西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年12月8日

(令和2年12月8日(火) 10:58~11:21  於:中央合同庁舎8号館1階S103会見室)

1.発言要旨

 まず、本日の政府与党政策懇談会におきまして、政府から国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策の案をお示しいたしました。与党における決定プロセスを経て、本日中に決定できればと考えているところであります。
 この経済対策は、まさに国民の命と暮らしを守ると。そのために雇用を維持し、事業継続、経済を回復させていく、生活を守るということを合わせて、グリーン、デジタルこういった新たな成長の突破口を開くべく、この経済対策を速やかに策定することにしております。
 総理からもお話がありましたように、財政支出40兆円程度、事業規模で73.6兆円程度の対策となっております。本日対策決定がなされれば、改めて会見の場で、この場で御説明したいと思います。
 それから、昨日の会見で申し上げた大阪府からの看護師派遣の要請につきまして、全国知事会及び関西広域連合における調整がまとまり、昨夜知事会から発表がございました。
 具体的には、大阪府のコロナ重症センターにおける看護業務を支援するため、13府県から看護師26名が12月16日以降順次派遣される予定と聞いております。また、大阪府と自衛隊との間で、自衛隊の派遣による医療支援に係る具体的な調整が進んでいると聞いております。
 正式な要請があれば、速やかに対応できるよう取り組んでいるところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)2点お願いします。1点目がGDPの改定値についてです。年率換算で22.9%増ということで上方修正となりました。ただ一方、足元では新型コロナの感染者が過去最大の水準だとされています。先ほど経済対策のお話がありましたけれども、今後の日本経済の成長見通しについて一言お願いします。
 もう1点が2019年度で見ると0.3%減ということで、5年ぶりのマイナス成長になりましたけれども、この点についての受け止めも一言お願いします。
(答)まず、GDPの2次速報値についてでありますが、実質成長率前期比プラス5.3%、年率換算でプラス22.9%と、1次速報値から若干の上方改定となりました。
 その主な要因は7-9月期の個人消費や設備投資が上方改定されたということを受けてでありますが、設備投資で見ますと、引き続き前期比マイナス2.4%と減少している姿に変わりはありません。このコロナ感染症の影響による収益の悪化、あるいは内外ともに御指摘あった感染が広がっている中での先行き不透明感の高まり、こういったことを背景に、製造業、非製造業双方で引き続き設備投資は弱い動きが続いております。
 先日も御指摘しましたけれども、欧米では7-9月期で設備投資が増加に転じてきております。我が国はまだ減少、弱い動きということから、いまだ守りの状態で攻めに転じていないということだと思います。
 さらに、足元の感染者の増加が個人消費を下押しする恐れもありますし、さらに、生産、海外への輸出も含めてですけれども、生産、設備投資を下押しする懸念もあるわけであります。
 こうした認識の下で、足元の経済、雇用、事業、生活をしっかり守っていくという視点と、それから新たな投資、民間投資を呼び込むという視点で、この国民の命と暮らしを守る安心と希望のために総合経済対策を本日取りまとめる予定にしております。
 具体的に、特に生活を守るという観点では、緊急小口資金の申請期限の延長とか、あるいは住居確保給付金の支給期間を12カ月まで延ばすであるとか、生活をしっかりお守りしていくということ、それから雇用を守るという観点からは雇用調整助成金の延長、あるいは新たな、この執行を支援していく制度の創設、こういったこともあります。また、離職者をトライアル雇用する事業者への助成制度、こういったものを拡充しながら、何とか雇用、生活を守っていくようにと、いけるようにとなりますし。それから、賃上げの流れも是非継続をしていただきたいと。もちろん企業の今厳しい状況あるいは先行き不透明な状況も理解できるわけでありますが、回復基調にある企業もありますし、やはりこのデフレに絶対戻さないということは何より大事であります。
