西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年8月26日

(令和3年8月26日(木) 15:39~16:03  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 月例経済報告でありますが、景気の現状判断は、先月と同様に維持しております。先行きについて、持ち直しの動きが続くことが期待されるということについては、先月と同じでありますが、感染拡大による下振れリスク、この高まりに十分注意する必要があるという点、緊急事態宣言延長あるいは地域の拡大などありますので、その影響をしっかり見ていくということで、警戒感を強めた表現としております。
 そして数字については、もう資料はご覧になっていると思いますので、ポイントのみ私から説明します。私の感じとして「3つの期待と懸念」、これを今回お示ししたいと思っています。経済の見方です。3つの期待と懸念を感じています。
 一つは「活発な消費意欲と感染抑制」。この相互に矛盾する方向性。GDPの発表の時にも申し上げたように、非常に複雑な思いを持っております。
 今回、この年齢別の消費の動向を2019年比で分析いたしました。2021年の4-6月期であります。これを見ていただいたら分かりますように、全体の消費は全世帯平均で見ると▲3.3%。
 これは4-6月期について、家計調査によって見ているわけですが40代以上は消費がマイナスになっていますが、当然全体に外食とか娯楽、宿泊というこの青い部分が非常に大きなウエイトを占めていますが、39歳以下の若い世代は+1.5%と、活発な消費意欲を感じます。
 特に財について、物について、家具とか衣類とか食品を含めてですが、消費意欲を感じますし、いわゆるサービス業(外食、娯楽、宿泊)の部分もほかの世代に比べて、マイナス幅が小さいということでありますので、以前から申し上げているとおり、若い世代を中心とした、非常に活発な活動意欲、消費意欲を感じています。
 これは毎週お示ししている週ごとの個人消費額のデータですが、過去3年の平均。去年は省いていますので、2017、2018、2019の過去3年の消費の幅をこのグレーのゾーンに示していますが、以前からお話ししていますように、去年の緊急事態宣言の時、4月5月、本来なら過去3年、このぐらいの消費があるところを抑えた。これによって感染拡大を抑えたわけです。去年の8月も同様です。夏休みの分で抑えた。
 ところが去年末から今年の年始にかけて、非常に高い消費があって、これで感染が広がったと。他方、1月から緊急事態宣言の下で消費が低く抑えられてきましたが、再び活発になって、4月5月、連休にかけて緊急事態宣言を発出して、低い数字に抑えてきた。ところが、7月に入ってまた消費が非常に活発になってきている。
 この7、8月のところを拡大して見てみますと、7月の連休の時期、22~28日、夏休みが始まった時が非常に高い水準で消費がなされています。活発な消費意欲の影響もあって8月に入って感染が拡大している。
 もちろんデルタ株の影響があるわけですが、感染が拡大し、その後、緊急事態宣言を発出することによって、消費は比較的低く抑えられています。
 本来なら8月の夏休みはこれだけの消費があるところを抑えてきているという点については、一定の緊急事態宣言の効果があるものと思いますが、先ほど申し上げたように、若い世代を中心に、39歳以下の世代で非常に消費が活発、活動意欲があるという中で、全体で平均すると低めになっていますが、感染拡大の裏返し、人流が減らないことの裏返しになっているということであります。
 経済再生担当大臣の立場では、強い活動意欲、消費意欲、経済の潜在的な回復力を感じていますが、一方でまずは足元、感染を抑えなければいけないという。コロナ担当大臣の立場で言いますと、今は我慢してもらって抑えて、これを短期間にすることで、経済を早く回復させるということでありますので、とにかく今は我慢をしていただいて。まだ8月は少し日数もありますし、9月からは学校が始まるところもたくさんあると思いますが、どうぞ引き続き不要不急の外出自粛、人と人との接触を避けるということで、50%、半減を是非お願いしたいと思います。
