西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年9月24日

(令和3年9月24日(金) 10:53~11:34  於:中央合同庁舎8号館1階S101・S103会見室)

1.発言要旨

 私から、冒頭2点。1つはTPPに関して、もう1つは経済財政白書について、ご報告したいと思います。
 TPP11につきまして、これも2点報告があります。まず、今週9月28日から、英国のTPP11の加入に関する作業部会、第1回会合がオンライン形式で、首席交渉官レベルでの会合が開かれる予定であります。日本からは、香川首席交渉官が出席し、議長を務めます。
 この点につきましては、本年6月2日に、第4回TPP閣僚委員会で英国の加入手続きの開始を決定して以来、英国においてはTPP11の義務を順守するためにそれまでになされてきた努力を証明し、また国内の法令などの必要な追加的変更を特定するための作業を精力的に進めてきました。日本として、作業部会の議長として、英国および参加国と緊密に連携し、第1回作業部会の開催に向けて、必要な調整を進めてきたところであります。9月1日の第5回のTPP閣僚委員会で、1カ月程度を目途に作業部会開催に向けて努力をするということを確認したところですが、その後の調整を経まして、今般、作業部会を28日に開催するということに至りました。
 今回の会合におきましては、英国から同国の行ってきた取組について説明を聴取する予定にしております。日本は議長ですので、副議長であるオーストラリア、シンガポールをはじめTPP11参加国と協力をしながら、この加入プロセスが協定のハイレベルを維持しつつ円滑に進むように、しっかりマネージしていきたいと思います。日本として、守るべきは守り、攻めるべきは攻め、日本の国益にとって最善の結果が得られるように取り組みたいと考えております。
 それから2点目です。9月22日、台湾からTPP11への加入を正式に要請する旨の書簡が、寄託国であるニュージーランドに送付されたという連絡が、我が国を含むTPP11参加国に連絡がありました。
 台湾は我が国にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係を有する極めて重要なパートナーであります。また、かねてからTPP11への加入要請に向けた様々な取組みを公にしていると承知をしております。そのような台湾が、今般、加入要請を提出したことを、我が国としてはまずは歓迎したいと思います。
 TPP11は市場アクセスの面でもルールの面でも極めて高いレベルの内容となっております。蔡英文総統が、全てのルールを受け入れる用意があるとのツイートをされていまして、私もそれを見ましたが、我が国としては加入要請を行った台湾が、こうした高いレベルのTPP11のルールを完全に満たす用意ができているかどうかについて、しっかりと見極めていく必要があると考えております。
 いずれにしても、加入要請を提出したエコノミーの扱いにつきましては、他の参加国ともよく相談する必要がありますが、我が国としては戦略的な観点、そして国民の理解も踏まえながら対応していきたいと考えております。
 それから、経済財政白書についてであります。ポイントのみを申し上げます。あとで資料をお配りしますので、また報告書自体も見ていただければと思いますが、今回の報告書、副題は「レジリエントな日本経済へ:強さと柔軟性を持つ経済社会に向けた変革の加速」といたしました。
 経緯からいうと、リーマンショック、東日本大震災後に6重苦ということで、国会でもよく与野党間でも議論になりました。様々な経済に対する6重苦と言われたわけですが、それぞれ解消された面、それから、例えば環境規制、グリーンについては、新たな成長の源泉になってきているということであります。こうした評価をしております。
 6重苦を経て、去年の経済財政白書でも書きました。私も何度か申し上げましたがコロナによって様々な課題が浮き彫りになったということで、デジタル化やグリーン化の遅れ、あるいは女性や若者などの弱い立場の方々へのしわ寄せ、あるいは東京一極集中、などが浮き彫りになったわけでありますが、これらについては一定の進展が見られております。
 例えば、去年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言しましたし、今年の9月にはデジタル庁ができました。この間、ご紹介してきたように、民間でもデジタル化やグリーン化、あるいは研究開発など、未来に向けた投資、これについての極めて強い意欲が見られております。官民ともに変革に向けた大きな第一歩を踏み出しているものと思います。
 テレワークも基本的に、去年の12月に一旦減りましたが、その後は増加傾向にあります。家族と過ごす時間の変化も、増加したと答えた割合は一旦減りましたが、また増えています。
