西村内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和2年11月16日

(令和2年11月16日(月) 9:31~9:58  於:中央合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 本日、本年の7-9月期の1次QEを発表いたしました。速報です。これにつきましては、実質成長率は前期比プラス5.0%。年率換算でプラス21.4%と4期ぶりのプラスとなり、比較可能な1980年以降の中で最大の伸びとなりました。名目成長率は前期比プラス5.2%。年率換算でプラス22.7%であります。GDPは名目値で531.1兆円。実質で507.6兆円という水準であります。
 これを受けました私の談話につきましては、お手元に配布させていただいているとおりでありますので、御覧いただければと思います。詳細は事務方からあると思いますが、7-9月期は個人消費それから輸出の回復を主な要因として、大幅な伸びとなっております。
 まさに4月・5月を底として、着実に持ち直しの動きが続いているものと思います。4-6月時点でGDPギャップは約55兆円と見込んでおりました。7-9月期においても依然として相当程度存在しております。経済はコロナ前の水準を下回った状態であるということであります。
 その上で私から4点申し上げます。この7-9月期の数字を見ますと、1次補正・2次補正の政策効果、これもあり着実に経済は戻ってきているということが1点目であります。ただ、持ち直しの動きがまだ途上であると。持ち直しはまだ途上、回復途上であるということが1点目であります。
 2点目。特にマインドが、まだ守りの状態にあるということではないかと思います。いまだ攻めのマインドにはまだなってきていない。このことが設備投資の弱さにあらわれております。設備投資がマイナス3.4%ということで、2四半期連続のマイナスとなっております。
 3点目に、国際機関の見通しで見ても、日本の成長率の戻りが遅いとされているところであります。成長力を強化していかなければいけないということが3点目であります。
 そして4点目。欧米を中心とする感染再拡大による輸出や生産への影響、それから足下の国内における感染者の増加による個人消費への影響など、この下振れリスク、これにも十分な注意が必要であるということが4点目であります。
 こうした4つの認識を持ちながら先般、総理から経済対策の取りまとめの指示をいただいたところであります。まさに感染拡大を抑えながら、雇用と事業を支えるとともに、新しい時代、ポストコロナの時代に向けて、この経済の持ち直しの動きを確かなものとしていく。特に民需主導の成長軌道に戻していくということが大事だと認識しております。そのために3つの柱の下、政府一体となって具体的な検討を急いでいるところであります。
 先ほども申し上げましたけれども、設備投資が弱いという中で、まさに成長力を強化する取組を実行していきたいと。民間需要を引き出す必要があります。ワイズ・スペンディングの下、公共支出によって民需を下支えし、デジタル、グリーン、こういった新たな改革、社会の実現、そして中小企業の方々が事業転換を図っていく、あるいは新たな取組をしていく。こうしたところを支援しながら、新しいポストコロナの経済・社会の構造を作っていくということが大事だと認識をしております。
 まさにイノベーションを起こし生産性を上げていくこと、成長分野に民間投資を呼び込むということ、こういったことを狙いながら、十分な効果を発揮できるような予算、税、規制改革、総合的な対策を取りまとめていきたいと考えております。
 数字で少し見ますと、日本のGDPは4-6月期がマイナス8.2%。これは改定されております。年率でマイナス28.8%の落ち込みと。これも最大の落ち込みになったわけですが、今回プラス5.0%ということで、年率で21.4%と最大の伸びとなっております。
 各国を見ますと、アメリカ、ドイツ、イギリス、イタリア、フランスを書いていますが、それぞれ日本以上にものすごく落ち込んでいるわけでありますが、落ち込んだからこそ発射台が低くなるので、成長率が戻るということはあるんですけれども。それでもこれだけの戻りを各国がしている中で、その戻りの具合を見ると、落ち込んだ後、昨年末の10-12月を100とすると、日本は95.8まで戻っているんですが、アメリカは96.5まで戻っています。イギリスは落ち込みも大きかったがゆえにまだ90ですけれども、コロナ後の落ち込みに対する戻りの割合を見ると、ほかの国に比べて日本は52.2%と、まだ回復の割合が低くなっております。
