をせずに東電が金融機関から借入をしている、それがとりもなおさず債権者の責任を果たしてもらっているというわけです。そういうことですので、今までの東京電力の借入金全部について国が政府保証をするわけでは決してありません。あくまで追加で出資しようとしている1兆円の株式引受けの費用について、市中から調達をする際の政府保証ということです。
それから、株主の配当が見込まれているかということですが、当面、配当は見込んでおりません。では、事業報酬で得た部分はどうするのかということですが、一つには、毀損しております自己資本比率を戻していくことに使う。もしくは、可能な範囲で最大限、特別負担金という原賠機構を通じて国庫に納付をする支払いをやっていただきたい、というふうに考えております。

○山口委員長代理 余りこの議論にかけてもしょうがないと思うのですが、自己資本について言うと、既存の株主は、会社更生法か何かが適用されれば紙っぺらになった資本なわけです。なおかつ、今のお話は、実際上は内部留保を蓄積して将来の上場に備えるというふうに聞こえたんですよ。これからの3年間の中で資本蓄積をそれだけやらなければいけない、それを料金に乗せるというのはどうなのかなというのがある。それから、既存の債権者に対して利息も払わないといけないというのは、普通の商業のベースだったらわかるのですが、本来ならばもう会社更生で、金融機関の債務とかその他は、債権放棄を余儀なくされたような債権ではないかと思うのです。それについてなぜ利息を乗せなければいけないのか、なお説明がよくわからなかったので、お願いします。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 根本論で、なぜ会社更生をしないのかと、そういう御議論だと思いますが、今の制度上、会社更生法をやったときの債権者の優先順位でありますが、まず一般担保付債券、つまり、社債が一番優先的に弁済を受けることになります。その次に社債以外の銀行からの借入、それと賠償債務。つまり、銀行からの借入と賠償の債務というのが同列で、社債よりも劣後いたします。したがって、今、会社更生をやってしまいますと、賠償の支払いが滞ります。では、滞らないように国が払えばいいではないかということになりますと、それは全部税金で払うことになります。
東電は賠償を円滑に続け、それから事故処理もずっとやっております。事故処理に当たっている人たちへの支払いも継続してやらないといけません。そういう賠償、事故処理をちゃんと続けながら、しかも電気の安定供給をちゃんとやるという観点からは、総合的に考えられた結果、政府としては、法的整理という形によらない形の方が望ましいということで、判断をして動いているところであります。

○河上委員長 ほかにいかがですか。
小幡委員、どうぞ。

○小幡委員 今の事業報酬のところは一番問題だと思うところなのですが、そのほかもう一点、競争入札のところです。3割は競争入札を拡大していくということは、一般的に消費者から考えると、7割、3割が逆ではないかという感覚で受けとめられると思います。公的部門であれば、特殊法人とか、独法では、随契を見直す。一者応札も良くないということで、厳しく調達の経費を削減することは当然求められているわけです。今回、東電もこういう状況になりますと、かなり公的な部門に近い状況になっていると思いますので、民間企業がご自由にいろいろ調達するのと比べますと、やはり随契については、根本的に考え方を変えて見直す必要があるという状況にあるのではないかという感じがしております。
先ほど、なぜ残るかという御説明を、取組状況のところで伺いました。対応可能な取引先が1社だけだというのは、よくある話で、技術的にとても難しいところは随契が残るところではないかと思いますが、それ以外のところは、努力して、何とか調達コストを下げるという姿勢をもう少し示せないのかというのが、消費者の皆さんの感覚だと思いますから、30%を競争入札にするという数字については、物足りないという受けとめ方がされているのではないかと思います。

○東京電力(株)村松執行役員企画部長 ありがとうございました。御意見の内容につきまして、まず、目的とするコストダウンについては、当社グループ会社に対する随意契約そのものについて、コストそのものを全体で2割削減するということで、まずこれを進める。その中で、30%につきましては随意から競争入札にするということでございます。
内容につきましては、委員の御指摘も踏まえまして、きちんと精査いたしまして、これから拡大努力を続けていくということでございますが、ここにありますとおり、今までのところで内容を見てみますと、つくったメーカーさんにやってもらうというものが多くなっております。グループ会社のところで言いますと、一番大きいのは実際の電気工事でございます。その中でも特にお客様から、電柱の移設とかそういった形で要請される。また、事故対応というものがございますので、一定程度のものは必要というふうに考えてございますけれども、更に精査を進めてまいりたいと思っております。まず、コストにつきましては、総額に対して20%カットということでさせていただきたいと考えております。

○河上委員長 川戸委員、どうぞ。

○川戸委員 私も今、同じ疑問を持ったものですから。やはりこれはもっともっとやるべきだと思いますし、今、問題になっているのは、子会社とか関連会社、これが適切かどうかというのもあると思うのです。子会社、関連会社みたいにひとつまみにしていますけれども、本当にこれが必要なのか、そうではないのか。その辺を全部情報を公開して、出していただきたいというのが一つです。
もう一つは、資料1-1の II の人件費について、また、給与・賞与の削減について、ここの質問のお答えが全くなかったような気がしますけれども、その辺はいかがでございましょうか。

○東京電力(株)鈴木執行役員電力契約部長 人件費など残りの御質問につきましては、時間の関係で、次回改めまして、詳細に御説明させていただきたいと思います。
先ほどの事業報酬につきましても、算定の考え方、それから、基本的に私どもは何とか再生に向けて一生懸命努力していきたいという中で、是非御理解いただきたいところでございます。そうした考え方も含めまして、御説明させていただければと思っております。

○河上委員長 次回も予定されていることですし、またそのときにお願いしたいと思います。正直言って、非常に難しいので、更に工夫してわかりやすい説明をしていただければありがたいと思います。特に事業報酬の考え方に関しては、今、簡単な御説明をいただきましたけれども、まだまだわかりにくい。個人的には理解し難い部分もございました。これまでの随意契約の問題に関しても、今までどうしてできなかったのかという疑問もございます。これはやはり、電力業界のある種の構造の問題でもあったのだろうという気がいたします。
いろいろな意味で問題が多いようですが、今後、この消費者委員会の場も、わかりやすい説明の場として使っていただけるとありがたいと思います。委員会としても、今後の成り行きに関して十分注意して見守り、問題点をただしていきたいと思いますので、また、御協力をお願いしたいと思います。
今日は、お忙しいところをありがとうございました。

○経済産業省資源エネルギー庁糟谷電力・ガス事業部長 東京電力という特別な状況にあるのに、なぜ業界の平均値を使うのかということについて、十分お答えできていないような気がするものですから、そこだけ申し上げさせていただきたいと思います。
これは、その会社の実績ということになりますと、逆に、今度は東京電力の調達金利が上がれば、事業報酬のうちの金利の部分は上げなければいけないということになります。そういうことではなくて、やはりあるべき業界の平均的な資本コストということで、負債のコスト、株のコストを計算をした上で、それよりも高く調達したらその分は持ち出しになる。したがって、より安く資本調達をしようという努力も働く、そういうことで平均的なものを使っているということでございます。
配当をしないのだから、自己資本報酬率はゼロでもいいではないかという御議論、それを裏返しますと、金利がほかの電力会社より高いのだから、より高い金利を認めなければいけない、そういう議論にもつながろうかと思います。そこは、個別の企業の積み上げということではなくて、平均的な電気事業としての数値を計算して、電気事業をやっている以上、本来これぐらいの報酬が適正であるという考え方を式として定めて、それに従って算定していく。勿論、使い方をどう使うかということは経営の判断ではありますが、先ほど申し上げましたように、東京電力については当分の間、株主に配当するということは想定が全くされません。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
また、よろしくお願いいたします。