 首都圏の持家着工戸数も、昨年前半はコロナで減りましたが、今年になって千葉、埼玉、神奈川、郊外での一軒家、持ち家着工戸数が増えております。また、戸建分譲も、これは特に第2四半期は、千葉県で増えていますが、テレワークや家族と過ごす時間なども意識した傾向が出てきているということであります。
 オフィスの空室率も非常に上がってきておりまして、テレワークがまだ完全ではないにしても、定着してきていることも分かります。
 他方で、デジタル化については非常に遅れていたわけですが、先ほどのようにデジタル庁を開設し、民間でも投資が進んできております。
 女性の就業率も、65歳以上、あるいは25歳~64歳も少し改善傾向が見られます。15歳~24歳は少し落ち込んでおり、恐らく飲食店などのアルバイトなどの結果ではないかと思いますが、いずれにしても改善傾向は少し見られています。
 現金給与総額をみても、パートの方の特別給与が増えていまして、去年の年末もそうですが、同一労働同一賃金の取組が中小企業でも今年から実施されておりますので、そういう意味で処遇の改善が進んできているものと思います。
 GDPギャップと失業率の関係ですが、かつてはGDPギャップのマイナス幅が拡大すると失業率が上昇したわけです。こういう線に沿って動いていたわけですが、去年から今年にかけてはこのレベルで留まっています。GDPギャップがマイナス4%を超えているにもかかわらず、失業率を抑えている。つまり雇用調整助成金等で、失業率が上がらないように雇用を維持したわけです。その結果が出ているわけですが、これからの課題として、維持していくだけではなくて、成長分野に労働移動を円滑にどのように進めていくかという新たな課題が出てきているわけであります。
 感染症の影響が多い、特にパートタイムの若い方々や女性、高齢者、フルタイムの若い方々にしわ寄せがいったわけであります。
 他方で東京一極集中について、東京は、19年までの5年平均との差でいうと、転入超過人口が大きく減少しています。他方、神奈川や他の県で少し増加が見られるということであります。
 地方への移住の関心も非常に高くなって、特にテレワークができるということも大きな関心理由の一つになっています。
 こうしたことを経て、今の時点で明らかになった3つの課題。これはまさに感染対策と日常生活の回復の両立が挙げられます。まだ緊急事態宣言の下で消費の回復が遅いわけですが、今後、ワクチン・検査パッケージを実施していくことによって、この両立を図っていくと。一例ですが、この両立での課題が挙げられます。
 それからこの間、最近特に申し上げている半導体不足や東南アジアの感染拡大により部品が入ってこないことなどから、サプライチェーンをさらに強靭化する必要性が出てきています。
 それから、先ほど申し上げた通り、雇用を維持してきた、さらには倒産件数も過去50年来の最低水準に非常に低く抑えてきていますが、事業を維持していく、雇用を維持するだけではなくて、新たな時代に向けた再構築、それから人材の円滑な移動。こうした変革、改革が必要となってきているという、この3つの課題が浮き彫りになってきています。
 成長率を見ても、これはやや長期のトレンドで見ていますが、この間、やはり消費が低迷しており、成長率をしっかり確保していかなければいけないという課題です。
 それからサプライチェーンの見直しの動きについて、全体で見ても、まだ検討していないという企業が7割近くあるわけでありまして、特に中小企業が非常に高い。大企業でも4割は検討していないということで、強靭化について進めていかなければいけないということであります。
 それから設備投資と経常利益の関係。経常利益が増えると、当然、設備投資は増えるので、こういったカーブになるはずですが、これがかつてよりも低いレベルにあり、現時点でこの辺ですが、予測値はこのぐらいになるのですが、やはり経常利益を上げて設備投資を増やすという方向にいかなければいけないということであります。
 企業債務も、全産業でこれだけ積み上がっています。この間、事業を守るということで無利子無担保の融資を進めてきたわけですが、特に飲食業や宿泊業で非常に高くなっています。これを消費の回復に伴って減らしていくということと、事業再構築をどう図っていくかということが大きな課題であります。
 貸出主体別にどのぐらい貸し出しているかを見ると、2020年3月末から2021年3月末にかけて民間金融機関は信用保証が付いたものが増えています。それから、政府系金融機関も増えているわけですが、実は民間金融機関が自分たちの判断で、保証なしに、自分たちがリスクを取って貸し出しているというものは減っています。みな保証が付いているから貸し出している。あとは政府系金融機関が貸し出している。
