消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ(第5回) 議事録

日時

2015年7月28日(火)9:30~10:54

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
山本座長、岩田座長代理、河上委員長、唯根委員
【参考人】
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 准教授・主任研究員 庄司昌彦氏
【事務局】
黒木事務局長、稲生参事官補佐

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
    国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) 准教授・主任研究員 庄司昌彦氏
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○稲生参事官補佐 本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループ」第5回会合を開催いたします。

議事に入る前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お配りしております資料は、本日、お話をお聞かせいただきます庄司先生から御提出いただいている資料1になります。

不足がありましたら、事務局へお申しつけください。

それでは、山本座長に議事進行をお願いいたします。


≪2.有識者ヒアリング≫

○山本座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

この消費者行政における新たな官民連携の在り方ワーキング・グループでは、これまで会議を4回開催してまいりました。

ざっとおさらいをいたしますと、第1回は、本年3月31日に開催をし、一般社団法人消費者市民社会をつくる会の阿南理事長と二之宮弁護士から、国や地域における官民連携の在り方と、行政の役割や適格消費者団体への支援の在り方についてお話をいただきました。

第2回は、本年6月2日に開催をし、サステナビリティ消費者会議の古谷代表から、事業者と消費者団体の連携における行政の役割についてお話をいただきました。

第3回は、本年6月19日に開催をし、茨城大学の井上教授から、日本の消費者団体の現状と課題についてお話をいただき、第4回は本年7月2日に開催をし、公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)から、事業者または事業者団体と行政の連携の在り方についてお話をいただきました。

本日は、第5回となるのですけれども、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの庄司准教授にお越しをいただいております。

庄司准教授は、情報社会学、電子行政、地域SNSの活用による地域活性化などを御専門とされており、本日は、消費者行政における既存データの活用策、効果的な情報収集と収集した情報の分析方法、高齢者の消費者被害への対策事例等についてお話をいただきたいと思います。

それでは、御説明をお願いいたします。20分をめどにお願いしたいと思います。

○国際大学グローバル・コミュニケーション・センター庄司准教授・主任研究員(以下、GLOCOM庄司准教授・主任研究員) おはようございます。

国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの庄司と申します。お招きいただきありがとうございます。

今日は少し幅広い話になりますが、まさに私自身もユーザーの立場で、情報の利活用について様々な角度から考えるということを普段からやっておりますので、皆様の御参考になるようなところが一つでも御提供できればと思っております。よろしくお願いいたします。

簡単に自己紹介をさせていただきます。私は社会科学系の人間です。情報化が進むことによって、行政や地域社会の在り方がどう変わっていくかということについて最も関心を持っております。

研究者としては国際大学におりますが、そのほか、公共データの活用を進める一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンの代表理事と、一般社団法人インターネットユーザー協会の理事もしております。これは一種の消費者団体でして、ユーザーの立場から、インターネットに関する政策について声を出していこうということをしておるものです。代表の一人が津田大介というジャーナリストです。彼はよくテレビにも出ていますので、ご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。

今日、お話しするのは3ページ以降になります。

まず「既存データの活用策」です。今、私自身が取り組んでいるテーマの一つである、オープンデータについてです。

オープンというと、公開という意味もあります、むしろ開放と訳すほうが正しいと思います。つまり見せるだけではなく自由に使えるようにしたデータということです。

政府が公開しているデータは使いにくいものが多いです。法律的にいうと、著作権を政府が保有しているため、利用者が丸ごと使うとか、商業利用するとか、そういうことができないでいます。

今、世界的な潮流の中で、公共機関が持っているデータを民間にどんどん開放していくオープンデータ施策が広がっています。著作権でいうと、通常の引用だと一部しか使えませんけれども、出典を明記すれば、あとはどのように編集、加工しても、商業利用しても構わない、丸ごと全部使っても構わないというようなことをします。そうすることで利活用が進んでいきます。

それが地域・社会にも役に立つだろうということでやっているのですが、その中で、3ページの下に「世界最先端IT国家創造宣言」という政府の方針があります。昔の日本ではe-Japan戦略というものがありましたけれども、同様に、政府全体のIT活用の方針を示す、いわゆるIT戦略の現在のものがこちらです。

APIとはApplication Programing Interfaceということで、プログラミングの際に使用できる命令や規約、関数等の集合です。要は、こういうふうに情報をくださいと外部のサービスから投げかければ、それに応じたものを返しますというルールを決めるということです。

外部のITサービス、消費者関係でいえば、例えば、ヤフーオークションや楽天などが消費者庁の事故情報データバンクの情報と連携したいときには、この情報とこの情報をこういうふうに消費者庁のサーバーに送ってくれれば返しますとか、そういうことを決めて一般に公開して、いろいろな人が自由にサービスをそこに連結することができるようにするものです。

政府はこのようなAPI機能の整備を利用ニーズの高いものから優先的に進めるということで、非常に力を入れています。

今のところは、国勢調査など、基本的な統計についてはほぼスタートしているのですけれども、今度はこれをさらに広げていこうとしているところですので、我々のオープン・ナレッジという団体としては、環境省の花粉のものとか、国土交通省関係のものとか、気象関係のものなどとともに、事故情報データバンクも開放してはどうでしょうかということをちょうどパブコメで提案をしたところでした。

4ページ目、利活用が進むとどういうことができるかということの簡単な事例です。これはYelpという、アメリカの「食べログ」といえるような、グルメ情報サイト、レストラン評価サイトです。

このサイトでは保健所が持っている衛生検査のデータをAPIでとってきて、このレストランのスコアは92点ですということを横に表示しています。このように民間サービスに対する自動的な情報提供がされると、行政が持っているデータのさらなる有効活用が進みます。