(2) 電気料金に関する有識者からのヒアリング

○河上委員長 引き続きまして、「電気料金に関する有識者からのヒアリング」を行いたいと思います。消費者委員会では、前回、5月22日の委員会でも御紹介いたしましたように、公共料金担当委員及び外部の有識者による電気料金問題検討ワーキングチームを開催しております。このワーキングチームでは、主として電気料金値上げの審査のプロセスに焦点を当てて、「1、決定過程の透明性及び消費者参画の機会が適切に確保されているか」「2、消費者にとって必要な情報が開示されているか」といった点について議論を行っており、その議論の現時点の成果が、本日の委員会でも配付いたしました「東京電力の家庭用電気料金値上げに係る質問」という形になっているところであります。
本日は、このワーキングチームに参画されている有識者の皆様においでいただき、先ほどの経済産業省及び東京電力の説明を受けて、今後、消費者委員会として電気料金の値上げの審査プロセスにおいて、消費者の理解を求めるという観点から、更に説明が必要な点は何かという辺りを中心に御指摘をいただければと思います。
大変恐縮ですけれども、時間の関係もございますので、各先生から5分程度のお話をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。
まず最初に、太田先生からお願いできればと思います。

○太田康広慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 基本的に専門的な内容が非常に多かったということはあろうかと思いますが、根拠となる数字が、きちんとコストのデータに基づいていて筋道が通っていれば、それは当然、リーズナブルだという話になろうかと思います。そこで一つ、経産省の方でも見られているとは思いますが、自由化部門のコストが規制部門に回されていることはないのかどうかという点が、一点、厳しく見ないといけない点であろうかと思います。
特に大きいのは配電です。最後の変電所から直接各家庭に行っているところのコストが非常に多い。実際、固定資産に占める配電設備の比率も多うございまして、先ほどの資料で言いますと、23円のうち6円というお話があったかと思います。8円の差が自由化部門と規制部門であって、うち6円は配電の部分のコストで説明できる。あと2円は送電のロスだというお話でした。実際に配電のコストは高いと思いますが、その6円が、きちんと正当化できる6円なのかというところが一つは焦点であろうかと思います。それは専門的には、先ほど説明がありましたABC(活動基準原価計算)というところの詳細を見ないと、何とも言えないということです。それが私としては一番気になる点でございます。
事業報酬に関して一点あろうかと思いますのは、六・何%という計算をするときに、βといいますか、先ほどのウエイトですけれども、事故を起こした後の部分が入っていると、非常に高くなってしまっている可能性があるのではないかという印象を持ちました。どのように計算されているかにもよりますが、事故の前であれば、βが小さく事業報酬が低めになるところが、比較的高くなっている可能性があるのではないか。記憶が正しければ、恐らく0.9とおっしゃったと思います。こちらの計算ですと過去は0.7という話がありまして、私の記憶違いでなければ、その点が少し気になったという点であります。そうすると、事業報酬が高めに出るということです。
私からは、差し当たり、2点でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
続きまして、大塚先生、お願いします。

○大塚良治湘北短期大学総合ビジネス学科准教授 大塚でございます。
私は経済産業省と東京電力の説明を伺いまして、結局は消費者に値上げによって東京電力の再建を図るというような御説明だと思いますけれども、東京電力としても会社更生法を適用してもおかしくないレベルであったと、山口委員長代理がおっしゃいましたが、それについての、債権者、株主、消費者の分かち合いということについて何も説明がなかったような気がいたしました。消費者に一方的に値上げのコストをつける、これについてはやはり丁寧な説明が必要で、その前提に基づいて、もし消費者、要するに利用者に電気料金の値上げを求めるのであれば、先ほど太田教授も言われましたように、原価の配分の差がとても大きいと思いますので、やはり丁寧な説明が要る。配賦基準と専門用語で言いますが、この御説明がなかったので、もう一回説明をいただければというふうに思っております。
あと、ワーキングチームでも議論になった事業報酬でございますけれども、やはりこれも、先ほど経産省の部長が、自己資本報酬率がゼロという考え方があれば、信用リスクが上がれば金利も高くなってもよいという考えになるのではないかという趣旨の説明をされましたけれども、それは違うと思います。政府が東電を実質的に国有化し、破綻処理をしないと決めたのですから、これは東電の貸し倒れのリスクがゼロになることと実質的に同じであって、金利はやはり低くなると考えるのが妥当です。したがって、既存の債権残高については政府保証がないと言う説明が、いまいちよくわからなかったのです。今回は、東電を破綻処理せずに実質国有化すると決めたはずですから、少なくとも実質国有化が継続している間は、既存債権についても貸し倒れが発生せず、実質的に政府保証が付いているのと同じではないのでしょうか。既存債権については政府保証がないという説明によると、破綻処理がなされる可能性も残されていて、債権者に債権カットを求める可能性もあるという理解でよいのでしょうか。
以上です。

○河上委員長 梶川様、お願いします。

○梶川融太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員 個々の原価計算過程というのは、資料を精査しないとわかりかねる部分でございますので、そこをここで明確な意見を挙げさせていただくというのは、ちょっと分を越えていると思いますので。
ただ、今の事業報酬のところは、国民的にもある意味では理解しやすい部分で、今の過程というのは、企業体がある程度の利益は、従来と同じ形で電力算定のルールに基づいて一定の利益を上げられるということは、今の計算方法ではある形で計算をされているということで、この利益に関しましては毀損した内部留保を積み上げるということで、配当にはされないというお話でした。
これは、そもそも国と東電との全体のスキームの中で、どういう形でどう負担をしていくかという話につながっていかれると思います。すなわち、特別負担金等の支払いもあるので、一定の内部留保、更にはある程度の収益力が必要だということは、確かにその負担金をある程度返済しなければいけないということなわけですから、それはそれなりの一定の理屈もあるのですが、それをもっと大きな枠の中で、どこが負担するか。先ほど大塚先生が言われたこととほとんど同じですが、消費者であり、国であり、東電であると。むしろ消費者と税金と全体のバランスで、あとは債権者の部分であると思います。
既存の借入に政府保証がついていないというお話はありましたが、これは、既存の借入についていないということはあるかもしれませんが、既存の借入のリスクがどの程度信用リスクになるのか。残りの部分の資金調達には政府保証がつく場合に、資金補助がついたのだけが政府で、既存部分にある程度債権として毀損してくるかということ。ただ、金利の市場は、全体のポリシーについての不安感を持つと、政府保証がつかない部分についての金利がマーケットで上がる。これは十分にあり得ることでございますから、そういう意味では全体のスキームについて安定感を持たせないと、今のお話はある意味では成立するお話だと思いますけれども、いずれにしろその辺が、今の段階では、金利が上がるかもしれないからこの方式で計算するというのだけでは、ここで見ておられた方にとって、もう一息はっきりした形を御説明いただいた方がわかりやすい。かつ、そのスキーム全体が安定しているということが多分、今、言った計算の中ではテーマになられるのではないかなと思います。
勿論、金融機関の方は、安定性がなければ当然ファイナンスとして高いプレミアムを求められますけれども、もし今の形が本当に安定していくのであれば、果たしてそこまで高いプレミアムを市場が要求するのかどうかというのもあるのだと思います。端的に言って、財務諸表上、利益が出るということについて、ないしは利益が出るかもしれない過程ということをどのように考えていくかということは、この消費者委員会で議論されることは十分に意味のあることではないかと思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
水上弁護士、お願いします。