 つまり、民間金融機関がやはりリスクを取って、地域の産業の事業再構築を進めていく、新たな産業を生み出していく、そういう部分が欠けているわけでありまして、地銀の再編なども含めて、民間金融機関にやはりリスクを取って対応してもらうと。しっかりと目利きをして、そういう人材を育てて地域の産業を育てていく。そういう視点もある意味大きな変革の一つとして、民間金融機関の役割も課題の一つであります。
 そして、リリエン指標という、産業間の労働移動がどのぐらい活発か、成長産業をはじめとしてどのぐらいの労働移動があるのかを表す指標をみると、2000年代前半が非常に高かったのが2020年にかけて落ちてきております。このところ雇用調整助成金等で維持しているので低くなるのですが、今後、成長産業に活発に移動が起こる、円滑に失業なき労働移動が起こる、これを進めていかなければいけないということであります。
ICT人材の不足もアメリカと比べると顕著でありまして、例えば化学工業をみますと、アメリカは研究者に占める博士号保持者の割合が25%程度に対して、日本は7~8%しかいない。今、研究者の人数の規模が円の大きさが違います。医薬品製造業もアメリカは25%が博士号を持っている。従業員に占める研究者の割合も高く、円も大きい。日本の医薬品製造業は、他の産業と比べると高い方ですが、アメリカに比べるとまだ低い。
 つまり、やはり研究力、研究者の人材育成をもっともっと進めなければいけない。博士号のある人の就業も進めなければいけない。それからICT人材も足りてないというところが圧倒的に多いわけでありまして、こうしたことを進めなければいけないということであります。
 雇用形態について見ましても、確かに女性の正規雇用者が増えています。他方、非正規の方が減っておりまして、これは同一労働同一賃金などの影響もありますから、正規にしようという動きも出てきています。これから更に社会保険の適用を拡大していきますので、令和4年の10月からは101人以上の企業に、令和6年度の10月からは51人以上の企業に広げていくわけで、そうしたことも含めて正規化が進んでいます。他方、非正規の方が減っていまして、家庭の事情、時間の都合などで正規ではなかなか働けない方がおられます。そういった方々の雇用が失われている面もありますので、この非正規の方々への職業訓練を含めてどのように対応していくか、労働移動をどうしていくか、これも大きな課題だと思います。
 産業別に見ても、やはり宿泊・飲食、生活関連サービスでは非正規雇用が減っておりまして、正規も減っている。他方、医療、福祉などは女性を中心に非常に増えている。情報通信でも正規雇用が増えているということでありまして、どのように円滑に労働移動を進めるかというのが大きな課題であります。
 そして何よりデフレからの脱却。今、GDPギャップが22兆円ある中で、何とかコロナからの危機を乗り越え、デフレに戻さないということが何よりの大きな課題であります。
 こちらが物価上昇率で、こちらがGDPギャップです。本来、GDPギャップが無くなってくると物価が上がり、各年代ともこの方向なのですが、物価の上がり方が非常に鈍くなっています。1980年代から90年代前半のように、GDPギャップがプラス2%なら、かつては2%の物価上昇があったわけです。しかし今は、2%になってもやっと0.何%プラスになるぐらいですので、やはりデフレ圧力が非常にありますから、これを上に上げていかなければいけないということであります。
 直近の日米の物価動向を見ても、アメリカは非常に上がっています。これが一時的かどうかは大きな議論があるところですが、経済が非常に回復する中で物価が上がってきている。日本の場合、携帯料金の値下げなどもありますので、政策的な効果、それから去年はGoToなどもやりましたので、その分の効果もあって下がっており、それらを除いてみても、物価上昇率が非常に低い。長年のデフレが染み付いているということであります。マイナスのGDPギャップもまだ非常に大きいということです。
 単位労働コストも日本の場合は低い。つまり、賃金も、生産性も上げていかなければいけない。デフレーターもマイナスになっていることであります。
 労働生産性と賃金ですが、日本の生産性は上がってきていますが低い。平均賃金も低い、最低賃金も低いということで、今回、さらにこの10月から引上げをするわけであります。
 これが単位労働費用ですが、労働生産性要因がずっと押し下げに寄与しているわけです。単位賃金要因は、賃上げがこのところ続いていますので、製造業・非製造業ともに少し上がってきています。
 それから企業側から実質資本生産性をみても、最近まで実質付加価値の増加が営業余剰、つまり内部留保に回されてきた一方で、実質賃金はこのところじわじわと上がってきていますが、不十分。やはり企業には未来への投資、設備投資、それから人材への投資、これをしっかりやってもらわなければいけないということであります。
