西村内閣府特命担当大臣・「若者円卓会議」柳川座長共同記者会見要旨 令和3年6月8日

(令和3年6月8日(火) 17:51~18:32  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

(柳川座長)ありがとうございます。今回、若者円卓会議の座長ということで、取りまとめを担当いたしました柳川でございます。よろしくお願いいたします。
 ご承知のとおり、この若者円卓会議というのは、西村大臣のリーダーシップの下で開かれた、ある意味画期的な会議だと思っておりまして、私だけが例外ですけれども、他のメンバーは20代・30代の若手の方々ということで、趣旨としては、若い世代がこれからの社会のリーダーシップを取っていくべき、あるいはイノベーションの先端役となっていくべきだと考えているところでございます。
 1枚目。自由な発想ができる若者というのが、やはりイノベーションの担い手になってくるだろうということです。なので、若者一人ひとりが新たな一歩を踏み出す勇気や努力を社会全体で応援していくことが、日本全体にとって変革していく上で重要だというのが非常に大きな問題意識でございます。
 そのため、この会議自体がそういうことを提言していくと同時に、会議自体がそれを実践していくということでございまして、私は取りまとめ役でしたけれども、私が引っ張っていくというよりは、メンバーの方々が一人ひとり自由なご意見を出していただいて、政策提言をしていただいて、それをできるだけまとまった形で反映するということが私の役割でございました。
 その点では、提案の大きな全体像としては、やはり政策決定過程においても子どもや若者の意見が積極的かつ適切に反映されるような国づくりというのが重要で、これは一朝一夕にできるものではないかもしれませんが、やはり委員会のメンバーや懇談会のメンバーみたいなこともしっかり考えて、年代構成みたいなことも考えていくべきだろうと考えている次第でございます。
 別に年齢で差別するとか区別するとか、高齢者の方を排除するという趣旨ではありませんが、やはりどうしても日本の社会においては若い人の声がなかなか反映されにくいという面がありますので、そういう声を積極的に出していただいて、繰り返しですが、更に若者の声を吸い上げるというスタンスではなくて、そういう人たちがしっかりリーダーシップを取っていく。こういう社会にしていくことが重要だということで、若い委員のみで構成された会議の設置の推進も提案させていただいている次第でございます。
 各論としては、「研究・起業」、「人材育成・ライフイベント」、「地域社会」について議論いたしました。メンバーは限られておりますので、必ずしも全ての面を当たってということではありませんけれども、こういうところに焦点を当てて提言させていただいているところでございます。
 研究開発分野において、やはり若い研究者が果たす役割は非常に重要だと思いますけれども、こういうところでまだまだ十分な活躍ができる環境にはないというのが、多くの委員の方の御意見でございました。
 そういう意味では、博士課程へ進む人が増えること。それから、博士号取得者が増えていって、研究者がある意味で研究だけをしていくというよりは、それを社会に実践していくということで、研究者が起業していくこと、あるいは兼業の促進がとても重要だというところを強調させていただいています。
 その中で特に、理系に女性の進出が少ないというのはかなりニュースでも流れていますけれども、やはりかなりバイアスがかかっている状態なのではないかということで、理系の分野に進出する女性を増やしていくという取組がかなり必要だろうというところで、提言を書かせていただいているというのが1つのポイントです。
 なので、博士課程の進出が増えていくのと、6ページの所は理系分野における女性の活躍ということで、身近なロールモデルの創出、女性教員の割合の向上、地方大学などでの女子の割合の向上等を目指すということがポイントとして書いてあります。
それから、こういうことを推進していく上では、やはり人材育成というものが非常に重要なので、リカレント教育や職業訓練というものを通じて若い方が積極的に活躍できるようにしていくことが重要だということです。
