野口英世アフリカ賞ニュースレター 第5号平成23年 5月

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平成23年(2011年)東日本大震災による被災者の皆様へ

3月11日(金)に発生した東日本大地震で被災された皆様,また,ご家族の皆様に,心よりお見舞い申し上げます。

野口英世アフリカ賞担当室一同より  

ミリアム・ウェレ博士(第1回野口英世アフリカ賞受賞者)の来日

 
意見交換をするウェレ博士(左)と菊田大臣政務官(右)

2月17日から22日まで,ウェレ博士は日本に滞在し,数々の行事を行いました。18日は,外務省を訪れ菊田真紀子大臣政務官を表敬しました(写真上)。菊田政務官はウェレ博士に対し,野口英世アフリカ賞の精神普及,同賞の活性化のために活動されていることについて,敬意と感謝の気持ちを伝えると共に,今後とも野口英世アフリカ賞関連の行事等の開催につきウェレ博士の協力を求めました。これに対し,ウェレ博士よりは,日本政府よりアフリカへの支援に感謝しており,日本政府の期待に応えられるように頑張りたい旨述べました。その他,菊田政務官よりは,ウェレ博士が公衆トイレの建設に取り組まれていると承知しており,昨年日本において「トイレの神様」という歌がヒットした旨述べ,記念として英語の歌詞と共にCDを贈呈したところ,ウェレ博士は,ケニアでもこの歌を広めたい旨答えました。

21日は,お茶ノ水女子大学において,ウェレ博士に名誉博士称号が授与されました(写真次ページ)。今回の名誉博士称号の授与は,ウェレ博士の業績,社会活動への貢献を讃え,お茶ノ水女子大学の活動の一つのモデルとして顕彰しました。

本授与式は,お茶の水女子大学グローバル協力センターが実施している「グローバル社会における平和構築のネットワーク形成」事業の一環として行われ,授与式後に記念講演会『共に生きる―ミリアム・ウェレ博士に聞く』が開催されました。ウェレ博士からは,紛争の多いアフリカの平和を実現するために,コミュニティや市民の連帯を通じた,日本をはじめとするグローバルなネットワークの構築が不可欠であることが講演されました。学生からは女性としての役割,コミュニティからの活動の重要性等に関する数々の質問がなされ,活発な議論が行われました。最後には,ウェレ博士とともに参加者が立ち上がって,手拍子をしながらケニアの歌を歌いながら締めくくられました。  「共に生きる」社会の実現の第一歩として,アフリカと日本の間の温かい連帯を感じさせる講演会となりました。

更に22日,公開セミナー「アフリカのコミュニティ・ヘルス -母子保健、保健システム、コミュニティ・エンパワメント-」(英:Open Seminar "Community Health in Africa - MCH, Health Systems, Community Empowerment -")が,JICA地球ひろばで開催され,ウェレ博士が,アフリカのコミュニティにおける保健医療システムについて,なぜコミュニティで人々のエンパワーメント(能力強化)が必要なのか,そのためのマインドセット・チェンジ(意識改革)の効果と方法などについて,長年に亘る経験や技術から一般の方々にも分かりやすく講義を行いました。

この講演会後,JICA本部で緒方理事長と会談を行い,ウェレ博士からJICAに対し,アフリカにおける妊産婦,新生児及び子どもの健康のためのコミュニティ保健の重要性とJICA保健医療協力との政策面での連携の強化が提言されました。さらにその実践方法として,人間の安全保障に沿った形でコミュニティ・ヘルスワーカーによる現場の視点に基づいた対策をとること,また今後は新生児・母子保健だけでなく,学校保健を通じた衛生活動,更にはコミュニティの高齢者ケアなどを含めた,包括的なコミュニティ保健アプローチをとることが提案され,その考え方について両者合意しました。

その他,ウェレ博士は,母子手帳関係の会議や国際ボランティア学会等にも出席されました。


記念講演するウェレ博士

名誉博士称号を授与されるウェレ博士

第2回「アフリカ・ロンドン・長崎奨学金」授賞の決定


前列左から3人目がグリーウッド教授

  1. 2月9日,在英国日本国大使館の野田臨時代理大使は,野口英世アフリカ賞第1回受賞者であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院(London School of Hygiene and Tropical Medecine (LSHTM)) のブライアン・グリーンウッド教授の招きを受けて同大学院を訪問し,同教授の受賞金を基に行われている「アフリカ・ロンドン・長崎奨学金」の第2回授賞の決定について説明を受けるとともに,マラリア関係の研究室の視察,意見交換等を行いました。