 というようなことを、今回、経済財政白書で分析をしておりますので、ポイントのみを今日は申し上げましたが、是非ご覧いただきまして、また様々な今後の議論に資するように対応していきたいと思います。
 それから最後に、本日午後、中央区にあります石川島記念病院を訪問いたします。来週から、新たに新型コロナ病院としてコロナの患者さんを受け入れるということで、視察をさせていただく予定にしております。
 それから夕方には、在宅医療についての意見交換会を開く予定にしております。悠翔会の理事長であります、在宅医療に取り組んでおられる佐々木先生と、尾身先生と一緒にヒアリング、意見交換を行う予定にしております。医療の状況についてしっかりと見ていきたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)今回の白書についてですが、成長に向けた今後の課題として、DX、それから脱炭素、グリーンの取組みを強化していく必要性があると強調されておりますが、こういった分野で、今後、日本の企業が具体的にどのような取組みをしていくことを求めていきたいとお考えでしょうか。
(答)今も申し上げましたが、2つあります。1つは現預金が二百数十兆円積み上がっている中で、とにかく投資、未来に向けた投資。これはデジタルもグリーンも、そして人材です。労働分配率を上げていくこと、賃金を引き上げていく中で、人材を育てていく、そうした投資、これを是非増やしていただきたい。
 設備投資計画を見ますと、非常に強い投資意欲は感じています。企業側で、コロナを機に新しい時代が始まってきているということを強く感じておられるのだと思います。しかし、デジタルやグリーン、そして人材への投資。先ほど申し上げたように、アメリカとの比較をしていますが、欧米に比べて博士号を持った人が少ない、研究者の数が少ない。こういったことを含めて付加価値を生み出していく。そういった人材を是非採用していただきたいですし、人材の投資も増やしていただきたい。とにかく設備投資、人材、これらの投資を増やしていただきたいというのが1つです。
 2つ目は、まさに新しい時代が始まっていますので、事業の再構築が必要です。この1年半は無利子無担保融資、そして雇用調整助成金でとにかく雇用を守る、事業を維持する。我々もそれに取り組んできました。その結果、倒産件数も低い、失業率も先進国の中では最も低い水準を維持しています。しかしながら、時代が変わってきており、テレワークが少しずつではありますが定着をしてきた。東京一極集中から少し郊外へ、あるいは地方へ、こうした動きが出てきています。そうした中でデジタルやグリーンへの対応を含めて、新たな事業を興していく、あるいは事業を再構築していく、そのために人材を育てていく、新たな人材を採用する。そうした取組みを是非企業には変革を進めていただきたい、事業再構築を進めていただきたいと思います。
 その上で政府としては、投資をしていこう、人材を採用しよう、新たな事業に挑戦しよう、事業再構築を行っていこう、そうした取組みに対して全力で応援をしていきたいと考えています。
(問)行動緩和の実証実験に関して報道が出ていまして、全国10カ所程度を指定して、飲食店などで実証実験が行われる方針ということだと思いますが、その検討状況。また、経済を回していくことは重要だと思いますが、この実験の検証という部分はどこが担っていくことになるのかをお願いします。
(答)ワクチン接種証明、あるいはワクチンを受けられない方もおられますので、検査の陰性証明、これを活用した、いわゆるワクチン・検査パッケージと呼ばれるものを導入することで、感染拡大を防いでいく取組みと、日常生活あるいは経済社会活動と両立を図っていく。既に欧米ではそうした試みがスタートしていますので、日本でもそうしたことを進めていきたいと。
 これはワクチン接種率が一定のレベルになったところでやらないと、まだ低い段階でなかなかやりにくい。まだ受けたいのに受けられないという方もおられる、そして検査の体制も整えなければいけないという中で、まずは技術実証から始めていきたいと考えています。
 緊急事態宣言がどうなるかはありますが、解除された地域、解除されるとすればそうした地域から進めていきたいと思っていますが、既に13の都道府県から様々な提案や参加したいという意思表明があります。調整を進めています。10店舗ぐらいとかいう報道もあったのか、今のご質問もそうかもしませんが、13都道府県から複数の店舗で行っていきますので、数はもうちょっと増えると思います。
 それからイベントについても、プロスポーツや音楽コンサートなどで、今、調整をしておりますので、そうしたところでワクチン接種証明 or 検査という枠組みで、実際にどのような課題があるか。これは事業者側にも、それに参加される国民側にも、どういった課題があるのか、こういったことについてしっかりと実証を進めていきたいと考えております。