次に「情報の収集策」についてです。

情報社会の研究者としては、そもそも消費者とは何かというところが気になります。今、消費者は一方的につくられたものを使うだけではなく、つくる側に対して、もっとニーズを届けたりすることもできますし、みずからが消費者でありながら生産者になることもできます。特にデジタルコンテンツなどはそうですが、クリエーターとコンシューマーの垣根がすごく低くなってきています。それをプロシューマーと言ったりしますが、つまり消費者像が変わってきているということです。

生産者に影響を与える生産消費者はどこにいるかというと、評価サイト、口コミサイトです。価格.comとか、@cosmeとか、最近だとアプリのレストラン評価でRettyというものがありますけれども、たくさんこういったものが登場しています。消費者は黙ってサービス、商品を受け取っているだけではなくて、生産者側にも影響を与えています。

ここから考えると、事故が起こった情報を集めるだけではなく、このような口コミサイトの中から、消費者行政の種みたいなものを掘り起こして行くことができるのではないかと思われます。

まだ大きな事故になっていないけれどもユーザーが感じている不満であるとか、逆に、すぐれた商品とはこういうものであるということも、こうした口コミサイトの情報から発見していくことができるのではないかと思うわけです。

幸いというか、最近、こういった口コミ情報サイトは学術研究者に対してデータベースの提供を結構やってくれていまして、理科系の研究者はこれを分析して学会論文をつくるとか、盛んにやっています。

そういった取り組みと協力していくことで、新しい何か、本当に事故が起こる前の課題を拾うとか、すぐれた商品についての類型をするとか、そういうことができるのではないかと思います。

6ページ、情報を分析するということで、1つ、事例を御紹介します。

これも、先ほど申し上げたオープンデータです。公共機関が持っているものをどんどん使ってくださいという形で民間に提供することによって、アメリカではこんなことができるようになっていますというものです。

これは「これから犯罪が起きる場所を予測する」というもので、PREDPOL(Predictive Policing)というサービスです。過去にどのような条件のときにどのような犯罪が起きたかという情報は、既にたくさん蓄積しています。

余りいい話ではないですけれども、先日、月初めの月曜日と雨が重なると自殺者が多いという話をうかがいました。また、いま日本で自殺をする人は高齢者の男性が多いのだそうです。これらを踏まえるとそういう条件が重なったときに、そういうことが起きそうな場所でそのような年代・性別の人の様子をケアすると未然に防げるのではないかと想像できるわけです。そんなに単純ではないとは思うのですが、このPREDPOLという会社は、いろいろなデータを使い、独自のアルゴリズムで計算して、ここでひったくりが起きそうですとか、拳銃を使った犯罪が起こる確率が高まっていますとかということを、いろいろな条件から割り出して表示します。そして、警察官がそこに行くことで、犯罪の発生を実際に抑えられるというのです。

すでに、アメリカを中心に、60都市で導入されて、ある都市では犯罪が17%減り、アメリカ以外にも広がっているそうです。

この犯罪予測を消費者行政としてやってくださいと言いたいわけではないのですが、いろいろなデータを集めてくることによって、ある種の事故であるとか、問題を未然に割り出したりすることもできるのかもしれないと思います。

次に7ページ以降です。ここまではITの話をしていましたが、ITとまちづくりが私自身の関心の中心ですので、話題をITからまちづくりに移し、高齢者とまちづくりを中心にお話ししていきます。

私たちは、「認知症の人にやさしいまちづくり」についての研究を厚労省の補助金を受け進めています。認知症に限らないのですが、特に都市部では高齢者が急増し、これまでの医療やケアを担ってきた施設のキャパシティだけでは、担い切れない状況です。そこで、在宅化を進め、なるべく家庭で過していただこうということになってきているわけですが、そうなると、認知症の方々は、地域社会の中で過ごすようになり、近所のスーパーへ行ったり、電車に乗ったり、バスに乗ったり、銀行へ行ってお金をおろしたりするわけです。

そういうときに、銀行や交通機関などといった今まで余りそういったことに慣れてこなかった人たちはどのような準備をしておくべきだろうか、そういう人たちも協力して準備をしていく必要があるのではないかという観点で、認知症の方々を支える体制を作っていくのが、「認知症の人のやさしいまちづくり」という考え方です。

8ページ目では、認知症フレンドリージャパン・サミット2014というイベントの写真を御紹介しています。

この写真ではたくさんの人が集まって、いろいろな議論をしたりしています。ここにいるのは必ずしも医療福祉関係者ばかりではなくて、いろいろな企業の中で、そういうことをこれから考えていかなければと思っていらっしゃる方々がかなり含まれています。あるいは、自治体でそういう人たちと協力していかないといけないと思っている人たちです。

この考え方、取り組みはイギリスがモデルになっています。認知症フレンドリーコミュニティー、Dementia Friendly Communities、DFCとか、Dementia Action Alliance、DAAとかと言われているのですが、今、そういうものを日本でも立ち上げていこうとしています。

9ページ目。昨年度、私たちはアンケート調査をやりました。「認知症の人にやさしいまちづくり」へのニーズを把握しようということで、認知症の当事者に大規模なアンケート調査を行いました。当事者の方が答えることは日本初とのことで報道されたりもしました。認知症といっても幅があり、調子のいいときは全く普通の方なのです。

認知症の方は、できるときにはできることをしたいということが本音だと思うのですけれども、社会的には、問題を起こさないようにということで、そういう機会を制限してしまっているところがあります。

そんな様子が、例えば、外出や交流の機会が減ったといった数字に表れています。また、こんなサービスがあったらもっと地域で暮らしやすくなるということで、スーパーや商店などで買い物を手伝ってくれる人がいたらいいとか、認知症の人も来ていいですよと言ってくれているお店などを紹介してくれるといいとか、銀行で人が対応してくれるといいといったことへのニーズが数字で表れています。また、どんな人に知識を持ってもらいたいかということでは、スーパーや店員の人が最多ですが、次に多かったのは一般住民ということで、専門の人だけではなくて、身の回りのいろいろな人に知識を持ってほしいということがニーズだということもわかってきました。