○水上貴央弁護士(第一東京弁護士会所属) まず、最後にエネ庁の方が若干恫喝のように言っていた、実績で考えるのだったら利子はもっと上がるはずだから、他人資本収益率は例えば3%とかになるかもしれなくて、むしろ電気料金高くなりますよという議論ですけれども、あるべき資本コストというものを考えなければいけないというところまでは、私も賛同です。そもそも総括原価方式というのは、必ずしも100%実績ではかっているわけではなくて、そのうち電気料金に転嫁できるあるべきコストはどれだけかというのを考える議論です。それこそ実績そのままでいいのだとしたら、東京電力が無駄遣いをすれば全部それがコストになるのかという話で、その中から合理的にコストに転嫁していいのはどこまでかという議論ですから、一定のフィクション性がそもそもあるのです。ですから、あるべき論だということ自体についてはそのとおりかと思いますが、では、今の東京電力のあるべき資本コストはどれだけかということを、きちっと考えてみる必要があると思います。
そうすると、まず一つには、東京電力は大株主が完全に国になるという状況になっていて、当面、配当もしないということになっている。では、内部留保する必要はないのかという議論があり、特別負担金を払いますという話がありましたけれども、例えば、内部留保でためた、営業利益が出たと。自己資本報酬額はそのまま全額、特別負担金に充てますというルールがもしあるのであれば、その説明は一つ合理性があると思います。
しかし、そんなルールはないのです。つまり、利益が出たとして、本当に特別負担金を負担しなければいけないのかどうかわからないのです。そういうふうに利益が出れば、一定の割合で必ず特別負担金を払わなければいけないというルールがあるとしたら、特別負担金は債務に計上されるはずですから、負債に計上されていないということはそんなルールはないということで、利益が出たからといって特別負担金が支払われる保証はないのです。ですから、特別負担金を払うので内部留保をためさせてください、という理屈は全く通らないということになります。一方、配当する予定もないという状況で、自己資本報酬率はなぜゼロではだめなのかということについては、とりあえず本日の説明では、少なくとも合理的な説明はされなかったというふうに考えるべきだろうと思います。
他人資本報酬については、先ほど、政府保証がつかないので利息は上がりますという話がありました。国がつぶさないと決めた東京電力において、政府保証をつければ電気料金を上げなくて済んで、政府保証をつけないと電気料金を上げられますということになったときに、じゃあ、つけろよというのがむしろ筋論ですね。政府保証をつけることを前提に他人資本報酬率をもっと下げられないのですかという議論が、むしろ出てくると思います。なぜならそれは、本来であれば特別清算なり会社更生なりしなければいけない状況だったのに、国が政策判断としてつぶさないと決めたということであるとすれば、国の判断のリスクをそのまま電気料金として消費者に転嫁するというのはどういうことか、という問題はやはりあろうかと思います。
例えば国債のベースで考えれば、他人資本報酬も1%とか1.1%とか、そういう話になってくるというふうに考えて、自己資本報酬率がゼロでいいというふうに考えたとする。これは仮定の話ですけれども、そうすると、自己資本報酬額は2,800億円ではなくて、恐らく900億とかそれぐらいになるでしょうから、2,000億円以上のコストが実際には電気料金には転嫁させない形で済むということになると思います。
また、いわゆる委託料等とのコストですけれども、実績ベースで言うと六・数%要りますみたいな話が出されていて、また、関係会社のものについては2割削減しますというような話がありますが、本来のあるべき論から言うと、委託費全額ベースで2割ぐらいコスト削減をしてもらわないとおかしいのではないかと思います。そういう意味では、そこも2割ぐらいは削減するベースでむしろ総括原価は考えるべきです。もっと削減できれば、総括原価というのは先ほども申し上げましたようにフィクションですから、2割をベースに総括原価の金額が決まって、東京電力はもっと頑張って3割削減できれば、1割分は東京電力の利益になることは全く構わないと思いますけれども、その点については、全額ベースで2割ぐらい削減できても全くおかしくないのではないか。
それはフィクションの話ですから、消費者として、どこまで削り込むことを消費者委員会として要求することが正当かという議論になりますので、少なくとも現状に比べて2割ぐらい削減できる金額しかコストには乗せられないという説明をすることは、私は、消費者の立場を代表する消費者委員会としては真っ当な議論ではないかと思います。
例えば、そういった議論を前提にした仮定の話として考えると、今の2つを合わせて3,000億円ぐらいが削り込めるという議論になる。6,700億足りないと言われているけれども、実際は三千数百億しか足りなくないのではないかという議論は、当然、一つの仮定としては考えられると思います。
以上、意見を申し上げます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
お話しいただいた内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いします。いかがでしょうか。
山口委員。

○山口委員長代理 太田先生に伺いたいのですが、先ほど自由化部門と規制部門の均衡の説明があったわけですが、どうも平成18年辺りのデータをもとに割り振ったように聞こえたんですね。それが刈羽の原発が使えなくなったことによって、異常事態になったので、19年は自由化部門は赤字になった。更に、その後も利益が抑えられているという説明なのですが、刈羽原発がない前提で自由化部門と規制部門とで収支を割り振ったら、全然違ってくるのではないか。平成18年辺りの割り振りを、そのまま平成22年、23年、24年に持ってきているのではないか。そんな気がしたのですが、その辺は私の見間違いなのでしょうか。割り振りの仕方がよくわからなかったのですが。

○太田康広慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 「部門別収支について」という、資料3-2の例えば4ページの説明の話ですかね。

○山口委員長代理 そうです。

○太田康広慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 これは、自由化部門に比べて規制部門の方が固定資産が多いというのは、間違いないだろうと思います。送電設備がその分、かかりますので、実際に固定資産を見ましても、東京電力さんの電気事業用資産の中で、発電よりも圧倒的に送電と配電の設備が多いわけです。設備の負担が多いところと比べますと、自由化部門は燃料費のウエイトが高いので、燃料費が高騰するとその分のダメージは自由化部門に行く。よって自由化部門の方が利益が低めに出る、そういう議論そのものは筋の通った説明であろうかと思います。
どこを基準にして割合を考えるかということですが、それはいろいろな前提がございまして、原子力発電所をいつ再稼働するかとか、高い燃料費をそのまま払い続けるかとか、そういったいろいろな仮定の変化によってこれはずれてくるだろうと思います。ですから、いつ、どういう状態を、利益率をちょうど分ける通常の状態と考えるか。その状態よりも燃料費がたくさんかさむ方向、つまり、原発を再稼働しない方向に行けば行くほど自由化部門の方は利益が小さくなり、規制部門の利益が増えるという構造にあることは、間違いないと思います。

○河上委員長 ほかにはいかがですか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 今日の先生方の御意見に対する具体的な意見ではないのですけれども、未曽有の事態になってこういう状況になっているわけですね。原子力が安全だ、安全だと言っていて、実はそうではなかった。それに対する責任は誰にあるのかというふうに考えたときに、よく、消費者は今まで原子力を使った安い料金で電気を使っていたのだから、消費者にも責任があるという言い方をしますね。
ただ、私はそうとは思わなくて、選べなかった、それを使わざるを得なかったわけだから、それを、消費者も恩恵を受けていたから責任を取れ、みたいなのは違うなというふうに思うのです。その一方で、株主とか金融機関というのは、株式市場あるいは金融市場でそういった東電を支持してきたわけです。東電の、原子力による発電というものを中心としたやり方に対して、それを支持して自由意思によって投資なり融資をしてきたわけだから、こういう状況になれば、よりリスクを負うのは自由意思で東京電力を支えてきた人たちであって、一番責任がないのは消費者ではないかというふうに個人的には思います。投資家あるいは融資した者の社会的責任というのは、消費者の東電に対する責任よりもはるかに重いと思いますけれども、どのような御意見をお持ちでしょうか。

○太田康広慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授 非常に難しいのですが、税金の方というと当局、端的に言うと財務省主計局という話で、投資家であれば、債権者と投資家、あとは消費者と対立して見えるのですが、実はこれ全部、我々のことなんですね。つまり、投資家といってそこに行っている部分は我々の年金かもしれないし、仮に破綻ということであれば、その負担はやはり国民が負うわけです。ここで電気料金を上げるという形で消費者が負担する。でなければ、税金という形で納税者が負担する。個々人の人は、今、自分がどれだけポジションをとっていて、あるいはあと何年生きるかということによって、割合が変わりますけれども、結局、東京電力がつくり出した大きな債務というのは、我々が負担するしかない。あとは負担の仕方を、消費者としてするのか、投資家としてするのか、納税者としてするのか、そういう割合の問題でしかないと思います。
勿論、東京電力の無駄を極限まで削減することはやってしかるべきなので、そういう圧力、もしくはそういう規律をきかせることは、消費者委員会のお立場として重要だと思いますが、結局我々が払うので、どの立場で払うかという問題であろうかと思います。

