第16回 地方消費者行政専門調査会 議事録

日時

2013年5月16日(木)9:30~11:56

場所

消費者委員会大会議室1

出席者

【委員】
宇賀座長、沼尾座長代理、池田委員、池本委員、小林委員、竹中委員、
丹野委員、仲條委員、吉冨委員
【消費者委員会担当委員】
吉田委員
【説明者】
国民生活センター  千塚研修部長
兵庫県立健康生活科学研究所生活科学総合センター 本多相談事業部長
【オブザーバー】
国民生活センター 西総務部長
消費者庁 村松地方協力課長
消費者委員会 山口委員長代理
【事務局】
原事務局長、小田大臣官房審議官、浅田参事官

議事次第

1.開会
2.基礎自治体の体制面での主要課題の整理
   ○基礎自治体における体制面での主要課題の整理
   ○今後の進め方(案)
3.基礎自治体の役割と体制面での選択肢の検討
 (1)小規模自治体の体制底上げに向けて
   ○広域連携等の制度概要について
   ○第一次地方消費者行政専門調査会での検討結果について
   ○消費者行政分野における広域連携による体制維持・向上
 (2)自治体職員の専門性底上げに向けて
   ○国民生活センターにおける消費者行政職員研修の実施状況について
   ○兵庫県における消費者行政担当職員研修の実施状況と課題について
4.今後の進め方
5.閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

議事次第(PDF形式:67KB)
【資料1-1】 基礎自治体における体制面での主要課題の整理(事務局提出資料)(PDF形式:139KB)
【資料1-2】 今後の進め方(案)(事務局提出資料)(PDF形式:98KB)
【資料1-参考】 消費者問題及び消費者政策に関する報告(抜粋)(出典:消費者庁ホームページ)(PDF形式:165KB)
【資料2-1】 共同処理制度の概要(出典:総務省ホームページ)(PDF形式:354KB)
【資料2-2】 第一次地方消費者行政専門調査会での検討結果について(事務局提出資料)(PDF形式:359KB)
【資料3-1】 消費生活相談業務にかかる広域連携について(消費者庁)(PDF形式:259KB)
【資料3-2】 市町村連携による広域的な消費生活相談等の対応一覧(消費者庁)(PDF形式:331KB)
【資料4】 国民生活センターにおける消費者行政職員研修の実施状況について(国民生活センター)(PDF形式:116KB)
 (別紙) 平成25年度 独立行政法人国民生活センター教育研修事業(PDF形式:157KB)
【資料5-1】 24年度 兵庫県 市町消費生活相談担当職員・相談員等研修概要(兵庫県生活科学総合センター)(PDF形式:161KB)
【資料5-2】 兵庫県における24年度消費者行政担当職員研修の実施状況と課題について(兵庫県生活科学総合センター)(PDF形式:156KB)
【資料5-参考】 兵庫県研修実施要領(兵庫県生活科学総合センター)(PDF形式:233KB)

≪1.開会≫

○原事務局長 時間がまいりましたので、始めさせていただきたいと思います。本日は、朝早くからお越しいただきまして、大変ありがとうございます。
 ただいまから、「消費者委員会地方消費者行政専門調査会」、第16回の会合を開催いたします。
 今回から、沼尾委員が出席されておりますけれども、遅れておられるようなので、御到着次第、御紹介をさせていただきたいと思います。なお、本日、委員会担当委員の稲継委員が欠席ということで連絡をいただいております。
 それでは、議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきたいと思います。
 配付資料は、議事次第の後ろページに一覧を載せております。座席表がございまして、資料1-1は、基礎自治体における体制面での主要課題の整理ということで、事務局でまとめたもの。
 1-2は、今後の進め方(案)、これも事務局でまとめたものです。
 資料1-参考は、後ほど御説明させていただきますけれども、前回出ました宿題について、御回答ということで用意しております。
 資料2の関連ですけれども、資料2-1が「共同処理制度の概要」ということで、総務省のホームページから「広域連携の仕組みと運用について」ということでの資料を、これも事務方から説明をさせていただきたいと思っております。
 資料2-2は、第1次地方消費者行政専門調査会でも、広域連携、広域連合についての議論はしておりますので、どういう議論をしたかについての資料を抜粋しておつけしております。
 資料3-1、3-2は、「消費生活相談業務にかかる広域連携について」ということで、消費者庁から御提出いただいた資料になります。
 資料4から、後段、予定をしておりますけれども、職員の研修というところで、「国民生活センターにおける消費者行政職員研修の実施状況について」の資料を御提出いただいております。
 資料5-1、5-2、5-参考は、後ほど兵庫県から職員研修についてのお話を伺う予定にしておりまして、その関連の資料になっております。
 不足がございましたら、審議の途中でお申し出いただければと思います。
 それでは、沼尾先生がお見えになりました。海外に研究ということで出ておられまして、今回からの出席ということでありますので、簡単に自己紹介ということで、よろしくお願いいたします。

○沼尾座長代理 おはようございます。日本大学の沼尾と申します。遅くなりまして申しわけありませんでした。しばらく海外におりまして、前回、前々回、出席できませんでしたが、よろしくお願いします。
 私は、自治体財政、並びに国と地方の財政関係について研究しておりますので、そうした観点から発言をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○原事務局長 第1次地方消費者行政専門調査会の座長代理もお願いしておりました。

≪2.基礎自治体の体制面での主要課題の整理≫

○基礎自治体における体制面での主要課題の整理

○宇賀座長 それでは、議事に入らせていただきます。
 本日の最初の議題は、「基礎自治体の体制面での主要課題の整理」についてです。議題について資料を御用意いただいておりますので、事務局より、御説明をお願いします。

○原事務局長 資料1-1をごらんいただきたいと思います。第14回、第15回の会合で指摘された主要課題についてということですけれども、委員の皆様方のお話をまとめますと、主要課題の1といたしまして、基金で手当てをされ、小規模自治体においても相談窓口、消費生活センターを加速的に設置されてきましたけれども、小規模自治体の体制の底上げと継続という課題。
 主要課題の2といたしまして、第1回目のときに職員研修の話が集中して出たのですけれども、自治体職員の専門性の底上げという、体制の話と人の話と出てきたかと思っておりまして、そのように整理しております。
 (2)としまして、「主要課題の前提(基本的方向性)について」ということで考えておりますのが、今後、「行政が、住民に最低限保障すべき消費者行政サービス水準」を継続的に担保し、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制」を実現するために、国、都道府県、基礎自治体が優先的に取り組むべき課題は何かということで、その観点から、論点1、論点2、論点3とまとめております。
 この中に盛り込んでおりませんけれども、第1回目のときに随分議論が出ましたのが、消費者行政というのは、相談だけに特化しているわけではなく、これからは、例えば消費者教育についても消費者教育推進法が昨年8月に制定されたところでありますので、もっと幅広く消費者教育なども行う拠点になるのではないかという御意見もいただいておりますので、それは盛り込んでいこうと考えております。
 主要課題の論点ですけれども、3つに分けております。論点1といたしまして、「小規模自治体の底上げの必要性」。1としまして、「活性化基金等により地方消費者行政の体制整備は大きく進展したものの、特に小規模自治体では、高齢、過疎、財政基盤脆弱といった困難な状況下にあることが多く、窓口の未設置や、相談員の未配置にみられるように未だ消費者行政が脆弱なままで残されている例も見られる」。これは、前回、委員会事務局の資料としてお示ししたものです。
 2としまして、「自治体の裁量を前提とした上で、小規模自治体については、国や都道府県の継続的な技術支援、財政支援のほか、周辺自治体と広域的な連携、協力等の工夫が、『どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制』の実現のための一つの選択肢として考えられる」ということで、前回の後半、この御意見がたくさん出ておりました。
 3としまして、小規模自治体に限らず、財政的制約、人的制約はありますから、3行目のところから書いてありますように、「福祉・安全など他の行政分野や民間団体との連携の具現化も一つの効果的な選択肢として考えられる(庁内連携、地域リーダーや講師養成等)。この点について、目下策定が進められている消費者教育の推進に関する基本的な方針案において、消費者行政部門と教育行政部門、福祉関係部門、商工部門との連携も考えられ、このような取組みを契機にして体制構築を進めていくことも一案。小規模自治体においても、こうした庁内外との連携手法を応用することが可能ではないか」としております。
 論点2としまして、「属人的な仕組みから、戦略的な仕組みへの転換の必要性」ということで、1は現状について書いてありますけれども、「消費者行政担当職員については、消費者行政への専任化、他行政部門と兼務の場合、その比重を上げること、人数拡充等が望ましい。しかし、現実的には、職員の多くが他行政分野との兼務であり、2~3年で人事異動するケースが一般的」という現状にあります。
 2では、「行政が住民に最低限保障すべき消費者行政サービス水準」の継続性を担保するためには、どのような政策オプションがあり得るかの検討が必要(特定の職員・相談員の能力や自助努力、市長の熱意、ボランティア精神のある消費者団体の協力といった要素に、スーパー公務員とか、非常に頑張っている消費者団体という要素に大きく左右されることなく、政策オプションの提示が必要ではないか)としております。
 3に記載しておりますのは、基礎自治体で兼務の職員の人たちがやっておられると、やはり消費者行政はなかなか庁内の中でも、外からも見えないと思いますが、明確に消費者行政を位置づける、各関係主体の役割分担を明確化した上で、自治体職員の専門性底上げのための研修について、戦略性をもって行うことが優先課題ではないか、としております。
 論点3としまして、「地方消費者行政に係るメルクマールの策定の是非と住民ニーズ対応のための工夫について」ということです。これについては、事務局の提案としては、このようなメルクマールの策定ができるのではないか。やることの是非ということについて、問いかけをしておりましたけれども、さまざまな意見が出されたところです。
 1に掲げておりますのは、メルクマールを策定することで、既にやる気を持って最低限以上の先進的な取組みを行っている自治体の活動が阻害される懸念があるのではないかという、デメリットに働く要素です。
 2つ目として、自治体が住民ニーズに応じてサービスを提供できるよう、自治体の選択の幅に配慮が必要ということで、一つのメルクマールだけに縛られるということではなく、ある程度いろいろな選択の幅があるのではないかということの提案です。
 3として、メルクマールを策定するよりも、前述の1、2の論点に関し、優先すべき具体的な工夫を提示するのが得策か、という御提案です。
 4として、なお、最低限の消費者行政サービス体制が整備・定着した段階の自治体については、新たに質の向上を目指せるよう、ベストプラクティスの共有が必要ではないか、ということです。最低限のメルクマール策定の是非、ここまではやってくださいという話と、ここまでの姿、理想的な姿というところをどう描くかというところを、どう考えていくのかというのも課題と思っておりますので、この辺りの御検討をお願いしたいと思います。

○今後の進め方(案)