10ページ目、イギリスの金融業界がつくった金融サービス憲章というガイドラインです。認知症の当事者の方々と一緒に、金融機関は認知症の方々の生活をどうサポートできるか、どこまで状況を開示してくれればどういう対応ができるか、あるいは、そういう対応のために社内体制はどうつくっておくべきか、といったことをまとめています。業界ごとにこういったものをイギリスではつくっていて、交通分野やIT分野にもこの取り組みが広がっています。

これからの高齢化社会に向けて、いろいろなところでこのような業界横断で体制を作ったり備えを広げたりしていくことは参考になるかと思います。

「その他」ということで、あと2枚御紹介します。

11ページ目はオープンデータの事例ですが、自治体の出している広報誌をデジタル化し、小分けにして再編集するマイ広報誌というサービスです。一般社団法人オープンコーポレイツジャパンが、いろいろな自治体の広報誌のデジタルデータを自治体と協力して集め、それを分野ごとに再編し、自分で何とか市と何とか市と組み合わせて、必要な情報を取得することができる仕組みをつくっています。私も区の境目に住んでいるのでこうしたサービスは便利だと思います。

何とか市と何とか市の子育てに関する情報が集まりましたといって、プッシュで自分のところに届けてもらうこともできます。

この事例から言いたいことは、情報をどこかに掲示しておいて「見に来てください」と待つのではなく、編集、加工してどんどん使っていいですよとすると、プッシュで届けてくれるなど、いいように編集して使ってくれる人たちも出てきますということです。

最後、12ページ目です。対象に応じたコミュニケーションツールの選択という話題です。この棒グラフは、東日本大震災の後に、どのような人たちがどのようなソーシャルメディアを使っているのかということについて、アンケート調査で明らかにしたものです。

I群、II群、III群、IV群という分類があります。I、積極的にいろいろなSNSを使っている人、II、2ちゃんねる、ツイッター、匿名のものを中心に使っている人、III、ブログ中心の人、IV、mixi・ゲーム、狭い範囲で、コミュニケーションというよりはゲームとかをやっている人、V、携帯メールばかりの人、VI、消極的でほとんど何も使わない、パソコンのメールをやや使っているくらいの人と分けられることがわかり、その分布を見てみると、例えば、携帯メールと消極ユーザーは男女差が随分あるのです。

携帯メールだけを使っている人が女性にすごく多いとか、匿名の2ちゃんねる、ツイッターを中心に使っている人が男性にかなり多いとか、そういったものが見えますし、下のほうでは年代によっても使っているものがかなり違うことがわかっています。肌感覚でいっても、フェイスブックは年代が高い、ラインは若いと思いますが、そういう傾向が表れています。

たとえば防災情報をみんなに伝えなければいけないとか、ある情報を特定の属性の人たちに伝えたいという時に、どのツールを使えば有効かということがここから見えてきます。消費者行政においても、何を使うのか、ツイッターを使えば今風であるとか、ラインを使えばいいとかということではなくて、誰に伝えるのかということを考えながら選ぶことが大事です。

以上です。

ありがとうございました。

○山本座長 どうもありがとうございました。

いろいろと多岐にわたるお話をいただきましたので、ここから意見交換に入りたいと思います。

庄司准教授の御説明を踏まえまして、御質問、御意見など、自由に御議論いただければと思います。

かなりいろいろな話題にわたっていて、岩田委員は広報の担当でもあって、最後の話などはそれにもかかわっているかと思いますけれども、どこからと限定するのもなんですので、どこからでも自由にいただければと思います。

お願いします。

○岩田座長代理 1つ2つ、御質問させてください。

最初のほうでおっしゃったオープンデータの関係なのですけれども、確かに各省庁独自の調査、研究ものですとか、データものを持っていると思うのですが、先生の御説明ですと、総務省が所管している基本的な調査については、オープンデータ化の方向であるとおっしゃったのですけれども、国のデータをオープンデータ化するときに、通常、どういう障害があるのでしょうかということを最初にお尋ねしたいと思います。結構順調にこれは進むのでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

今、ここで御紹介したものは確かに総務省の統計局所管のものを挙げていますが、オープンデータを進めるのは国全体の方針です。

それから、2013年のG8のサミットでオープンデータ憲章が合意されていて、原則的にオープンデータを提供する等の方針があります。各国はこの憲章に沿って取り組みを進めていて、サミットでは進捗確認みたいなこともされています。

オープンデータにはいろいろな意義があります。透明性を高める、民主主義のためにやることと、先ほどの事例のように行政ではできない新しいサービスを民間にやってもらうことと、経済効果をねらうということがあります。一番わかりやすい成功例としてGPSを挙げることができますが、新しいビジネスを生み出したいというところが強いのです。

今のところ、日本政府は経済効果を重視して進めていますので、総務省ばかりでなく、国土交通関係のデータが注目され、積極的に提供もされているところです。

次に障害についてもお話しします。この問題は震災直後から加速しているので、4年くらいやっていることになりますが、何か障害になっているというよりは、日本にしては随分スピード感をもってやってきたと思います。

たとえばDATA.GO.JPというポータルサイトもできていて、1万数千件が登録され、省庁をまたがって検索しやすくなっています。オープンデータ活用のための取り組みを各省が進めています。

そういう中でよくある障害の1つは著作権です。

税金でつくった国のものを民間に提供するとは国有財産法上どうなのかとか、いろいろなことが言われます。しかし国が著作権を放棄するわけではないので、別にこれは財産を誰かにあげているわけではなく使わせてあげているだけということで、基本的に問題はクリアされているようです。