 成長軌道に戻していく中で、この賃上げの継続は非常に大事な要素だと思っております。先般、諮問会議の場でも菅総理から、中西経団連会長もおられました、この流れを是非継続していきたいということのお話もありましたし、私からも経団連の経労委の担当の役員の方々に、是非こうした賃上げの流れを継続していただきたいということを要請も申し上げております。
 さらに、経済対策の中においても、雇用増や賃上げの所得増を促す税制措置についても盛り込んでいるところであります。与党税調で議論が行われると承知しておりますが、いずれにしましても、こういった政策によって雇用をしっかり守っていくということが大事であります。
 さらに、デジタルやグリーンといった分野での、まさに民間投資を呼び込んでいく、成長力を強めていく、高めていくためのそうした予算、税、規制改革、総動員する総合経済対策として取りまとめたいと思っておりますので、そういったことを通じてしっかりと成長軌道に乗っていくように、回復を確実なものにできるように、そして、早くコロナ前の水準に戻れるように成長力をしっかり高めていければと思います。
 GDPギャップなども踏まえて財政規模で40兆円程度、そして事業規模で73.6兆円というしっかりした規模を確保、補正予算の中でしますので、この予算を通じて民間の皆さんにも投資を促していければと考えています。
 それから、改定に伴って昨年度、2019年度の実質成長率がマイナス0.3%ということになりました。四半期ごとに見ますと、4月-6月期、7月-9月期、これはプラス成長であったわけですけれども、10月-12月期、そして1月-3月期はマイナスになっているということで、全体としてマイナスとなりました。
 大変残念でありますけれども、10月の消費税増税については消費税の負担額を上回る予算を用意し、軽減税率とかあるいは幼児教育保育無償化で子育て世代に還元される分もございます。そして、それを差し引いた負担分についてもそれを上回る予算、ポイント還元であったり、それから地方の予算であったりを含めて2.3兆円を確保して、この消費税の影響を軽減するための措置を取ってきたところであります。
 前回の増税ほどには、この消費税の影響は大きくなかったものと見ておりますが、この10-12月期は台風の影響、天候の要因、それから12月の暖冬の要因もあって、10-12月期マイナス。それから1月はもう消費税増税の影響が非常に薄らいで回復基調にありつつあったんですけれども、残念ながらこれを見ていただいたら分かるんですけれども、昨年10月増税の影響で、10月は私どもも一定の落ち込みは想定はしておりましたが、過去3年よりも少し大きな落ち込みになった。
 ただ、11月は過去3年、このグレーが過去3年のところですので、11月は非常に良かったんですけれども、後半から暖冬で12月が落ちて、そして1月にかけては、ほんとに例年並みの消費に戻ってきた。1月見ても過去3年よりも上振れするようになったわけですけれども、2月にかけて、残念ながら2月後半、3月からこういう形で、新型コロナの影響で落ち込んでいったわけでありまして。
 こうしたことを背景に、結果としてマイナス0.3%の成長となったということでありますが、景気の見方としては、我々が分析をしてきたとおりでありますので、従来とは変わっておりません。
 その後4月、5月、緊急事態宣言で大変、経済を意図的に止めることによって経済の落ち込みが大きかったわけであります。これを何とかその後の対策も含めて、回復基調に戻りつつあるわけですが、まだ水準が、かなりこのところも戻ってきています、過去3年の幅の中に入ってきておりますので、今日の家計調査を見ても消費は戻りつつありますけれども、まだ例年のコロナ前の水準、経済全体としてはまだ戻っておりませんので、今回の経済対策、これを早く取りまとめ、そしてできるだけ速やかに執行していけるように取り組んでいきたいと考えています。
(問)コロナの関連でお伺いします。
 東京大学などの研究チームが、2万8,000人を対象に「GoToトラベル」と「GoToトラベル」を利用してない人を対象に、感染が疑われる嗅覚、味覚の異常だったり、発熱するなどの症状を確認したところ、「GoToトラベル」を使った人の方が統計上2倍ということが分かって、研究チームは「GoToトラベル」が感染拡大に寄与している可能性があると分析をしています。