 30代を中心にリカレント教育への意識が高いというところでございますので、やはり若い方が積極的に活躍していけるためには、ここの辺りの能力開発であるとか、リカレント教育などを推進していくことが重要ではないかということ。
 それから、いわゆる最先端で活躍していく人材を作っていくと同時に、なかなか非正規雇用で十分な活躍ができなくて、子育てとか、そういうことをやる余裕がない方というのも残念ながらいらっしゃるのが事実ですので、そういう方たちがもっとある意味で稼げるようになって、能力を高めていって、それで正規社員になったりだとか、あるいは子どもを産むのに十分な対応ができるようにということで、そういう方たちの能力開発。それから、やはり子育てであるとか、場合によっては介護であるとか、そういうことをしても働き方に妨げにならないような柔軟な働き方の推進というものも、改めて強調されたポイントだと思っております。
 地域経済のところでは、やはり地域に関心を持っている若者というのも非常に増えているというのが、お話しいただいた中で実態として随分あるということで、地方移住への関心が若者中心に高まっているという現状の中では、やはりこういう動きを積極的に活かしていく。もちろん無理矢理ということではないですが、活かしていく必要があるだろう。ただし地元でなかなか仕事先が無いという面もある。これはニワトリと玉子ですけれども、なので一定期間はリモートワークを上手く活用しながら、それから二地域居住・二地域就労みたいなことを上手く活用し、地域で積極的に活躍していく、地域に貢献していく、そういう若者像というのも随分議論としては浮かび上がってきましたので、そういう方たちをより積極的に後押しするような政策が望まれるということで、まとめさせていただきました。
 細かいポイントについては、このとりまとめの中で書いてありますけれども、大筋としてはこういうところをまとめられたのは非常に良かったなと思っております。短いですけれどもご説明とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

(西村大臣)若者円卓会議のメンバーは20代・30代の方々5名と、柳川先生に座長をお願いしています。柳川先生も20代前後の学生に教えておられますので、非常に若い感覚を持っていらっしゃるし、そういった意味でそれぞれの色々な主張、提案を全て受け止めてまとめていただいたと思っております。
 そして、柳川先生の御説明と重なる部分もありますが、私から4点申し上げたい。
 一つ目、博士号についてです。博士号取得者が各国と比べてものすごく少なくて、これは以前にもお話ししたかもしれませんが、1万人当たりの博士号取得者が日本は低いです。他の国はみんな上に伸びてどんどん増やしているが、博士号、なかなかポスドクと言われて安定しない。こうした方々に対して年700万円の支援を、最長10年間行ってきております。今、3回の公募で計850件を支援するということにしていますけれども、令和2年度で250件、令和3年度・令和4年度でそれぞれ300件ということで、合計850件を支援していくということになっていますが、これも、その後、安心してキャリアを積める、生活設計できるという支援ですけれども、これも例の10兆円規模の大学ファンドを活用して支援をしていくことを考えていければと思っております。
 とにかく、イノベーションを起こさなければいけないので、非連続的な時代になっていますから、そのためのイノベーションを起こすためのそれぞれの分野に長けた人、研究を突き詰めた人を是非採用してほしいというのが1つ。これは民間企業でも活躍してほしい、起業を起こしてほしいということです。
 それから、二つ目、研究者が兼業を行ったり、ベンチャーを起こしたり、あるいは大学と共同研究を行ったり、企業の役員となったりする。非常に規制が緩和されていますが、それぞれの大学の手続にものすごく時間が掛ったり、結局は1件ごと手続で面倒くさくなって止めてしまうということがありますので、ここをスムーズにやるためのガイドライン、これをしっかりと充実・強化させていければと思います。先ほど柳川先生の言われた研究・起業のところの強化であります。