 二つ目の期待と懸念です。これは「好調な企業業績とアジアの感染拡大」であります。企業収益、上場企業の経常利益については、非常に高い数字になっていることを今回お示ししております。
 前年比で言いますと、前年は低めだったこともあるので、全産業で+238%ということで非常に高い水準。心配されます非製造業でも+129%ですから非常に高い水準。これで見ていただいたら、緑のところも5.2兆円ということで、非常に高い企業収益が見られます。
 こうした好調な企業収益を背景に、さらにまさに時代が新しい時代になっている。デジタル化が進む、グリーンへの対応ということで、設備投資意欲は非常に強いものを感じています。
 これも日銀短観で、全規模を対象ですので、中小企業も含めて+9.3%。政投銀の調査、これは大企業でありますが、+12.6%と、非常に高い設備投資意欲であります。
 特にソフトウエア、これについては中小企業も含めて、全産業で+14.7%。そして大企業に限って言えば+38.9%。デジタル化を一気に進めようという企業の新しい時代に向けた投資意欲を強く感じております。
 今後の経済のけん引役の大きな1つが、この設備投資。まさに私どもがデジタル、グリーン、そして人材、ヒューマン、3つのニューディールで政府が支出をし、規制改革を行い、民間の投資を引き出していく、民間の創意工夫を引き出していく。そうした局面に、もう既に企業のほうは、新しい時代に向けた投資が始まってきているということであります。
 足元、当然このコロナの感染を抑えなければいけないですが、経済の方は次へのスタートがもう始まっている。新しい時代の幕が切られているということであります。こうした動きをしっかりと後押ししていきたいと考えております。
 そして三つ目の懸念を申し上げると、アジアの経済、感染拡大と経済の動向でありまして。これは新規陽性者の数、7日間移動平均10万人当たりで、こちらは先進国、こちらはアジアの国々ということで、同じ単位で見ています。
 先進国、イギリスやアメリカでもかなり増えてきていますが、急激に増えてきているのがマレーシア、タイ、ベトナム、こういったところでありまして。インドはいったん急激に上がったのが今は落ち着いていますが、この背景が、次のページを見ていただくと、ワクチン接種の割合であります。
 先進国では、欧米でだいたい60%~70%接種が進んでいます。日本も50%を上回ってきました。かなり欧米の水準に近づいてきています。他方、アジアではまだタイが28%、ベトナムが16%と、非常に低い水準もあって、急激な感染拡大が見られます。これによって工場が止まったりということがあります。
 アジアの景況感を見ても、インドは回復してきている基調、中国もスローペースであるものの戻ってきている感じがありますが、例えばベトナム、インドネシア、それからマレーシアは急速に景況感が悪化しています。
 そして例えば日本の自動車産業で見ますと、日本の自動車産業の部品輸入がどのぐらいあるか、どこからどの程度輸入しているかということを見ますと、輸入のうち36%はこのアジアからであります。
 中国を除くアジアからということで、東南アジアを中心として感染拡大が見られる中で、このサプライチェーンが止まってしまう、工場の停止の動きがあります。部品が入ってこないということが考えられます。
 今日は自動車産業の例を挙げましたが、アジアに展開している日本の企業が、このサプライチェーンに与える影響を、これを十分に警戒していかなければいけないということであります。
 もちろんそれぞれの企業は代替の調達、代替生産を含めて、調達・確保に努めていると思いますが、アジア全体に広がっている日本の自動車産業のサプライチェーンの中で、こうした警戒感が必要だということであります。
 世界経済、企業収益は非常に好調でありますが、アジアでの部品調達を含めたサプライチェーンへの影響が懸念されるところであります。
 3点目、期待と懸念。期待は、倒産件数が非常に低く抑えられています。他方、債務残高が高まっていることであります。
 倒産件数、7月は476件。昨年から非常に低い水準で推移をしておりまして、毎年の月平均でだいたい700件弱ぐらいの水準ですが、このところ無利子・無担保の融資もあって、非常に低い水準。