 そこの関係については、西村大臣も、以前から分科会の提言で「GoToトラベル」が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しないと説明していて、感染拡大はさせていないと言っています。
 でも尾身会長に直接確認したら、エビデンスがないだけで可能性がないとは言っていないと尾身さんもおっしゃっていて、分科会の提言にも一般的には人々の移動が感染拡大に影響すると考えられるとも書いてあります。
 今回東京大学の研究チームで確たるエビデンスではないかもしれないですけれども、感染拡大の要因と示唆されるような発表がなされたことの受け止め。また、「GoToトラベル」、今は自粛だったりしているところがあると思いますが、停止もしくは対象を広げるなど感染拡大地域の運用の見直しをする考えがあるのか考えをお聞かせください。
(答)御指摘の研究論文でありますけれども、私も詳細をまだ読んだわけではないんですけれども、現時点では、この論文について著者以外の専門家から科学的検討、いわゆる査読を受けるというその前段階のものであるという報告をまず受けております。
 そして、この報告、論文のこれ、最後のところですか、途中に書かれているんですけれども、本研究の限界点として、この研究者自らが指摘をしていますけれども、4点を挙げています。
 1点目が「GoToトラベル」の利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない。
 2点目として「GoToトラベル」の利用と新型コロナ症状の発生率の間の時系列的な関係が不明。
 それから3点目、これが大事な点だと思うんですけれども、症状だけを聞いていますので、新型コロナ症状を持つ人が必ずしも新型コロナに感染しているわけではない。つまりPCR検査などを受けたわけではないということで、症状だけを聞いているわけです。
 それから4点目。新型コロナ症状を持つ人が、たまたま似たような症状、コロナかもしれませんし、そうじゃないかもしれませんけれども、症状を持つ人がその原因として「GoToトラベル」の利用を思い出しやすい可能性、思い出しバイアスも挙げられるということで、4点こうした限界を自ら指摘もされた上での論文であります。
 全部を細かく読んだわけではないんですけれども、こうした中で一つ一つの論文にいろんな研究者のお考えはありますので、個々の論文にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、政府としては引き続き「GoToトラベル」はこの事業者、利用者の双方で感染防止策を徹底した上で行ってきておりますし、さらに感染者についても報告を受けるということにしております。
 分科会の専門家の御意見をしっかりと伺いながら適切に運用していければと考えております。
(問)コロナ関連で、追加で伺います。今週分科会を開いて、今後の対策を議論する御予定はおありでしょうか。
(答)今の時点では分科会の日程はまだ決まっておりません。日々、専門家の皆さん、尾身先生を初め、私も意見交換をしておりますが、分析、評価を、感染状況などをいただいているところであります。 専門家の皆さんの御意見も聞きながら判断していきたいと思います。
(問)先ほど、もう出てしまった質問と一部かぶるんですけれども、新型コロナウイルスについて御質問いたします。
 12月5日、6日に共同通信社さんが実施した全国電話世論調査で、新型コロナウイルスへの政府対応について、感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかとの質問に対して「どちらかといえば」というのを含め感染防止を挙げたのが76.2%、そして政府のコロナ対応については「評価しない」が55.5%で、「評価する」の37.1%を上回っています。
 また、先月11月18日の会見で、日本医師会の中川会長は「GoTo」についてエビデンスははっきりしないが、感染者急増のきっかけになったことは間違いないとの旨の発言をしています。
 そして、続いて11月20日に行われた東京都医師会の尾﨑会長も、緊急会見で「GoToトラベル」を一度中断するよう強く訴えられました。
 東京都も昨日12月7日の新規感染者が99人で、都内の累計感染者は4万4,003人となっていると聞いています。医療逼迫の度合いも高まって、大阪府と北海道では自衛隊への看護師派遣をする事態に陥っています。