 それから、三点目、これは細かい話ですが、人材の採用や育成のためのインターンシップが重要です。採用のために1日や2日だけというインターンではなく、正に企業のことを知ってもらう、要するにそれは様々な経験として活きてくる本格的なインターンシップ。欧米では2~3か月のインターンは当たり前であり、日本でもしっかりと取り入れてほしい、人材育成の在り方を考えていってほしいと思っております。
最近では海外留学にも行かせないところが多い。昔は企業が海外に派遣していましたが、海外へ行くと辞めて別の外資系の企業に行ってしまう、その発想が駄目なわけです。人材が自分の会社に残ってもらえないという会社になってしまっているわけですから、むしろ海外留学してその経験をこの会社で活かしていきたいと思う企業にならなければいけない。そのためにはそういった経験を積んだ人を抜てきするという仕組みが大事ですので、今や大きな時代の転換点ですから、もう一度人材の採用、そして育成の仕組みを考える時に来ているということ。民間企業へ、ある意味での提案であります。
 四点目、柳川先生がおっしゃった理工系女子の現状です。OECD諸国の数学的リテラシーの成績で、15歳の時の男子と女子の平均スコアを示しています。実は男子も女子も、男子は韓国より、女子は韓国と一緒ぐらいですが、正にOECD諸国の中で15歳の時の数学的リテラシーは世界の1位と2位です。
 その一方で、次のページの大学の進学率を見ると、STEAM分野、理工系分野に進む女性の割合は17%。OECDの平均から遥かに少ない。もう信じられない。つまり皆さんも経験があると思いますが、私の高校は男子校ですが、小学生や中学生の時に数学や理科が非常にできた女性の同級生がいましたが、多くが文系に進学する。このことは、もちろん自分の意思であり、自分の人生設計ですから最終的には自分の判断ですが、理系の能力がある子がなかなか理系に行かない。自然にそのまま自分の能力を活かして、理系に進学できる仕組みをもっと作れないか。理系の女性の先生を増やしたり、いくつかの大学で取組がありますが、一定の枠を設けている学校もあります。それぞれの地域で女子の推薦枠を設けている大学もあります。特に理工系学部のある地方大学で、女子を是非多く採ってほしい、優秀な女子を採ってほしい。当然、優秀な理系の女性が東京に来て、あるいは大阪などの有名な大学に進学することも当然歓迎ですが、とにかく理系にもっと進学するという能力のある若い女性にそういう道を選んでいってほしい。
 日本でノーベル賞は28人出ていますが全員男性です。御案内のとおり、最近では理工系のノーベル賞の学者、先生方が山中伸弥先生をはじめ多数出ていますが、全員男性です。
 他方、提言に書かれていますとおり、「猿橋賞」というものがあり、毎年自然科学の分野で優れた業績を残した女性研究者の表彰を行っています。最近ではゲノム編集技術の開発でノーベル賞を取られた2名の女性がいます。あるいは、メッセンジャーRNAワクチンの技術を生み出したカリコ博士は、女性の研究者であります。世界を救っている。理系で傑出した女性がたくさん出ています。日本人男女も、15歳の時は数学のスコアが世界の1位・2位ですから、是非、日本から女性のノーベル賞受賞者が出てきてほしい。
 そのことを今回の提言の中にも強く書かれていますので、私としてもそうした政策に取り組んでいきたいと思います。1年から2年のすぐには無理かもしれないですが、10年のうちに理系の女子がノーベル賞を取るような人材を輩出できる、女性が活躍できる国に更にしていきたいと思っております。

2.質疑応答

(問)柳川先生に伺いたいですけれども、現在の富裕層というのが、日本が高い経済成長を遂げていた時代から下火になり、例えば自分の親より経済的に豊かになれるかどうかとか、将来の希望をなかなか持てない状況だと思いますけれども、そういった閉塞感を取り除いて若者に活躍してもらうという、そういう観点から先生のお考えはいかがでしょうか。