またよく言われるのは、悪用されたらどうするのかということですが、国勢調査などもそうですけれども、ゆがめて使う人は、そんなことを言われなくても最初からゆがめて使いますし、それによって国が責任を問われたりすることは、普通はないと思います。情報は自己責任で使うものですし、規約でも国側の免責をうたっています。

すでに、国では政府データの標準利用規約を作っていまして、全ての省がそれにのっとっています。そこでちゃんと公的機関の免責も書かれていますので、その問題もほぼクリアしています。

とはいえ、国土地理院が出した地図に領土問題が起こっている地域が書いてあって、そこを書きかえるやつがいるのではないかとか、ちょっと細かい問題はあるのですけれども、今、ほとんど気にするような問題は起こっていないです。

あと、オープンデータを進める上でよく言われるのは、プライバシーの問題です。

まず、間違ってはいけないのは、オープンデータといっても、個人情報を民間に提供しようという話をしているわけではありません。統計データの数値のPDFではなくてエクセルを提供しようとか、使いやすいデータを提供しようとはしていますけれども、別に個票を出そうとしているわけではないので、まず、そこの誤解を解かなければいけないということがあります。

ただ、いろいろな統計データを使えるようになってくると、かけ合わせていくことで、もしかすると、この地域にこういう人が1人住んでいて、この1人の人はこういう人だということがわかってしまうのではないかという懸念はあります。それもそんなに細かい粒度で出さなければいいのです。その粒度がどの程度なのかということはありますが、実際のところ、それで問題が起きたということを聞いたことはないです。

あまり障害らしい障害はないのですが、行政が考え方を変えないといけないところはあります。

今まで、ある目的のために税金でつくったものを、そうではない目的も含めて自由に使ってくださいと出すことについての躊躇がまだあります。これで何が起こるのかがわからないということで消極的になるところ、まだマインドが変わってきていないところがあります。

○山本座長 どうぞ。

○岩田座長代理 そうしますと、事故情報データバンクの御提案があったのですけれども、これをオープンデータ化することは、余り障害はない、近いうちに実現するのではないかと見ていらっしゃいますか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 はい。事故情報データバンクについて深く理解しているわけではないですが、そこに載っている情報は、確実にこういうことが起こっているという情報ですし、別に個人情報でもないので、あの情報をほかのサイトからリンクしやすくして提供することについて、その先に何か問題が起こることは考えにくいのではないかと思います。

○岩田座長代理 ありがとうございました。

○山本座長 お願いします。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

私も、オープンデータのことについてはいろいろと問題があるのではないかということで質問させて下さい。実は、ビッグデータの利活用について、消費者委員会でも一度意見を発出したことがあります。

それをどう使うかというところがうまくコントロールできていないと、利用のされ方いかんによっては、今、御指摘になったような著作権問題とか、プライバシー問題は必ず起きる。

しかも、ビッグデータを使って、意味のあるデータにしようとすればするほど、具体的な個人情報やセンシティブ情報に近づいていってしまうという現実がありますので、そこをどうコントロールするかというところについてお知恵をかりたいのです。一方では、役に立つ情報にするためには、できるだけそこに個人情報に近い情報が欲しいという要請があって、他方では、当たりさわりのない統計データみたいなものだけで済むということであれば、余り利用価値がないという話もありました。その辺は、何かスクリーニングする知恵はあるのでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

先ほど申し上げた著作権上の問題とプライバシーの問題に関しては、著作権上の問題はよく言われてはいるのですが、問題はほぼ起きていないと申し上げたいと思います。

著作権とは、そもそも音楽家や芸術家などが、一時期自分が独占的にそのコンテンツで商売をする権利、経済的な権利なわけです。国が、別に商売をしているわけではなくて、自然発生で持ってしまうので持っているということなのです。国が一生懸命、主張するものでは多分ない。主張するほうがむしろ問題なのかもしれないと思います。

プライバシーに関しても、確かにビッグデータ的に出していくことで問題が起き得ることはあると思います。こちらはあると思います。

今、私は総務省の行政機関個人情報保護法を変える委員会、パーソナルデータに関する研究会のメンバーをやっているのですけれども、今まさにそこで、匿名加工されたデータは本人に許可を取らないでも第三者に提供していいとしようとしているのです。

匿名加工したら、それは既に個人情報ではないから大丈夫なのだという話なのですけれども、では、匿名加工とはどの程度の加工なのか、どのようにしたら匿名加工と言えるのかというところに関しては、法律ではなくて、その後、政令とかで決めていきますという話になっていて、まだはっきりしないのです。ここのところは、ちゃんと議論を見ていく必要があると思います。

ある時期、この加工をすれば大丈夫だと言われたものも、時間がたてば、これでは危ないとなる可能性もありますので、今できることとしては、安全装置を考えておくことだと思います。

1つは、今の個人情報保護法の議論の中では、個人情報保護委員会をつくることです。アクセルを踏むのだったら、ブレーキもちゃんと用意しておきましょうということで、専門性を持った委員会が、加工の方法であるとか、でき上がったものの匿名の度合いを、統一的な基準で審査する場所をつくっているということです。

国と民間に関してはいいのですけれども、ちょっと細かい話になりますが、自治体が持っている情報については、個人情報保護法ではなく各自治体の個人情報保護条例が担当しているので、ちゃんと自治体レベルでもこの個人情報保護の委員会に相当するものや、相談先を整備していく必要があるだろうとは思います。

あとは、救済です。事前の規制と事後の救済が必要です。もし万が一何か問題が起こったときには、どこに相談すればいいのか、どう救済されるのかということを用意しておかないといけないと思います。ここは本当に消費者行政に近い話になってくるかと思います。

