野田内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和4年6月3日

(令和4年6月3日(金) 9:30~9:48  於:中央合同庁舎8号館1階S106記者会見室)

1.発言要旨


 私の方から冒頭発言があります。本日、総理官邸で全閣僚を構成員とする「すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部」を開催し、「女性版骨太の方針2022」を政府決定しました。
 我が国の男女共同参画は諸外国に比べて立ち遅れています。その背景には、制度・慣行・意識の3つの要素が相互に強化し合っているという構造的な問題があると考えられています。
 また、人生100年時代を迎え、離婚件数は結婚件数の3分の1となり、女性の半数以上は90歳まで生きます。また、50歳時点で配偶者のいない方は男女ともに3割となるなど、女性の人生と家族の姿は多様化しており、もはや昭和時代の想定は通用いたしません。
 こうした認識の下、4つの柱、すなわち、女性の経済的自立、女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会の実現、男性の家庭・地域社会における活躍、女性の登用目標達成という柱を立て、男女間賃金格差に係る情報の開示や、女性デジタル人材育成プランの実行、女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討、アダルトビデオ出演被害対策を始めとする性犯罪・性暴力対策やフェムテックのさらなる推進など、女性の健康に関する取組、テレワーク等の多様な働き方を後退させず、コロナ前の働き方に戻さないことに加え、男性が子育てに参画しやすくなるための環境整備、企業の女性役員比率ランキングの掲載や、国家公務員の女性職員の職域の拡大等を通じた女性の登用促進など、今まさに取り組むべき施策をしっかり盛り込みました。
 今回策定した「女性版骨太の方針」に基づき、政府一体となって取組を強力に進めてまいります。

