西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年10月4日

(令和3年10月4日(月) 9:53~10:22  於:中央合同庁舎8号館1階S101・S103会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 先ほどの閣議で辞表を提出いたしました。一昨年の9月に経済再生担当大臣、TPP担当、それから全世代型社会保障改革担当ということで任命されて以来、2年間にわたりまして、この重要な責任を担ってきたわけでありまして、私自身、全力で取り組んできたということであります。
 昨年の3月6日からはコロナ対策ということで、当初は特措法の改正を担うということで思っていましたが、その後、特措法の運用、それからコロナ対策全般を担当するということで、1年半の間、4度にわたる緊急事態宣言ということで、国民の皆さんにも大変なご負担をおかけしました。非常に厳しい中で対応してまいりましたが、国民の皆さんのご協力を得て今回、4回目の緊急事態宣言も解除することができ、足元の新規感染者の数も昨日1,000人を切るということで、全国の10万人当たりの1週間の新規感染者数も7人、そして沖縄、大阪を含めて全てステージ3以下になったということで、病床も安定的になってきております。国民の皆さまのご協力に改めて感謝申し上げたいと思います。
 私自身はボクシングを学生時代にやっておりましたので打たれ強く、いろんな批判も頂きましたが、とにかく国民の皆さまの命と健康を守るということを最優先に取り組まなければいけない、そんな思いで対応してまいりました。
 ボクシングで例えれば、ご案内のように1ラウンド3分やって1分間休憩ということで、アマチュアは3ラウンドですので、アマチュアで言えば、私自身は1ラウンドが終わって今、1分間休憩、息継ぎをしている印象ですが、プロの世界で言えば、タイトルマッチなどは10ラウンド行われますから、1ラウンドが緊急事態宣言を4回やったとすれば、4ラウンド終わってまた少し休憩をしている、そんな状況なのかなと。いずれにしても、まだまだラウンドは続くということだと思います。どこかで本当に決着が着く、KO勝ちがない限りは。これはワクチン接種も進んできたし、それから治療薬もロナプリーブをはじめ出てきておりますし、また、経口薬も年内の承認を目指して国内外で取り組まれていますので、そうした画期的なものが出てくればKO勝ちということになるわけですが、かなり闘いのダメージは少なくて済むようにはなってきていますが、まだまだラウンドは続くという前提で対応していかなければいけないのだろうと思います。
 まさにコロナというものがどういうものか分からない中で、どういう対応か経験もない中で、明確な答えが用意されているわけではありませんでしたので、その時々の状況に応じて専門家の意見を聞きながらその時のベストと思う対応をとってきたわけであります。
 その都度、感染は国民の皆さんの協力で抑えられてきていますが、当初から申し上げているとおり、感染は何度も繰り返す。ハンマー&ダンスという言い方を最初の頃から専門家の皆さんに教わって申し上げてきました。繰り返される、そして大きくなればハンマーで叩く、その後もダンスは何度も起こると、大きくなる時は叩く、この繰り返しだということで教えられてきましたが、そのことを申し上げてまいりました。
 ただ、国民の皆さまからすると、また緊急事態宣言かということで、何度も繰り返される、いわば自粛疲れや緊急事態宣言疲れのような、そうした思いを持っておられる方もたくさんあると思います。ただ、感染が増えてくれば厳しい措置をとって、収まってくると解除して、そうすると活動が活発になりますからまた増えるという、この繰り返しは避けられない、ラウンドは何度もこれからも続くということであります。
 その都度、厳しい措置をとると経済を動かさなければいけない事象者のサイド、経済のサイドからは批判を受ける。また、経済を動かして感染が増えてくると、今度は感染症の医療の皆さん方からは心配の声や批判を受ける。そういう意味で、何をやってもいろんなサイドからいろんなご意見、ご批判を頂く。国民の皆さんに100%納得いただける解がなかなか無い中で取り組んでまいりました。
 これも申し上げてきましたが、特措法に強制力はないということも含めて、ロックダウンのようなことはこれまでできなかったわけであります。そうした中で、繰り返さざるを得ない。増えてくると、緩やかな強制力ですが、そこで叩いて減らす。減ってくれば解除する。また増えるという。その都度、いろんな批判を頂きましたが、私自身は、もう憎まれ役となっても、とにかく正しいと思うこと、その時のベストなことを対応していく、そしてそれをしっかり説明するということで、ある意味で批判を一手に引き受けるその覚悟で取り組んでまいりました。多くの皆さんのご協力もあって、そうした中でもこうして4回目の緊急事態宣言も解除できたことを本当に感謝申し上げたいと思います。