 その上で、例えばQRコードなども使って、その後、感染があったのか無かったのかなども含めて、しっかりとそれは2週間後、3週間後どうだったのかというようなことも見ていきたいと考えております。
 いずれにしても、今、各都道府県あるいは事業者とも調整を進めているところでありますので、まずはこうした技術実証を進めることによって、将来のワクチン接種率が一定程度まで上がってきた時に、そして検査体制もしっかり整ってきたというところで、課題も整理しながら、こうしたワクチン・検査パッケージを導入することで、感染拡大防止と、そして日常生活あるいは経済社会活動との両立を図っていければと考えています。
(問)台湾のTPPへの加入申請について伺います。中国は先週、加入申請しましたが、台湾の加入申請については、「一つの中国」の原則を守るために強く反発しています。今年、日本はTPP委員会の議長国ですが、こうした中国側の猛反発がある中で、台湾の加盟申請をどう取り扱っていくべきか、考えをお聞かせください。
(答)まず事実関係から申し上げると、中国から、そしてその後台湾から、寄託国であるニュージーランドに参加申請の書簡が届いたということで、TPP11の各国にその連絡がニュージーランドからあったということであります。
 そしてTPP11の協定は、新規加入の対象を国または独立の関税地域と規定をしておりますので、台湾によるTPP11への加入は協定上可能と認識をしております。
 そして、これまで申し上げたとおり、加入要請をしたエコノミーが、まさにTPP11の高いレベルを満たす用意があるのかどうか、これを見極めていく必要があります。いずれにしてもTPP11のルール上は、加入プロセスの開始については、締約国全て、今は8カ国ですが、全てが合意することが必要ということになっておりますので、それぞれの締約国とよく相談をしながら対応していきたいと考えております。
(問)2問あります。1問目はコロナの関係ですが、先ほどおっしゃった実証実験の13の自治体というのは、これは提案があったということで、ここでは基本的に実験をされるという理解でいいのかと、具体的にどういった都道府県になるのか教えてください。
(答)13の都道府県から様々具体的な提案、参加意思表明がありましたので、基本的には、これらの都道府県では実施したいと考えています。これで全部締め切ったということではありませんので、これは17日までに一旦締め切ったというものが、22日時点でこれだけの数ですので、その後もあるかもしれませんから、何かそこで全部閉ざすということではなくて、各都道府県とよく相談をしながら対応したいと考えています。既にもう表明がある大阪、兵庫、北海道、沖縄あるいは福岡など、こういったところから意思表明がありますので、よく調整して進めたいと考えています。
(問)全くテーマが変わってしまいますが、設立から60年の節目を迎えるといったOECDについて1問お伺いいたします。
 最近だとデジタル課税とかに関して重要な決定をしていると思いますが、一方で新興国が台頭してきている中で、今後国際経済のルール構築に関して、OECDにどういった役割を期待するかということと、その中で日本がどういった役割を果たせるのか、お考えをお聞かせください。
(答)OECDが今月末に60周年を迎えるということで、本当に喜ばしいことだと思っています。これまでも、今ご指摘がありましたけれども、まさに質の高いルールづくりなどを通じて、多角的な貿易体制であったり、あるいは持続可能な経済成長に大きく貢献してきたものと理解をしております。評価もしております。
 ご指摘のように、先進国は成熟した経済となって、足元では新興国に比べて成長率が低くなっておりますが、そうは言っても、例えばアメリカなどは非常に高い成長率、今このコロナの回復期で示しているわけであります。まさに今後デジタル化やグリーン化を成長の源泉として、どのようにより高い成長率にしていくのかと、こういったことについて、先進国共通の課題として対応していければと思います。
 もう一つの大きな課題が、先進国、各国共に、日本をはじめとして少子高齢化が進んでいるわけであります。もちろん、アメリカのように一定の出生率を維持している国もありますが、多くの国で高齢化が進み、社会保障費が非常に大きくなってくる、これに対してどう対応していくのか。そのためにも、できるだけ高い成長率になるように取り組まなければいけないわけですが、デジタル化やグリーン、こういったものを活用して成長率を維持する、あるいは、より効率的な政府を作っていく。こういった共通の課題について、政策協調もしながら対応していければと思います。そういう意味で、世界の英知を結集して政策協調を行っていくというOECDの役割は、引き続き高いものがあると思っております。