 7月は7月として過去50年間で最も低い水準であります。倒産を引き続き低い水準で抑えてきています。これは私どもの飲食店への協力金もあります。また、無利子・無担保の融資、そして宿泊施設などにも、国から500万円の支援プラス、県が上乗せを行っていますので、それなりの規模の施設であっても、感染対策で過去に使った費用も含めて支援を行ってきておりますので、そういったものを通じて、倒産は低く抑えていっていますが、他方、企業債務がトレンドから見て、この無利子・無担保の融資を受けて、ぐっと上がってきています。
 もちろん経済が回復するに従って、このトレンドに近づいていきますので、返済も始まっていくわけですが、これから緊急事態宣言の下で感染をしっかり抑えて、医療提供体制を確保するということができてくれば、ワクチン接種も進んでくれば、将来経済が回復する。
 先ほど申し上げたように、潜在的な回復力があると見ていますので、そうした中でここは小さくなっていくものと思いますが、しかし27兆円のトレンドよりも多い企業債務があるという点には、どうしてもよく注意をしていかなければいけないと見ています。
 以上3つの日本経済を巡る期待と懸念を、今回の月例報告の中では、それぞれのデータをお示ししながら、説明をさせていただいております。
私自身、潜在的な回復力はあるということを常に感じておりますし、強い消費意欲も若者を中心に感じています。他方、この感染を今抑えなければいけない。そしてアジアで広がっている感染拡大にも、サプライチェーンがしっかりと対応していけるかどうかというところも、しっかりと見ていかなければいけないと思っています。
 引き続き中小公庫など無利子・無担保の融資、そして協力金や様々な支援策で、月次の支援金もあります、中堅中小企業をしっかりと応援をしていきたいと思います。
 厳しい中にある事業者の皆さんの事業、雇用、そして生活を守っていけるように、必要な支援を行っていきたいと考えております。
 そして強いてもう1点挙げるとすれば、先ほど申し上げた先進国でも、感染がこのデルタ株で広がってきているという点であります。世界経済がどのように好調を維持していくのか。
 そして好調を維持するとすれば、アメリカも物価が非常に高い水準で推移しておりますので、世界の金融政策がどうなっていくのかという点も含めて、これから世界経済、各国の政策、金融市場、資本市場の動向、こういったところにもしっかりと目配りをしていかなければいけないと考えております。
 私から期待と懸念を申し上げました。以上であります。

2.質疑応答

(問)月例経済報告で今、大臣がおっしゃっていたように「先行き、下振れリスクに注意すべき」という記載が今回盛り込まれて、実際、宣言の延長とかで個人消費の下押しが強くなると思います。年内にコロナ前水準に戻るという政府シナリオは、少し厳しいのではないかなという気がしますが、ご認識を教えてください。
 もう1点、モデルナワクチンの異物混入に関して、大臣が現状把握されていることと、感染対策全般にどんな影響があり得るかということについて教えてください。
(答)まず1点目については、緊急事態宣言を9月12日までということにしておりますし、また昨日、まん延防止等重点措置の地域の拡大も決定いたしましたので、これは当然、経済には影響があります。
 厳しい状況に置かれる事業者の皆さんや、また、国民の皆さんへの支援をしっかりと行っていきたいと考えておりますが、こうした影響については、十分に目配りをしていかなければいけないと考えております。
 さらに先ほど申し上げた、海外の感染拡大、特にアジアの状況、そして先進国でも広がってきている。一方でアメリカの経済は非常に好調でありますので、逆に物価が非常に高い水準になってきている。人出不足なども報じられているという中で、金融資本市場はどのようになっていくのか、この辺りには目配りをしっかりしていかなければいけないと考えています。
 そして一方で、先ほど申し上げたように、若い世代を中心に強い消費意欲、あるいは好調な企業業績を背景として、輸出もいいですし、さらには設備投資意欲が非常に強いと。新しい時代、デジタル化の時代を迎えて、ソフトウエア投資も非常に活発に行われるという中で、先行きに対する期待感も持っております。