○河上委員長 村井委員、どうぞ。

○村井委員 どの立場で払うかという根源的な問題はさておきまして、先ほど資源エネルギー庁のご説明の中で、山口委員長代理の東京電力の破綻・再生という手法のスキームの提案に対して、政府は東京電力に対しては、破綻・再生という選択肢は選ばず、電気料金の値上げを前提に一兆円という国費の投入を決めたと仰いました。先程太田先生がご説明されたように、究極的には、税金で払うか、電力料金の値上げという形で支払うのかということに行き着くと思いますが、規制部門の値上げの申請・認可という法に定められたプロセスの中では、今回の値上げに関して、東京電力が申請者で、認可するのは経済産業省になると思いますが、認可する立場の経済産業省から、政府の決定であるという言われ方をされると、今後、消費者委員会として一定の意見や提言を出しても、政府として、考慮されるのか甚だ疑問に思います。この点に関して、各先生方のご意見を頂きたいと思います。

○河上委員長 水上弁護士、どうぞ。

○水上貴央弁護士(第一東京弁護士会所属) 本当に根本的な話になっていくと、太田先生の話になって、結局のところ、誰かが何らかの形で負担しますと。我々は、一方では納税者で、一方では投資家で、一方では利用者ですから、どの立場で払うかだけの差ですという議論は、本当に根源的なところまで行けばそうだと思うのです。一方で、そうは言っても、消費者として払うべきなのか、税金の納税者として払うべきなのかは、だからどれでもいいという話ではなくて、やはり筋は通さなければいけないという議論だと思います。つまり、我々は消費者として払うことが本当に適切なのか。最終的には、国民である以上は納税者として払わなければいけないけれども、少なくとも消費者として、簡単に電気料金を上げられるのはおかしいという議論になるのかということは、私は結構重要なことだと思います。
その上で私は、今回の値上げというのは言い値で認められるような話のものではないと思っています。なぜなら、東京電力というのは既に普通の会社ではなくなっている。そもそも公共料金のプログラムからいくと、電力会社というのは普通の会社ではないという建付けでしたけれども、更に、東京電力は普通の電力会社でさえなくなっているので、今の東京電力の資本構成なり事業状況を考えたときに、真っ当な事業報酬が取れるのかとか、東京電力が試算したベースの委託料を、そのまま総括原価として認めていいのかということは、やはり消費者の立場で我々としては厳しく見なければいけないということになると思います。
その点、もしも経済産業省が言い値で認めるつもりだとすれば、むしろ消費者委員会の立場の役割が非常に大きくなっていて、唯一のカウンターパートになり得るという話になりますので、そこは、消費者の立場でしっかりとした御指摘をいただければなというふうに、外部の者としては思っている次第です。

○河上委員長 大塚先生、お願いします。

○大塚良治湘北短期大学総合ビジネス学科准教授 切り分けの問題という話が出ましたけれども、やはり消費者の立場に立つ消費者委員会としては、消費者の利益にかなう主張をした方がいいのではないか。
東電の再建や電気料金値上げをめぐる議論について、消費者も、株主や債権者も、結局はみんな私たち国民であり、最終的には私たち国民が負担するということは確かにその通りですが、ここはやはり切り分けをきちんとして、責任の所在をはっきりとさせるべきだと考えます。私は細川委員が言われたことに賛同します。今回の電気料金値上げは消費者に負担を求めているわけですが、それについての妥当性が本当に議論されているのか疑問に思っています。会社更生法はだめ、電力の安定供給のためにはつぶさない方がいいという説明でしたけれども、だからと言って、株主や債権者に全く責任がないのかと言ったら、そうではないのかもしれません。 例えば、破綻処理ではなくても減資という方法ですと、減資差益が出ますが、その減資差益でコストアップの負担を株主も分かち合うことはできるのではないか。そういう議論だってあり得るわけです。そういう総合的な判断をして、しからば東電を立て直し、電気の安定供給を果たすためには、これだけの負担を求めますという議論ならわかるのですけれども、東電の説明はただコストはこれだけで、だからこれだけの値上げが必要だと言っているだけのような印象を受けます。そういう説明だけでは、やはり消費者としては納得できないのではないかという感想を持っております。

○水上貴央弁護士(第一東京弁護士会所属) もう一点だけ。少なくとも先ほど言った特別負担金との関係は、一度、質問か何か書面でされた方がいいのではないかと思います。自己資本収益報酬というのがもし合理的に説明できるとしたら、自己資本報酬額、報酬率を掛けた自己資本ベースの報酬は、丸ごと全部特別負担金に充てますというルールが固まれば、それは一つの考え方です。金輪際、自己資本ベースの報酬はずっと特別負担金に充て続けますと。そうすると、東京電力の株価はずっと上がらないということになると思いますけれども、でも、東京電力はそうしないとしょうがない状況にあるわけです。そこまで逆に決めてしまうのであれば、その理由で自己資本報酬をつけますというのであれば、それは一つの説得力のある説明になると思いますが、今はそうなっていない。少なくとも今の状況において、特別負担金を支払うために自己資本報酬が要りますという説明は全く合理性がないということになるかと思いますので、そこはむしろ書面で質問を一度された方がいいのではないかというふうに私は思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。
いろいろな意味で難しい問題で、技術的にも、今、聞いただけでも私にはよくわからないことが多かったのですけれども、少しずつ勉強してやっていきたいと思います。先生方の御議論をうかがいながら、少なくとも、あるべき資本コストは何なのかということをきちんと考えないといけないということは非常に印象的でした。会社更生があってもおかしくない状態にある東京電力が、こういう形で事業利益を考えていくという前提そのものが、本当にとれるのか。あるいは、債権者、株主、消費者の「分かち合い」という観点が、必要ではないかという先生方の御指摘にも大変示唆に富むものがございました。先生方からは、ほかにもいろいろ貴重な御意見をいただきまして、大変参考になりました。ありがとうございました。
本日の議論の結果につきましては、今後、消費者委員会での議論に反映させてまいりたいと考えております。
電気料金問題検討ワーキングチームの有識者の皆様におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。また、これからも御協力をよろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

≪3.消費者基本計画の検証・評価・監視について≫

○河上委員長 続きまして、「消費者基本計画の検証・評価・監視について」であります。消費者基本法においては、消費者基本計画の検証・評価・監視について、それらの結果のとりまとめを行おうとする際には消費者委員会の意見を聞かなければならないとされております。このため、消費者委員会においては、計画の重要課題ごとの施策の進捗状況等について、第87回から第89回委員会までの3回にわたり、関係省庁に対してヒアリングを実施したところであります。
本日は、関係省庁ヒアリング等を踏まえて、消費者基本計画の改定素案の内容について、消費者委員会としての意見をとりまとめたいと思います。資料4として意見案を配付しておりますので、この点について、山口委員から説明をお願いしたいと思います。