○原事務局長 資料1-2ですけれども、今後の進め方です。本日は、1と2としまして、今、基礎自治体の体制面の主要課題の整理をいたしましたので、こういう整理の仕方でいかがでしょうかということの議論をしていただきたいということ。2ポツとして、選択肢の検討ということで、本日、広域連携のお話と、休憩をはさみまして、後半は、職員の研修の話を国民生活センターと兵庫県からヒアリングを行ってはどうかと思っております。
 次回は6月13日を予定しておりますけれども、やはり課題の整理は事務局でいたしまして、実際にそれぞれ広域連携に取り組んでいる自治体、小規模自治体のレベルアップを非常に頑張っておられる県もありますので、消費者団体の頑張りで基礎自治体が底上げしてきたところをヒアリングしてはどうか、ということを考えております。都道府県の役割も今回の専門調査会で議論したかったところですので、都道府県の役割について、2つぐらいの県からヒアリングを考えたいと思っております。残り少ない回数で、8月までの取りまとめということで作業を進めたいと思います。
 資料1-参考ですけれども、これは吉冨委員からの御質問があった部分です。直球を受けてそれにストレートに返球ができていなくて申しわけないのですけれども、実際に相談件数が上がっていないところは、何かほかのことで、例えば見守りが充実していて拾っているかもしれないし、基礎自治体の過疎とか高齢化率が高いところの状況はなかなか見えないという話があって、何かデータがないかということがあります。事務局でもいろいろ工夫して出してはみましたが、これだという決め打ち的な数字のデータというのが難しかったものですから、これは非常にオーソドックスな、いつも言われる話ですけれども、実際に被害に遭っても、その被害を誰にも相談をしていない人は依然かなりの率に上がるということです。誰にも相談しなかった人が約4割としていますけれども、こういう全体的な実態も押さえて議論していく必要があるのではないかということで、半分ぐらいの御回答にしかなっていないのですけれども、資料としてお付けさせていただきました。
 事務局からは以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明に対しまして、御質問、御意見のある方はお願いします。
 丹野委員、どうぞ。

○丹野委員 よく論点を絞られているとは思いますが、ただ、例えば論点1について申し上げれば、その前提としては、窓口の未設置や相談員の未配置に見られるように云々で、2、3で、広域連合と総合的な相談窓口というつくりになっていると思います。そもそも、基礎自治体が非常に努力して窓口を開設して、専門職である消費生活相談員を複数配置して、そのことによって、市民の利益及び消費者の権利のために尽力することがスタンダードであって、それがそもそも基礎自治体のやることであると思います。それが、いろいろな事情で大変困難だからということをまず確認した上で、困難だから2や3が出てくるというスタイルにするべきではないかと思います。割と簡単にポーンとそちらに行っているようにとられかねないところがありまして、その辺は工夫するべきと思います。

○原事務局長 私との意見交換になってしまうとよくないとは思いますけれども、丹野委員がおっしゃられたとおりのことを、事務局でももちろん考えております。(1)から、すぐ広域連携が選択肢だといってそれを進めるという意味ではなくて、やはり基礎自治体がしっかり自分たちの責任だということを感じる、そういう仕組み方をまずしておかないと、後ほど広域連携の話もさせていただきますけれども、責任感が中抜けしてしまうことになると思います。(1)から(2)につなげるところに、まだ幾つも考えるべき課題があるだろうとは事務方でも考えております。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 池本委員、どうぞ。

○池本委員 前回は欠席して申しわけありませんでした。前回、皆さんから発言レジュメが整理されたものが提出されていたので、非常に参考になりました。それと今の論点整理とを踏まえて、少し感想というか、こういうことが必要ではないかということを申し上げたいと思います。
 今の丹野委員の発言とも近いのですが、広域連携というものの在り方の前提として、各自治体でどういうことが必要か、特に住民にとって求められるものは何かというので、ちょっと欲張って5項目申し上げます。
 まず第1は、専門的知見を有する者にきちんと相談ができ、解決まで見届けてもらえることが必要。それは、相談員の方からいつも言われるのは、資格を持った人が配置される必要があるし、できれば2人以上いて協議しながら進められる体制でないと、1人体制ではなかなか難しいということをおっしゃっています。だとすると、例えば、近隣の二つ、三つの町で、うちは月曜と火曜だから、水・木はそちらでやってくださいというような規模ではやはり不足ではないか。相談員2人以上の体制で組める程度の規模で、同じ連携するのだったら、一定の質を保てるだけの規模の連携を促していくという意味で、専門性確保という第1の柱は、広域連携を提起するときのボリュームを枠づけることになるのではないかと思います。
 2点目は、ちょっと矛盾するかもしれないですが、身近な窓口であることというメルクマールが必要ではないかと思います。それは、例えば広域連携の協定を結ぶときにも、近隣の少し大きな町に予算を出して、そちらに行ってください、電話が来たら自動的にそこへつなぎますということでは、電話相談だけならば、一見するといいのかもしれませんが、訪ねていくこともできない。だとすると、やはり週1日でも2日でも相談窓口は設ける努力が必要で、さらにつなげる先があって連携することが必要だし、仮にそれが難しいとしても、よく出ている「よろず相談窓口」という言葉がありましたが、とにかくここへ来てくださいと。そこへ専門家が配置できなければ、例えばテレビ電話でつなぐなり、身近なところへ、あそこへ行けば相談が受けられるという窓口を開設する努力が一方にあって、さらに、広域連携によるバックアップ、強化が望ましいのではないか。
 3点目は、実は、相談窓口で相談者を解決しただけが消費者行政ではないはずですから、それが被害の防止策につながる体制があること、これがなければ広域連携を議論しても仕方ない。その防止策につながるものがあるというと、例えば委託であれ協定であれ、その相談情報は構成する各自治体が全部共有していることが必要です。そして、それを啓発・教育につなぐ体制がその構成する団体、各自治体にあるかどうか。あるいは、庁内連携をする体制があるかどうか。それがなければだめですということが、第3の柱になるのではないか。実は、啓発・教育や庁内連携に相談情報を使うとなれば、まさしく職員がいなければいけないということになります。
 そこで、職員のことについては4番目、実はここが非常に悩ましい問題なのですが、量的な問題と質的な問題、量的なことでは、たしか前回の吉田委員のレジュメにもありましたが、人口に対して一定の職員配置の目安は提起する必要があるのではないか。ただ、それが、現状の平均値のこの辺でという話でいいのか、それとも望ましい姿を出すのか。しかも、どう考えても本当に小さいところで専任を置けといっても、それは無理強いでしょうから、兼任ということもある程度避けられない。その辺りの頃合いはどの辺が着地点として望ましいかわからないですが、職員の配置という量的な面と、質的な面というのは、第1回でも申し上げた、きちんと教育・啓発、庁内連携、相談支援などについて理解し、実践できる研修を受けること。そういった消費者行政の研修を受けた職員が配置される。配置の目安として専任か兼任か、ここはペンディングですが、それがあること。
 そして、5つ目。地域の中で啓発・教育をしていくといっても、エネルギーのある職員が座ったときには、いろいろな関係団体のところへ出歩いて働きかけをしますが、そうでないと消えてしまうということになってはいけない。そうすると、地域の中のいろいろな関係団体などの連絡協議の場が必要ではないか。
 なぜこれを申し上げるかというと、消費者教育推進法は、消費者教育推進地方協議会というのがありして、あれは是非、各自治体でつくっていただきたいのです。実は教育だけではなく、消費者行政全体の情報交換や防止に向けた啓発・教育ということ全体をやっていく、そういう地域協議会が必要なのではないか。それは、消費生活センターでの最近の問題を紹介する、そういうものをうちの団体でも少し学ぶ機会を設けたい、では、誰か派遣してくれというような情報交換ができるわけです。そういった地域連携ができることが、個人のパーソナリティー、職員の力だけに頼らないで制度として定着させること。
 というふうに、専門性の確保、身近な窓口の確保、防止策につなぐこと、一定の職員配置の目安、地域連携の制度的な担保と、5つ論点として挙げてみました。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 具体的に5つの御提言をいただいたわけですけれども、それにつきまして、何か御意見はございますでしょうか。もちろん、ほかの点でも結構ですが、いかがでしょう。

○沼尾座長代理 前回までの議論に参加しておらず、議事録だけを拝見しておりますので、的外れなことを申し上げてしまうかもわかりませんが、お許しください。
 今、お二人の委員の方から、今回の論点に関してお話しがありました。私自身は、確かにこうした形で消費者行政というものを推進し、全国どこに住んでいても、困ったときには消費生活相談が受けられる体制を整備するという目標を設定することは、望ましいことだと思いますが、そのために、一定の体制というものを確実につくらなければいけないのかどうかというところについては、いささか疑問を感じているところがあります。
 議事録を見ますと、例えば吉冨委員がおっしゃられていたと思いますが、地域によって大都市もあれば中山間地域もあって、それぞれ消費者行政に対するニーズというのは異なる。対象となる年齢や、どういったサービスが必要かというところも異なる。そうなったときに大事なのは、それぞれのニーズに合った形で、最終的にそれが相談につながって解決につながるルートを、いかに最小の費用で最大の効果を上げる形で整えるかということです。
 例えば、すべての自治体に身近な窓口をつくることが必ずしもそういうことにつながるかどうかというのは、わからないと思います。過疎地ですと、役場の職員はみんな地元の人ですから、当然、知り合いもいて、窓口には相談に行けない、恥ずかしいと。むしろ県ぐらいのところとか、近隣の市町村の知らない人のところのほうがよほど電話で相談しやすいとか、そういったこともあるわけです。そうすると、すべてのところに身近な窓口をつくることが必ずしもゴールにつながるかどうかというのは、検討が必要なのではないかと思います。確かに、何かあって相談しに行きやすい場所に窓口があることは必ずしも悪いことではないのですけれども、その辺りは、いかに地域のニーズを把握してゴールにつなげていくのかというところで、自治体のほうが工夫なり努力をできる環境を整えるかということが重要になってくるのではないか、そういう印象を持ちました。
 今、池本委員から、広域連携のボリュームを考える上で、専門家の数ですとか、お話があったと思います。これは広域連携でやるという方法もあると思いますが、単独の市町村でやれない場合、県が補完をするというもう一つの可能性がありまして、どちらでやるのがいいのか、あるいは、それをどう組み合わせるのがいいのかというところも検討が必要なのではないか。
 そういう意味で言いますと、今回、事務局でつくってくださった論点の中には、広域連携とは別に、都道府県の役割についても、今後、検討していくという視点があったので、そこを両にらみで見ていくということがもう一方であり得るのではないかと思いながら、お話を伺ったところです。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 丹野委員、どうぞ。

○丹野委員 今、沼尾先生がおっしゃったことは非常によくわかるのですが、ただ、私どもが消費者庁をつくるという運動をしていたときに、その中で、消費者庁ができて、消費者安全法ができて、基礎自治体、つまり身近なところに相談窓口を置きましょうという議論が出てきたのは、今、先生がおっしゃったことを全部踏まえた上で、でも、ベストの選択として、身近なところとしたわけです。もちろん、県に行ったり国に行ったりする人、国センに電話する人もいるけれども、それでも身近なところに相談窓口を置くことによって、そこに一種のプラットホーム機能を持たせて、被害救済だけでなく、地域に情報を還元して未然防止も図れるのではないか。先ほど参考例に「相談しません」というのが出ていましたけれども、そういう意味では、相談窓口を開くことによって、そこに窓口が存在していることと、その役割が住民に浸透していって、あそこに行けば何とか相談してもらえるというところをつくることが安全法の趣旨だと思うのです。それを受けて、基礎自治体がみんな頑張っておつくりになっているという現実があるのに、そこを、そんなに無理しなくてもいいと簡単に言ってしまうことが本当にいいのだろうかと思います。
 消費生活相談を受けている団体の人間としては、相談窓口があって、来て解決してもらってよかったという声を簡単には切り捨てるわけにはいかない。切り捨てられない。法の趣旨から言っても、せっかく一生懸命前向きにやってきたのを了としており、あとは専門職の配置というところで、なかなかギャップがあって進まないというところがありますが、どんな自治体にもつくれとは言いません。無理なところは無理です。でも、身近なとこにあるという本来の趣旨は、そこは譲るべきではないのではないかと思います。