2.質疑応答

(問)骨太についてお伺いしたいのですけれども、文章の初めの方に、「昭和の時代の想定は通用しない」とあえて書き込まれていると思うのですけれども、一方で、こういう「通用しない」というのはもうだいぶ前からという声もあって、今回こうした表現を改めて書き込んだ理由を教えてください。
(答)言葉では、スローガン的には、昭和の時代は終わったとか、ポスト昭和とか、いろいろ口々におっしゃるけれども、目安をしっかり定めて、数字上明らかに、少なくとも女性の生き方、人生とかが全く昭和の時代と違うという数字上の違いをしっかり分かった上で、これは道徳的な話ではなくて、国の骨格が変わったと。だから、制度や様々な政策、法律も当たり前のように変えなくてはいけないのだということを申し上げるのが今回の取組です。
 骨太というのは予算につながってくる大きな仕事でございますので、それを踏まえて改めて申し上げています。
(問)同じように、中段以降で、「結婚すれば将来安定というような価値観で女の子を育てることのリスク」についても触れられているのですけれども、こちらも前からこうした価値観で実際に子育てをしている親はもう実はそんなに多くないのかなと思いまして、こちらもあえて書き込んだのであると、考え方を変えるというのは難しいと思うのですけれども、どうやって周知していくかをお願いします。
(答)若い世代の人たちには当たり前のことでも、政治や行政を担う人たちには届いていないこともあるでしょう。こういう会議で決定したことを霞ヶ関や永田町の主要な方たちがしっかり目を通していただくことで、この数字を合わせもって、本当に変わったのだなという理解をしていただきたい。
 基本的には、そういう方たちが若い人たちを職場なり組織なりで支配する立場にあるので、もう自分たちが踏襲したものは通じないし、それを強制してはいけないのだという理解をしていただければありがたい。理解しなければならないと思います。
(問)子育てのしやすい地域づくりの取組の事例として、最近、京都府で「子育て応援レーン」などの取組が進められていますけれども、これに関連して、内閣府で推進されている「子育て支援パスポート事業」について、これまでの成果や今後の取組について、大臣の所見をお願いしたいと思います。
(答)子育てに優しい社会の実現のためには、行政、地域、企業、NPO、様々な世代に属する人など、社会を構成する多様な主体がそれぞれの立場で子育てを応援していく姿勢を持っていただき、社会全体で子育て応援の機運を盛り上げることが不可欠です。
 「子育て支援パスポート事業」は地方公共団体が主体となり、企業や店舗の協賛を得ながら、乳幼児連れの外出支援や、子育て家庭に対する各種割引等のサービスを提供するものです。平成29年以降、全ての都道府県が実施をしていて、地域間の相互利用も可能になっています。例えば外出支援だと、授乳やおむつ交換所の提供とか、ミルクのお湯の提供とか、トイレにベビーキープ設置、キッズスペースとか、ベビーカー入店できますとか、そのような案内があります。
 少子化社会対策大綱では、「子育て支援パスポート事業の普及・促進」を重点課題の一つとしているところを踏まえて、内閣府では全ての「パスポート」の図柄が一目で分かるリーフレットを作成し、各都道府県に配付するとともに、SNSで周知を行っています。今年度は広報冊子の内容を動画化してインターネット上で公開するなど、情報発信を行う予定です。
 引き続き子育て世帯を優しく包み込む社会的機運の醸成に向け、政府を挙げて取り組んでまいりますということで、これが今言った、「子育てパスポート」。お持ちでしょうか。私は持っていなかったので、ちょっと損したかなと。これはデジタルというか、スマホでも当然アプリがあると思うので、使っていただければと思います。
(問)「女性版骨太の方針」に戻りまして、全体的に、今年ここをこれはと作ったであるとか、ここがポイントだというところがあれば教えていただきたいです。
(答)この4つの柱をしっかり届けて、全国の皆さんに御理解いただいて進めていくということに尽きると思います。
 例えば、賃金格差の是正といっても目安が分からないので、しっかりとどういう企業がどのくらいの賃金格差があるのだということを国民に見ていただく。義務化をすることによって見ていただく。とりわけ若い人たちにはそれを一つの自分の仕事を選ぶ大きなポイントにしていただき、自分の人生にしっかりこの企業は寄り添ってくれるのかどうかという一つになってくると思うので、企業の方もやはりそれなりに能力のある人たちを、人材を望むのならば努力をしなければならないという、お互いウィンウィンになるように進めていければと思います。
 性犯罪・性被害は、とりわけコロナ禍でいろいろ孤独・孤立も進む中、男女とも精神的につらい思いをしている人が多い中で、やはりどうしても性被害というのは女性の方が多くなります。ですから、そこはしっかりとこういう、特に厳しい時だからこそあえて取り上げて、そして、なくしていくと。そのためには、その事件をなくすというよりも、人権をもっともっと男女が子供の頃から学んで、そして、お互いの違いを差別し合うのではなくて理解し合う。そのようなことができるように多方面の力を借りて取り組んでいきたいと思います。