○河上委員長 前の総務省の技術ワーキングチームの報告書を読ませていただいていたのですけれども、匿名化は究極的には無理だという報告をされておられまして、情報は一遍出てしまいますと取り返しがつかないという性格があるので、消費者委員会では、せめて自分の個人情報について、どの形でどこへ流れていったのかというトレーサビリティを確保する必要があるだろうということを問題にしたことがございました。

ですから、プライバシーの問題はなかなか厄介なところがあるのと、特に事故情報になってくると、例えば、単純にコンニャクゼリーを食べてのどに詰まって死んだというだけの話ではなくて、ある地域でコンニャクゼリーを詰まらせて死んだとき、その背景にある個人情報が新聞などでは出ているわけです。そうだとすると、お母さんがその子にコンニャクゼリーを渡してしまったという情報を本当は知られたくないということがあったりするわけです。

数字しか出ていないようなものであっても、その背景に情報についてのさまざまな利害がありますので、これを本当にオープンにしてしまうときに、全体に対する配慮が相当ないといけない。オープンにすればよいという話だけではないので、今日、お話を伺っていて、なるほどプラス面が随分あるという気はしたのですが、他方で、マイナス面についての手当てがない状態で、どんどんとオープンにすればいいという話には、なかなかなりにくいのではないかという感じがしたのです。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 まさにおっしゃるとおりだと思います。

一般の個人情報保護法の改正の中でトレーサビリティの話がされていることに対して、行政機関はどうしようかと今まさに議論しているところで、私もトレーサビリティをちゃんと確保するようにと主張しているのですけれども、そのほか、匿名化されたものを入手した人がほかのものとまぜて再特定する行為を禁じるとか、技術的にはできるとしてもそういう行為を禁止することで抑止するという考え方は大分入ってきているかと思います。

それから、今、おっしゃっていたコンニャクゼリーみたいな、1件しかないような情報の扱い方です。

基本的に、今、パーソナルデータと言ってやっている議論は、データベースを扱うという話で、すごく大ざっぱな話をしているわけですけれども、1件のものの中にプライバシーに関する問題が含まれている場合には、私もプライバシーが優先するはずだと思います。プライバシーに関する問題が起き得るのは匿名加工の程度としてだめだと思いますし、再特定禁止ルール等で、起こらないようにしていかなければいけない、保護すべき問題だと思います。

○河上委員長 もう一点、別のほうでもいいですか。

○山本座長 今のオープンデータの関係のほうからでは、よろしいですか。

お願いします。

○岩田座長代理 引き続きでごめんなさい。

事故情報データの関係で、それは既に各関係省庁が持っているデータで、データ自体は公開されているもので、それをオープン化するのは、利活用、それをほかの情報とリンクさせることかと思うのですけれども、具体的にどんな使い方をすれば消費者にとって有益な情報が出るのだろうかとか、どんな使い方をすると企業が新しいビジネスとしてやっていくのだろうかと、ちょっとイメージがうまくつくれないのです。

事故情報に限定して、先生が持っていらっしゃるイメージを教えてくださいますか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

ホームページに見に来いではなくて、お店で買うときや、日常生活の中で事故情報に触れる機会をつくっていけないかと思うのです。

例えば、事故情報データバンクがそのレベルにあるかどうか、私の予習が足りないのですが、お店に買いに行ったときに、製品名を検索するなり、携帯で撮るなりすると、この種の製品ではこういう事故情報がありますということを見せてくれるアプリをどこかの民間企業がつくって提供するとか、値札にもそういう情報が自動的に出るようにするとか、あるいは、最近データバンクに登録されたものだけを常にショップ店員さんの目につくところに出すような表示システムをつくるとか、色々考えられると思います。ここはまさにイノベーションなので、予想できないところがありますが、単にホームページに見に来いではない、いろいろな場所での使い方が応用としてあるのではないかと思います。

○山本座長 今のオープンデータの関係は、ほかはよろしいですか。

1つお伺いしたいのは、国の話をされていたと思うのですけれども、例えば、自治体です。特に東京都とか、大規模な自治体はかなりデータを持っていると思うのですが、そういったところの取り組みとか、そういうところへの働きかけは何かあるのでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

国の話を中心に今日は申し上げてきましたけれども、日本の場合は、この分野は非常に自治体が頑張っているというのが実情でして、特に政令指定都市はお互いに競争し合うような状況になっています。

特に先進的で最先端を行っているのが横浜市と千葉市、大阪市も神戸市も川崎市も福岡市も頑張っています。

続いて、県庁所在地レベルの都市や県の取り組みも随分目立ってきましたし、それより小さい規模では福井県の鯖江市、北海道の室蘭市、福島県の会津若松市など、新しいことをやろうという個性的な自治体も随分出てきています。オープンデータを使ってアプリをつくってみたという話やコンテストの話などはあちこちにあります。

自治体の数でいうと、今、取り組んでいるのが170くらい、ちょうど1割くらいではあるのですが、人口規模でいうとかなりの数、規模になります。

東京都は出おくれたのですけれども、この前の年度末くらいから体制が整って始まりました。最近では災害時の給水拠点の位置情報を、緯度経度もつけて、地図に載せられるような形で出しています。

毎週のように、何処かしらで、何か新しいことが始まりましたということが見えてきている状況です。

○山本座長 ありがとうございました。

先ほど河上委員長から、ほかの点についてというお話がございましたけれども。

○河上委員長 お話だと、「情報の収集策」で5ページからいろいろと出していただいて、なるほどと思いながら聞いていたのですけれども、編集、加工して、プッシュ型の情報を消費者に対して送って、それを消費者の選択によっていろいろといい方向に作用させていくということは一方であるだろうと思いますけれども、他方で、この情報が操作可能である点に問題がないでしょうか。特に中間での編集、加工段階によって、情報の内容とか、受け手の判断を左右するような方向づけができる点がちょっと気になるところです。もちろん嘘の情報も、最近は口コミサイトでも事業者がお金を出していろいろと口コミをさせるとか、そういう問題もあって、そういう消費者の判断を逆に迷わせるというか、誤らせるような情報が出せる。場合によっては、競業他社をおとしめ、自分のものを過大に有利に見せかけることができることになるので、その辺に対するチェックの方法として、先生のほうで何かお考えになっていることがあれば、お教えいただきたいのです。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