 先ほど申し上げたように、まだ持ち直しの途上であると。もちろんこれだけの戻りは1次補正・2次補正の政策効果が効いているものと思います。持続化給付金や特別定額給付金も効果を持っているものと思います。特に特別定額給付金、お1人10万円のものは9月末までに99%も給付されていますので、これも家計の下支えにはなっていると思いますが、それでも全体として戻りが52.2%ということで、まだこの守りのマインドにあるということだと思います。
 そしてIMFの見通しで、日本の戻りが2024年になるという見通しがなされています。ほかの国は2022年とか2023年に戻る国が多いわけですけれども、少し戻りが遅いという評価がされているところでありまして。我々は2022年には戻すということで見通しを立て、実行していきたいと考えていますが、これは国際的にまだ成長力が弱いという評価だと思いますので、今回の経済対策の中で新しい社会を作っていく、デジタル改革、あるいはグリーン社会の実現、そして事業再構築、こういったところに重点を置いて経済対策を取りまとめ、成長力を強化していく。
 そして公共支出が民間投資を引き出していく。まさにワイズ・スペンディングの考え方の下で民間の投資を促していく。こうした取組を強化していきたいと考えているところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)GDPが1980年以降で最大の伸びとなった一方で、設備投資が大臣がおっしゃるとおりマイナスになって、あと新型コロナも足下で感染が拡大していて、下振れリスクもあると思うんですけれども。年央試算で以前、20年度の実質GDPがマイナス4.5%というふうな予測を示されていましたけれども、10-12月期以降の見通しはいかがでしょうか。
 あと大臣は以前、21年度末までにコロナ前の水準を回復したいというお話だったかと思うんですけれども、これについても御所見をお聞かせください。
(答)先ほどリスクについても少し触れましたけれども、何より欧米で爆発的な感染になってきているということ。これによって当然、海外の経済は影響を受けますので、日本経済から見てみれば、輸出や生産に影響を受ける可能性が出てきます。
 それから足下の国内の感染拡大も、これは国内の消費に影響を与えるということでありますので、そういった面でやはり新型コロナ感染症の感染拡大というのは大きなリスクであることは引き続き間違いありませんので、まずは経済対策の中でも感染拡大を抑えるというのが一つ目の柱でありますから、このことに全力を挙げていきたいと考えています。対策を強化していくということであります。
 その上で今年の今後、年央試算との関係で言えば、資料にも出させていただいているんじゃないかと思いますけれども、2020年度がマイナス4.5%の見通しでありますが、これを達成するためには今後の2四半期、これが前期比2.01%程度で続くことが必要となってきますので、それなりに高い成長を維持することが必要だということになってきます。
 そして2021年度中、つまり2022年の1-3月期には、さっきのグラフでいうと、他の国と同じように2022年には戻していくためには、IMFの予想ではまだ差がありますので、成長力を強化していかなければいけない。これによると2024年に戻るという予測になっています。もうちょっと早いんですけれども、23年中でありますけれども、1年以上前倒しをするだけの成長力を強化しなければいけないということでありますので、繰り返しになりますけれども、日本がこれまで取り組めてこなかった、いわば長年の宿題を一気に返していく。
 これがデジタル改革であり、グリーン社会の実現であり、中小企業を含めた、そして大企業もそうです、事業の再構築をしていくというところを、予算、税そして規制改革、あらゆる政策手段を使って取り組んでいくと。そのための大きな一歩となる経済対策を是非取りまとめたいと考えています。それによって目標を実現していけるように全力を挙げていきたいと考えています。
(問)先日の諮問会議で民間議員から「GDPギャップが30兆円程度ある」という指摘がなされていましたけれども、足下で相当程度のギャップがあるということは認識されていますけれども、今日の発表なのでなかなか難しいと思いますが、足元の状況をどう分析されているのかというのが1点。
 今回のGDP全体の発表を受けて、経済対策の内容ですとか規模感について、お考えに変更がありましたでしょうか。2点伺わせてください。
