城内内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和7年10月29日
(令和7年10月29日(水) 15:30~15:48 於:中央合同庁舎8号館1階108会見室)
1.発言要旨
まず、私のほうから月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要をご報告申し上げます。経済の基調判断につきましては、「景気は、米国の通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している」と、先月から判断を維持しております。
先行きにつきましても、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待されておりますが、その一方で、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスク、また、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響等についても引き続き注視する必要があると考えております。
続きまして、本日の会議で私から説明した今月のポイントについてご紹介いたします。
まず、我が国経済の概観について、我が国の名目GDPは、2010年代初めの500兆円を下回る水準から、アベノミクスをはじめとする各種政策の効果もあって、この15年間で100兆円以上増加し、2024年には600兆円の大台を超えました。物価上昇の影響を取り除いた実質GDPで見ても、このところ、5四半期連続で増加するなど、景気の緩やかな回復が続いております。
その内訳について、輸出や設備投資が堅調に増加する一方で、GDPの過半を占める個人消費については緩やかに持ち直してはいるものの、その伸びはGDP全体に比べて弱いものとなっております。水準で見ても、コロナ前と同程度までしか戻っておりません。物価高の継続が実質消費を下押しする要因になっていると見られております。
その背景である賃金と物価の動向について、賃金上昇率は2%程度の堅調な伸びが続いております。足元では、規模の小さな事業所の賃金も上昇しており、規模感の格差には縮小が見られます。
その一方で、消費者物価は3%近い上昇率が続いており、物価上昇を上回る賃金上昇に向けた足取りは道半ばといえます。特に、食料品価格の高い伸びが続いております。
その中で、所得の比較的低い世帯や、30代、40代のいわば子育ての中心世代ほど、近年の食料品をはじめとする物価上昇の影響を大きく受けていることが示唆されております。
初閣議でいただきました高市総理のご指示に沿って、物価高対策をはじめ、強い経済の実現に向けた総合経済対策の策定に全力で取り組んでまいります。
このほかこの会議の詳細につきましては、後ほど事務方から説明させることとなっております。
2.質疑応答
- (問)月例経済報告に関連して1点伺います。今回は政権交代を受けて、政策態度に高市首相が掲げる「責任ある積極財政」の考えの下、戦略的に財政出動を行うことで、強い経済を構築すると盛り込んでいます。高市首相は所信表明演説で、戦略的な財政出動を起点として、所得向上や消費マインド改善、事業収益のアップ、税収の増加につなげる好循環について述べていましたが、このうち消費マインドは、物価高や実質賃金の低迷、将来への不安などからなかなか改善が進んでいないように思います。改善に向けては物価高対策や所得向上はもちろんですが、今後どのような施策に取り組んでいく必要があるとお考えでしょうか。
- (答)まず、消費者マインドにつきましては、国民の皆様の景気に対する体感温度、これを表すという意味でも重要だと考えております。例えば内閣府「消費動向調査」によりますと、消費者マインドは本年4月のいわゆるトランプ関税公表後に大きく落ち込んだものの、その後は改善傾向にあると承知しております。この流れを更に高めていけるよう、経済対策をはじめ政策に全力で取り組んでまいります。
こうした状況も踏まえまして、更なる改善に資するよう、私が中心となって取りまとめる経済対策の第1の柱として、「生活の安全保障・物価高への対応」が示されているところであります。例えば今回の高市総理のご指示の中で示されました重点支援地方交付金を活用して、各自治体それぞれのニーズに対応し、生活費支援を行っている事例も多々ございます。こうした既存の取組も参考にしながら、家計支援にもつながる効果的な施策を盛り込んだ経済対策を取りまとめる考えであります。
そして、更にこのような取組により、まずは物価高に困っている方々の暮らしを守り、結果として所得が増え、そして消費マインドの更なる改善につなげてまいりたいと思っております。 - (問)本日の会議で、食料品の物価上昇に関する影響が子育ての中心世帯ほど大きな影響を受けているということを、今、ご説明されたかと思います。これに関して現在策定に取り組まれている総合経済対策で対応されるべきだとお考えでしょうか。また、対応される場合、どのような手法が望ましいとお考えでしょうか。重点支援交付金でそれぞれのニーズに応じてご対応というお話がありましたが、その使い方についてお考えがあればお聞かせください。
- (答)高市総理が所信表明演説で述べられたとおり、内閣で最優先で取り組むべきことは、今、国民の皆様が直面している物価高への対応でございます。
先ほど申しましたように、私が中心となって取りまとめる経済対策の第1の柱には、物価高対策を内容とする「生活の安全保障・物価高への対応」が総理から具体的に示されたところであります。
今回の高市総理のご指示の中で示されました重点支援地方交付金、これを活用し、地方のニーズによりきめ細かく対応し、ご指摘のとおり、子育て家庭や食材費の値上がりに対応した支援は、これまで過去講じられた事例もございます。こうした既存の取組、各自治体の取組も参考にしながら、経済対策の具体的内容については関係省庁からの今後のご提案も踏まえまして、そしてまた与党とも十分連携し、更には党派を超えた議論も踏まえて、具体的な検討に入っていくことになるかと思います。
いずれにしましても、私としては早急に経済対策を取りまとめまして、その支援策を子育て世代も含めて国民各層の皆様にしっかりとお届けし、やはり何度も申し上げているように、景気回復、経済成長の果実を実感していただけるようにしていく考えであります。 - (問)トランプ関税の影響が足元の景気に表れ始めています。特に注視している業界があれば教えてください。また、どのような対策をお考えですか。