○沼尾座長代理 私の申し上げ方が良くなかったのだと思いますけれども、身近なところに相談窓口をつくる必要はないと申し上げているわけではないのです。そのつくり方というのは、その地域におけるサービスのニーズであるとか、実際の職員の体制とかによってまちまちなので、そこは、それぞれの地域で最終的にゴールに到達できるような窓口機能があればいい、という考え方もあり得るのではないかということです。
 例えば、私が知っているある中山間地域などは、事実上、社会福祉協議会が消費者相談の窓口を担っていて、住民もそれを全部わかっているので、逆に役場のほうも、相談に来たら専門性を持った人がいて、福祉とうまくつなげるような工夫をやっているところもあります。そうだとすると、実態として身近な窓口というもの、社協が担う形でやっていて、役場はやっていないので、職員はいないのですけれども、確実につながるというところでは、役場も県も社協もうまく連携をしているという事例があります。
 そういう形で実が上がっているということが重要ではないか。ただ、それを強調すると、では整備しなくていいのかとなってしまうと、それはそれで問題だと思いますので、実を上げるための工夫をどう考えるかというような観点から申し上げたので、決して軽視しているということではないので、大変失礼いたしました。

○宇賀座長 ありがとうございました。

○吉冨委員 今、先生から吉冨さんもということでおっしゃっていただいたのですが、私も相談窓口がなくていいとは思っていません。よろず相談でもいいし、とにかく相談に行けるところが身近にあるといい。ただ、次の段階として、相談員さんが何名とか、専門相談員なのかどうか、そういう辺りが自治体によってかなり違うので、その辺りの選択肢の仕方があるといいのではないかという意味での前回の発言でした。私もそういう意味で発言していましたので、よろしくお願いいたします。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

○消費者委員会吉田委員 地方、地方でどういう相談体制をつくっていくかというのは、本当にいろいろな工夫があっていいと思います。沼尾先生からの御指摘もそのとおりだと思いますし、例えば自分の役場には窓口があったとしても行けないという方も中にはいらっしゃいますから、そういうときこそ、やはり地域の連携でそれは解決できる。例えばA町に住んでいる人がB町の窓口に行って相談してもいい、B町に住んでいる人がC市の窓口に行って相談してもいいというのは、地域の協定次第でいかようにでもできると思いますから、そこは工夫のしどころだと思います。
 それから、池本先生がご指摘になった5つの要素というのは、本当に重要な御指摘だったと思います。まさにどんな自治体であっても、これを踏まえて地域の形に合ったものができ上がっていけば本当にいい体制がとれるのではないかと思います。

○宇賀座長 池本委員、どうぞ。

○池本委員 先ほど、5つ論点を提示しながら、実は1番目と2番目の専門性確保と身近な窓口というのは矛盾するというのはひとこと言いましたが、その辺りを方向づけとしてどう考えていくかというところはさらに掘り下げておく必要があると思います。
 例えば埼玉県では、活性化基金を呼び水にして、できるだけ各自治体で週4日以上の、しかも相談員を置いた相談体制をつくってくださいということを、県が行脚をされて、今、人口2万人ほどのところも相談員を置いて週4日というセンターをつくっています。すばらしいことだと思います。そこまでいかない、1万人内外の町のようなところは、それはやはり無理だというのがあって、それをあの辺とこの辺という県北部辺りで協定方式で連携をして、少なくともどの日でもどこかへ相談がかけられるというふうにしている。それで今は、県内のどの市町村も市町村レベルのどこかへつなぐことができるというふうにしてあります。
 ただ、そこまでできないさらに小さいところで、週1日の窓口もできないところに、丸ごと隣の市へ行ってくださいと。それでも、そこへつなぐ、それを広報すれば相談窓口になりますけれども、それでよしとするのか。よろず相談の、先ほど社協を一つの窓口という話がありましたが、社協であれ、役場であれ、よろず相談の何でも相談というところへ行けば、この問題は消費者問題である、簡単なことはここでもアドバイスできるけれども、かなり難しそうだからここへつなぎましょう、というような窓口があったほうがいいのではないかということ。
 さらには、前回の丹野委員のレジュメにありましたが、相談員が複数配置の窓口が本当の意味の専門性が保てるという話になったときに、2万人で1人配置していますというところは不十分だと言ってしまっていいのか。それは維持してほしいけれども、そこもやはり連携をしていく。ただ、そこでの連携は、単独でできているのならば、県との連携でバックアップを丁寧にやっていく必要があるというふうにすべきではないかとか、身近な窓口としてさらに広げていくための工夫と、専門性確保のための連携の工夫という、その2つを、1個の形ではなく、複数のものを提示しながらも、工夫の先があるということをどう提示できるかというのが工夫どころではないかという気がします。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 活性化基金ができて、随分と体制整備が進んできましたが、まだ小規模の自治体で体制が十分でないところがある。そこをどうするかということで、広域連携の話とか、都道府県による補完という話が前回も出たわけですけれども、その際、基礎自治体としての消費者行政についての責任が希薄にならない方向での工夫が必要であるという、非常に重要な御指摘をいただいたと思っております。

≪3.基礎自治体の役割と体制面での選択肢の検討≫

○宇賀座長 それでは、次の議題に移りますが、「基礎自治体の役割と体制面での選択肢の検討について」です。先ほどの議題でもありましたように、ここでは第1の課題として、小規模自治体の体制底上げに関しての広域連携の対応について。第2の課題として、自治体職員の専門性の底上げに向けてについて、ヒアリングと意見交換を行いたいと考えております。

(1)小規模自治体の体制底上げに向けて
 ○広域連携等の制度概要について

○宇賀座長 最初に、小規模自治体の体制底上げに関しての広域連携の対応につきましては、2つのヒアリングを行います。最初に事務局からです。今後の議論の参考として、広域連携についての全体像について資料を用意していただいております。さらに、第1次の消費者委員会の地方消費者行政専門調査会で平成23年4月に報告書が出されましたが、その際の検討結果についても簡単におさらいをしておきたいと考えております。事務局から御説明をお願いします。

○浅田参事官 おはようございます。今、座長からお話がありましたとおり、プレゼンテーションは2部に分かれておりまして、委員会事務局と消費者庁からということになります。最初に、資料2-1をごらんください。このあと、第一次消費者委員会における検討結果及び消費者庁の説明がありますが、広域連携の用語が出てきますので、冒頭におさらいということで簡単ですが制度の全体像ということで御紹介させていただきます。
 資料2-1の冒頭にありますが「広域連携の仕組みと運用について」総務省のホームページから引用したものですが、青枠で囲ったところが地方自治法に基づく枠組みということで、地方自治法ではこの5形態、協議会、機関共同設置、事務委託、さらに、自治体以外の別途法人をつくるということでございまして、一部事務組合、広域連合といった形態があります。これ以外の形態で、これから消費者庁から説明がありますが、実態を消費者行政の文脈で見ますと、このような地方自治法で定められた広域連携の法律に基づく枠組み以外に、自治体同士が簡単な協定を結ぶといったようなことで、緩やかな広域連携の枠組みを作り、そこで消費者行政の体制整備を行うといったような例があるということでございます。そういったものが多くあり、また、これに加えて法的な制度の枠組みで対応されているところもございます。具体的なところは、協議会、機関共同設置、事務委託。さらには、事務組合、広域連合があります。全国的な実態を見ますと、制度的な仕組みを使わずに事実上の町村がそれぞれ相談をして、協定を結んでやっているという例が多いといったことでございます。
 続きまして、第1次消費者委員会の説明に移ります。


○第一次地方消費者行政専門調査会での検討結果について

○原事務局長 資料2-2をごらんください。第1次地方消費者行政専門調査会でも広域連携の話は議論いたしましたので、その箇所を抜粋しております。第1次のときは、非常に網羅的に検討しておりまして、商品テストとか法執行についても言及していますが、第2章、「相談ネットワークの在り方について」でその話をしております。(1)、住民にとっての望ましい相談窓口の在り方というところで、消費者安全法の基本理念として、第8条第2項で各市町村に相談の受付・あっせん事務を義務づけております。
 ただ、なかなか大変だというところで、(2)で都道府県と市町村の役割分担、国の支援というのを書いてあります。「現実には、各市町村個別の対応では、人員・予算等の面で困難な場合が多いことから、複数の市町村が広域的に連携して、効果的・効率的な対応を図ることも期待される」としております。「また、都道府県は、広域的な事案に関する相談に加えて、市町村の窓口をバックアップする体制をつくることが望まれる」というふうにも書いております。
 (3)が、望ましい広域連携の在り方ということで、これについては表を見ていただいたほうがわかりやすいと思います。別紙1として「望ましい広域連携の在り方」としています。今になってやや反省ですが、なぜここで「望ましい」とつけたかということがありまして、まだいろいろあるのではないかと思っておりますが、口頭で説明をいたします。
 2ページ、「(3)望ましい広域連携の在り方」ということで、どういう形の連携が組まれているかということですが、マル1が、一部地域の市町村による広域的な連携を行う場合。これは、その当時もありまして、自然発生的にお隣の大きい市にお願いをいたしますというような形のものです。マル2は、一部地域の市町村が広域的に連携、あるいは単独で窓口を設置すると同時に、県の振興局・振興事務所等の出先機関がこれを支援しているという形で、大体同じような規模の市町村が三つとか四つとか広域連携を組んでいて、そこに県も加わっているという形のものです。マル3は、都道府県とその域内の市町村が広域連携する場合。一部事務組合というような形で、清掃行政とか、消費者行政についてはその当時、まだ二、三か所しかなかったのですけれども、専門的な行政だけを切り出して、県の中で広域的な連携を組んでいる場合。こういったパターンがあると整理しておりました。
 3ページ(4)に、「したがって、消費者庁としても、消費者安全法で示された理念実現のためには、広域連携の望ましい形や広域連携に伴って想定される問題への対処に関する複数の選択肢について、技術的助言として、一定のひな形を示す必要がある」としておりまして、ひな形を考えてはどうかと考えております。
 この段落の最後の2行に、「連携に参加する地方公共団体間の負担割合や責任関係、機能分担等について、上記ひな形で示すことが望ましい」としております。当時も、広域連携をするということで、周りの町や村が大きな市に全くおんぶしてしまって自分の責任はないという形にしてしまうといった指摘もありました。その行政だけを切り出して県の中での広域連携を含むというのは、魅力的ではありまして、それはなぜかというと、相談員などの専門的人材確保や育成を図るためには、広域的な人事ローテーションを組むという形が効果的ではないか、というような御意見が出ておりましたが、実現できるのかどうか大変ではないかといった、そういう議論はいたしました。
 この後、消費者庁から御説明があるかと思いますけれども、当時に比べると相当増えてきているというのが今の状況ではないかと考えております。別紙を配付いたしましたので、口頭で述べたものが図になりますので、ごらんください。