(答)おっしゃるとおり、かなり閉塞感を抱いている若い方が多いというのは事実だと思います。そこを大きく変えていかなければいけないというのは、この会議の中でも皆さんの言葉の端々に感じられたところでございます。そこは正におっしゃったとおり、そういう閉塞感を取り除いていくための政策であり、取組をやっていくことが大事だと思っております。
 では、どうやるのかというとなかなか難しい面はあって、やはり、ここで今言ったように、とにかく若者が、上が決めたことに我慢して従うのではなくて、自分たちが積極的に発言して、自分たちが積極的にやりたいと思うことがやれる環境をできるだけ作っていくということが重要なことだろうというのが1つ目。
 それから2つ目は、ある意味で若者が自分たちのやりたいような生活スタイルを取れているのか。その中でどのぐらい本当に生活が安定するのかというところが見えてこないというのが、今の閉塞感や不安感の大きな原因だと思います。
 そうすると、ひとつはやはり、ここで書きましたけれども、もう少し多様な働き方ができるようにしてほしいと。子育てをしている場合であれば子育てを重視する働き方ができてほしいし、あるいはテレワークだったり、二地域居住を希望する人はそういうことができたほうが良いし、自分たちの上の世代がやってきたことに合わせるのではなくて、自分たちがやりたいスタイルを追求させてほしい、そういう声が強かったです。しっかりそれをやっていく。
 おっしゃるように、できればそれで、しっかりと生活を充実できるだけの所得は得られるようにするということは、次に必要なことなので、じゃあそれは何をやったら良いかというと、本当は経済政策全体の大きな課題ですけれども、この中で取りあえずやるべきことは、やはりそういう人たちがしっかりとしたトレーニングを受けて、より稼げるような、より自分たちの安定した所得を得られるような能力を身に付けていく。やはりここをしっかりサポートしていくことが何より重要だろうということで、ここのところは私としては強調させていただいたということでございます。
(問)大臣に伺います。今回この会議は、20代・30代の研究者の声を直接聞く貴重な機会だったと思います。若者の声を直接聞いて特に気付かされた政策課題、さらに、政府として早急に対応しなければいけない課題というのは、どういったところでしょうか。
(答)御質問にお答えしますと、まず若い方々の皆さんは、それぞれの分野で一生懸命やっておられる方ばかりですから、物怖じされずにどんどん積極的に意見を言われまして、まず、このことが私にとっては非常に嬉しかった。
 私と柳川先生は同世代、赤澤副大臣も同世代、和田政務官はちょっと下ですけれども、みんな50歳前後で、そんな中で20代・30代の皆さん方が本当に、率直に意見をおっしゃったことがすごく嬉しかった。
 我々が気付かなかったこと、例えば政策は一生懸命やってきたつもりでも、さっき申し上げた、大学の先生方の共同研究とか、起業する時の兼業規制というのは、私が当選した頃からずっと取り組んでいます。もう十何年やってきて、かなり緩和されて、制度上は割と自由になってきて、大学発のベンチャーというのはたくさん出てきています。
 上手くいっているなと思っていましたが、実際聞いてみると、実はものすごく手間が掛かって、そのことに時間が取られてしまう。労力を取られてしまう。それで途中で止めてしまう、そういった仲間もいるというお話しを頂いた。
 それから報告書の中に出てきますけれども、節目のライフイベントがあります。結婚・出産・子育てなど、その度にやっぱり苦労する。これは男性も女性もそれぞれ苦労し、なかなか両立できず、ワーク・ライフ・バランスを取っていくことができない。
 こういったことも、我々からすると、男性の育児休業の取得を拡充するという法律が成立しましたが、制度面としては、制度を作ってきたにもかかわらず、上手く運用されていない、上手く使われていない。
 それから今朝も申し上げましたが、求職者支援制度など、厳しい状況にある皆さん方が使える仕組みがあるわけです。職業訓練を受けながら月10万円の給付を受けられる仕組みも、ほとんどの人に知られていないということとか様々、我々としてはいろんなメニューを用意しているけれども、それが上手く使われていない、知られていない、運用がまずい。
