城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年11月26日
(令和7年11月26日(水) 17:30~17:43 於:中央合同庁舎8号館1階108会見室)
1.発言要旨
冒頭2点報告いたします。まず、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告いたします。
経済の基調判断につきましては、「景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している」と、先月からの判断を維持しております。
先行きにつきましても、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されますが、その一方で、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスク、また、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響等についても引き続き注視する必要があると考えております。
続きまして、本日の会議で私から説明した今月のポイントについてご紹介いたします。
本年7-9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、米国通商政策の影響などを受け、前期比で見てマイナス成長となりました。
しかしながら、米国関税引上げ前の駆け込み需要とその反動減など、最近は四半期ごとの振れが大きくなっておりますので、前年同期比、これで基調的な動きを見ますと、個人消費や設備投資は底堅いプラスを示しており、景気の緩やかな回復が続いていることが確認できます。
米国通商政策の影響を見ますと、足元、米国向け財輸出には持ち直しの兆しが見られます。また、輸出価格の最新状況を見ますと、関税発動後、大きく引き下げられていた米国向け乗用車の輸出価格も、足元9月16日の関税引下げもありまして、反転の兆しが見られます。
いずれもGDP統計が対象といたしました7-9月期以降の動向となりますので、こうした反転の動きが今後も続いていくのか、引き続き注意深く見ていく考えであります。
また、先週金曜日21日ですが、「『強い経済』を実現する総合経済対策」を閣議決定いたしました。
まずは経済対策の裏づけとなる補正予算の早期成立を図ってまいります。その成立後には、できるだけ速やかに各施策を執行し、一刻も早く国民の皆様に支援をお届けすることによりまして、景気の体感温度を高めていくとともに、家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いながら、引き続き経済・物価動向に応じた機動的な政策対応を行ってまいります。
このほか会議の詳細につきましては、この後事務方からより詳細な説明を行いますので、よろしくお願いいたします。
2点目でございます。昨日、2026年春季労使交渉に向けて、政労使の意見交換を実施いたしました。労使の皆様から、「政府は賃上げ事業者の皆様に丸投げをせず、継続的に賃上げできる環境を整備する」という、高市内閣の方針へのご理解を賜りました。
この方針に基づきまして、先週末の21日に閣議決定した経済対策において、まず、官公需を含めた価格転嫁・取引適正化を徹底すること、2つ目は、政府全体で1兆円規模の支援を行い、基金も活用して、賃上げに取り組む中小企業・小規模事業者の成長投資等を後押しすること、また、重点支援地方交付金の中で、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備などの推奨事業メニューを強化すること、これらを行うことといたしました。その裏づけとなる補正予算については、先ほど申しましたように、早期成立を図ってまいります。
また、先日設置した日本成長戦略本部では、来年夏に向けまして、日本成長戦略担当大臣兼賃上げ環境整備担当大臣である私に対しまして、賃上げ環境整備に向けた戦略を含む成長戦略の策定の指示が高市総理からございました。
その中では、長期的な企業価値の向上に向け、人への投資、研究開発投資、そして設備投資を促す「コーポレートガバナンス・コード」の改定にも着手いたします。
そして、その上でこうした高市政権の方針や具体的な取組を地方の皆様にお伝えし、全国隅々まで浸透させるため、全ての都道府県で「地方版政労使意見交換」を実施してまいります。
また、高市総理からは、昨日ご出席いただきました労使代表の皆様に対しましては、こうした政府の取組を踏まえ、30年以上ぶりに5%を超える高水準となっている賃上げを確かなものとして定着させるため、一昨年、そして昨年の水準と遜色のない水準での賃上げ、とりわけ物価上昇に負けないベースアップの実現に向けたご協力をお願いされたところであります。