○宇賀座長 ありがとうございました。

○消費者行政分野における広域連携による体制維持・向上

○宇賀座長 続いて、消費者庁から、消費者行政分野における自治体の広域連携の全般的な状況、主な事例、成果と課題等について、御説明をお願いします。

○消費者庁村松地方協力課長 消費者庁の村松でございます。
 資料3-1をごらんください。消費生活相談業務にかかる広域連携の現状ということで、昨年度、都道府県にメール等で照会しましたデータをまとめたものでございます。昨年5月末現在の状況になります。
 まず、広域連携の数は、昨年5月末現在で74ということです。ブロック別の数字は円グラフにございまして、都道府県で多いところでは、北海道が14、奈良県が9、岩手県が7という形で続いておりまして、広域で、かつ小規模自治体が多い都道府県が多いという傾向ではないかと思います。
 続きまして、連携の方法でございます。まず、連携の法的な形式でございます。法的な枠組みではなくて、簡易に実施できる事務協定形式の方法をとっているところが多く、74中52ということになっております。連携の方式は、やはり中心市集約方式が一番多く、40です。そのうち、中心市に完全集約する方式をとっているところが14、各市町に残した上で、高度な相談業務について中心市で実施する周辺自治体継続の方法をとっているところが26という状況になっています。
 2枚目は、主な事例を方法別に4つほど御紹介したいと思います。1つ目が神奈川県平塚市、大磯町、二宮町、3市町の例でございます。こちらにつきましては、単独で相談員を配置することが困難な大磯町、二宮町から働きかけがございまして、事務協定を締結しまして、平塚市の消センにおきまして、2町からの相談も含めた広域対応を実施しているということでございます。この事例につきましては、従来から、ゴミ処理ですとか研修等の連携を進めていたことが連携がスムーズに行われた要因ということでございます。ちなみに、22年度に大磯町、二宮町にも窓口が設置されたため、従来の完全集約から周辺自治体継続の方式に方法としては変更になっております。
 2つ目が、北海道の例でございます。根室市、別海町、標津町、中標津町、羅臼町の例でございます。こちらは事務協定の相互乗入方式ということです。23年4月現在でセンター設置は根室と中標津町のみでしたけれども、そのほかの町では、専門性の高い相談は困難だということから、連絡協議会で協議を行いまして昨年4月から広域連携を実施しております。
 3つ目の例が、愛媛県の例でございます。大洲市、西予市、内子町の例でございます。事務協定の巡回方式です。それぞれ単独で相談員設置が困難であったということから事務協定を締結しておりまして、大洲市が代表で委託契約をしまして、3市町共同で負担する相談員1名が巡回するという形がとられております。
 4つ目が、京都府の例でございます。相楽群の広域事務組合になります木津川市、笠置町、和束町、精華町、南山城村の広域連携でございます。事務組合の方式です。京都府では、それまで府センを中心にしまして、各地域はサブセンを置きまして相談業務を実施していたところでございます。旧相楽群におきましては常設の窓口がないため、府のほうで引き受けたところでございますけれども、消費者庁の設置等を受けまして、地域の体制を強化するために相楽群の広域事務組合を活用しまして、22年3月にセンターを設置したということでございます。当初から相談員3名体制でございまして、週2回、各町村への巡回相談も行っているということでございます。
 こちらの4つほどが主な広域連携でございます。
 3枚目は、広域連携にかかる効果と課題をまとめてみました。まず、広域連携の効果でございますが、1点目は、住民メリットの向上ということで、各市町が機能を残す場合には、身近な窓口では相談しにくいところを他の窓口で相談できるというメリットがございます。相互乗入方式であれば、どこでも相談が可能ということになります。集約効果ということで、専門知識を有する相談員の方を配置して対応できるということで、相談の充実が図れるというメリットがございます。
 2つ目のメリットが経費的な側面ということで、やはり単独設置よりは負担の軽減が図れるところが大きいところでございます。
 3つ目が情報共有ということで、広域連携に参加している市町村の広域な消費者問題の情報収集が可能になりまして、処理能力対応の反映が期待されるということです。
 4つ目が、相談員の質の向上ということで、広域全体で弁護士研修等を行い、事例を学ぶ機会が設けられ、構成市町村の相談員相互の支援、情報共有も図れるということで、質の向上も図れるというメリットもございます。
 5つ目が、相談件数の掘り起こしということで、未設置の自治体で埋もれていた相談事案の掘り起こしが可能ということで、実際に広域連携の前と後で相談件数の増加が図られている例が多いところでございます。
 次に課題でございますけれども、1点目が、経費的側面ということで、基金とも関連する点でございますが、基金終了後におけます相談員の確保等の財源確保が一つ課題でございます。
 2つ目は、これも議論がございましたけれども、一部の市町村におきましては相談窓口が遠方になってしまうという、距離的な課題が残るということもございます。
 3つ目が、認知度にかかる課題ということで、広域連携は最近の取組みでございますので、まだまだ参加の市町村の住民への広報が不十分というところがあろうかと思います。ちなみに、74の連携のうち、21年度以降の連携が59ということでございます。
 4つ目の課題は、構成市町村にかかる課題ということで、特に中心市集約方式をとっている広域連携におきましては、結果的に関係市町村の間で意識に温度差が生じてしまう可能性がございます。実務的な課題ではございますけれども、参加している市町村ごとに財政状況や取組みの方針、相談件数も異なっておりますので、分担金等の設定におきまして調整が難しい場合もあるというところでございます。
 資料3-2としましては、各広域連携の詳細をおつけしておりますので、こちらのほうはごらんいただきたいと思います。
 以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 これまでの御説明につきまして、御質問や御意見のある方はお願いします。

○竹中委員 資料3-1について教えていただきたいのですけれども、本県も資料で広域連携は3つあり、それらは事務協定形式をとっていると思っておりますが、法の枠組みである事務委託の場合と事務協定形式をとった場合でどのように効果が異なってくるのかわからなかったところでございます。実際、法の枠組みである事務委託をとった場合には、議会の議決ですとか、かなり手続的には複雑になるので、事務協定形式で済むのであれば、大体の市町村は、もし連携をしようというときには事務協定形式をとるのではないか。簡易な方法ですので、こちらの方をとるのではないかと思いますが、事務委託の場合と事務協定形式で実態としてどのように異なっているのか、もしわかれば教えていただきたいと思います。

○村松地方協力課長 竹中委員がおっしゃるとおり、広域連携を始める際の手続という点ではやはり事務協定のほうが簡便だということで、結果的に数が多いところかと思います。つくった後、実際に事務委託等の方法と事務協定のほうでどういう形で違いがあるかというところは、残念ですが、こちらでは把握しておりません。今後、勉強したいと思います。

○宇賀座長 吉田委員、どうぞ。

○消費者委員会吉田委員 今の竹中委員の御質問ですが、古い記憶を引っ張り出したところ、盛岡市で協定をつくったときにどの方式がいいかを検討したときの記憶で申し上げますと、事務委託形式にすると、委託元の市長権限まですべて相手の市なりに委託して、相談あっせんをする義務をすべて市に委託してしまうので、自分たちの首長が相談あっせんができなくなるのはまずいのではないかという議論をした経緯があって、それであるならば、委託形式ではなく協定形式にして、それぞれの市町村の義務を残すほうがやりやすいという検討をした経緯がありますので、ご報告です。

○宇賀座長 そのとおりです。地方自治法上の事務の委託の場合には、委託をしてしまいますと、委託したほうはその権限を完全に失ってしまうという特色があります。
 ほかにいかがでしょうか。

○消費者委員会山口委員長代理 消費者委員会で整理した資料2-1の5つのパターンがありますが、そのほかに協定方式があるということですけれども、そうすると法律上、特に定めはないけれども、いうなれば市町村間の契約関係に基づいて処理をしているということになるのでしょうか。

○宇賀座長 そうです。
 ほかにいかがでしょうか。

○吉冨委員 一つ、お尋ねします。中心市集約方式(完全集約)と、中心市集約方式(周辺自治体継続)と、方式が2つあるというのがわかったのですが、完全集約になった場合には全く窓口がなくなってしまうという意味なのでしょうか。平塚の場合は、新しく大磯と二宮に窓口を改めて設置したために、周辺自治体継続の形に変えたようですが、やはりないと困るので戻ったのではないかと思うのですが、その辺りを説明していただけますでしょうか。

○村松地方協力課長 吉冨委員がおっしゃるとおりで、完全集約の場合には、中心市のほうに相談業務の機能を集約するという形になります。平塚市等の広域連携の場合には、やはり身近な窓口というところも必要性があるということだとは思いますが、平塚市にお任せということだけではなくて、大磯町、二宮町のほうも窓口を後から設置したということで、さらなる体制の充実を図ったという形になろうかと思います。

○吉冨委員 わかりました。ありがとうございました。

○宇賀座長 池本委員、どうぞ。

○池本委員 先ほどの事務委託と事務協定の違いというのは私も正確には把握できていなかったので、ありがとうございます。今の御指摘と平塚市周辺2町の広域連携のところで言うと、まさに柔軟な事務協定方式で独自の相談処理の義務自体を放棄しているわけではないということがあったからこそ、さらに市民のニーズを考えて独自の窓口もつくろうというふうに切りかえることができたという意味では、むしろ今後提起していくときには、将来像は身近なところに窓口を設けられるようなことを踏まえ、あるいは、それと並行して専門的な体制につなぐことができる広域連携という提起をすべきなのだろうと思います。
 それと、質問にもなりますが、今の平塚、大磯、二宮のところで、2番目のマルで、「相談業務は平塚市で対応する一方で、大磯町、二宮町では啓発や情報提供を中心に取り組んでいる」とあります。相談業務を委託している、あるいは独自にもやるとしても、全体の相談情報を大磯、二宮にも全面的に提供するという関係があるのかどうか。この辺りの情報共有という点はどういうふうになっているのか、もし、わかれば教えていただきたいと思います。

○村松地方協力課長 資料3-2にあります表で把握しているのが、現在、こちらで把握している状況のすべてでございます。平塚市等のところについては、4ページにございまして、こちらの記述には、今、池本委員から御質問があったところについては明確には書いていませんが、情報共有を図っているというところからしますと、池本委員がおっしゃるとおり、平塚市で行った相談業務についての相談の情報については、3市町で共有する仕組みがあった上で、それを踏まえて啓発、情報提供というところをされていたのではないかと思います。

○池本委員 今の点、もし可能であれば、是非、補充確認を何らかの形で、委員会の事務局か消費者庁か、していただければと思います。委託した元のところが何をするのかということがセットでなければ、連携方式を進めましょうというときの意味が半減してしまうと思いますので、是非そこを確認していただければと思います。

○宇賀座長 吉田委員、どうぞ。

○消費者委員会吉田委員 前回の調査会でも発言しましたが、今の件は、盛岡で広域連携をやるときにも同じ懸念がありまして、任せられたほうは一生懸命やるけれども、任せたほうが知らん顔されると困るというところがあったので、そうならないように常に顔が見える関係を構築しないといけないだろうと。そのためには、情報を共有することも大事ですし、電話やメールだけではなく、時々顔を合わせて打ち合わせをすることが重要ではないかと思っています。その効果として、今まで広報紙に周知・啓発が全くなかった自治体でそういうことが始まったり、出前講座が盛んに行われるようになったり、職員の意識が変わってきたこと、兼務の割合が増えてきたこと等々、いい効果がどんどんあらわれていますから、広域連携をするときにはそれはセットで必須としてやっていかないといけないのではないかと思っています。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかに、いかがでしょうか。

○丹野委員 私も質問ですが、広域連携にかかる主な事例の上から2つ目の北海道の例ですが、もともと根室と中標津に消費者センターがありましたという話で、その他の自治体は、相談員がいなくて役場の担当職員が云々という話ですが、「管内の住民はどの自治体にも相談が可能になったこと」と書いてあります。要は、根室と中標津はそのまま消費生活センターを残しておいて、ほかのところの相談も受けるようになりましたという理解でよろしいのでしょうか。それと、根室と中標津では、相談員がほかのところのように出ていったりしないで、そこにいて、他の分の相談も受けますという理解でよろしいですか。