 こういったことがたくさんありましたので、それらを一つ一つ、割と細かいことも含めて書いていますので、これを骨太方針や成長戦略に活かしていきたい。
 「神は細部に宿る」という言葉もありますけれども、大きな方向性は、若者の活躍を推進するということです。実際それを進めるには、細かい制度をやはり一つ一つ丁寧に直していかなければいけないということに気付かされましたので、一つ一つ丁寧に行っていきたいと思っています。
 「若者円卓会議」ということで、「活躍」という言い方をしますけれども、一つは、世界に飛び出していけるような人はどんどん応援していきたい。先ほどの理系の女性も、世界トップレベルの人が15歳の時にはたくさんいるわけですけれども、本人の意志ですから、残念ながらと言うのは忍びないところはありますけれども、理系に進んでノーベル賞を取るような研究をやっていく女性が少ないわけです。そういったところで、もっといろんな可能性を追求できるようにしてあげたいと思います。
 今回参加していただいた皆さん方もそうですし、正に毎日のようにニュースでやっていますけれども、大谷翔平選手が26歳で素晴らしい活躍ができるわけですし、松山英樹選手もそうですし、笹生優花選手も19歳です。世界で本当に物怖じせず堂々とやっていける。
 スポーツの世界だけではなくて、去年は102社が新規上場しています。アメリカが400社強ですから、経済規模からいうと、アメリカと同じぐらいの数のIPOがなされています。若い人たちもたくさんその中に経営者として出ています。
 日本中で次々と若い人たちが活躍し、そして世界で活躍する若い人たちをどんどん育てていく。そういう人たちにイノベーションを引っ張っていってほしい。正に非連続的に大きな時代の変わり目で、これまでの成功体験を捨てなければいけない。正に過去としがらみのない自由な発想で、新しいことに挑戦する若者を応援していきたいというのが、大きな一つの固まりです。
 もう一つの固まりは、そうは言っても全員が、世界のトッププレーヤーになれるわけじゃない。スポーツの世界でも経済の世界でも、それぞれの能力、それを活かせるそうした場面があるはずだと。それは身近なところにあるかもしれない。地方にあるかもしれない。
 先ほど申し上げた、厳しい状況に置かれている方々への支援制度も、もっと使われて良いと思いますし、地域でなかなか社会と馴染めない若い人たちもおられるわけですけれども、そういった方々への取組も今回書き込んであります。
 提言として頂󠄀いていますけれども、何かちょっとしたことで地域の役に立っている、世の中の役に立っているという、そうした小さな体験が、社会の中で何か自分ができることがあるという意識の醸成につながっていき、一歩一歩進んでいける。私が就職氷河期世代の皆さん方を応援している中で感じていることでもありますけれども、いきなりジャンプして、社会でこれをやってくれというのはなかなか難しいかもしれないけれども、しかし身近な小さなことで御本人が関心のあること、特別好きなこと、いろんなこと、ちょっとしたことで一歩踏み出せれば、それが良い経験となって意識が変わってくると。
 そういう場面もあると思いますので、それぞれの若い人たちの能力とか置かれた環境とか、そういったものにしっかり目配りしながら、どんどんチャレンジしていける人は、どんどん「他流試合」をやってもらって、海外にも行ってもらって、他の企業で挑戦してもらって、ベンチャーを起こしてもらったら良いし、全員がそうではない中で、何か自分のできることを身近な中で見つけていってもらうことが大事だと思いますので、両面から、正にインクルーシブな、包摂的な社会にしていく、そしてイノベーティブな社会にしていく、その両面を実現していければと、今回の若者円卓会議の中で若い人たちの、皆さんのご意見をいろいろ聞いていく中で感じたところです。
(問)若者円卓会議の取りまとめについて。理系の女子学生については理系分野・理工学系ということですけれども、博士号については、これはどういった分野が御念頭にあるのか。あるいは会議の中でどういったことを前提にして議論があったのか。その点をお聞きしたいと思います。