 そんな中、国土交通省は来年1月で期限を迎える「GoToトラベル」を来年6月末までに延長する方針を明らかにしました。
 政府の「GoToトラベルキャンペーン」が全体としてこうした状況を招いている一因であることは明らかであるように思われますが、政府はなぜ「GoToキャンペーン」をいったん中断することができないのか、その理由をお聞かせください。
(答)「GoToトラベル」については、観光庁でしっかりと状況を把握しながら、私どももその分析などを行ってきています。
 幾つかの県で感染が非常に拡大をして、そしてステージ3相当の対策が必要となっているということで、既に「GoToトラベル」の大阪、札幌市、それから東京都については一部停止する、あるいは呼びかけるなどの対応を行ってきているところであります。また、時間短縮などの要請も行ってきています。
 かなりそれぞれの地域で、そういうでこぼこはありますけれども、人の流れ、人の出を、私もデータを取っておりますが、札幌、すすきのであるとか、繁華街ではやはり9時以降、10時以降かなり人手が減ってきている、そういうこういったデータもあります。
 繰り返しになりますけれども、常々申し上げていますとおり、それからもう一つでいえば、一方で例えば先日政務で伺いました新潟県、あるいは石川県や福岡県のデータ、あるいは山梨県のデータを見ましても、この8月以降、急激に大幅に観光客の人が増加をしていますが、この8月9月10月と感染を非常に低く抑えてきています。
 感染防止策を徹底していれば、経済活動、文化活動との両立もできるということであります。全国全ての都道府県で感染が増えているということではありませんので、そういった面も含めて分析をしていきたいと。
 特にこういった都道府県の方々からは、知事からもこの「GoToトラベル」によってやはり地域の経済、観光業それから飲食業を含めてこの4月、5月の落ち込みからかなり回復してきていると、例年並みの状況にまで戻ってきているといった報告もいただいております。
他方、感染拡大によって幾つかの県で先ほど申し上げたような対応をとることによって、宿泊の稼働率も11月21日の辺りは非常に高かった、そこからもう急激に今は稼働率が落ちてきております。そういう意味で、一時停止とか呼びかけの効果も出てきているものと思います。
 その上で、それぞれの県の対応については私も知事とお話をし、知事の苦渋の選択、苦しい判断だと思います。地元の経済のことも考えなければいけない。他方感染が増えている中でそれぞれの知事が判断をされ、またそれを国としてもサポートしていく。東京の場合は菅総理と小池知事の間で合意がなされて、そして特に重症化をするリスクのある高齢者や基礎疾患がある方に自粛を呼びかけるということで。これは中川会長や尾身会長も評価をしていただいている、こういう重症化するリスクのある方に強いメッセージとなっているということで、そういった評価をいただいていることも承知をしております。
 他方、若い方々へのメッセージも必要だということで尾身会長からも言われております。私どもも若い方へのメッセージ、なかなか難しいんですけれども、動画などを活用しながら、またテレビCMや、SNSやいろんな手法を使って、何とか若い人たちに届くようにということでお願いもしています。
 それから、もう1点、飲食店でガイドラインを変更しましたので、強化をしました。アクリル板やそれから、換気をチェックするようなこと、それから会話の時にはマスクをするように呼びかけていく、こういったこともお願いをしております。これを守っていただくことが「GoToイート」の参加の要件にもしております。
 いろんな対策を講じながら、何とかこの感染拡大を抑えていければと考えております。まさに国民の皆さんの命と暮らしと両方を守るということであります。大変難しい判断が迫られるわけでありますけれども、感染が拡大している地域については正しい行為であってももう制約が必要となってきますので、人と人との接触を減らさなければいけないということで、「GoToトラベル」の一時停止であるとか、呼びかけであるとか、それから、営業時間短縮の要請を行っているわけであります。飲食店の皆さんも厳しいと思いますが、協力金やまた家賃支援金、雇用調整助成金などを活用していただいて、何とか踏ん張っていただければと思います。
 いずれにしても、国民の皆さんの命と暮らしと両方を守っていくということで本日の経済対策も含めて引き続き全力を挙げていきたいと考えております。

(以上)