○村松地方協力課長 1点目につきましては、おっしゃるとおり、根室と中標津については、センターを設置したまま相互乗入れることで、他の3市町からの相談も受け入れるという形で、高度なものと簡易なものということで役割分担を図っているということかと思います。
 2つ目のところにつきましては、情報としては把握しておりませんので、もしかすると、ほかの広域連携の例のように巡回とかサポートというところがあるかもしれませんが、この時点では把握していません。

○消費者委員会山口委員長代理 根室市以下のケースの場合は、相談員は何人ぐらい配置しているのでしょうか。もしわかれば教えてください。

○村松地方協力課長 この事例は、資料3-2の2ページの上のところにありますが、相談員の数につきましては、現時点では把握しておりません。

○消費者委員会山口委員 是非、わかったら教えていただければと思います。消費者庁の3-1の2枚目の資料ですが、私どもは昨年、地方消費者委員会の関係で、3番目の四国の大洲市、西予市、内子町の相談現場で頑張っておられる相談員の方と直接お会いしてお話を聞きました。幾つかの市町村を1人で車で巡回されています。大変な頑張り屋さんで、大変そうだなと思いながら、生き生きと頑張っていらっしゃいました。2番目については、洞爺湖も同じようなパターンをとっておられまして、洞爺湖町周辺の4つ、羊蹄山の周辺の7つの町が連携して、これも相談員は1人でした。この場合は巡回ではなくて、一つの町にデンと座って電話相談を受けて、これは現場に行かないといけないという場合には、車を飛ばして現地に行っていろいろやる。
 四国のケースも、北海道のケースも、高齢者が要らない布団を次々と買わされるとか、その種の高齢者の被害については都会も田舎も全く同じという現象でした。そのケースも1人でしたが、1人で複数のところを担当するのは大変だろうと思っていたのですが、見ると、4つ目の京都府のケースの場合には、最初から3名体制でやっておられると。大変すばらしいというか、どうして2つのところに1人しかできないのに、京都府の場合には3人配置することができたのか。その辺は予算規模、人口規模などによるのかもしれないですが、専門性とかいろいろなことを考えますと、1人で頑張るというのはいつまでもつのか、ハラハラしながら見たという記憶があります。
 その辺の、人員と専門性とか、安定性とかを考えますと、複数の町村が協力しながら専門性も高める。1人だけだと研修もないですね。そういうことを考えると、その辺の工夫も提案しながら何かやれたらいいなと思いました。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 吉冨委員、どうぞ。

○吉冨委員 私も、巡回というのはどうなのかなと思って見ていました。大変なことなのではないかということと、相談員が動いていってしまうということが、相談する側からしたら、継続性のある事案の場合はどうなのか。続きで、あしたも相談したい、次の日も相談したいというときはどうなのかなというふうに思いました。
 大洲市の場合は、資料を見ましたが、23年4月から2名の配置になっています。これだと、どういうふうに配置されているのかよくわからないのですが、週4日と入っています。これは、1人の方はどこか1か所にいらっしゃって、1人の人が巡回なのでしょうか。それともお二人とも巡回なのでしょうか。数字が合わないと思っていました。2人体制になってよかった、1人から2人に増えて、少しは軽減されたのではないかと思いました。巡回という方法もいいと思いますが、相談員さんの立場からしたら、働き方としてどうなのだろうかということが少し懸念されました。いかがでしょうか。カウントの仕方がよくわからなかったのですが。

○村松地方協力課長 今の点は、資料3-2の6ページの一番下のところに大洲市等の事例の個票がありますが、21年4月スタート当初からは、1名配置、巡回ということで、大洲市が週2日、西予市が週2日、内子町が週1日ということで、毎週、回っているということになります。23年4月からは2名配置ということになりましたので、その2名が分担して、大洲市は2日から4日になった、西予市は2日から4日、内子町は1日から2日になったということで、それぞれの町の窓口に張りつく日数が倍になったということになります。

○宇賀座長 吉冨委員、よろしいですか。

○吉冨委員 はい。丹野委員に伺いたいのですが、相談員の働き方としては、巡回をするスタイルというのはどうなのでしょうか。

○丹野委員 実際に週のうちの何日はこちらへ行って、何日はこちらへ行ってというスタイルは、広域連合ではなくても、例えば単独で、この町は週2日しかやっていない、うちの町はこうだというので、グルグル回っているという相談員は決して少なくはないのです。
 ただ、その場合は、その市なら市の相談窓口がそもそも2日しかあいていないというときに、そこにその人がいつもいるという話になるのですから、そういう意味では広域連合とは多少趣が異なるのではないかと思います。何よりも先ほど山口委員がおっしゃったように、専門性と安定性という意味から言うと、グルグル回るということの是非は、相談員のパッションやポリシーで頑張るとしても、相談の安定性、専門性ということで言えば、せめて広域連合するのならば複数を配置していただかないと、それは困るのではないか。相談員も万能ではないので、難しい相談が来たら、どうしましょうと、誰かと相談をしたいのです。そしてベストの答えをしてあげたいと思うので、そういう意味では複数配置というのは必要ですし、スキルアップのためには、その人が抜けても何とか回していかなくてはいけないので、当然、複数配置が大前提だと認識をしております。

○吉冨委員 ありがとうございました。

○宇賀座長 竹中委員、どうぞ。

○竹中委員 私も、相談件数や事例の豊富さ、相談員の人数の確保などの点から、広域連携には一定の意味があると思っております。ただ、広域連携をした場合でも、相談情報などは各自治体で共有して普及啓発に努めていかなければいけないのではないかと思っております。しかし、現実問題として、例えば中心市に相談業務を委託して、周辺の町に相談窓口がないというような場合には、普及啓発だけをやろうとしても、相談窓口のない市町村では活性化基金を使えない状態になっていたと思います。このため普及啓発だけをやろうとしてもなかなかできないというところがありネックになっているのではないかと思っております。
 やはり普及啓発業務というのも非常に重要で、何か被害が起きてから相談をするという前に、被害に遭わないように普及啓発をしていくことも必要なのではないかと思いますので、そういう意味でもやはり今の活性化基金も使い勝手よくしていただけないかと感じております。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 山口委員、どうぞ。

○消費者委員会山口委員長代理 2つ補充ですが、一つは、巡回していて、お年寄りが今後も被害に遭いそうだ、どうも若い格好いいお兄ちゃんが布団をどんどん売りに来る、健康食品を売りに来る。それを家に迎え入れている。これはまた被害に遭うなと考えられる場合には、相談員の方は包括地域センターの社会福祉関係者やヘルパーさん、ケアマネージャーさんと連携して、「あのおばあちゃん、また引っかかりそうだから気をつけてね」ということで、きめ細かく注意しあって、地元の方々にもかなり評価されているという例もあります。もちろん、お一人よりも二人のほうがいいと思いますが、福祉関係の部門との連携も意識的にやっていくといいだろうと思います。現実に、相当の成果を上げておられる。内子町辺りの相談員を1人から2人にしたというのも、その辺の経験を踏まえて、これはいいということで恐らく充実されたのだと思うので、大変いい傾向ではないかと思います。
 それから、佐賀県の相談員の話を聞きますと、月曜日はA市、火曜日はB市、水曜日は別のC市ということで、相談員の方が民間委託の形になっているので、先ほど丹野さんがおっしゃったように、複数の市をやられているわけです。これは、四国の広域連携で複数の市を巡回相談するパターンと、民間委託になって複数の市を1人の相談員の方が相談するパターンと、どちらがいいのかというと、恐らく広域連携でやるほうが、お互いの市の情報交換とか、福祉部門と協力しやすいという意味ではいいのでしょうね。その辺の一定の検討はあってもいいのではないかという感じはいたしました。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

○小林委員 北海道の距離的なものがわからないのですけれども、3-2の表を見せていただくと、5,000人以下の人口規模の小さなところもまとめて入っているようです。1万人という数字が池本委員のお話で出ていましたけれども、1万人に満たない本当に小さなところで当初の消費者庁の目標を達成していくためには、周りに大きな消費生活センターなどがあって初めて相談が可能になっているのか、専門的な相談の解決につながっているのかなという気がしましたので、本当に極小の市町村の被害をどうやって解決に導いていくかというのが、もっと大切になってくるのではないかという感想を持ちました。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。

○沼尾座長代理 手元に別の資料があるので、今の話を補足させていただきますが、今、人口1万人未満の市町村は480ぐらいがありますが、そのうち、近くに都市があって、その都市周辺に位置するものが半分弱で223です。あとは、各圏域で町村が集まっていて、隣に都市はないけれども連なっているものが207です。このほかに、離島という形で完全に隔離されているものが50ぐらいあります。このように、なかなか広域連携しづらいような市町村もあって、そこへの対応をどうするかということが一つ課題になるのではないかと思いながら、お話を伺いました。
 もう1点、先ほど申し上げればよかったのですが、神奈川の平塚、大磯、二宮の件は、以前、話を聞いたことがあります。平成21年度(2009年)に、都道府県で消費生活相談窓口の設置の義務化と、市町村で努力義務が課されたということで、神奈川県の場合、全市町村で窓口を設置したほうがいいのではないかという考えもあって、大磯と二宮においても、2010年度以降、窓口を設置するという形で、中心市の平塚との役割分担を再検討したという話があったと聞いています。ですから、市町村への努力義務が、体制の見直しにつながった一つの例として、神奈川のケースは位置づけられるのではないかと思います。
 広域連携でどこまでやるかという話ですが、小規模町村の場合、実は消費生活相談だけではなくて、障害者福祉、介護保険、あるいはゴミ収集、し尿処理、消防といったさまざまな業務について、周辺と広域でやっているところが大半でございます。特に福祉、介護保険で言うと、人口1万人以上のところは9割以上の自治体が周辺と広域連携で処理をしている。単独ではやっていないという実態がございます。ただ、その場合にすべてのものを共同でやっているかというと、例えば介護の場合は認定事務だけは共同でやるけれども、保険給付等の事務は各自治体で対応しているところもあります。そこを、消費者行政というような施策の中身についてどういうふうに考えていけばいいのかというのは、ここでもう少し議論していく必要があるのではないかと思いました。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 ほかは、いかがでしょうか。丹野委員、どうぞ。

○丹野委員 資料3-2の1ページの下から2つ目に渡島地区というのがあります。これは北海道の函館のことですが、私は函館生まれの函館育ちでございまして、この辺の地理は詳しいのですが、この函館市から長万部町までの間はものすごく遠いのです。皆さん、北海道の地図を思い浮かべていただくと、こういうふうに出ているところが渡島地区ですが、長万部というのは、函館が一番下だとすると、付け根のようなところまでがそうでございます。というふうに考えると、ないよりましだからというのはそうなのですが、さはさりながら、いかにも広すぎるのではないかという気はいたします。もう少し、森辺りでもう一つぐらいつくってもらって固まってもらわないと、身近な云々という話とは多少違うのではないかという気もします。探せばもっとあるのかもしれませんが、そう思いました。

○宇賀座長 小林委員、どうぞ。

○小林委員 私がイメージしたのも、町村合併によって町自体の人口は増えたのですけれども、リアス式の海岸線なので、浦々が複雑に絡まって、その浦の人口とそこにつながる山の中の村が一つになって町という形にしていますので、普段の交通は海を行ったほうが速い。地続きだとすごく時間がかかる。ですが、町という形になっているので、行政組織は真ん中辺りに一つ据えつけられていますけれども、それでも人口が県内ですごく小さいというところが結構ありますので、そういうところはどうやっていけばいいのか、すごく不安に思いながらお話を伺っています。広域連合ではないとやっていけないだろうというふうに思いながら、本当に実効が上がるのだろうかという気もしますので、極小のところをどうやってレベルを上げていけばいいのだろうかと思います。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 池本委員、どうぞ。