 しかも、諸外国に比べれば、特に欧米と比べれば、亡くなられた方の数も圧倒的に少ないわけでありまして、医療従事者の皆さんが本当に感染リスクを抱えながら真摯に対応されたこと、本当に献身的に対応されたこと、改めて医療従事者の皆さんにも感謝申し上げたいと思います。
また、緊急事態宣言のたびに事業者の皆さんには様々な時短などの要請を行ってまいりました。国民の皆さんにも自粛ということでステイホームなども呼び掛けてまいりました。お願いしてまいりました。多くの事業者の皆さんが本当にご負担をおかけして厳しい状況になるということ、改めてご協力に感謝申し上げたいと思います。その支援策の在り方も、やはり事業規模、影響の度合いに応じてできるだけ迅速に必要な資金をお届けする、支援をお届けする、こういったことも私自身、忸怩たる思いもあって、まだまだやれることはあると思いますので、是非新政権の下で取り組んでいただければと思いますし、私自身も党のほうに戻って党の側からサポートしていきたいと思います。
 その上で、先般も申し上げましたが、コロナについて言えば、何度も今後も波は起こる、流行は起こるという前提で対応しなければいけないと思います。
 幾つかの課題を申し上げれば、第一に医療提供体制を、やはり感染が増えてきたときにしっかりと病床を確保できる、医療提供体制を安定的なものにできる仕組みをさらに追求していかなければいけないと思います。この冬に備えて、臨時の医療施設など用意していただいたものを、いつでもそれがまた使えるような、そしてその時に人員をどうローテーションなりで対応するのか、こういったことも含めてそれぞれの県でしっかりと準備していただきたいと思いますし、国として財政面を含めて引き続き支援していきたいと思います。
 2つ目の課題は、先ほども申し上げた緊急事態宣言の慣れというもの、自粛疲れというものがありますので、今後も増えてきた時に同じように緊急事態宣言を発出しても、なかなか国民の皆さんに理解いただけない面もあるかと思います。もちろん、次なる波への備えということで非常に関心を持っていただいていますので、引き続き、人出は多く出ているという報道ですが、マスクをされて感染対策は徹底されているという声はよく聞きますので、そうした中で、関心は高まっている、次なる波へ備えなければいけないという思いを持っていただいていると思います。しかし、緊急事態宣言というものを発出した時に皆さんに協力いただける、理解いただける、そうしたことを考えていかなければいけない。強い措置をとった時の支援策と併せて、いわば緊急事態宣言の再定義、こういったものを追求していかなければいけない。法改正も視野に入れた対応、こういったものが必要になってくると思います。
 3点目が、実証が始まりますが、ワクチン接種証明、または検査の陰性証明のいわゆる「ワクチン・検査パッケージ」、実証を踏まえながら、どういった具体的な制度設計をしてくのか。感染拡大を抑えながら、他方で経済社会活動、日常生活との両立を図っていく、こうした仕組みも詰めを急がなければいけないと思います。
 そして4点目が、ワクチン接種が進んでも、「ワクチン・検査パッケージ」をやっても感染が増えてきているという海外の例からすれば、やはり3回目の接種、これへの準備を進めなければいけないということだと思います。
 そして5点目、今回のワクチン・治療薬、やはり国内に様々な技術はあるわけですので、国内での開発・生産、これをもっと進めていく。こうした枠組みは既に道筋はできていますが、さらに一段進めていく、そうした仕組みも必要だと思います。
 そうした課題が幾つもありますが、与党の側から、与党の一員として私の経験も含めてしっかりとお支えしていきたいと思います。
 経済については、年内にコロナ前の水準に戻るという見通しを立て、それに向かって徐々に回復してきているものと思いますが、ここにきて幾つかの新たな課題も明らかになってきています。
 元々の半導体不足に加えて、東南アジアでの感染拡大に伴う部品供給の停滞、それから中国の恒大集団の問題、それからアメリカの物価動向、それから金融政策の動向。こういった様々な要因にしっかりと目配りしながら日本経済を民需主導で安定的な成長軌道に乗せていく、これが何よりも大事であります。岸田総裁は数十兆円規模の経済対策を年内に組むと表明されていますので、こちらの面でも党の側でしっかりと支えていければと考えております。
 そして、もう1点申し上げればTPPであります。私自身は、TPPの最初の、日本が入る交渉の時から党の側で、あるいは甘利大臣の下の副大臣で交渉にも実際に携わりましたので特段思い入れがあるわけですが、今回、イギリスとの加入交渉の部会の1回目ができたということで、加入交渉が始まったということで、この高いレベルのルール、これをアジア太平洋からより広がりをもっていけるということで、大きな前進ができたものと思っております。