- (答)まずは、米国の関税引き上げの影響については、自動車産業を中心に収益や米国向け輸出の減少といった形で表れているものの、我が国経済全体としては、内需の柱である個人消費、あるいは設備投資に上向きの動きが続くなど、景気が緩やかに回復している状況に変わりはないと認識しております。
ただし、米国の関税引上げについては、やはり引き続ききめ細かく丁寧に分析していくことが重要と考えております。
また、国内産業の影響でありますけれども、米国時間7月22日の日米間の合意により関税は引き下げられ、経済主体の予見可能性は高まったものの、引き続き関税は残っておりますので、我が国経済に対する影響は、よく把握・分析していく必要がこれからもあると思います。
ちなみに、自動車産業ですけれども、約550万人の雇用を有しておりまして、中小企業を含む広範なサプライチェーンによって成り立つ我が国の基幹産業でありまして、米国による関税措置による影響が各会社さんの利益圧迫といった形で実際には表れております。
このため、高市総理から策定のご指示のあった総合経済対策におきましては、中小企業者向けの資金繰り支援等、あるいは事業者の状況やニーズに応じた多様な、多岐にわたる支援メニューを用意し、影響の緩和に万全を期していく考えであります。
今後も、繰り返しになりますけれども、日米間の合意や各国の動向による我が国への影響を引き続き十分に把握・分析し、産業や雇用に与える影響の緩和に万全を期していく考えであります。 - (問)財政に関してお伺いします。高市首相は所信表明で、政府債務残高の対GDP比を引き下げていくことで、財政の信認を確保すると述べられました。総裁選期間中に高市首相は、純債務残高対GDP比を財政健全化に向けた指標にする考えも示しておりました。大臣としては、健全化指標に債務残高か純債務残高か、どちらが適切だとお考えかお聞かせください。
- (答)財政健全化につきましては、高市総理は所信表明演説におきまして、「成長率の範囲内に債務残高の伸び率を抑え、政府債務残高の対GDP比を引き下げていくことで、財政の持続可能性を実現」すると述べられたところであります。このため、戦略的に財政出動を行い、そして成長率を高め、税収を増加させ、債務残高の伸びを抑制してまいりたいと考えております。
その上で、純債務残高の対GDP比についてお尋ねでありますけれども、我が国の財政状況につきましては様々な指標もございますので、各指標のそれぞれの特徴を踏まえつつ、これら様々な指標を用いて議論していくことが重要だと考えております。
いずれにしましても、「責任ある積極財政」の考えに基づく経済財政運営を行い、強い経済を構築する中で、財政健全化との両立を図ってまいる考えであります。 - (問)ベッセント長官と片山大臣の会談が一昨日あって、それのやり取りについて、アメリカ側の発表というのがネットでも読めてしまうのですけれども、あれでインフレ問題への対応で、健全な金融政策の運営をベッセントさんが望んだと。Sound Monetary Policyとかが書いてありますけれども、これについてのご所見をいただければ。あと、日本銀行は明日会合がありますけれども、影響があるかどうかです。
あと、いつも大体、公式見解で政府・日銀2%目標を目指してということだと思うんですが、4年間、物価は2%を上回っているので、2%を目指すということは物価を下げてくださいということなのでしょうか。 - (答)ご指摘の報道については承知しておりますが、やはり他国の政府関係者の発言でございますので、これについてこの場でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
なお、金融政策につきましても、ご指摘のとおり、本日から明日にかけまして、金融政策決定会合が開催されているところでありまして、こうしたことから、このタイミングで私から何かコメントすることは、大変申し訳ございませんが、差し控えさせていただきたいと思います。
最後のご指摘の点ですが、日本銀行には、引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け適切な金融政策を行うことを、これまで同様期待しております。 - (問)先ほどのやり取りの中で、米国の関税措置の影響への対応で、資金繰り支援を総合経済対策でもというふうな文脈でおっしゃられたと思うんですが、資金繰り支援等の施策というのは既に行われているかと思うんですけれども、それに更に上乗せして何か追加的な施策を考えるという理解でしょうか。
- (答)総合経済対策の中身についてはまだこれからであります。ただ、ご指摘のとおり、これまで日本政策金融公庫などを通じての様々な、まず相談から始まって貸付けとかいろいろな資金繰り分野での支援がありますので、それは引き続きやっていくということではないかと思いますが、何か総合経済対策については、もちろんそれをやめて何か新しいものをやるということではないかと思いますが、いずれにしても総合経済対策はこれからでありますので、それについてこの場で具体的にまだ申し上げる段階にはないというふうに思うということであります。
- (問)政策態度の変更というのは、やはり完全に不連続だと思うのですけれども、霞が関のこれまでの役人も含めまして、サナエノミクスの成長戦略を担当するマインドセットというのでしょうか、そういうのを新たに任命したり、全然違う次元に行ってしまっていると思うのですけれども、その司令官が正に城内大臣だと思います。それも含めまして、少なくとも明らかに不連続ですから、今の日経平均も。その辺をどうお考えになっているのか。その対応について、霞が関は本当に対応できるのかなと思うんですけれども、どうお考えか伺いたいです。
- (答)ただいま不連続云々のご指摘がありましたが、これまでのことを全否定して、白紙にしてということではないのではないかと私は思います。最初の記者会見で申し上げましたが、新しい資本主義実現会議というのはございましたが、そこで議論されたことを踏まえまして、高市早苗総理が所信表明演説でも述べられたように、日本成長戦略会議を立ち上げるということでありますが、それは前の新しい資本主義会議の議論を全く考慮せずに新しく何かということではないと私は思いまして、やはりこれまでの連続性というものはある程度あると私は思っております。
加えて、やはり政権が代わったわけですから、ご指摘の「サナエノミクス」というもの、これについてもこういう表現がいいのかどうかは別として、これから関係省庁とも連携しながら中身を考えていくことでありますので、連続性がないというようなことではないというふうに私は理解しております。
(以上)