 そうした中で、日本はアメリカに次ぐ第2の拠出国でもありますし、今申し上げたような課題、生産性を上げ、成長率をどう高めていくのか、それから高齢化に対して社会保障費についてどのように対応していくのか、まさに課題先進国とこれまで言われてきたように、日本にとって大きなチャレンジがあるわけであります。
 先ほども申し上げましたが、どのように高齢化社会が増えていく中で、一定の消費を維持して、経済成長率を高めていくのか、あるいは労働分配率をどう高めていくのか、さらには事業再構築をどうしていくのか、デジタルやグリーンというものを成長の源泉としていくのにどういった対応が必要か、こういった課題に直面しているわけであります。まさに先進国共通の課題について、日本として、先にそうした課題に直面している国として、より政策的なそうした提案も含めて、英知を結集していく中で、中心的な役割をぜひ果たしていきたいと考えています。
(問)FRBが量的緩和の縮小ということで、物価も5%を超えるような、ワクチン接種や治療薬など様々な動きの中で、やはり回復力とか復元力が先進各国では見えますが。日本は労働生産性が低い、分厚い雇調金や無利子無担保融資によって何か回復力や復元力が劣後しかかっているのではないかと、実はそのように考えている人も多いと思います。これからワクチン進んでいきますが、先進各国のそういう回復力に比べて、日本はやはりここで頑張らないと劣後していくのではないかという危機感をお持ちかどうか、その部分をお伺いしたいです。
(答)去年の経済財政白書、そして通常国会での私の経済演説で、変革へのラストチャンスということを強く申し上げました。まさにデジタル化の遅れによって、いろんな手続きに時間が掛かる、あるいは特別定額給付金の支給についても非常に時間が掛かってしまった。もちろん麻生内閣でやった時より、時間は半分くらいに、3カ月でほぼ全ての人に届けましたが、それでもデジタル化で、ボタン一つですぐ給付が行えるという状況ではなかったわけであります。
 行政の手続きの遅れ、あるいはテレワークもなかなか進まなかった。はんこを押すために会社に行かなければいけない、あるいは請求書の封を開けに会社に行かなければいけない、郵便で送られてくるわけです。こういった様々な商慣行や取組みについては、私はかなり改善が進んできたと思いますし、民間企業も強い危機感を持ってデジタル化への投資を進めてきているし、意欲を持っておられると思います。そういう意味で、その大きな変革の第一歩は、去年から今年にかけて踏み出されたものと思います。
 ただその上で、短期的に、どのように回復していくのか、先ほどのワクチン接種・検査パッケージをいかに進めていくのか、ワクチン接種率を、若い世代も含めて、どのように高い接種率にしていくのか、こういった当面の課題があります。併せて、ここまで維持してきた雇用や事業、倒産も低くしてきた、これについて、今度は次のステージに来たわけですので、新しい事業再構築、新しい事業を行っていく、あるいは再構築していく、こうした取組みを、多くの企業が意識を持っていると思います。
 事業再構築の中堅企業、中小企業への補助金についても、倍率は非常に高いです。申請は非常に多い。既に数千億円配っています。あと7,000億円、8,000億円弱だと思いますが、これも多くの企業が申請をしてきていますので、中堅企業、中小企業による事業再構築への強い意欲を感じています。
 大企業の設備投資の計画が非常に高い水準であるということを含めて、未来に向かって第一歩を踏み出され、そして将来に向けた方向性が出てきていると思います。ただ、やはり課題があって、先ほどの半導体が足りない、あるいは部品工場のある東南アジアで感染が拡大すると部品が届かない。このサプライチェーンの強靭化も含めて、やはり中長期的に取り組んでいかなければいけない課題はまだまだありますので、今回の白書の副題に書いたように、レジリエントな日本経済、つまり強さと柔軟性を持つ、危機が起こってもそれに対応できる、そういう経済社会にしていかなければいけない。そのために変革の加速ということを付けさせていただいております。一歩踏み出された、そしてそれに向かって進み始めているが、スピード感がまだ鈍い。これを加速していく必要があると考えています。
 欧米に比べてワクチン接種率がまだ低いですが、アメリカとはもう並びましたし、もうヨーロッパ並みになってきますので、これでここから先、ワクチン・検査パッケージを入れながら、官民挙げて変革への加速を行うことによって、私は日本経済、まだ伸び代はかなりあると思いますので、先ほどのOECDの話ではないですが、成長力を高めていく、この努力を是非官民挙げてしていきたいと思います。

(以上)