    先方:ピーター・ピオットLSHTM院長(元国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長,元国連事務次長,日本側:岡在英国日本国大使館公使,平松JSPS(日本学術振興会)ロンドン研究連絡センター,関口同副センター長等が同席しました。)
    (注:グリーンウッド教授は,野口英世アフリカ賞の賞金(1億円)を活用して,感染症,公衆衛生,熱帯医学関係の分野のアフリカの若い科学者養成のための奨学金「アフリカ・ロンドン・長崎奨学金」を創設。同奨学金受賞者は,ロンドン大学衛生熱帯研究所又は長崎大学熱帯医学研究所にて修士課程に在学することが可能となり,同奨学金は毎年最大4名程度の受賞者を選抜し,1名あたり最高5万ドル(授業料,生活費,旅費を含む)が支給される予定です。第1回目の受賞者発表は昨年3月ガーナで開催された「野口英世アフリカ賞記念シンポジウム」の際に合わせて行われました。この度のLSHTM への在英国日本大使館からの訪問は同奨学金の第2回目の発表が2月9日にLSHTM で行われる機会を捉えた同教授からの招待に応じたものです。)
     
  2. 「アフリカ・ロンドン・長崎奨学金」第2回受賞者の発表
    1. 本奨学金は,マラリア等感染症分野の専門家を目指すアフリカの若い学生に大変人気があります。第1回の奨学金応募受付の際には486人から申請(5名採択)がありましたが,今回(第2回)の応募受付では,大々的に周知をしていないにも関わらず857件の申請がありました。
    2. 今回の採択も5名でした。内訳は,2名(マリ,ケニア)が長崎大学に留学,2名(ベナン,ウガンダ)がLSHTM に留学,残りの1名(ウガンダ)はLSHTM の講座を通信教育で履修予定です。
    3. 本奨学金は,野口英世アフリカ賞の賞金を活用していますが,追加的な資金がなければ全体で5回の募集で終了の見込みです。

LSHTM(London School of Hyginene and Tropical Medicine, ロンドン大学衛生熱帯医学大学院)について

  1. LSHTM は,衛生熱帯医学関係では,米ハーバード大学,米ジョンズ・ホプキンズ大学に並び世界のトップ3の教育研究機関です。特にマラリア研究では世界一との名声を得ています。更に,英国では最新の大学研究評価(2008年に行われた研究評価(RAE))の結果は3位でした。
  2. LSHTM の教育研究に係る経費は,国からのサポートを受ける他,慈善団体(ウエルカム・トラスト,ビル&メリンダ・ゲーツ財団等)から支援を受けており,アフリカの留学生の人材育成には慈善団体の存在感が大きいです。なお,最近,LSHTM にて博士課程(PhD)を修了したアフリカ人研究者の35人中33人がアフリカに戻っていきました。PhDを取った研究者は米国に移る場合が多いですが,LSHTM の事例はアフリカとの連携を深め,アフリカの公衆衛生に貢献し続けたいと考えるLSHTM にとって良い結果となっています。
  3. 日本との連携
    LSHTM は東京大学,京都大学及び長崎大学等日本の大学や研究機関と提携しています。また,カロリンスカ研究所(スウェーデン)やケニアに滞在している日本人研究者とのネットワークもあります。LSHTM は,更に日本との連携を深めたいと考えています。なお,LSHTM には毎年10名程度の日本人留学生が来ていますが,日本人留学生を頼りにし,ネットワークを広げていくことには難しさを感じているとのことです。
    これに対し平松JSPSロンドンセンター長より,JSPSの外国人研究者招聘(フェローシップ)事業を活用して日本で研究等を行った経験のある英国人研究者については,英国に帰国後に当該研究者が属する大学・研究所と日本の大学・研究所との間の組織的な日英間シンポジウムを英国で開催する場合,フェローシップ同窓会員として,JSPSロンドンがこれをサポートするスキームが存在するので,LSHTM に同窓会員がいれば,このスキームを活用して頂き,日本との連携強化に生かす方法があり,JSPSロンドンに英国の同窓会員のデータベースがあるので,LSHTM に同窓会員がいるかどうかにつき情報提供が可能である旨答えました。

野口英世アフリカ賞基金への寄附実績(2011年3月)

472,294,972円[個人:1878件,法人318件(計2,196件)]

これまでご寄附をお寄せいただいた方々に厚く御礼申し上げます。

 

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