今、この分野はとてもおもしろいことになっています。まず、こういった口コミ情報などの中に誤った情報が入っていく問題に対しては、とめられないと思うのです。しようがない。

ただ、例えば、東日本大震災の後の放射線量についての情報について、混乱が起こるから出さないということになっていたら最悪だったと思うのです。政府が出したことによって、それを安全だと思う人と危険だと思う人の中で争いが起こって今に至っているわけですが、データに基づいて話をしているという意味では、何もないでやるよりはまだましなわけです。お互いに、どこまで科学的かはわからないけれども、一応、科学的な議論をしているという意味ではよいと思うところはあります。

また口コミサイトが業者側の工作によってうその情報を含んでしまう問題も、これはいたちごっこでしようがないわけですけれども、サイト側からすると、信頼性が落ちることは死活問題なので、そこはできるだけ何とか排除しようと、多分、市場原理が働くと思います。

うそでもブームをつくって商売をやろうというサイトが一時期出てくることはあり得ますが、またそれを引っ張り落そうという力もあるので、市場原理が働いているうちには、こういう口コミサイトは多分ちゃんとしたものが残っていく原理になっているだろうと思います。

ただ、最近ちょっと聞いた話でおもしろいと思ったのがあるのでご紹介します。今、中国の方々が日本に来て、爆買いといって、たくさん粉ミルクとか、おむつとかを買っていったりしていますけれども、あれは中国の口コミサイトで日本のこれがいいという情報が広がって、それを大量に買い付けて送るバイヤーみたいなことをする人たちがたくさんいて、単に正しい情報に基づいてそれをやっていればいいのですけれども、そこにうそをまぜている人たちもいるのだそうです。

実は日本製品ですらないものを「日本で大流行」というようなストーリーをつくって大量に中国に売るのだそうです。

考えてみれば日本でも、嘘か本当かわからないけれども「アメリカで大流行」などと謳うものはよくあるのですけれども、こうした問題が爆買いという形で国境を越えて無視できない影響を与え始めているのです。

口コミを元に爆買いが生まれるのは日本の企業によってビジネスチャンスである一方で、ゆがんだブームが生み出されて、それに翻弄される可能性もあるということです。

最後に、口コミサイト自体がやや曲がり角に来ているという話も聞いています。これは旅行サイトの話ですが、旅行サイトで高い点をとるために、ホテル、旅館の個性が、ある範囲におさまるようになってきてしまっているというのです。

飛び出た個性を出していると総合点が高くならないということで、これは情報にうそがまじるという話とはまた全然違う問題なのですけれども、口コミサイトが全体として個性を消していく方向になると、こういった類いの情報源が今後どうなっていくのか、興味深いです。今は過渡期だと思っています。

○河上委員長 私もそうだとは思いますけれども、これを一過性のものとして自然淘汰していくのを待っているわけにはいかなくて、被害が出るとすると、やはりそれに対して、ある程度、事前事後の何らかのコントロールをかけないとまずいのではないかという気がするのです。

しかも失われた信頼は回復するのに物すごくコストがかかるということもあります。操作可能性とか、いろいろな商業利用に伴うリスクを利用者が充分に理解の上で判断していて、せいぜいこの程度の信憑性しかない情報であるとして利用するのであればいいのですけれども、例えば、そこに国の情報が基礎にありますというお墨つきが加わることによって、本来目指していたいいものを阻害することにならないか、オープンにしていくことによって、情報を共有することがいいことにつながるという本来の目的を阻害していくような結果にならないかということがちょっと心配で、そこら辺のバランスについてお考えをお聞かせ下さい。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 まず、基本的に消費者が判断するための情報は多いほうがいいと思います。

決められた結論を受け取るだけの社会よりは、消費者のニーズも多様化している中で、これはこれくらいのリスクがあるけれども、こんな効果もあるとか、これくらいうまくいった人もいるけれども、失敗することもこれくらいあるとか、より詳細な情報が入手し得る状態にしていくことは大事なことだと思います。

その意味で、公共機関が持っているデータがより多く利用できるようになることを、まずは肯定したいのですけれども、その上で必要になってくるのは、目利きです。

情報の海の中で、みんな1人で自分の判断に必要な情報を集めろといっても無理な話ですので、目利きとか、キュレーターとかと言われる人たち、そういう存在をどうつくっていくかということになると思います。

その機能を、ある時代までは、専門機関であるところの行政であったり、研究機関である大学だったりが持っていたとは思うのですが、その状況も少し変わってきています。恐らく専門化が進んだ金融などの分野では、既に民間の人が行政の中に入って仕事をしています。流れの速い分野や専門性の高い分野を中心に、民間の中のベストの人の力をかりないといけない状況になってきているのだと思います。

その意味では、官か民かということよりは、本当の目利きは誰なのか、どこにいるのか、誰が信用できるかということを「見える化」していくためには、みんなが評価するしかないというところではあると思うのです。

○河上委員長 目利きの仲介者、媒介者が非常に大事だということは、私も全く同感です。それが信頼できる目利きの仲介者になることが、いわば官民連携の一つの核になるところでないといけないだろうと思います。しかし、それをまた上から選定して、これが目利きの人たちですと決めるのもまずい。おっしゃるように、それもまたみんなの口コミで選んで、この人は信頼できますということを自然淘汰で選択していくことを待っているかというあたりなのです。