以上冒頭2点、私からの報告といたします。
2.質疑応答
- (問)今月の月例経済報告では、国内主導の物価上昇の傾向が示され、また、依然として賃金の伸びが物価上昇に追いついていない状況も示されたかと思いますが、改めて物価及び賃金動向に関する大臣の現状認識についてお伺いします。
また、物価上昇を上回る賃上げに向けた取組についても、併せて教えてください。 - (答)物価及び賃金動向に対する認識でありますが、まず、消費者物価、これは2022年4月以降、2%を上回る上昇が続いておりまして、当初は輸入エネルギー価格上昇の影響が大きかったわけですが、足元ではコメをはじめとする食料品価格が主因となり、3%程度の上昇率が続いているところであります。
一方で、賃金は足元で2%程度の伸びと堅調な増加が続いているものの、依然として物価上昇には追いついておらず、賃上げが物価上昇を上回る状況を実現することが重要であると認識しております。
そして、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けて、継続的に賃上げできる環境を整えることこそが政府の役割と考えておりまして、これまでも価格転嫁・取引適正化、生産性向上支援などを通じまして、中小企業・小規模事業者の皆様の後押しをしたところであります。
また、先週末の21日に閣議決定した総合経済対策におきましては、官公需を含めた価格転嫁・取引適正化を徹底すること、そして、政府全体で1兆円規模の支援を行い、基金も活用して、賃上げに取り組む中小企業・小規模事業者の成長投資等を後押しすること、重点支援地方交付金の中で、中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備などの推奨事業メニューを強化することなどを行うことといたしました。その裏づけとなる補正予算の早期成立を図ってまいる考えです。
その上で、強い経済の実現に向けて、日本成長戦略本部を立ち上げまして、来年夏に向けまして、賃上げ環境整備に向けた戦略、これを含む成長戦略の策定をすることとしておりますので、その中で施策を更に充実・強化することについて、具体的な検討を進めていく考えであります。 - (問)今日の月例の閣僚会議の資料で、GDPギャップの動向が掲載されているかと思います。今月ややマイナスに沈んだということで、大臣は高圧経済を持論とされていると思うのですけれども、高圧経済といった場合、需要が供給を一定程度上回るということだと思われます。その一定程度とは、高ければ高いほどいいということではないと思うのですけれども、例えば大臣として、GDPギャップを含むどういう指標をご覧になって、どの程度であれば適度な高圧経済状態と考えられるのでしょうか。
- (答)高圧経済政策につきましては、これまでも様々な識者によって議論されております。
例えば外国の事例でいいますと、米国の経済学者でありFRB(連邦準備制度理事会)議長や財務長官を歴任しましたイエレンさんは、力強い総需要と逼迫した労働市場という高圧経済を維持することによって、供給サイドの悪影響を反転させる可能性があると提起しております。
他方、どの程度の需要超過をどの程度続けることが適切かという点については、やはり経済統計の動きを丁寧に見ていくことも重要だと考えております。
こうしたことから、内閣府、日本銀行においても、毎月の物価や賃金・雇用動向等から需給の動向を観察しているところでありまして、こうしたことを通じまして、適切な経済財政運営に努めてまいる考えであります。
いずれにしましても、まずは今般取りまとめた経済対策の裏づけとなる補正予算の早期成立を図ると今日も何度も申しましたけれども、これに尽きると思いますが、その成立後にはできるだけ速やかに各施策を執行し、一刻も早く国民の皆様に支援をお届けして、景気の体感温度を高めていくとともに、家計や事業活動に与える影響には細心の注意を払いながら、引き続き経済・物価動向に応じた機動的な政策対応を行っていく考えであります。個人的に、具体的にどの程度になるのが望ましいかということですが、いろいろな考え方もありますし、有識者によってはゼロ近傍ではなくてプラス2%程度が必要だとか、識者によって様々な議論がありますので、この場でどのような程度が望ましいかということを私個人が政府の立場で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。繰り返しになりますけれども、様々な識者によって議論されているということに尽きるのではないかと思います。
(以上)