国際平和に貢献する日本人のエッセイ

丸山玲

【氏名】
丸﨑 玲(マルサキ アキラ)さん

【現職】
国連 オペレーション支援局特別活動部パートナーシップ支援課
パートナーシップ計画官

【略歴】
 東京大学教養学部(国際関係論)卒。パリ政治学院交換留学。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)国際関係論修士。オックスフォード大学(サマーヴィル・カレッジ)難民・強制移住研究修士。2008年防衛省入省。調査課戦略情報分析室地域情勢班長、日米防衛協力課防衛協力班長・同盟管理班長などを歴任。2021年3月より国連オペレーション支援局(DOS)にてパートナーシップ計画官として勤務。

 PKOに携わる人々の間で、最近注目を集めている枠組み、「三角パートナーシップ・プログラム(TPP: Triangular Partnership Programme)」。国連の総合調整の下、支援国が、PKO派遣国の要員・部隊に、工兵・医療・情報通信分野の訓練等を行い、より効果的なPKO活動を目指す能力構築事業です。私は、2021年3月、防衛省からニューヨークの国連本部に出向し、TPPに関する政策・渉外を担当しています。

 TPPは、2014年の第一回PKOサミットで日本が支援表明し、発足しました。2015年の開始以来、アフリカやアジア周辺地域のPKO派遣国7,000人以上の要員に対し訓練を実施し、多くの修了生が実際のミッションに派遣されてきました。日本も、2022年3月末までに、延べ266名の陸上自衛隊の教官・通訳や内閣府PKO事務局の連絡調整要員を派遣し、大きく貢献してきました。TPPは今や国連事務局最大のPKO要員能力構築事業として認知されており、国際社会で高く評価されています。

 しかし、近年COVID-19が国連の多くの活動を阻害する中、TPPも例外なく影響を受けました。DOSは、2021年、この克服に全力を尽くし、成果を上げました。3月に遠隔医療プロジェクトを始動、9月にコロナ緩和策を施し対面の重機操作訓練をケニアで再開、11-12月には複数のリモート訓練を試行的に実施しました。また、印豪といった新ドナーを獲得し、12月のPKO閣僚級会合では12カ国から支援表明を得ました。

 私が力を入れた取り組みの一つはリモート訓練の開発です。PKO展開地域でパトロールや物資輸送を安定的に実施するためには、天候や資材の制約を克服し、計画的に道路整備を実施する必要があります。そのため、工事の進捗管理、「作業工程管理(CPM: Construction Process Management)」が、各国工兵部隊にとって喫緊の課題です。このテーマなら遠隔で訓練できる!時間厳守という点で日本人の右に出る者はいない!迷わず日本に相談し、快諾を得ました。こうして、2021年12月、支援国主導の初のリモート訓練として、陸上自衛隊施設学校の教官団が東南アジア3カ国計25名の訓練生を対象にCPM訓練を実施しました。

 

作業工程管理(CPM)コースの開会式の様子
(丸﨑氏が司会)

Atul Khare国連事務次長のCPMコース用オープニングリマークスを収録している様子

 日本がこれまでのPKOで培った経験と技術を、国連のプログラムの下、能力構築の形で還元する手法は、これからの日本の国際平和協力の有力な形だと考えています。実際、日本は先述のPKO閣僚級会合でTPPの更なる拡大に向けた決意を表明しました。2022年、国連はTPPの更なる飛躍を目指し、多くの訓練を計画中です。DOSの旗艦プログラム「TPP」への日本の益々の貢献を強く期待しています。

注:本稿で記された見解は、筆者個人のものであり、必ずしも所属機関の見解を示すものではありません。

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国連旗の下で。

 

 

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