 こうしたことを総合してみますと、現時点で私どもがお示ししている見通しについて、何か変えることは考えておりません。年内に、今年にGDP、コロナ前の水準を回復するということを実現できるように、経済財政運営、十分な目配りをしながら、必要な支援策を機動的に行いつつ、実現していきたいと考えております。
 2点目のモデルナについては、詳細な報告はまだ聞いていないですが、これまでもワクチンの製造・接種のときには、稀にそういったこともあるという報告を専門家から受けましたので、どういった影響があるのか、引き続き詳細を確認したいと思います。
(問)先生がおっしゃった期待と懸念というのは、私はすごく分かりやすかったですが、これは総理に大臣のお考えとして、ご説明になられたということでしょうか。
 それともう一つは、月例経済自体は論点がずれているようには見えないので、そこはすごく分かりやすい。それで一つ目の一番大事な個人消費のところは、正の相関があるわけです。しかしそれはワクチンがこれから打たれていくことで、いわゆる先生がおっしゃっているような、ワクチン、こうなるとここがどうなる、というのがポイントだと思いますが、そこについてどれぐらいのタイミングでワクチン接種が進むと、人の動きですとか何ができるという。このところはどんな形で出てくると見られるのか伺いたいです。
(答)1点目は今申し上げたように「3つの期待と懸念」という言い方では、先ほどの会議では報告しておりませんが、それぞれの消費について、若い世代は意欲があって、消費が非常に活発だということ。他方、感染を抑えなければいけないという、この2つのこと。
 あるいは倒産も50年ぶりに低いと。総理は特にここは非常に関心を示されて、確認を頂きました。他方、債務はこれだけ積み上がっていますので、ここは懸念、心配点ですということも申し上げています。
 そしてアジアのサプライチェーンの、この課題についても申し上げていますので、それぞれの論点についてはしっかりとご説明していますので、それが「期待と懸念」ということに集約されるということでありますので、よく理解をされていると思います。十分理解をされたと思います。
 それから2点目のワクチン接種については、まさに6割7割進んだアメリカ、ヨーロッパでも、デルタ株という非常に感染力の強い変異株で、今急速に感染が広がってきています。一部に医療も厳しい状況になってきているという州もあると、アメリカでも報道がなされているようでありますが、こうした状況で7割接種されても、3割の方が受けていないという社会があるわけです。世界がある。
 そして「ブレークスルー感染」といわれる、2回接種した方も感染することはあります。これは非常に感染予防効果が、昨日の厚労省のアドバイザリーボードでは「90数%の効果がある」ということですから、かなりの程度落ちるわけですが、そしてさらに言えば重症化は非常に低い。
 大阪のケースで言えば「重症化、死亡例はない」ということで報告を受けていますので、2回接種するとそういう効果はあります。ただ、感染する人は出てきますので、どの程度の方が欧米で2回接種した人が感染し、また、重症化はほとんどないと聞いていますが、そういった分析を引き続き専門家の皆さんにも行っていただいています。
 他方、そうした効果があるのは間違いありませんので、日本でも1回打った人が50%、2回打った人が40数%まで来ていますので、そういった中でどういった効果が見られるのか。さらに言えば昨日、総理も会見で言われましたが、ワクチンを接種した方に接種証明などを活用しながら、どういったことが可能になってくるのか。
 海外の例で言えば「ワクチン接種または検査で陰性」。さらに言えば「過去半年以内に感染した人」というのが入っている国もありますので、どういったカテゴリーでそういった方々に、どういった緩和が可能になってくるのか、これについても議論を急いでもらっていますので、緊急事態宣言を解除するまでに、そうした方向性をお示しできればと思っています。専門家の皆さんにお願いをしているところです。
 ありがとうございました。

(以上)