○山口委員長代理 過去3回にわたって、消費者基本計画についてのヒアリングをさせていただきまして、種々議論をいたしました。それを踏まえて、今日、できましたら、次のような内容で消費者委員会としての「消費者基本計画の改定素案等に対する意見」をとりまとめられればと思います。
資料4として配られておりますものを、簡単に読みながら御説明させていただきたいと思います。
まず1番は、施策番号21関係で、放射能汚染への対応とリスクコミュニケーションの関係です。放射能汚染に伴う消費者の不安を解消するためには、食品の安全性等に対するリスクコミュニケーションをより効果的に行うことが必要です。このため、関係省庁に対して、この取組の整合性を確保するための措置について、計画の具体的施策にこれを明記していただきたいということです。
更には、放射線測定器の精度にバラつきがあることが、消費者の不安や悪質商法をもたらす一因となっているので、測定器について、JIS化を通じて精度の規格化を推進するとともに、これを計量法の規制対象に加えることによる効果や課題等についての検討に、速やかに着手していただきたいということで、これは経産省と議論をいたしましたけれども、これも盛り込んでいただきたいということです。
効果不明の放射線測定ビジネスや除染ビジネスなどについて実態把握に努めるとともに、必要に応じ、適切な登録・認証等を行うための制度の導入を含めた対応の在り方についても検討していただきたい。これを盛り込んでいただきたいということです。
食品表示一元化、施策番号69、73関係ですが、平成24年度中の法案提出を実現するため、消費者庁としての考え方を明確にした上で関係者の合意形成を図り、速やかに法案作成に着手されたい。施策を実行していただきたいということです。
消費者安全行政、施策番号4、12、13の関係ですが、当委員会の建議における指摘事項を踏まえて、重大事故情報の収集・分析・公表・活用の各段階で残された課題について再度検証・評価を行って、改善が必要なものについては施策に明記していただきたいということです。特に、事故情報を整理する上で有効と考えられる事故情報の公表基準については、これはさんざんおっしゃっているところですが、いまだに出てきませんので、速やかにきちんと策定して公表していただきたいということです。
電動シャッターや立体駐車場による事故について原因究明を行い、速やかに必要な対策を講じるべきだということで、これを盛り込んでいただきたいということです。
こんにゃく入りゼリーによる窒息事故への対応として、新規施策に盛り込むべきではないかということであります。こんにゃく入りゼリーによる窒息事故の再発防止に向けて、これまでの取組についてのフォローアップを継続するとともに、食品の物性・形状面での安全性の確保や、注意喚起表示の義務化を図るための法整備の在り方について検討を行うことを計画の中に追加していただきたいということです。
次に、新規施策で、違法ドラッグ対策であります。当委員会の提言における指摘事項を踏まえて、違法ドラッグの撲滅に向けて、指定薬物の包括指定や麻薬取締官に取締り権限を付与すること等による取締りの強化を提言しているところですが、これを具体的な施策の中に明記していただきたいということです。
施策番号39関係の、エステ・美容医療サービス等につきまして、当委員会の建議、指摘事項を踏まえて、緊急性がそれほど高くない美容医療、歯科インプラント等の自由診療については、施術の前に患者に必ず説明し、同意を得るべき内容を盛り込んだ指針等を整備して、周知を行うこと。それには、エステ等の施設における衛生管理の実態を把握し、必要に応じて、衛生管理のための指針を整備する措置を講じること等の事項を、計画の具体的施策の中に明記していただきたいということです。
医療機関のホームページ上の表示の改善を図るために、厚生労働省が作成することにしているガイドラインについて、医療機関による取組を徹底するとともに、その実施状況を検証・評価できるようにするため、計画の具体的施策に追加していただきたい。また、医療法に基づく広告規制の在り方について、患者に適切な情報を提供するという観点からも検討を行うとともに、規制に対する消費者庁の関与の在り方についても、引き続き検討することを具体的施策に追加していただきたいということです。
また、まつ毛エクステンションに係る消費者の安全を確保するため、厚生労働省の検討会において検討している被害防止策について、できる限り早く結論を得た上で、具体的施策に追加していただきたいということです。
次に、施策番号58の有料老人ホーム関係であります。入居一時金の実態を把握し、入居一時金の在り方及び償却についての透明性を更に高めるための施策、これを計画の具体的施策に明記していただきたいということです。
投資詐欺対策でありますが、これは既に施策に書いてあること、更に新規施策があります。まず、いわゆる劇場型詐欺の急増や二次被害の発生など、新手の投資詐欺による消費者被害が絶えないことから、関係省庁における取組を更に強化していただきたい。特に、投資詐欺対策については、被害回復手続や加害者の摘発のための執行力強化が急務であることから、消費者行政部局と警察との現場レベルにおける連携強化のための仕組み(人事交流なども含む)を実現することについて、施策に明記していただきたい。
次に、詐欺的商法のツールとして、レンタル電話、IP電話、バーチャルオフィスへの対応、法人登記手続簡略化の見直し等について、具体的施策に追加していただきたい。
更には、投資ファンドに係る登録事項や消費者等への情報開示の在り方の見直しについても、引き続き検討していただきたいと思います。
最後に、金融商品取引法の消費者被害の防止・救済のための規定に対する、消費者庁の関与の在り方についても検討していただきたいということであります。
次に新規施策で、CO2排出権取引への投資に係る消費者問題であります。これについては、一般の消費者にはわかりにくい、ハイリスクで複雑なデリバティブ取引であるにもかかわらず、適切に規制する法律が存在しないことから、被害は頻発しております。これを防止するためには、取扱事業者に対する参入規制を強化するとともに、消費者に対する事前の重要事項の説明や適合性原則の厳格な適用等を徹底する必要があります。関係省庁において、この規制の在り方や効果的な対策について検討を行い、速やかな措置を講ずることを具体的施策に追加していただきたいということであります。
次に、決済代行などのインターネット消費者被害対策、施策番号153、171関係です。決済代行をめぐる問題については、インターネット取引、とりわけ越境取引の増加に伴い、今後も消費者被害の増加や複雑化が見込まれることから、現在の施策をしっかり推進するとともに、消費者被害抑止のために新たな施策を検討していただきたいということです。
また、プロバイダ責任制限法については、インターネットを利用した加害者の特定を容易化するため、発信者情報の開示請求の対象や開示請求可能な情報等を拡大する方向での見直しを検討していただきたい。また、消費者被害の抑止・救済の観点から、同法の関連規定に対する消費者庁の関与の在り方についても検討していただきたいということです。
特定商取引法の見直しについて、施策番号41、43関係です。現在頻発している貴金属等の訪問買取りに係る消費者被害を防止するため、特定商取引法改正案の早期成立に引き続き努めるとともに、当委員会が今年3月27日付意見で指摘した同法をめぐる課題についても、見直しに向けた検討を進めていただきたいということです。
預託法の見直し、施策番号41-3の関係です。安愚楽牧場の経営破綻への対応を通じて明らかになりました預託法の制度面・運用面の問題点の整理を行うとともに、制度の運用や政省令・通達などで対応可能なものについては、速やかに対応していただきたいということです。
次に、景表法の執行強化、施策番号80関係です。不当な広告・表示当に起因する消費者被害の防止のため、景表法をより積極的に執行するとともに、都道府県を含めた執行体制の強化を図っていただきたい。また、消費者庁発足以前に検討されていた課徴金の導入をはじめ、同法のより効果的な運用を可能とするための措置についても、具体的に検討していただきたいということです。
それには、コンプガチャ以外の類似の課金システムやステルスマーケティング等に係る景品表示法の考え方の明確化を図った上で、必要な対策を講じていただきたいということです。
次に、先ほども東京電力の問題がありましたが、公共料金、施策番号62-2の関係です。当委員会の建議や消費者庁の中間取りまとめにおいて指摘されているように、公共料金については、消費者に対してわかりやすい情報提供を行うこと、これは決定過程の透明性の向上であります。それから、決定手続において消費者の意見を反映する仕組みを構築すること、これは消費者参画の機会の確保であります。
それから、経営効率化インセンティブが働くような仕組みを構築するとともに、料金の妥当性について継続的な検証を行うことが重要であるということで、消費者目線に立った公共料金を実現するために、公共料金を所管する各省庁においては、これらの課題にしっかり取り組むとともに、消費者庁においては、各省庁によるこれらの取組について常時モニタリングを行い、その取組を更に後押しする役割を果たしていただきたい。
消費者庁と各省庁による以上の取組については、その進捗状況について、継続的に検証・評価を行うため、実施時期を明確にした上で計画の具体的施策に明記していただきたいということであります。
次に、地方消費者行政、施策番号121、122の関係です。集中育成・強化期間以降の地方消費者行政支援を効果的に行うために、是非、本年6月末までにとりまとめる指針に、財源の確保を含めた必要な支援策をしっかりと盛り込んでいただきたい。これは消費者庁への要望であります。特に、広域連携の推進による消費生活相談に係る人口カバー率の向上、警察及び福祉部局と消費者庁行政部局との連携強化、自治体における予算措置や人員配置を促すための国の支援の在り方等について、実効性のある仕組みを実現していただきたいということです。
施策番号110関係の被害者救済制度であります。これは法案国会提出に向けて作業を加速していただきたい。消費者被害の実質的な救済のための行政手法の在り方についても検討し、早期に成案を得ていただきたいということです。
次に、施策番号127の適格消費者団体支援です。集団的消費者被害救済に係る訴訟制度に、適格消費者団体の業務遂行費用を確保するための措置をしっかりと位置づけるとともに、資金の確保や情報面等における更なる支援措置についても、引き続き検討していただきたいということであります。
最後に、消費者関連法令についての消費者庁の関与の在り方、施策番号134の関係ですが、消費者の利益及び擁護の増進に関する法律についての、消費者庁の関与の在り方について、消費者被害の発生・拡大の状況や消費者行政が直面する具体的な課題等に即しつつ、引き続き関係省庁、消費者庁で検討を行っていただきたい。
本件については、当委員会としても、計画の検証・評価・監視に係る関係省庁ヒアリングや建議・提言のフォローアップの機会等をとらえて、引き続き検討を行い、必要に応じて意見を述べていくこととしたいと存じます。
以上であります。