○池本委員 今の非常に悩ましい問題のまさにそこがポイントになると思いますが、先ほど丹野委員が、余りにも距離が離れている、もう少し身近なというところで、2つに分けてはどうかという意見が一方にありますが、他方で、資料3-2の1ページで言うと、広域連携をしている合計の数字で見ても2万人台というのがたくさんあります。そうなると、とても複数置くことはできないはずです。一定規模で、その窓口は常設で相談員が2人以上いるくらいの規模と、専門性を確保するということと、身近なというのは、なかなか両立しない。むしろ逆に、10万人以上ぐらいになるように工夫をして、多少広げて、そのかわり、それ以外のところは場合によっては週1回でも窓口がある。窓口がある日はそこへ行って直接相談を受けられるし、そうでなければ連携をしたとこへつないでもらえるというふうにしていく。その意味での専門性の確保と、身近なところに窓口があるということの両立を図る必要があるのではないか。
 私は埼玉ですから、あえて地元のところで言うと、資料3-2の3ページで、埼玉県が下から4つ目、3つ目、2つ目で、秩父市を中心にするものと本庄市を中心にするものと、宮代町、杉戸町という3つを紹介しますと、秩父市というところがまず大きくて、そこへほかのところが委託している。これは完全集約ということは、ほかには窓口がないのです。これは、規模からして7,000人とか9,000人のところで窓口をつくれというのは、厳しいのではないか。でも、1万人以上あれば週1日ぐらいはやってほしい。その意味では、中心市に置くけれども、ほかのところもせめて1日ずつとか、つくっていってはどうかという考え方が成り立つのではないか。
 それに対して、宮代町、杉戸町は週2日ずつ開設が相互利用です。もちろんそれでも、お互いに4日間いずれかを使えるということになるのかもしれませんが、週2日ずつはそれぞれ1人しかいないわけです。だとすると、せっかく広域連携をするのであれば、少し周りのところも交えてボリュームを膨らませて、2人以上配置できるような中心的な体制が組めるところと、そうでないところという専門性の向上の核になるところを置くという工夫があってもいいのではないか。広域連携の中で、身近さのところを確保するのと専門性を確保するというのは、組み合わせの方の中でどちらをさらに追加するかという、きめ細かな議論が必要ではないか。
 北海道のところにあるように、3,000人とか5,000人というと、週1日でも相談員を置いてくださいといっても、それはいくらなんでも無理でしょうとなります。そうすると、何か町民の困り事があれば来てくださいという、よろず窓口でもいいから何かあって、そこが広域連携をした先につなげられる、ということになるのではないか。やはり規模によって組み合わせ方を変えていくことになるのではないかと思います。

○宇賀座長 山口委員、どうぞ。

○消費者委員会山口委員長代理 したがって、広域を広くとって、人口枠を多くとって専門性を高めるのか、丹野委員がおっしゃったように、せまく限定して身近にやることを重視するのか、ここは一つの選択だと思います。表の2はとてもよくできていると思いますけれども、一つ、是非工夫していただきたいのは、相談員が何人いるのかというところが必ずしも網羅的に書かれていない。これは追加して調べていただいて、この表で何人いるのか、いろいろ書きにくい部分もあるのかもしれませんが、書いていただければありがたいと思いました。いつごろできるか、目途も含めて教えていただければと思います。
 それと、費用分担のところですけれども、分担なしというのが幾つかあります。1割は均等割して、あとは相談件数、人口割で分けているというのはわかるような気がしますが、分担なしというのは、中心の市が全額負担して、あとの市は乗っているだけという意味なのでしょうか。

○村松地方課長 まず、1点目につきましては、相談員の数は、盛り込む作業量とかもありますので、事務局とまた御相談したいと思っております。
 2点目、分担なしについては、お金が動いていないということでございますので、委員がおっしゃるとおり、例えば先ほど池本委員がおっしゃった宮代町、杉戸町であれば、それぞれがやっていて、それぞれの間でお金は動かないという形になります。

○消費者委員会山口委員長代理 一方の市が負担しているというわけではないと。

○村松地方課長 はい。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 きょうは、消費者庁のほうで広域連携のいろいろな仕組みについて調べていただきご報告いただきました。地方自治法上の広域連携の仕組みも、実際の例はあるわけですけれども、それによらない民法上の協定方式で、例えば巡回方式とか、相互乗入方式とか、柔軟な取組みがされているということがわかりました。いろいろと皆様からも御意見をいただきましたが、次回の会合で、実際に広域連携に取り組んでいる自治体の方々をお招きしてヒアリングを行って、さらに議論を深めたいと思います。
 次の議題に入る前に、ここで5分ほど休憩をとりたいと思います。その後、再開したいと思います。


(2)自治体職員の専門性底上げに向けて

○宇賀座長 それでは、再開したいと思います。
 第2の課題として、自治体職員の専門性の底上げに向けて、どういった課題があるのかということを取り上げたいと思います。具体的には、消費者行政担当者への研修が課題になると考えておりますが、これに関しまして、2つのヒアリングを行います。

○国民生活センターにおける消費者行政職員研修の実施状況について

○宇賀座長 最初に、国民生活センターから、センターにおける消費者行政職員研修の実施状況と課題について、御説明をお願いいたします。

○国民生活センター千塚研修部長 国民生活センター研修部長の千塚でございます。この中のほぼ全員の皆様方に、私どもの研修事業に御協力をいただいております。改めて、この場をお借りしてお礼を申し上げる次第でございます。
 お手元の資料4でございますが、まずは、年間計画表という大きな表をご覧いただきながら説明をさせていただきたいと思います。
 消費者行政職員の基礎力と専門性の底上げということでございますけれども、私どもは、消費者行政職員と消費生活相談員に、長年にわたりまして非常に重点化をした研修を実施しております。したがいまして、A3で開いていただきました年間計画表のほとんどの講座コースにつきまして、消費者行政職員が受講していただけるようになっております。
 簡単に説明をいたしますけれども、1番目の消費者行政職員というもの、これは純然たる消費者行政職員の基礎力と若干の専門知識の向上を目的としたものでございまして、これが管理職向けと職員向けということです。次の相談員研修ですが、主に相談業務に対応するための基礎力、専門性の向上でございますけれども、こちらも消費者行政職員を対象にしております。例えば、相談業務に配属されて基礎的な知識を学びたいということであれば、基礎講座。専門性を高めたいということであれば、専門分野別の専門事例講座があります。相談カード作成セミナーというのは、PIO-NETの基本的な入力のルールですとか、情報を正確にするための実習などを実施しております。各地へ講師を派遣したり、それから遠隔研修、D-ラーニング(distance learning)と言っておりますけれども、これについても取り組んでいきますけれども、当然、これらについても消費者行政職員が受講していただくという形になっております。
 それから、消費者教育推進法の施行に伴いまして、本年度からかなり消費者教育推進のための研修ということで、具体的には、地域で消費者教育に携わる講師を養成するという研修を本格的に実施してまいりますけれども、これも消費者行政職員が受講していただいて差し支えないことになっております。全国消費者フォーラム、消費者団体とか最近は地方公共団体の方の発表なども増えておりますけれども、そういった団体の発表とか討論の場として実施しております。当然、こういったものも受講対象となっております。
 そうしますと、全コース、今年度は60コースで実施する予定でございますけれども、9割以上の研修につきまして消費者行政職員の方が受講していただける。それによって、基礎力、専門性の底上げが可能という形で実施しております。
 肝心の消費者行政職員だけを対象にした研修はどういうものをやっているかということを、具体的に説明させていただきます。私どもは昭和46年に既に消費者行政職員のための研修を実施しております。国民生活センターの発足が昭和45年(1970年)ですから、翌年からすぐに消費者行政の体制整備のために必要な研修を開始したということです。本日のためにというわけではないのですけれども、調べてみますと、その当時は、消費者行政職員を対象にした研修というのは全期間5週間をかけて実施していました。基礎的な経済社会の一般的な知識も恐らく含まれていたのだろうと思いますけれども、十分に時間をかけて研修を受けていただくことが可能であったようでございます。それが年度を追うごとに、だんだん消費者行政全体が多忙になってきたということがありまして、年々、開催日数を短くして、5週間が4週間になり、2週間になり、5日になり、近年では、消費者行政職員研修は3日で実施しております。はっきり言って、現実的に、それ以上勤務先を空けることが不可能なようでございますので、私どもの管理職講座、職員講座とも3日間で実施しているということでございます。
 基本的には、3日間で即戦力、管理職講座と職員講座につきましては、その年に新規に配属された方々を対象にしております。したがって、エントリー向けといいますか、即戦力となる知識とか、技法を身につけていただくという形でカリキュラムを構成させていただいております。余り大勢の人数で実施することが厳しいということで、1回あたり最大100名ぐらいまでは何とか受け入れて近年においては実施しているところでございます。必ず討議形式のものを入れまして、新任管理職の方も、職員の方も、課題や分野につきましての討議をして、レポートをまとめていただいて、全体で意見交換をする。そういったスタイルをできるだけ崩さないようにやってきましたので、多くても1回の受講者は100名前後が限界というようなところです。開催数を大幅に増やすことができればいいのですが、予算的な制約もございまして、それほど多くの開催が実施できていないところが一つの課題ということになっております。
 したがって、管理職向け、職員向けというものを、今年度につきましては、管理職向けは1回でございますけれども、職員向けは、昨年までは2回だったものを3回に増やしているというところがございます。それらの表が資料4の2ページになるかと思います。管理職講座は、ここ3年間、約100名前後ということになります。職員講座は、従来2回でございましたが、平成25年度については、受講希望の増大等に伴いまして3回に増やして実施をする予定でございます。今年度は、恐らく330名ぐらいが受講していただけるのではないかというところでございます。純然たる行政職員だけを対象にした研修はこのコースだけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、9割以上のコースで、行政職員の方が専門性や基礎力の向上のために受講していただくことが可能になっておりますので、昨年度の実績を調べましたところ、1,020名の行政職員の方が受講しています。例えば全国消費者フォーラムとか、遠隔研修オンデマンド配信の試行ですとか、受講者の属性が分類できなかったものは除いて1,020名になっておりますので、おおむね今年度も1,000名以上の方は、私どもの全研修コースの中を受講していただけるのではないかと思っております。
 今年度につきまして、カリキュラムを簡単に紹介させていただきます。昨年も池本先生には管理職講座の講師をお願いしておりまして、ご存知かとは思いますけれども、例えば管理職講座で言いますと、初日は、国の消費者政策の在り方とか、私どもの国民生活センターの業務概要というようなところ。例えば、PIO-NETの意義と活用についてといったところでございます。2日目は、最小限、消費生活相談に必要となる知識ということで、民法、消費者契約法について、特定商取引法、割賦販売法について。基本的に入り口ですから、基礎的な考え方、そういったものをご理解いただいて、後半はすべてグループ討議と全体討議ということにしています。大きな括りでいきますと、消費者行政の役割と課題ということで、具体的には都道府県と市町村の役割分担とか、各消費者行政の相談業務や消費者教育の課題、そういった分野別の課題を設けてグループ別に討議をし、最終日は終日全員で討議をするという構成です。
 大体このような形で、その時々のトピック的なものも当然加えて実施しております。多重負債問題が社会問題化すればそういったものも取り入れますし、個人情報保護法が施行されるというときはそういったものを取り入れ、必要なトピックも適宜取り入れながら、3日間で最小限必要となる知識を身につけていただくとともに、討議を通じてできるだけ全国の情報を吸収し、例えば研修が終わった後でもいろいろ情報交換をして、業務に活用が可能というような形を続けてまいりました。
 職員講座の1回目、2回目につきましても、おおむね方向性は、1日目は消費者政策の動向とか、国民生活センターの業務。2日目は、最小限必要な知識あるいはトピックの新しい知識、後半は討議形式に充てる。ですから、同じく3日間のうち半分は討議に充てるという構成で進めさせていただいております。
 講師陣は、国民生活センターの直接の業務につきましては、当然、国民生活センターの職員が担いますけれども、それ以外は、弁護士、学識経験者、行政官、消費者庁の方にもご協力をいただきます。各自治体のそれぞれの個別的な課題のような報告があれば、地方公共団体の方からもお話をいただくという構成で実施しております。基本的に方向性はこのようなことで続けてまいりました。今年度につきまして、消費者行政職員が従来2回だったものを3回に増やしている。しかも秋にやるということなので、秋にやるものはエントリーといっても、半年ぐらい過ぎているわけですから、一工夫したカリキュラムにする必要があるのではないかと考えております。
 すべての需要に全部お応えするということも難しいかと思いますけれども、すべての研修コースの中で、できるだけ基礎力及び専門性の向上にご協力できるように、研修体系を組んで実施しているところでございます。
 以上でございます。