後者のほうが安全だということなのでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 分野によるとは思うのですけれども、そうだと思います。

今、誰が誰を信用しているかとか、誰が誰を情報源にしているかとかは結構見えやすくなっています。ソーシャルネットワークの考え方を使えば、支持されている人は誰なのかということや、論文や記事などで引用・参照されているのは誰であるかということを「見える化」することは科学的にデータで裏づけることもしやすくなってきています。単に全体的な口コミだけではなく、誰の判断かということと、みんなの判断とを見ながら的確に把握していくことができますので、そうしていくことがいいのではないかとは思います。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

○山本座長 今の5ページのあたりで、ほかにいかがですか。何かございますか。

価格.comとか、いろいろと例が出てきていて、最後のところに、不具合とか、不満とか、すぐれた商品のポイント等を分析することが可能ではないかという御指摘があるのですけれども、外国では何かそういう例はあるのですかね。価格.comのようなものは、今、どの国にもあるかと思うのですけれども、それをうまく使っている例は何かあるのでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

口コミ情報サイトからいい情報まで取り出せるのではないかというところは、先行事例があるというよりは、同僚と今日に備えて議論している中から得たアイデアです。事故として上がってくる前の予兆を拾おうという発想であれば、これはあると思うのです。犯罪予測もそうですけれども、予測は、ビッグデータの典型的な使い方です。

他には実際に交通事故が起こった場所のデータベースではなくて、急ブレーキが踏まれている場所のデータをカーナビから集めて、危ない場所を絞っていくとか、事故の一歩手前、いわゆるヒヤリハットみたいなところから問題点をあぶっていくという事例があります。ただ、価格.comみたいなものからやっているものはわからないです。

○山本座長 ありがとうございます。

ほかの点でもいかがでしょうか。

お願いします。

○岩田座長代理 このチームは官民の連携というテーマで勉強しているのですけれども、今日の情報のところは、私たちの関心事項に引き寄せて考えると、先生の御提案はこういう言い方もできるかと思ったのです。

行政が持っている情報と民間企業が持っている情報をうまくつなぐなどすれば、消費者行政に役立つような情報がとれるのではないか、あるいは、民間企業、個人もそうですが、民間で流通している情報をうまく行政が分析すれば、行政目的のためにそれらを使えるのではないかという御提案でもあったかと、私は勝手に整理しました。

次のテーマは高齢者の問題なのですけれども、特に認知症の問題なのですが、身体障害者については、身体障害者自体がやはり消費者でもあるわけですけれども、身体障害者が消費者としてちゃんと生活できるように、地域の理解を促進するとか、諸条件を整備するとかということと、あわせて企業も、特に、BtoCビジネスをやっている企業については、障害者に対してなるべくバリアフリーにするというビジネス展開をいろいろと心がけてきたと思うのです。

それと類似したことかと思うのですが、認知能力が低下している方についても、消費者として買い物ができたり、金融取引ができたりということができるように、地域の理解度を高めることとあわせて、BtoCビジネスをやっている企業側にもお客様の中には一定比率でそういう方がいらっしゃるというか、これからもっとそういう方がふえていくということで、BtoCビジネスをしている企業の理解も得て、認知症フレンドリーなビジネスになるような、例えば、マニュアルをつくるとか、そういうものがイギリスにもあるようですので、そういうことの御提案かと理解したのですけれども、それでよろしいでしょうか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

おっしゃっていただいたとおりでして、いわゆるオープンデータというと官が持っているものを民に提供して使ってもらおうという話が多いのですが、逆方向もあると思います。先ほどのカーナビのブレーキの情報から危ない交差点を特定するなどもそうで、民間が持っているものから行政課題を引っ張ってくるという逆方向のオープン化事例も少しずつ広がってきていて、両方できると思っています。

高齢者に関しては、まず、一番取りかかるべきはBtoCビジネスをやっていらっしゃるところでしょう。実際に現場でどういうことが起こっているのかということを把握して、マニュアル化をしていくことだと思います。

認知症の方は、予備軍の方も含めて800万人くらいいると言われていて、結構な数なのです。かなり身近な問題だと思います。

実は本当に日常的に問題は起きていまして、今回、私たちもこの調査研究をやる中で、単に迷子になるとか、そういうありがちな問題だけではなくて、いろいろなところでいろいろな問題が起こっていることが分かってきています。製品の使い方を間違えるということもそうです。

そうなると、もっとわかりやすい製品のつくり方はないだろうか、パッケージの仕方はないだろうかとか、と改めてBtoC企業が考え始めると、そういえば、こんな事例があったということはたくさん出てきていて、ここはこれから掘り進んでいく必要のあるところだと思います。

○山本座長 今の点について、さらにいかがですか。

今の前半のほうの話で、官の情報を使うとか、逆に民間の情報を使うというお話がございましたけれども、両方の情報を一緒に分析することによって情報の価値が上がることもあるかと思うのですけれども、例えば、先ほど事故情報データバンクの話がございましたけれども、事故情報という点でいうと、民間の保険会社とかはたくさん情報を持っていると思うのです。

価格.comの情報などにしても、ほかの官が持っている情報とくっつけることによって信頼度が上がるとか、情報の価値が上がることもあるのではないかと想像するのですけれども、その辺の可能性、こういうことが考えられるのではないかという可能性について、少しお伺いしたいのです。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

先ほど、ビッグデータ活用の有力な分野として将来予測があると申し上げましたけれども、言い方を変えると、そこからさらに、リスクを評価するという意味で保険という話が出てきますので、まさにおっしゃるとおりだと思います。