○河上委員長 どうもありがとうございました。原案については、あらかじめメール等でお回しして意見を伺い、その意見のほとんどは修文に反映させていただいておりますけれども、この段階で御意見のある方がございましたら、発言をお願いいたします。いかがでしょうか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 今まで、ヒアリングもして我々が議論して決めたことなので、この内容について意見があるというわけではないですけれども、ただ、この中に入っているものはかなり深刻な問題が非常に多いです。基本計画は5年でその中の見直しということで、勿論入れてもらうのはいいのですけれども、それで終わりでは何にもならない。確かにこれの前文で、「必要に応じて建議・提言等を行っていくこととする」というのがありますけれども、それが重要で、もう少し想像力を働かせて、この一つひとつはさっと読めてしまいますけれども、それぞれについてたくさんの被害者がいるわけだし、毎日毎日、新たな被害者が出て、被害者予備軍がいるものもいっぱいあるわけです。
こういうところで出てきたものを、消費者委員会、消費者庁、あるいは関係省庁がもっと真剣に考えて、早急にこの制度づくりをする。そういう仕組みをつくっていかないと、毎回ただ言って終わりで、それで、多少は進んだなというような状況が非常に多いですね。私は、そこがもう少し何とかならないのかなというふうにいつも思っています。意見です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。少なくとも、見直しで文章としてあらわすということが、次のフォローアップなどの手がかりになるということでもありますし、今後の建議に向けての問題提起にもなるということで、是非この意見を各省庁にはしっかり読んでいただいて、できるだけ反映させていただければと思います。
黒田課長、何かございますか。

○消費者庁黒田消費者政策課長 ありがとうございました。このいただいた御意見、また、5月18日に締め切っておりますけれども、意見募集でいただいた御意見なども踏まえまして、6月末を目指しまして、実際に政府として何をやるかということについて、見直し案をとりまとめていきたいと考えております。
できる限り意見を反映するという観点から、一つだけ質問させていただきたいのですけれども、中身を伺っておりますと、語尾の使い分けがあって、中長期的な課題も含めて御意見をいただいていると理解していますけれども、特に、具体的な施策に追加されたいという書きぶりのところについては、基本的には、この文章の文言を、そのまま計画に盛り込むのが委員会の御意見だという理解でよろしいでしょうか。

○河上委員長 書きぶりに関してはまた相談させていただきますけれども、書けるものであればこの文章を使っていただけるとありがたいと思います。

○消費者庁黒田消費者政策課長 分かりました。他の文章との並びとか、言葉遣いとか、分量とか、どこまでできるかということも含めまして、実際の文言については、もしかしたら書いてあるとおりというわけにもいかない場合もございますので、そこは事務局を通じて調整させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○河上委員長 山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 ヒアリングの過程で、関係省庁の壁が厚いところも項目的には幾つかよくわかっております。是非、消費者庁において努力、御尽力いただいて、関係省庁を説得してといいますか、実現するようにお願いいたします。

○河上委員長 それでは、この意見案については皆様の御了承をいただいたということで、消費者庁長官及び関係省庁宛てに提出したいと思います。どうもありがとうございました。

≪4.食品安全基本法第21 条第1項に規定する基本的事項の改定について ≫

○河上委員長 続きまして、「食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項の改定について」です。基本的事項の改定につきましては、食品安全基本法で、食品安全委員会及び消費者委員会の意見を聞くということが定められております。本年3月2日付で内閣総理大臣から消費者委員会委員長宛てに、改定案の骨子について意見が求められ、3月27日に消費者委員会としての意見を述べたところであります。現在は、消費者庁が作成した改定案について、5月31日(木曜日)までの期間でパブリックコメントが実施されています。
本日は、消費者庁においでいただいておりますので、委員会の意見が改定案にどういうふうに反映されたのかという点を中心に御説明いただき、議論を行いたいと思います。また、その議論を踏まえて消費者委員会としての意見をとりまとめたいと思います。
それでは、説明をお願いいたします。なお、説明は、恐縮ですが10分程度でお願いいたします。