○宇賀座長 ありがとうございました。

○兵庫県における消費者行政担当職員研修の実施状況について

○宇賀座長 続いて、職員研修、相談員研修を体系的に実施されている都道府県の実例をお伺いするために、兵庫県立健康生活科学研究所生活科学総合センターの本多相談事業部長にお越しいただいております。御説明、よろしくお願いします。

○兵庫県立生活科学総合センター本多相談事業部長 兵庫県の本多でございます。どうぞよろしくお願いします。
 資料5-1、5-2、5-参考の3種類の資料をもとに御報告させていただきます。
 まず、資料5-2の裏面を見ていただきますと、真ん中の辺りに県内消費相談窓口設置状況がございます。兵庫県の窓口の設置状況を御説明いたしますと、兵庫県には6つの県立のセンターがございます。私ども生活科学総合センターと、県内6地域に県の消費生活センターが設置されております。市町の消費生活センターの設置は、平成21年度までは13市でございましたが、平成22年12月には41市町全域に窓口を設置いたしまして、PIO-NETもすべて設置されています。このような状況の中で、平成22年度以降、活性化基金もつきましたので、研修事業を強化しているところでございます。
 それでは、資料5-1の表に戻りまして、研修の大まかな内容とどのような研修なのか、イメージをお伝えできればと思っております。研修といたしましては10種類用意をしております。基礎的な知識の習得を目指すもの、そして個別処理能力の向上を図るものと大別しております。
 基礎的知識の習得について、No.1、新任職員研修ですが、こちらの実施時期は、対象が新任ということもございますので、6月には開始。本年度も6月第1週目に開始の予定です。兵庫県は広うございますので、県内の方々が参加しやすいように、姫路、神戸、但馬の3地域で実施をいたします。1会場1日コースです。内容的には書いてあるとおりですが、講師は行政職員、法律関係では弁護士の先生にお願いをしております。
 受講の様子は、3会場合わせて、毎年、約30名の受講生がございますが、8割ぐらいが新任職員の方の御参加をいただいております。1日の講座の後に、職員同士の意見交換ということで30~40分、忌憚のない意見交換の場も設置しております。毎回、実施いたしますアンケートを拝見すると、「地方自治体職員の役割がよくわかった」「自分がどう動けばよいか参考になった」「相談員さんとの連携が大切だということがよくわかりました」ということで、一定の効果を上げていると思っております。
 この研修を受けていただいた後に、法律ゼミナールを開催いたしております。これについては2会場でございまして、神戸と姫路です。新任、あるいは経験の少ない相談員さんを対象に、少人数で、教室型ではなくロの字型のゼミナール方式、ざっくばらんに講師の先生と質疑応答ができる形にしております。弁護士の先生にも2名お越しいただいて、意見が交わしやすいようなムードをつくっております。内容的にも、民法等についても、法律の立法の趣旨、条文の読み方、法律の専門用語などについて、細かな御説明をしていただいて、法的なアプローチの感性を養うということを先生方にはお願いしております。基本的には、同じ方に受講していただきたいということで御案内しております。神戸会場が4回、姫路会場が4回の計8回でございます。2会場合わせまして、年間30名ぐらいの受講生がございまして、そのうち50%が新任職員等の方でいらっしゃいます。
 このゼミナールを受けていただいた後、もう少しレベルアップをしていただきたいということで、レベルアップ研修を用意しております。これは、実際に相談業務に対応するための基礎的知識を習得するというところで、個別的なテーマ、割販法、金融、保険、ネット、製品事故、不動産関係と、時々のテーマを設定しております。こちらも全地域から参加していただきやすいように3会場で実施します。神戸5回、但馬3回、姫路4回。1回は1日コースになります。これについては、時々の受講生、会員制ではございません。1年間合わせまして22年度から250名~280名の受講者がおりますが、新任職員はこのうち2割ないし3割というところで、1、2、3のステップアップを図っております。
 4番目のPIO-NET研修については、私どもはPIO-NETのメインセンターとしての役割がございますので、PIO-NETシステムの円滑な運営・管理ということは、私どもの責務でございますので、そういう観点で実施しております。5月、秋口というところで分けておりまして、前半はPIO-NETの概要、情報の取扱い、相談カードの作成ルール、そして、後半の10月については、せっかく入力していただいたものを活用していただくための手法ということで、検索、集計方法を実施しております。アンケートを実施いたしますと、場合によっては、決裁の仕方を研修してほしいとおっしゃる場面もありますので、決裁システムについても研修をしております。この研修をするに当たりましては、机上の論だけでは理解が進まないということで、複数のPIO-NET端末を研修室に移動いたしまして、実際に模擬的な操作をしていただいて習得を図っております。こちらについても、年間、4回合わせまして50人~60人の受講者がございますが、そのうち6割ないし7割が新任職員研修の方でいらっしゃいます。
 アンケートを拝見しますと、5月に受講された方から、「PIO-NETって何のことかよくわからなかったけれども、目的、概要を理解することができました」「相談員さんの大変さがよくわかりました」、あるいは、PIO-NETを職員が決裁するのですが、「分類、キーワードのチェックがいかに重要かということを認識しました」。そして、検索方法等を受けられた方については、「有効なデータの活用をして啓発に努めたい」「集計のため、早く正しく入力する必要を痛感しました」という御意見もちょうだいしております。国の情報のツールとなっていますPIO-NETのデータの精度を上げるためには、PIO-NET研修というのは必要と考えておりますし、アンケートから、職員の方も、こういった研修は随時してほしいというような要望が上がっております。
 以下、相談支援学習会、これは少し趣が違いまして、講師として業界団体の方をお迎えして、業界団体と意見交換をすることがメインです。ミニ講座を業界の方にしていただいた後、業界の方には複数の方でおいでいただくことを要請しております。班ごとに業界の担当者の方とグループディスカッションをしていただいて、その後、班ごとにどんな意見交換があったかということを発表していただいて、全体で情報共有をする。特にスマートフォン、オンラインゲームについては、相談を受ける意味で、いろいろな用語があって理解できない、相談者の言っていることがよくわからないというお声もちょうだいしましたので、実機をお持ちいただいて操作をしながら、ゲームはこうやってするのだということをお聞きしながら理解が深まるように、業界の方にも御協力いただいています。これは随時にその時々のテーマで、昨年は10回ほどいたしました。以上が基礎的知識の習得ということです。
 6番以下は、処理能力の向上ですけれども、相談情報交換会と消費生活相談事例検討会は同じ日に開催しております。午前中に相談情報交換会、午後に相談事例検討会を開催します。衣料品研究会、工業品研究会については、衣料品が奇数月、工業品が偶数月に開催しておりまして、これは半日です。この日に合わせて相談支援学習会を日程調整して、相談員あるいは行政職員の方が参加しやすいような日程の工夫をしております。
 相談情報交換会は、各地域の相談員が、今、どんな相談が入っているかということの情報を持ち寄って処理方法を検討する。できるだけ行政職員の方にも御参加いただくようにお声がけをしております。
 相談事例検討会は、弁護士の先生による事例検討ですけれども、教室型ではなくワーキング方式、2事例ほど用意いたしますが、各グループで30分ほど、まず1事例ずつ検討していただきます。その後、各グループで、どんな意見が出たかを発表していただいた上で弁護士の先生に御助言いただきます。そうすると、弁護士の先生の御助言内容も非常に細やかな解説ができるということで、御好評を得ております。この形式にいたしましたのが2、3年前でございまして、教室型であれば理解度がなかなか進まない。やはり、事例を考えるということが大切ではないかというところで、この形式にしております。
 衣料品研究会、工業品研究会については、個別事例に引きずられることなく、その事例をケーススタディとして、製品関係の法規の理解、例えば消費生活用製品安全法、電気用品安全法、あるいはPL法についての理解、相談者に対する聞き取りのポイント、そして、事業者に対する交渉のアプローチの仕方等も含めた習得ができるように、担当者がそういう思いで司会をして展開をしております。これについては、講師としては衣料品については専門の方、工業品についてはNITE等に来ていただいて、連携を図っております。
 10番目、巡回相談でございます。県には6つの地域に県のセンターがございますので、そちらに弁護士等の先生方が出向かれて個別に各地域で事例検討を行う。あるいは、学習会を展開する。こちらが昨年度は23回。研修としては合計96回というような事業展開でございます。
 それでは、先ほどの資料5-2の裏面、「(3)その他」と書いてありますが、私どもは単発的な研修にとどまらず、日常的に各市町と連携が必要だろうという工夫をしております。まず一つは、市の主催で県下11市消費者行政連絡会が、年間4回開催されておりまして、そこにオブザーバーとして私どもが出席をして連携を深めております。顔の見える関係づくりがこれでできております。そして、県内消費生活相談窓口への情報配信ということで、2種類行っております。一つは、消費生活相談情報速報版の配信。A4版で、最近、投資関係で弁護士等の説明会で、MRIが話題に上がりましたけれども、新聞に掲載された当日に、国センとも情報共有しながら説明会があるということを、当日、配信いたしました。2番目のPIO-NET通信については、キーワード・分類の注意点についても、A4版1枚ベスト、そして各県内地域の入力状況を配信しまして、入力について御協力をいただくよう促しております。こういった情報も行政職員の方に提供しながら、問題意識を持っていただくようにしております。
 県の役割でございますけれども、生活科学総合センターは、中核センターとしての業務は4つの柱がございまして、市町消費生活相談支援、情報分析提供、商品テスト、事業者指導等の業務を実施しております。県内41市町、窓口ができたとはいえ、相談員が1名体制、2名であっても交代ですというところが大部分を占めております。となりますと、やはり市町、行政職員との連携がまずもって必要です。県のセンターも市町の支援をバックアップはしておりますけれども、市町センター、行政職員の連携は不可欠だと思っております。そういう意味で県としましては、人材養成が県の大きな役割だと考えておりますので、行政職員のきめ細かな研修が県の役割と認識しております。
 また、アンケートを拝見しますと、国センがいろいろ研修をしていただいていますが、そこまで行くのがなかなか大変だというお声もちょうだいしております。また、地域で行政職員の研修をしていただくと、行政職員同士の顔の見える関係ができるので、一人の悩みを共有することができるので、連携が深まるというお声もちょうだいしておりますので、そういう意味でも、やはり自治体が研修を強化する必要性があるのではないかと思っております。
 今後の課題でございますが、まず1、何はともあれ予算措置でございます。講師謝金、遠方から来ていただくために旅費が必要でございます。そして、職員・相談員が私どものセンターに来ていただくだけでも旅費が必要でございます。先ほどの10種類の一覧表を見ていただきましたように、No.1~No.4は22年度の実施でございます。それ以外、従来からのものを見ますと半減いたします。従来からのものは46回です。活性化基金があってこそ50回ほどの巡回相談も含めて実施ができたというところでございますので、予算措置がなければ、こういった研修体系も大幅に見直さざるを得ない状況でございます。もう一つのポイントは、私どもはいろいろアンケートをとりながら細やかな研修をしているわけですが、その手法を蓄積して、つないでいかなければいけないということも思っております。
 最後に、国に対する要望でございますけれども、研修を強化できるような予算措置を是非お願いしたいと思っております。それから、行政職員が研修等に参加しやすいように、国として、今まで以上に行政職員のより積極的な研修受講の方針を打ち出していただければ、職員の方も御参加いただきやすいのではないかと思っております。
 以上です。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 それでは、今の御説明につきまして、御質問や御意見があればお願いしたいと思います。地方から参加されている委員の交通機関の関係で、11時55分までにしたいと思います。それまで、御質問、御意見があれば、お願いしたいと思います。
 池本委員、どうぞ。