 他方、先月、中国、台湾から加入申請が提出されたところであります。TPPはまさにハイ・スタンダードなルール、これを広げていくということでありますので、これを下げることはなく広げていかなければいけません。そして、公平・公正なルールに基づく貿易投資、経済のそうした体制をつくっていくということが大事であります。
 同時に、コロナを機にまた世界経済が大きく変動している中にあって、経済安全保障の視点を含めて、より戦略的な対応が求められているだろうと思います。このことについても引き続き党の側からしっかりとサポートしていければと思います。
 最後に、よく私は講演でも申し上げていますが、細菌の有名な学者でありますパスツールの言葉に、「幸運の女神は準備をした者だけに宿る、準備をした者にしか微笑まない」という言葉があります。研究に研究を重ね、鍛錬に鍛錬を重ねた、稽古に稽古を重ねた、そうした人に、準備をしっかりやった人に幸運の女神は訪れるということであります。日本の経済社会、コロナも含めて大きな今、変革の時、転換点でもあります。50年後、100年後を見据えた社会保障改革も必要であります。まさに今、知恵を結集し、総力を挙げて政策を練り上げていかなければいけない、そういう時だろうと思います。しっかりと日本の将来のために議論を進め、政策を練り上げていく、準備を進めていく、これが大事だと思います。与党の一員としてしっかりと支えていければと思います。
 最後に、就任時から今回を含めて584回の会見を行ったことになります。時に土日の視察もありましたし、また、今年は、一生覚えていると思いますが、今年1月2日に首都圏の4人の知事と3時間以上にわたって議論し、そして一緒に、あの時はぶら下がりのような格好でしたが会見を行いました。そうした休日にも皆さま方にはお付き合いいただいて、改めて感謝申し上げたいと思います。
 そして、会見と併せて国会答弁も、就任時から数えますと2,795回の答弁を行ったようであります。この会見もそうですし、国会答弁もそうですが、できる限り丁寧に分かりやすくと思って説明をしてまいりましたが、十分にお伝えできなかった面もあったかもしれません。いろんなことを反省しながら、また、そうした経験も将来に生かしていきたいと考えています。
 コロナをはじめ、経済の部局もそうですが、職員の皆さん、スタッフの皆さんには、特にコロナの関係の皆さんにはそうした祝日、休日も含めて、時には深夜まで都道府県の調整や専門家との議論、あるいは対策、様々な議論を行ってまいりました。コロナというこの経験のない国難の中で本当に私を支えていただき、また、献身的に対応してくれたこと、改めてスタッフ、職員の皆さんにも感謝申し上げたいと思います。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)大臣、任期中、大変お疲れさまでございました。大臣は任期中、度々、コロナの対応とそれから経済財政の両方の担当者としての複雑さというのを述べられていたと記憶しております。今改めて振り返って、これらの分野を両立することの難しさですとか、今後そうした対応はどうあるべきかというお考えをお聞かせください。
(答)ご指摘のように、今も申し上げましたとおり、複雑な思いを持つ場面はもちろんありましたが、私は両方担当して良かったなと思います。これは全体の目配りが、経済社会全体を見ながら対応していくという面では、次の方も恐らく両方とも担当されると思いますが、より大所高所からそうした視点で対応できるという意味では、世界であまり例がないのですが、私は良かったと思っています。
 もちろん、皆さんにも毎週のように紹介したように、消費がどのくらい出ているかという毎週の民間のデータもお示ししています。消費が低くなるということは自粛が進んでいる、ステイホームが進んでいるということで、うれしい反面、経済の側から見ると、それは消費が落ち込んでいるとも見えますので、非常に厳しい。そういう意味で複雑な思い。逆に、消費が活発に出ると、外出が増えて活動が活発になっている、これはまた感染が増えてくるなという、コロナ対策の担当の側から見ると複雑な思いをするわけであります。
 ですから、次の方も恐らくそういう複雑な思いをしながらでありますが、だからこそ、そこで経済のどういう対応をしたらいいのかという対策が、判断ができるわけでありますので。あるいは、消費が進んできた時に、どういったコロナ対策をやらなければいけないのか、こういったこともコロナ対策の側からも判断して対応ができますので。そういう意味で、全体を見られるという意味ではこの間、両方を担当させていただいたことは、私はある意味で良かったのかなと思います。もちろん、厚労大臣がおられますから、感染のところの特に病床のことなどは、そこはその観点から見られますし、事業者の側は国交大臣や経産大臣がおられますので、その側から見るわけですが、やはり内閣府、内閣官房全体で経済財政運営全体を見ているという立場から言うと、コロナ対策も併せて対応することで、より迅速に判断ができるものと、明確な判断、正確な判断ができるということの利点はあったかと思います。