○消費者庁金田消費者安全課企画官 食品安全基本法第21条に規定する基本的事項の改定につきまして、御意見をいただいたところでございます。詳細な説明につきましては、先日の委員間打合せで説明したので、ごくかいつまんで説明したいと思います。
御意見をいただきまして、私どもといたしましてはこの改定案をつくり、現在、パブリックコメントを実施しているところでございます。いただきました御意見のかなりの部分が、現行の基本的事項に既に読める部分、そして、既に実施している部分であるという考え方をお示ししたところでございますが、特に3点ほど、補足として説明を要請されている点があると認識しております。
1点目は、こんにゃく入りゼリーのような物性や形状について、この基本的事項においてどのように考えるべきか。2点目として、今、食品に関する一番のリスク要因でございます放射性物質、特にそれが海洋汚染、魚介類にどのように影響を与えているのかという点でございます。3点目といたしまして、現在、食料自給率がカロリーベースで40%程度である。我が国において摂取されている60%を占める輸入食品の安全性をいかに守っているのか。そういった3点についての説明が、必要ではないかという御連絡をいただいているところでございます。主にこの3点に絞って簡潔に御説明したく思います。
まず、こんにゃく入りゼリーのような物性・形状につきまして、それがもたらす窒息事故につきましては、食品安全委員会におきまして、「食品による窒息事故に関するワーキンググループ」が食品安全委員会に置かれ、そこで食品健康影響評価がなされたところでございます。
消費者庁といたしましては、まだ組織ができて3年目でございまして、できた当初の評価でもあり、どのような対応をとるべきかという点について苦慮したところではございます。しかしながら、お配りいたしました資料5-3から5までをごらんいただければと思いますが、資料5-3にございますとおり、まずは消費者の皆様への注意喚起を行ったところでございます。子どもさん、高齢者の皆様で窒息事故が発生している。そして、資料5-3の裏面をごらんいただければと思います。特にこんにゃく入りゼリーのようなものにつきましては、「食べ方による窒息予防」の真ん中のところをごらんいただければと思いますが、「食べやすい大きさにして、よくかんで食べる」。そして警告マークとして、「一口タイプのこんにゃく入りゼリーには、子どもや高齢者には不向きであることを示す統一的な警告マークや注意書きを、袋に表示しています。購入時、食べる時には、確認しましょう」というふうに書いているところでございます。
資料5-5をごらんください。食べ物による窒息事故防止のための情報提供について、年末年始の例ということで、窒息事故が発生した食べ物の例も下にグラフで書いてあります。どのような食べ物で窒息事故が発生しやすいのかということを具体的に示して、その中で、カップ入りゼリーについては、12歳以下の子どもで重症、重篤、死亡の被害が発生した食品ということを明示した上で、注意喚起を行っているところでございます。
また、こんにゃく入りゼリーの事業者の方々に対しましては、これまでさまざまな形での行政指導、お願い、そういったものを行っております。その結果につきましては、資料5-4をごらんいただければと思います。参考にはつけていませんが、平成22年12月28日公表「こんにゃく入りゼリー等による窒息事故リスクの低減に係る周知徹底及び改善要請について」ということで、行政指導を行った結果といたしまして、その裏面、右の上には別紙とありますが、ここに、一口サイズのカップ入りこんにゃくゼリー製造事業者がすべて書いてあります。改善措置について、従来の製品から新製品についてどのように移行して、どのような改善を図ったのかということが書いてあるところでございます。すなわち、すべての事業者におきまして、窒息事故の発生がないようにということを担保するための取組を現在行っているところと、我が方としては承知しているところでございます。
こんにゃく入りゼリーにつきましての説明は以上でございます。
続きまして、2点目、放射性物質による海洋汚染についての、特に魚介類に関しての資料でございます。資料5-6をごらんください。原子力災害対策本部、これは、原子力災害対策特別措置法に基づきまして、内閣総理大臣を本部長として置かれている対策本部ですが、そこにおいて「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」として定めたものでございます。
2ページ目をごらんください。具体的な検査対象品目と書いてございます。御指摘の魚介類につきましては、4ページの「(4)水産物(50Bq/kgを超える放射性セシウムが検出された品目)(以下に示すものは品目群による表記である。具体的な品目群とこれに対応する品目は別添参考の「水産物の類別分類」を参照))としておりまして、ア、イの2つ、海産魚種及び内水面魚種の両方に分かれますが、特に御指摘の海産魚種については、アのところで、福島県、宮城県、茨城県、岩手県及び千葉県を検査対象といたしまして、イカナゴ以下列挙されている魚介類について検査を行うというふうにしているところでございます。
更に詳細な部分につきましては、11ページをごらんください。水産物の類別分類という表がございます。その中で特に注目していただきたく思いますのは、その表の下から4つの部分をごらんください。カレイ類が3つに分類されておりまして、主な生息域が100m以浅の品目、カレイ類で主な生息域が100m以深であり、500Bq/kg超過が検出されたことがある品目、カレイ類の中でも主な生息域が100m以深であり、というものに分かれています。
すなわち、今、問題になっている、そして御指摘をいただいております、陸地から水や泥の形で、放射性物質、主に放射性セシウム137、134ですが、それが流れ込んでいく先である海、そこに生息するものとして特に注目しなければならないカレイについて、主な生息域が100mよりも浅いものについては、別個の分類を立てて検査をしているところでございます。また、次の12ページをごらんいただければと思います。その中でも海産魚種として、海の底にいます貝類、ウニ類、海の底に生えています海藻類といったものについて、重要な検査魚介類として特記しているところでございます。
日本の太平洋沿岸につきましてこれから海洋汚染が広がるのではないかという御指摘を踏まえて、このような検査体制をとっているところでございます。
具体的な出荷制限のかけ方については、7ページ以降、「国が行う出荷制限・摂取制限の品目・区域の設定条件」というところに書いてあります。これにつきましては、「基準値を超えた品目について、生産地域の広がりがあると考えられる場合、当該地域・品目を対象とする」としているところでございます。
具体的なところにつきましては、水産物については17ページ別添4以下に書いているところでございます。御指摘の沿岸性魚種については、(1)のマル2に沿岸性魚種等と書いてあります。「水揚げや漁業管理(漁業権の範囲、漁業許可の内容等)の実態等を踏まえ、対象魚種等の漁場・漁期を考慮して、県沖を適切な区域に分け、当該区域の主要水揚げ港において検体を採取する」。具体的なところとして、表層、中層、底層、こういったものを選定して検査を行う。
具体的な出荷制限・摂取制限の設定条件につきましては、次の18ページをごらんください。「(2)制限設定の検討」のマル2としまして、沿岸性魚種等と一つ項目を立てているところでございます。具体的に出荷制限をいかにかけるかということ、解除の条件についても、18ページの3以降で書いてあるところでございます。
このように、今、一番皆様が心配されているアサリ、カレイ、ヒラメ、そういったものについて、特に出荷制限、その前提となる検査につきまして、内閣総理大臣が本部長をやっております本部において考え方が示されて、このとおりに現在、出荷制限等がかけられているところでございます。
あと一点だけ、最後に輸入食品についてでございます。資料5-7をごらんください。これは、食品安全基本法に基づく基本的事項にも言及されております、平成24年度の輸入食品監視指導計画でございます。その中で、具体的に輸入食品に対してどのような対応をとっているのかということを、冒頭の文章の中で書いております。
具体的なところといたしましては、4ページをごらんください。基本的にはモニタリング検査を行う。モニタリング計画の策定が(2)のマル1であり、マル2のモニタリング検査の計画的な実施の中の2つ目のパラグラフで、「モニタリング計画に基づく検査の実施状況について適宜点検を行い、輸入状況の変化により実施が困難と判断する場合にあっては、効果的な検査ができるよう、必要に応じて当該年度中にモニタリング計画の見直しを行う」としております。
また、輸出国、具体的に言うとアメリカ、中国についてですが、7ページをごらんください。第2パラグラフのところで、「法第11条違反等の事例が違反事例の大多数を占めている。平成24年度においても、当該違反事例の多い国及び我が国への輸出量の多い国を中心に計画的に輸出国の対日輸出食品の安全対策に関する情報を収集するとともに、現地調査により輸出国の衛生対策の推進を図る。また、輸入牛肉等の安全確保のため、輸出国における生産等の段階での安全対策の検証が必要な場合には、専門家を派遣し、当該輸出国における対策の確認を行う。更に、『日中食品安全推進イニシアチブ覚書』に基づき、日中間における食品の安全性向上のため、実務者レベル協議及び現地調査を実施する」として、輸出国との二国間でのやり取りを行い、我が国へ輸出される食料品の安全性を確保する手はずをとっているところでございます。また、説明をはしょってしまいましたが、モニタリング検査を行うだけではなく、違反事例等が起きた場合にあっては、重点的な検査を行う体制も検疫所でとっているところでございます。
今、申し上げた措置は、厚生労働省、厚生労働省の組織であります検疫所、空港や港にありますが、そういったところで行われている措置でございます。
非常に広範囲にわたって駆け足での説明になってしまったので、ちょっとわかりにくくなってしまったかと思いますが、主に3点について説明させていただきました。
私からは以上でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。
それでは、御意見のある方、発言をお願いいたします。
田島委員、どうぞ。

○田島委員 御説明、ありがとうございました。資料5-1の1ページ目にこれまでの経緯が書かれています。平成15年7月1日に食品安全基本法を施行し、平成16年1月16日に基本的事項の閣議決定、これが現行のものです。今は平成24年ですから8年たっているわけです。その間、21年に消費者庁が設置されて、基本的事項の策定事務が内閣府から移管されたということで、せっかく消費者庁ができたので、16年という8年前の基本的事項を、もっと新しい目でもってながめて、ドラスティックに変えてほしいというのが、実は消費者委員会からの希望だったわけです。ですから、その目で見ると、今回の修正案はちょっと物足りないなという感じは拭えないというのが正直なところでございます。
厚生労働省なり農水省との協議があった末の今回の改定案だと思うので、これはこれでよしとして、もう一度、いつか機会がありましたら、そのときには消費者庁がイニシアチブをとって、新しい目でもう一度基本的事項を見直していただきたい、そういうふうに考えております。