 目標については、これまでずっとやってきたのですけれども、なかなか到達せず、歯がゆい思いもしていますけれども、しっかりと、だからこそ世界のいろいろな指標で「遅れている」ということばかりが取り沙汰されているので、しっかり順位を上げていくという目標を定めていきたい。
 最後に、女性の間でも賛否があります。男女共同参画の中に男性のことを入れるのはいかがなものかと。「女性のことすらまだまだ十分できていないのに男性のことを考えてどうする」という厳しい意見もありますが、例えば子育てのシーンで、一般的には父と母がいて、父が社会に取り込まれてしまっていて、本来、父、母で1人の子供を見守っていく、育んでいきたいという思いが、社会の昭和な構図で男性のその思いを踏みにじっているところがあります。と同時に、それを満たすことによって、ワンオペである家事・育児を女性から解放することによって、そこに没入していた分、自分の能力の再開発とか、または新たな女性が社会に向かって歩いていけるという、それぞれが得をする話です。男だから、女だからではなくて、それぞれが自分たちの不足、不満に感じていたところを補っていくということで、女性だけで何か成し遂げるということよりも、やはり仲間、パートナーの男性たちをもポジティブにしていくことが大事だということで、新しい視点で、現実的な視点で取り上げたところです。
(問)今回の方針の中で、女性の科学技術分野への登用というのが盛り込まれているわけですけれども、これは先般の「教育未来創造会議」でも第一次提言もあったかと思うのですけれども、その分野への女性の登用支援について、改めて大臣の御所見を伺います。
(答)私、随分前に科学技術担当大臣をさせていただいたことがあって、本当に女性が見えない職場というか、組織だなということを痛感しました。
 その後、いろいろお聞きすると、やはり教育現場の中にも男女差というか、とりわけ工学部、若干危険の伴う実験などをするときは、同じ学生であっても危険だから男性が実験をし、女子学生はメモを取るみたいな役割分担みたいなのができてしまっていて、なかなか女性が主体として活躍できないということがあり、そういうのが長じて、なかなか理工系というのが魅力的に見えない、女性にとって。
 ただ、と同時に、日本の企業はイノベーションのために、そういう科学的技術を大変必要としているのですが、それと併せて、消費者ニーズに合った、科学的技術を用いたイノベーションというのが経済活動にとって大切で、それを担ってくれる女性の人材が枯渇に近いということもあり、数年前から様々、女性がイーブンで実験にしても何にしても取り組めるような環境をつくらなければいけないということで取り組んでまいりました。
 4年前に男女共同参画で、何か具体的にできないかという話になったときに、お茶の水女子大学の室伏学長と出会いがあって、そういう理系女子(リケジョ)というのを増やしていきたいということで、男性にどうしても遠慮してしまうところがあるとするならば、女子大の中にそういうのを作ったらどうかというプロジェクトが持ち上がって、随分お茶の水女子大に頑張っていただいて、今年キックオフ。そういう女子大の中で新規に女性だけでしっかりと科学の学びができるという所を新設していただけることになりました。
 もう既に奈良女子大にもそういうものがあって、男女共学とか、女子校がという区分けは嫌ですけれども、とにかく女性の理系を目指す人たちが一人でも多く学べる所に関われるような後押しをしていきたいと思っています。
(問)話題が変わって恐縮ですが、通常の骨太の関連で1点お聞きしいと思います。地方分権改革の話ですけれども、先般、公表されました骨太の原案に、自治体に対する行政計画の法令等による義務付けを必要最小限とし、策定に当たっては手順や作成方法なども原則自治体に任せるとの政府の考え方が示されました。
 一方、今国会では農業経営基盤強化促進法の改正ですとか、いわゆる女性新法ですとか、かなり大がかりな新たな策定義務なども課されています。
 そこで、大臣として骨太にこの自治体への行政計画の抑制が明記された意味をどのようにお考えになるのかというのが1点で、もう一つ、今後どのようにその実効性を担保していくかという方策についてお伺いしたいと思います。
(答)計画策定等に関しては、4月13日の経済財政諮問会議において私の方から、地方公共団体に策定を求める計画等の抑制、既存計画との統合などの基本原則を確立することが重要と申し上げました。御指摘の「骨太の方針」の原案において、この原則が盛り込まれたこというのは、地方分権改革の観点から大変意義深いことだと認識しています。
 今後、この基本原則が閣議決定されることによって、法令や通知の策定段階で各府省はこの原則に則って計画等をできる限り新設しないようにするとともに、その内容や手続は地方の判断にできる限り委ねていく期待をしているところです。
 内閣府としてもこの原則がしっかりと遵守されるよう、法令協議等の段階で必要な意見を出し、調整を行ってまいります。引き続き計画策定等に関し、地方の自主性及び自立性を高めるための検討をさらに進めてまいりたいと思います。
 これはずっと取り組んできたこともあって、地方分権と言いながらも、まだまだ道半ばと言われる中にあって、これは極めて地方の負担になっていた象徴的な仕事の一つでありますので、こういうことが変わっていくことは真の地方分権の新たな一歩を築けることになるのかなと思い、担当としては大変嬉しく、皆さんにお伝えしたく思います。

(以上)