 その上で、先ほど申し上げたように、やや特措法が中途半端な、つまり緩やかな強制力しかないものですから、強い措置といっても国民の皆さまになかなか理解いただけないという面もあり、プラス、法律上もなかなか強い措置で効果的に短期間でということにできない面があったわけであります。そういう意味で、特措法の改正というものは当然視野に入れて今後、議論していかなければいけないと思いますし、その時に併せて支援策、強力な支援策を同時に行うということで、そこで国民の皆さん、事業者の皆さんの理解を得て短期で抑え込む。仮にそうだとしても、またゼロにはならないので、オーストラリア、ニュージーランドやヨーロッパを見ても、ロックダウンをやってもまたもちろん増えるのですが、長い期間ずっと弱い措置を続けていくということのデメリットは大きなものがあると私は思います。
 そうした思いを政府内で皆さんに理解していただくことが、なかなか私の力不足もあってできなかった面もありますので、党の側からもしっかりサポートしながら、この4回の緊急事態宣言の経験を是非次の政権で生かしてもらえればと思います。
(問)大臣ご苦労さまでした。3月6日以降、100日間の記者会見を含めて、私は国難だと思うから、私はもう64になりましたが、従軍記者のようなつもりで大臣にずっと聞かせていただきました。
 私から言わせると、大臣は100ラウンドぐらい闘って、私の印象だと2回ぐらいスリップダウンしたけれど足は決して止まらなかったと。これはタフであり、またこの経緯というのは、やはり歴史的な時期を、まだ終わっていませんが、やられたということは、やはり後世に残して。新大臣、新政権が健康危機管理庁を作るならば、尾身さんも含めまして、その教訓を生かすことが大事なのだろうと思っておりますが、まだ終わってはいないですが、しかし、ある程度出口が見てきたように思いますが、この間の500何十日の期間をどういう形で生かしていきたい、そのように思われているか伺いたいです。
(答)4回の緊急事態宣言はそれぞれ特徴があり、それぞれ対策もいろんな違いがありました。当然、相手側、敵も変異してスタイルを変えてくるわけです。アルファ株になり、デルタ株になりと。ボクシングで言えば、いろんな変幻自在の相手でありますので、それによってこちら側も闘い方を変えていかなければいけないということであります。これは、これからもまた変異が起こる可能性もありますので、それに備えなければいけない。
 ですから、一つには、とくかくもうこのラウンドで終わるはずだと思わない。もちろん、国民の皆さまには、何とか緊急事態宣言を最後にしたいという思いで我々もやりますし、特にワクチン接種が進みましたのでかなり重症化を抑えられるということにはなっていますから、今回は中等症というところに焦点が当たり、酸素ステーションとか、入院待機ステーションとか、臨時の医療施設とか、こういったことが特に必要になったわけでありまして、闘い方が変わっていくわけです。特に重症化は抑えられるということがありますので、そういった今回の4回の経験を生かして、何とか、本来なら新たな強い措置をすることなくいければいいですが、海外の例を見ていると、やはり流行は起こっていますから、常に最悪の事態も、いろんな事態も想定して対応していかなければいけないということだと思いますので。
 何より、先ほど申し上げた課題の一番は医療。医療をとにかく、感染が増えてもかなり重症化を抑えられますから。といっても、自宅療養の方があれだけ増えたわけですので、そういった仕組みを含めて今回の経験を生かしていかなければいけない。
 そして2つ目は、医療ももちろん最悪の事態も想定した用意をしなければいけない。そして、特措法の対策の在り方についても、そして支援の在り方についても、そうした4回の経験を踏まえて、さらに敵も姿を変えてパンチを繰り出してくるということを想定した対策を打たなければいけないということだと思います。
 もう先ほど申し上げた課題は繰り返しませんが、長丁場になることも含めて、そして様々な事態がさらに起こることも想定した、そうした備えをしていく、そして4回の経験をしっかりと生かしていくということだと思います。特に今、この時期はかなり下がっていますし、去年も少なかった。季節が良いからということもあると思います。換気をしっかりとやる季節でありますので、風通しが非常にいい時期ですので、感染も落ち着いて、全ての都道府県で感染者の数もステージ3レベル以下に落ちてきた、病床も30%を切るような、ステージ3から2になるような状況になってきていますので、この時期に次への備えをしっかりとやることが大事だと思います。
 そういう意味で、目の前の準備、これもパスツールの言葉で、ちゃんと準備した人には女神が微笑むわけでありますので、まず短期のこの冬への備え、そして次はやや中長期的な備え。法律の改正も含めて、支援策のさらなる充実も含めた、そして議論を進めていくことが大事だと思います。
 党の側で今回の経験を私の立場で、どういう立場になるか分かりませんが、しっかりとサポートしていきたいと思います。
 長い間、本当にありがとうございました。

(以上)