(答)先ほどデータに示していますように、日本では人口当たりにすると、博士号の取得者が非常に少ない。大学卒と高校卒の段階で一括採用の仕組みがありますので、大学院に行って修士課程あるいは博士課程に行くと、なかなかその一括採用の仕組みに乗らなくなっていきますので、従って研究者の道に進むには、もちろん博士号まで取らなければいけないけれども、民間企業や他の道に進むときに、非常にこの仕組みが障害となっている。
 博士号取得者に対して、民間にもっと窓口を開いていくことはできないかという提案も書かれているわけですし、いろんな議論の中でそうした提案も出てきたわけですけれども、文系も理系も、文系で言えば、海外では多くの経営者がMBAを取得している。日本の場合は必ずしもそうでない方も多く、理系の博士を持った経営者というのが非常に少ない。
 2つのことを申し上げると、一つは時代が大きく変わって、非連続的な新しい時代の大きな変革を求められている。イノベーションが求められている。それを起こしていくには、やはり博士課程である道を究めていった方への期待。これが一つです。
 もう一つは、これは文系やMBAなどで言えることだと思いますけれども、国際的に通用する経営ということです。どうしても日本は生え抜き主義、年功序列主義でやっていっていますので、それがもうおそらく通用しなくなってきている時代だと思います。
 国際的に通用する人材を育てていく。そうした中から経営者が生まれてくる。または、そうした中から、外から経営者を採ってくる。外から人材を採る。そういう2つのことが求められていると思います。今回の若い方々の意見交換の中でも、国際的に通用する、それからイノベーションを起こしていくという2つの視点から議論がありました。博士号の取得者を是非、経営人材に取り込んでいく。民間企業に、より多くの人が採用されて、そして、活躍する仕組みを作っていければと思いますし、研究の道に進んでも、そこから共同開発であったり御自身の研究を民間企業で活かしてもらったり、あるいはベンチャーを興す、企業するというところも期待したいと思います。
(問)会議とは全く別の質問で大変恐縮です。コロナの関係で、分科会の尾身会長が専門家の提言として、オリンピックを巡る感染リスクについての見解を示すお考えを示していますけれども、これについては日々、尾身会長とも意見交換をされていると思いますけれども、どういった観点からの見解になることが想定されるのか。そしてそれを政府としてはどのように受け止めて、活かしていくお考えなのかをお伺いしたいです。
(答)まず尾身先生は国会で何度か答弁されて、今日も答弁されていますけれども、その答弁の内容をお聞きいただいてもそうですし、私と毎日のように、今日も少し話しましたけれども、国会に呼ばれておられましたので、時間があまりなかったですが、そうした中でオリンピックをやるべきでないというようなことは、全く言われていないです。
 これは政府がお決めになることですし、正確に言うとIOCが決めるということですけれども、オリンピックの可否について分科会において議論すべきだというようなことを、おっしゃっているわけではありません。分科会がそういう場でないことも、よくご理解をされています。これまでの答弁をお聞きになると、それもお分かりになると思います。
 その上で、ただし、オリンピックというのはかなりの人が動く。海外からの人、国内の移動、これに対してどうリスクを抑えていくのか、このことについては考えなければいけない。当然オリンピック開催によって感染が拡大しないように、考えていかなければいけないということです。これは私も同じ気持ちです。
 そうした中で2つ申し上げると、一つは海外から来る方々については、選手も関係者も、これはオーストラリアのソフトボールの選手を見ていただいたら分かりますように、ワクチンを2回接種している。さらに毎日PCR検査をやっています。相当リスクは低いということ。オリンピック関係者にはワクチン接種を奨励しやってもらう。
 どうしても体質上打てない方とかそういう方には、毎日検査をしてもらうということで、組織委員会の方も考えられていると思いますので、そういう意味で海外から来る人については、かなりリスクを減らせるのではないかと考えています。