○池本委員 御報告、ありがとうございました。前々回3月のここでの調査会のときに発言したと思いますが、消費者庁がまとめている「地方消費者行政の現況」という資料で、研修に関するコマを全国のものを調べて、消費者行政職員も相談員の研修に参加することを受け入れているのがほとんどの自治体で、職員向けのカリキュラムを設定して職員向けの研修としてやっているところは、私が読み取った限りでは、12の自治体しか読み取れませんでした。まさにそこが問題だと思います。
 きょう、国民生活センターの御報告で、以前は5週間あったのが4週間になり、2週間になり、5日になり、3日になりと、まさに消費者行政が後退していった歴史を物語っているように聞こえましたが、今の3日で足りているのでしょうか。むしろ、どういうコマをもっとやらなければいけないというところが大事だと思うのですが、先ほどの御報告の中でちょっと残念だったのは、相談員の研修も含めれば1,000人が参加できていると。今はそこより、まず職員としての役割、そこに特化した研修をどれだけ増やしていくかということではないかと思います。
 全国の消費者行政職員は、今、5,000~6,000人です。3年ごとに代わっても2,000人いますが、国センのコマではせいぜい300人です。決定的に足りないと思います。その意味で、国センとして職員研修を増やせる余力があるのかどうか。あるいは、これは予算、人員との問題ではないかと思いますが、その辺り、国センとしてどうお考えかをお聞きしたい点が1点です。
 兵庫県は、職員向け研修をきちっと位置づけておられるという点で評価できると思いますが、兵庫県内の職員は何人ぐらいいらっしゃって、その中の新任職員がどのくらいで、その中でこの新任職員研修にはほとんど全員出ておられるのか、何割ぐらいなのか。PIO-NET研修も職員に極めて有用だと思いますが、それの参加が、職員総数に対してどのくらいなのかということをお伺いしたいと思います。
 消費者庁に1点お伺いしたいのですが、先ほど、兵庫県の御報告で職員の連絡会議が年数回開かれるというのがありました。これも、職員にとってはまさに役割、職務の中身をレベルアップする意味で有用だと思いますが、地方消費者行政の現況調査では、職員の連絡協議の機会というのは、研修とは違うので集約されていないのではないかと思います。職員間の情報交換の機会というのは把握されているのかどうか、という点をお伺いしたいと思います。

○宇賀座長 それでは、まず、国民生活センターからお願いします。

○国民生活センター千塚研修部長 人員や予算を言ってしまうときりがありませんので、正直言って、消費者行政職員の基礎力の底上げ、専門性の向上については、相談員研修のほうの需要がはるかに高いものですから、飛躍的に増大させることはできなかったというのが現実でございます。その中でも、今後は消費者行政職員研修の必要なエッセンスをある程度はまとめて、研修に来られなかった方々に上手に発信していくことが、検討課題になってくるかと思います。
 もう一つは、先ほど余り詳しく説明いたしませんでしたけれども、D-ラーニング(distance-learning)、遠隔研修というものを実施いたします。今年度につきましては、東京事務所で1日の集合研修をやって、質疑応答や意見交換もすべて収録し、それをインターネットで全国の希望する地方公共団体に流して自由に受講していただこうというところです。なかなか3日間来られないとか、いろいろな制約があって東京に出てこられない方に関しては、そういった遠隔研修も活用して情報の発信をさせていただければと思っております。

○宇賀座長 では、兵庫県の方、お願いします。

○兵庫県立生活科学総合センター本多相談事業部長 先生のおっしゃる統計的なきっちりしたデータは、出席者名簿を全部見なくてはいけなかったものですから、今回は統計的には正確な御報告は申し上げられませんが、ただ、ざっと出席者のお顔を拝見しますと、新任になられた方は必ず新任研修は受けていらっしゃいます。また、受けられないとお困りになられますので、私どももお声がけはさせていただいております。新任の方は、開催時期が5月、6月というところで、何をしていいのかわからないという時期に設定をしておりますので、そういう意味では参加もしやすいというところではないかと思っております。

○宇賀座長 消費者庁、お願いします。

○村松地方協力課長 職員間の連絡の機会ですが、確かに大事だとは思いますけれども、現時点では把握していないところでございます。

○宇賀座長 ほかに、いかがでしょうか。
 吉田委員、どうぞ。

○消費者委員会吉田委員 意見として申し上げたいと思います。行政職員の専門性を高めるための研修メニュー等々はまるで少ないと思っていますし、たとえその研修の機会があったとしても、すべての職員が受けられる状況ではないというところで、非常に問題、課題としては大きいと思っております。それをどう改善していこうかと考えたときに、3つポイントがあるのではないかと思っています。
 一つ目は、まずは研修メニューを増やしていくこと。それをすべて国センでというのは無理だと思いますから、研修を実施する主体を増やしていくこと。例えば、いろいろなリソースが使えると思うのですけれども、市町村アカデミーというところもありますし、自治体の研修所もあるので、そういうところで消費者行政の研修ができないかということです。そもそも専門性を確保するためにどんなカリキュラムが必要なのかという、メニューづくりさえ何も行われておらず、単発の講座がずらっと並んでいるだけという現状ですので、その辺のところからの整理が必要なのではないかと思っております。
 二つ目は研修カリキュラムができた後の話になりますが、参加をどう促していくのか。今は任意参加ですから、予算があり、意欲があれば、あるいは体があいていれば、つまみ食い的に参加するという形になっていますけれども、そこをどういうふうにしていくのか。そのために必要なものは何か、旅費がかかるだとか、人手がないから行きたくても行けないだとか、そこをどうするか。要は、必ず参加しなければいけないような仕組みづくりをしていく必要もあるのではないかと思います。
 3番目のポイントは、せっかく育った専門性をどう維持していくのかということで、1年目でいろいろ勉強して育って、2年目でいろいろ仕事をして、3年ぐらいたつと異動してしまうということで、育っては消え、育っては消えということの繰り返しになっていますから、そこをどう解決していくか。
 例えば、前回もお話ししましたが、社会教育主事は、その職に異動してきた後に勉強して、その資格を得てやっていくという仕組みだったかと思いますが、そこにはお金と時間が非常にかかるわけです。ただ、仕組みとしてそういうふうにしなければいけないということになっていますから、その点については人事や財政は何も言ってこないわけです。一方で、時間とお金をかけて育った人材を、異動が3年のサイクルだからといって異動させると、またコストがかかる。もったいないということで、比較的長くいる。商工の世界もそうです。中小企業診断士を取ったりすることもありますが、資格取得まで非常にお金と時間がかかります。せっかく取った職員が3年で異動してはもったいないということで、10年ぐらいいたり、20年ぐらいいたりというのはある状況です。
 そんなことが、消費者行政においても、何らかの制度化ということが取り組めないか。そうすることによって、専門性を持った職員をある程度確保していくことができないだろうかとか、いろいろなやり方があると思いますけれども、他の事例を参考にしながら作っていくことが必要かと思います。

○宇賀座長 ありがとうございました。
 丹野委員、どうぞ。

○丹野委員 兵庫県さんの仕組みについては、御発表なさった本多さん自身がある意味スーパー公務員でいらして、私は昔から非常に敬愛しています。本多さんがいらしてこれをやっていらっしゃるというのが、とてもすばらしくて、47都道府県でこれに匹敵する、これを超えるような仕組みをつくっていらっしゃるところが、とても少ないのではないかと思っております。非常によく考えられていて、受講することによって専門性を獲得できるし、意識も目覚められるというふうに、ある意味、かゆいところに手が届くようなスキームをつくっていらっしゃる。
 一番のポイントは、先ほど池本先生も御質問なさいましたが、どのぐらい受けるかという話だと思います。必ず参加するようにお声がけをしていただくというコメントがありましたが、あれがやはりキーですね。参加はあくまで任意参加の中で、兵庫県さんから、本多部長から言われましたという話になると、行かないわけにいかないということになりますので、その辺を参考に、もしも制度化するのが非常に難しいのであれば、その辺から各都道府県に、こういう形で進行させてほしいと私は考えました。

○宇賀座長 ほかにいかがでしょうか。
 池田委員、どうぞ。

○池田委員 一つ思ったのが、広域連携の話に戻ってくるところが若干ありますが、委託事務をやった自治体であるとか、完全集約をやった自治体がこういう研修をやったとして、参加してくるのかなと思うのです。兵庫県の場合は、消費生活センターをつくられたりして、各自治体が責任事務をきちんと考えていらっしゃると思います。ところが、委託でやった場合には相談業務自体を放棄しているという言い方は、ひどい言い方かもしれませんが、そういうこともありますし、完全集約だと、そこに行けばいいことだからということで相談事務自体も辞めている。そういうところがあるのに、こちらでは研修をしますといったとしても、そこの矛盾があるのではないかと思います。ですから、先ほどの広域連携も含んだところできちんと考えないと、ただ研修をやりますだけでは、各自治体においても温度差があるのではないかと思います。
 実際、人吉市の以前の話で、消費生活相談業務を担当者が一生懸命やろうとしたら、「そこまでやる必要があるのか」と言う管理職がいました。担当者としては、相談は乗ってあげたいけれども、結果、解決まで至らなかったという事例もあります。これは10年ほど前ですけれども、管理職等々についての温度差もかなりあると思うので、そこはきちんと、なぜしなければいけないのかというのがまだ地方自治体自体に理解されていない部分もあるので、いかに研修をやりましたといっても、一緒なのではないかと思いました。

○宇賀座長 ありがとうございました。

≪4.今後の進め方≫

○宇賀座長 いろいろと貴重な御意見をいただきました。今後、最終的な報告書を取りまとめるに当たって参考になる御意見をいろいろいただきましたので、事務局は、きょうの御意見を踏まえて今後の資料を作成していただきたいと思います。
 それでは、本日の議論は以上とさせていただきますが、今後の予定等につきまして、事務局から御連絡をお願いします。

○原事務局長 長時間、ありがとうございました。
 次回の専門調査会は、6月13日(木)9時半から開催いたします。
 内容につきましては、先ほど、進め方の案でお示ししたとおりで準備をしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。


≪5.閉会≫

○宇賀座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。大変御多忙のところをお集まりいただきまして、熱心な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。

(以上)