官民の連携については、まずは話をしてみる、コミュニケーションをし始めてみるところからなのかなと思います。

これは別に消費者行政の問題ではないですけれども、オープンデータの活用をしようとか、ビッグデータの活用を考えようというときにも、まだ、何をつくろう、何をしようという答えが見えているわけでは必ずしもないので、まさに事故情報データバンクをやっていらっしゃる方々と価格.comさんとか、ヤフーオークションとか、そういう人たちがまずは一緒に集まってみて、お互いに可能性を議論してみる場をつくっていくことが大事かと思います。

データ活用では、今、アイデアソンとか、ハッカソンとか、集まって短期集中で、いわば合宿みたいな形でわっとアイデアを出すみたいなイベント、ワークショップはたくさんあちこちで行われています。

そういうことを少しやってみると、アイデアは出てくるかと思います。

○山本座長 ほかの点でもいかがでしょうか。

お願いします。

○河上委員長 どちらかというと心配ばかりしているほうなのですけれども、もう一つは、オープンデータは既に公共財となっているということなので、それをみんなが自由に使えるようにどんどん壁を低くしていくことは大事なことだろうと思うのですが、やはりただではないと思うのです。

そこに編集や加工や新たなビッグデータとの結合などということをやっていって、商業利用にとって意味のある情報は事業者にとってみると宝物に近くて、そういう情報そのものがみんなに使えるようになればそれはいいかもしれないのだけれども、決してコストがかからないものではないわけで、そこにアイデアが詰め込まれれば、さらに知的な財として価値を持ち得る。そういうことになると、どこかでオープンに使われる公共財としての情報と、それを工夫してつくり上げた、価値のある情報の部分があるのではないかと思うのですけれども、後者については、これを財として守る必要はないのでしょうか。一般的な話で恐縮です。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 難しい話題だと思うのですけれども、財として守るかということについては、私はまだ結論的なものは持っていません。

私はオープンを主張する一方で、割とプライバシーの問題については保守的です。あえて私は「プライバシー」と言っています。個人情報とプライバシーは違うと思っていて、プライバシーは徹底的に守ったほうがよい一方で、個人情報の部分は、社会全体の最適値が、がちがちに守るということとは違うところにあるような気もするのです。一個一個、何でも全部財と扱うとどうなのかなというところは、私もまだ判断できないところがあります。

ただ、先ほどおっしゃっていたとおり、編集、加工にはコストがかかるので、ビジネスをする人たちは、何らかの収益を得るために、無茶して悪事をする人たちもいる可能性はあります。しかし個人情報に関する問題は、多分、これから取扱事業者に対して透明性をかなり徹底的に求める方向に行くのだと思います。

先ほどのトレーサビリティの問題もそうですが、あちこちで漏えい問題もたくさん起こっています。あれも問題が起きたときに、直ちに何が起こっているのかということをちゃんと開示しないと、ずるずると問題が大きくなっていってしまって、企業にとってもいいことは何もないわけです。

問題が起こったことに対しては、ちゃんと開示するあるいは起こる前から自分たちがどういうことをやっているのかということを、説明責任としてちゃんとやっていくこととビジネスが両立するように制度をつくっていかないといけないと思います。

○山本座長 ほかにいかがでしょうか。

唯根委員から、相談に関する情報の活用について、いかがでしょうか。

○唯根委員 1点、ちょっと伺いたいのですが、分析策のところで予測モデルの御紹介をいただいて、60都市で導入とか、先生の高齢者の問題、まちづくりの研究でも、最初のほうで政令指定都市レベルの取り組みが早いというお話もあったのですが、こういった取組みの都市の最低の規模というのはどの位でしょうか。小さい人口のところですとプライバシーの部分などで、結構個人がわかってしまうと言う話を聞いたことがあるので、実際に研究されている規模、人口の最低数の程度がわかれば教えていただきたいです。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 ありがとうございます。

例えば、6ページのような予測をしていくことについていえば、データはあればあるほどいいわけです。

ただ、ビッグデータとして全員の全てのデータが必要かというと、必ずしもそうではないです。統計的なサンプル調査でわかることもかなりあって、本当に全員の全部のデータが必要なものは余りないと思うのです。

実は、今、その辺も結構いい加減に議論されていると思います。全活動のデータみたいなものを本当に必要とするものはそんなにないので、必要なだけのデータをとって、適切に使うという利活用の仕方をちゃんと広めていかないといけないと思います。

規模ということでいえば大きいほどいいことになってしまうのですが、不要な個人の特定をしないという意味では、実はあまねく情報をとる必要はないのではないか。大体の件は結構サンプルで済むのではないかとは思います。

お答えになっていますか。済みません。

○唯根委員 済みません。私の質問が説明不足で変でした。

そうすると、人口の規模とかは関係なく、まちづくりの取組みにこういうデータはどこでも使えるという理解でよろしいのですか。

○GLOCOM庄司准教授・主任研究員 私もある小さい村のアドバイザーとかをやっているのですけれども、そこの村だけだと小さすぎるので、そこは全国的な傾向とか、何とか地方、何とか県の傾向から読み取って応用するとか、そういうことになるかと思います。

○唯根委員 ありがとうございました。


≪3.閉会≫

○山本座長 それでは、よろしいでしょうか。

ちょうど予定していた時間になりましたので、このあたりで意見交換を終了したいと思います。

庄司准教授におかれましては、お忙しい中、御出席をいただきまして、また、大変有益なお話をいただき、非常に議論も活発にできまして、どうも本当にありがとうございました。

ヒアリングは本日を最後といたしまして、これまでに行ったヒアリングや、その他、調査等で得られた内容を踏まえまして、消費者行政における新たな官民連携の在り方に関して、当ワーキング・グループの委員において課題を整理して、消費者委員会の本会議に報告するという段取りで今後は進めてまいりたいと思います。

それでは、本日の議事は以上です。

これにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)