 他方、国内の移動について、これは尾身先生も一番懸念しておられる。今はプロ野球とかサッカーとか1日に2~3カ所で行われる。そしてイベントは人が集まる。しかしそれが10カ所、20カ所で、もちろん規模は違います。1万人入るところもあれば数千人のところもあるでしょう。
 それだけのものが毎日、十何日間行われるという中で、また国内から多くの人が移動を伴って来ると、それは大きな感染リスクになるということをご指摘されていますので、このことについて尾身先生とも毎日のように議論をしていますし、私どもは丸川大臣と一緒に、国内の人流がどう動くのか、自然体でいくとどういうことになるのか、このことについて分析を進めています。
 同時にワクチン接種が進めば当然、重症化のリスクは減りますので、そういったことについても今、接種が1,800万回を超えました。1日60万、70万と打てるようになってきていると思います。
 6月21日からは職域の接種も開始しますので、1日100万回というのに近づいていると思いますけれども、そうする中でこれがリスクをどう下げていくのか。医療提供体制の負荷をどう下げるのか。こういった分析を進めています。
 そういったことの分析を進めながら、昨日、総理も答弁されましたけれども、正に国民の皆さんの命と健康を守る、これが最優先ですので、その下で感染リスク、あるいはこうした医療提供体制のリスクをどう下げるのかという議論を、私自身も尾身先生としていますし、尾身先生自身も、専門家の皆さんと様々議論を重ねられているということだと思います。
 その上で尾身先生や専門家の皆さんが、提言をまとめようとしておられるということでありますので、それがどのような形であっても、有志の皆さんでまとめられるのか、どういう形であっても、私自身は分科会でもお世話になっている先生方ですし、尾身会長でもあります。しっかりと受け止めて、その提言に対してしっかりと答えを出していかなければいけないと、そういう思いでおります。
 いずれにしても、私どもとしてもオリ・パラ室、丸川大臣と一緒に整理をしている、人流がどうなっていくのか、ワクチン接種はどう進むのか、それによってどういうリスクがあるのか、減るのか、そういったことについて、私どもとして分析をしっかりやって、専門家の皆さんにもお示しをしていきたいと思いますし、専門家は専門家でそうした分析を進めているようでありますので、それが提言という形で出てくるのか、その前にいろんな意見交換をするのか、まだそこは何か決まっているわけではありませんけれども、いずれにしても尾身先生をはじめ専門家の皆さんが、感染リスクを評価し、それを下げるために必要な対策、ワクチン接種を促進していくことが、大きな1つの手段だと思いますし、PCR検査や精度の上がった抗原検査キット、これを組み合わせることも1つの方法だと思います。様々なそうした対策を、ご意見も頂きながらしっかりと受け止めて、対応していきたいと考えております。
(問)若者円卓会議の話に戻るのですが、不勉強で恐縮ですけれども、今後取りまとめた内容が、例えば「選択する未来2.0」のように骨太方針に出すような形になるのか、どういう形で進んでいくのかということを伺いたいです。
(答)一つには、もう最終プロセスに近付いてきていますけれども、骨太方針にしっかりと位置付けたい。ここにあるようなエッセンスを位置付けたい、書き込みたいと考えております。
 そのためには、関係省庁にも理解いただかなければいけませんし、与党にも理解いただかなければいけませんので、時間はかなり限られていますけれども、ここに書いてある内容をできる限り反映させていきたいと考えております。
 二つ目は、しっかりとフォローアップしていきたいと思っています。ここに書かれた内容全てが、非常に大事な点を指摘されていると思いますし、先ほど申し上げたような何点か、柳川座長から御指摘のあった点、あるいは私が申し上げた点、日本の将来を作っていく、築いていく、そして日本のこれまでの成功体験を捨てて、正に新しい経済社会の在り方を作っていく、そのために大事な御指摘を頂󠄀いていると思っていますので、これらをしっかりと実行していくため、フォローアップをやっていきたい。関係省庁にも話をして実行していきたいと考えております。
 ありがとうございました。

(以上)