野口英世アフリカ賞ニュースレター 第6号平成23年 11月

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第1回野口英世アフリカ賞受賞者 
ミリアム・ウェレ博士が来日しました
2011年10月1日~8日


ミリアム・ウェレ博士
第1回野口英世アフリカ賞
医療活動部門受賞者

第1回 野口英世アフリカ賞(2008年)の医療活動部門の受賞者である、ミリアム・ウェレ博士が、京都で開催されたSTS(Science and Technology in Society)フォーラムに参加するため、また福島の大震災被災者を励ますため来日しました。

ウェレ博士は10月2日から4日にかけてSTSフォーラムで感染症に関する講演をした後、5日・6日は、福島県を訪問しました。7日は東京へ移動し、野口英世アフリカ賞の関係者と意見交換を行い、8日にはケニアへ帰国すべく、無事日本を出発しました。

STSフォーラムへの参加(2011年10月2日~4日)

ウェレ博士は京都で行われたSTSフォーラムへ参加しました。フォーラム2日目の10月3日、ウェレ博士は感染症に関する分科会でアフリカの感染症とコミュニティーレベルの医療活動の重要性について講演をしました。以下その要旨です。

【講演名】コミュニティーにおける健康戦略を通じた、感染症とその他の伝染病の管理について

サハラ砂漠以南のアフリカ(サブサハラアフリカ)の状況

世界では多くの人が貧困の中、先進的な医療を受けられない環境で生活をしています。

マラリアの死者の9割以上は、サハラ砂漠以南のアフリカで亡くなっています。その人口はおよそ100万人と言われ、そのほとんどが5歳以下の子供達です。これは30秒に1人のアフリカの子供がマラリアで亡くなっている、とユニセフのレポートで報告される程の数です。

マラリアの他にも結核、HIV/エイズ、熱帯地域特有の感染症が、アフリカの人々の健康を害している状況です。しかしながら多くの人が、清潔な飲料水や、住環境が手に入れにくい環境の中、生活をしています。特に子供達やその母親である女性達が、不衛生な環境で生活をしていることが、感染症の問題に対して大きな脅威となっているのです。

コミュニティーレベルでの医療活動の重要性

このような状況の中、人々が生活をしているコミュニティーを基礎とした医療活動を推進している所は一定の成果を上げています。

コミュニティーレベルの医療活動を通じて、都会の先進的な医療施設から遠く離れた場所で生活している人々へ、適切な医療や、健康増進、感染症予防のための活動を提供することが可能です。特に母子手帳は、女性の妊娠と出産、そして幼児の健康の問題を改善しています。

私の祖国ケニアでも、コミュニティーレベルでの医療活動を通じ、予防接種、妊産婦への支援、公衆便所の整備、清潔な飲み水の確保、家族計画の指導、ヘルスワーカーの養成、医療環境の整備などを行い、感染症問題や、乳幼児の死亡率の改善に役立っています。

コミュニティーにおける健康戦略を通じて、人々は医療システムの一員となります。このことは、サハラ砂漠以南のアフリカにおいて感染症や伝染病の問題を解決するために、多くのチャンスを与えてくれるのです。


ウェレ博士が普及に尽力している、ケニアの母子手帳
日本の母子手帳からヒントを得ています

福島県訪問(2011年10月5日・6日)

ウェレ博士は、2008年の第1回授賞式の際、野口英世のふるさとである福島県を訪問しています。

福島は、ウェレ博士にとっても思い出深い地であり、暖かい祝意を受けた地でもあります。今回の福島県訪問は、東日本大震災で福島が被災した事に大変心を痛め、是非現地を訪問し激励をしたいという、ウェレ博士たっての希望を受け、相馬市、特定非営利活動法人Health and Development Service (HANDS)、相馬遊楽応援団のご厚情により実現しました。

ウェレ博士からは被災地のみなさんへ、前回の訪問の際の感謝と励ましの気持ちをこめて、KIZUNA Tシャツとケニアのキャンディーが贈呈されました。
ケニアにおいてもビッグ・ママと慕われる、ウェレ博士ならではの太陽の様な明るさと、大きな愛情に溢れた言動は、行く先々で人々の気持ちを明るくしました。

福島県訪問 1日目


八子弥寿男野口英世記念館館長と記念碑の前にて

野口英世記念館(猪苗代町)訪問

第1回授賞式の際訪れた思い出の地である野口英世記念館を再訪しました。震災の影響を心配していたウェレ博士は、以前と変わらない様子の記念館に安心をしつつ、新たな展示物にも興味を示していました。八子弥寿男館長の案内で館内を視察しました。