○河上委員長 何かございますか。

○消費者庁金田消費者安全課企画官 お答えいたします。もっと積極的な改定を行うべきではないか、消費者庁として、食品安全行政について積極的なイニシアチブを発揮すべきではないかという御指摘かと思います。まさに御指摘のとおりだと思います。更にドラスティックな改定ということも考えてみたところではありますが、もともとこの基本的事項はかなり広範囲な書きぶりになっていて、これ以上書き込むこと、そして、食品安全基本法ができて以来、全く新しいことをこの8年間の間に行ったということがなくて、書き込むことを発見するのが難しかったというのが、この1年間の消費者庁の検討だったかと思います。
消費者庁といたしましては、食品安全行政の一翼を担う役所としてこの基本的事項の改定にかかわる事務が移管されました。これまで3年の間、なかなか体制が整っておらず、消費者基本計画においても、体制の整備を図り、その上で基本的事項を改定するとわざわざ書いたという経緯もございます。これはどのようなことを意味しているかというと、そもそもこれに携わる者が体制が十分でなかったのではないか、という反省も含めた文章だというふうに理解しております。
現実のところ、十分な体制ができているとは認識しておりませんし、また、積極的にイニシアチブを発揮するには、これからどんどん経験を積んでいかなければいけないと思います。経験を積んでいない部分があったからこそ、今まで十分できていないところがあったと思うので、積極的な発言、そして積極的な行動をできるところからやっていきたいと思います。この基本的事項を改定する作業を通じまして、各省とさまざまな対話を積み重ねまして、どういったところを改定しなければいけないのか、何が必要なのかということを十分考えなければいけないと認識いたしました。
次の改定がいつかはわかりませんが、少なくとも8年間このままにしておいたというようなことのないように、消費者庁の体制を適切なものとし、適切に基本的事項の見直しを行っていきたいというふうに考えております。
私からの説明は以上でございます。

○河上委員長 ほかにいかがでしょうか。
山口委員、どうぞ。

○山口委員長代理 そうしますと、今回これを見直して改定して、その次の改定はいつになるかというのは、今後の展開いかんということになるのですか。

○消費者庁金田消費者安全課企画官 まずは、消費者庁として食品安全行政にかかわるさまざまな経験を積む。具体的に、今、一番取り組んでいますのは、リスクコミュニケーションの調整的なものが消費者庁に移管されて、それを本格的に昨年から実施している。そういった経験を積み重ねた上で、何を加えるかということを明確にできると思います。今の時点では、消費者庁として食品安全行政にかかわり始めましたというところまでしか御説明できないので、この段階での言葉でしか書けないということになっているかと思います。ですから、何年後に改定します、来年とか再来年ということは、ちょっと今の時点では申し上げられませんが、少なくともこれから1年、2年の経験は積んだ上で、そこの時点でまた考えたいというふうに思っているところでございます。

○河上委員長 夏目委員、どうぞ。

○夏目委員 御説明、ありがとうございました。消費者委員会として基本法に対して意見を出しましたときには、消費者の目線または、それぞれの委員が持つ専門的な見地から改定に盛り込んでいただきたいという思いで、意見を出させていただきました。また、先日は委員間打合せでも御説明いただいたところです。例えば、ずっと懸案になっておりましたこんにゃくゼリーの問題をとりましても、御説明いただくと、確かにこの基本法の中に、この部分に盛り込まれています、読み取れるのですということを説明なさいますけれども、一般の消費者がこの基本法を見たときに、こんにゃくゼリーの問題一つとっても、どこに書き込まれているのかというのはなかなか判断がつかない書きぶりであろうと思うのです。
先ほど、もともとこれは広範な書きぶりの基本法であったという御説明でしたけれども、まさにそこのところを変えていくという、ドラスティックな中身の変革があってもいいのではなかったかと私自身も思います。例えば環境に対する放射能の影響につきましても、確かに広範な中で読み込みはできますけれども、それは、例えば消費者庁と委員会が個別に説明の機会を持たなければ、書きぶりがどこに入っているかというのがなかなか理解できないという状況は、決していいものではないというふうに私自身は考えております。また、次の機会がいつになるかわからないという話でございますけれども、少なくとも31日までパブリックコメントをしていて、多くの消費者の方、国民の方から意見を寄せられると思いますので、できるだけそれが反映されるような改定案にしていただければと思います。希望でございます。

○消費者庁金田消費者安全課企画官 ありがとうございます。現在、パブリックコメントは数件寄せられておりますが、一つひとつの御意見、一人ひとりの皆様の御意見を踏まえて、適切な形にしていきたいと考えているところでございます。
また、ドラスティックに改定すべきではなかったかという御意見に対しましては、現時点では、まだ消費者庁の力量がそこまでいっていなかったという部分があるのかもしれません。今後、先ほども申し上げましたとおり、経験を積み重ねてもっと積極的なことが言えるかどうか、力をつけていきたいというふうに考えております。

○河上委員長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 これは、食品安全基本法の中の基本的事項という、ある意味、政府全体の食品安全政策の基本的な考え方というようなものですね。それが、消費者庁がまだ体制がとれていないから余りうまく書き込めなかったとか、そういう話になってしまって、それに消費者委員会が納得してしまうというのは私は非常に残念に思います。こういうものというのは、担当課長さんとかに来ていただいて、そこに我々は意見を言っているわけですけれども、担当者も別に政策決定者ではないわけですから、もう少し政府全体に対して意見を言うような仕組みをつくっていかないと、いつも、こんなことの繰り返しをしているような感じがします。
今日がこの協議の最終段階で打切りとすれば、長官に来ていただくとか、あるいは大臣と消費者委員会の協議の場にするとか、そういうことをしていかないと、担当の方に何か感情的に文句を言っても仕方ない話ですし。もう少し仕組みづくりを考えていかないと、消費者委員会、消費者庁というのは、国民目線での新たな官庁ということで元福田総理が提案して実現したものですから、もうちょっと工夫しないと、やり方自体も今までのやり方の踏襲で、結局、言い切りで終わってしまうのではないか、そんな感じがいたします。意見です。

○河上委員長 とはいえパブリックコメントの間に何回か説明を受け、消費者庁からも丁寧な説明をいただき、こちらの意見をできるだけくみ上げていただくという手順をとりました。またパブリックコメントがありますから、それを受けていろいろ修正されていくのだろうと思いますけれども、消費者利益の増進のために最大限の配慮をこれからもお願いしたいと思います。今の現状でそれを包含できるのであれば、それで説明してしまえばいいという説明も理解できないではないけれども、ある言葉を「特出し」することで、次の検証のときの手がかりにするということはあり得る選択です。確かに既存の文章の中で読み取れるとしても、特出しすることで強調できるものについては、その表現を考えてみるというようなことも、積極的にやっていただければありがたいと思います。
ほかに、委員から御意見がなければ、委員会の意見は一応これでということにいたします。消費者庁におかれましては、お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。
それでは、これまでの議論を踏まえまして、消費者委員会としての意見をとりまとめたいと思います。

○原事務局長 とりまとめ案を配付いたします。

(追加資料配付)

○河上委員長 ただいま、追加資料で案を配付させていただきました。食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項について、消費者委員会として、「引き続き検証・評価を行っていく」ことを前提に皆様の御了解を得たと考えて、「平成24年5月11日付の意見募集で示された改定案のとおり変更することが適当であると考える」という形で意見をとりまとめさせていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいですか。

(「はい」と声あり)

○河上委員長 それでは、引き続き検証・評価を行っていくことを宣告しておいて、その上で、この案を了承するという意見を述べたいと思います。どうもありがとうございました。

≪5.閉会≫

○河上委員長 長時間にわたってお疲れかと思いますが、本日の議題は以上でございます。お忙しい中、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。
最後に、事務局から、今後の予定等について説明をお願いいたします。

○原事務局長 長時間にわたり、ありがとうございました。
次回の委員会につきましては、6月5日(火曜日)の16時からを予定しております。議題を含め、改めて御案内させていただきたいと思います。

○河上委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)