立谷 秀清 相馬市長を表敬訪問

猪苗代町を後にしたウェレ博士一行は、相馬市役所を訪れ、立谷 秀清 相馬市長を表敬訪問しました。ウェレ博士は東日本大震災で被害にあわれた相馬市、そして被災者の方々にお見舞いの意を表し、KIZUNA Tシャツを贈呈しました。立谷市長は震災や震災後の市民の生活、相馬市独自の震災遺児のための育英基金などの取り組みについて説明をしました。


立谷 秀清 相馬市長とウェレ博士 

福島県訪問 2日目

東日本大震災被災地を訪問

ウェレ博士は相馬市内の東日本大震災の被災地を訪問しました。いまだに深い被害の爪痕が残る被災地を目にしたウェレ博士はその被害に心を痛めていました。ウェレ博士は亡くなられた方、未だに行方不明の方をおもって、献花をしました。

公立相馬総合病院訪問

被災地の後は公立相馬総合病院を訪問しました。熊 佳伸院長の案内で院内をまわりました。ウェレ博士は地域のために同病院が果たしている役割に感銘を受けていました。

自身が医師であり、実際に様々な医療現場を体験してきたウェレ博士は、患者の皆さんに暖かい言葉をかけて励ましていました。「ビッグ・ママ」ウェレ博士の陽気で明るく、気さくな人柄に患者のみなさんもすぐに打ち解け、気持ちも明るくなったようでした。

 
熊 佳伸院長と

 相馬市立中村第一小学校訪問
ウェレ博士と子供達

相馬市立中村第一小学校訪問

吉田 雄二校長先生から、避難所になった際の学校の様子、子供達のおかれている状況について説明を受けました。

高校の先生をしていた事もあるウェレ博士ですが、相馬市立中村第一小学校でも、ウェレ博士ならぬウェレ先生は子供達に大人気でした。ウェレ博士は自身の仕事の話から、アフリカの文化について色々な事を子供達と語り合いました。ストリートチルドレンを支援する活動も行っているウェレ博士ですが、世界中どこへ行っても子供達の気持ちを掴んで離さない様子でした。

西工業団地仮設住宅・刈敷田第一仮設住宅訪問

西工業団地仮設住宅と刈敷田第一仮設住宅、二か所の仮設住宅を訪問しました。ウェレ博士は仮設住宅で生活をしている方々にお時間を頂き、お話をさせてもらうとともに、現地で活躍されているボランティアスタッフへねぎらいの言葉をかけていました。その後居住者と県外からのボランティアスタッフの方々との交流会が開催され、大変和やかな会となりました。

 

東日本大震災で被災された福島の方々へ  
ウェレ博士よりメッセージ

福島県の皆様へ

2011年10月7日

夫と私は2008年に福島県を訪れて、とても幸せでした。私たちは、磐梯山と猪苗代湖、そして美しい田んぼを見ることが出来て、とても楽しかったです。皆様が私たちを優しく出迎えて下さったことを大変嬉しく思っています。

残念な事に、皆様の美しい福島県は地震、津波そして原子力発電所の事故により、被災してしまいました。私はこの事を非常に悲しむと共に、この苦難の時を共に分かち合うために来ました。皆様の復興に取り組んでいる勇気に私も励まされました。私たちは皆様が復興に取り組まれるにあたり、KIZUNAの元に共にいます。

あなた方の友人、ミリアム・K・ウェレより

 
ウェレ博士直筆メッセージ

東京訪問(2011年10月7日)

京都、福島を訪問したウェレ博士ですが、最後は東京で野口英世アフリカ賞の関係者と意見交換を行いました。

ウェレ博士が会った方々(50音順)

  • 黒川 清  野口英世アフリカ賞委員会 委員長/政策研究大学院大学教授
  • 園田 康博 内閣府 大臣政務官
  • 武見 敬三 東海大学教授
  • 麦谷 眞里 厚生労働省 大臣官房審議官

内閣府 園田 康博政務官と

厚生労働省 麦谷 眞里 大臣官房審議官と
 

黒川 清 野口英世アフリカ賞委員会委員長と

武見 敬三 東海大学教授と
 
  • 野口英世アフリカ賞基金への寄附実績(2011年9月時点)
    491,625,972円[個人1887件,法人320件(計2,207件)]

これまでご寄付をお寄せくださった方々に
厚く御礼申し上げます。

発行:内閣府 大臣官房 企画調整課 野口英世アフリカ賞担当室

 

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