(答)まずGDPギャップについては、今の時点ではまだ数字をはじいておりません。4-6月期も改定になっておりますので、精査をして近く発表したいと思いますけれども、4-6月時点では約55兆円とGDPギャップを見込んでおりました。それが当然回復しておりますので、縮小しているのは間違いありませんけれども、ざっくり言えば、やはり30兆を上回るGDPギャップが存在すると見ています。もちろんこれはざくっとした印象ですので、精査をして改めて発表したいと思いますけれども、そういう規模感を持っています。精査をして近々に発表したいと思います。
 そのGDPギャップを含めた一つには、やはりマクロの視点で経済をしっかりと着実に回復させていくことが必要でありますので、マクロの視点からの規模感。当然それを全部公共で埋めるわけではありませんので、民間投資をいかに呼び込んでいくかというのも大事な視点でありますけれども、その規模感があります。
 それともう一つは、これまでの経済対策でGDPを下支えしてきました。その政策効果、押し上げ効果が今年度、20年度は約35兆円分あるんですが、これが21年度は4兆円程度。これは若干縮小していくというか、剥落していくわけでありますので、こういったことも含めて全体として、マクロの視点からの規模感を考えていかなければいけないというのが1点であります。
 もう1点はミクロの視点から、まさに総理の経済指示がございました、3本柱でありますけれども、先ほど来申し上げている、この感染症を何とか抑えなければいけない。感染拡大防止策、それから3本目の柱が防災、減災、国土強靱化であります。そして何より重要な、ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環を作っていくという、先ほどから申し上げているデジタル、グリーン、イノベーション、再構築、こういった大きな柱。
 この3つの柱、総理の御指示の下で、関係省庁が今知恵を絞って、それぞれの政策を積み上げていっていますので、ミクロの視点からいえば、この積み上げをしっかりしながら必要な対策、必要な予算、これを確保していくということだと思いますので、成長力を確かなものとするために必要な予算額が当然あります。日本経済の規模感から言って、必要な対策の積み上げ、この双方から検討を深め、検討を進めて、検討を急ぎながら、全体の規模感を作っていければと思います。
(問)大臣は先ほど各国との比較をされて「日本の場合は戻りが遅い。まだ半分ぐらいしか戻っていない」というお話があったかと思うんですけれども、この背景にはどういったものがあるか、どういうふうに分析されていますでしょうか。各国がロックダウンとか激しくやっていたのとは違うと思うんですけれども、そのあたりをお願いします。
(答)先ほども少し触れましたけれども、7月・8月に再び大きな感染症の流行がありましたので、この間の消費者の皆さんのマインドを含めて、消費の伸びがやや鈍かった面があると思います。これはもう既にお示ししていますけれども、9月に入ってかなり伸びを示していますけれども。これは週次の個人消費金額ですが、過去3年の幅がこのグレーの中に入っているわけです。そして今年がこの青線ですけれども、4月・5月の緊急事態宣言の時は、例年に比べて消費がこれだけ落ち込んだわけです。
 ところが6月・7月に回復基調にありましたけれども、感染拡大を伴って、本来ですと8月はこれだけの消費。過去3年はこのグレーの幅ですから、これが低かったということ。大きな理由の1つは、7月・8月の感染拡大によって消費の戻りが鈍かったということが挙げられると思います。9月、10月に入って非常に伸びて、過去3年を上回る伸び。特に去年は9月の駆け込み需要があったにも関わらず、それを上回る伸びをしていますので、かなりの伸びでありました。
 これが引き続き過去3年の幅の上ぐらいにありましたが、そういう意味でそれが少し11月、また感染拡大で少し横ばいになりつつあるということです。
 あわせてまだ企業のマインドが、守りのマインドから脱し切れていない。未来に向かった投資に向けて、攻めの姿勢に転じ切れていない部分があるんだと思います。ソフトウェアの投資、IT関係の投資は引き続き好調でありますけれども、全体として設備投資が7―9月期はマイナス3.4%ということですから、まだ次に向かっての投資に転じていないということだと思います。
 こういった面が影響して、戻りが鈍くなっているんだと分析ができますけれども、いずれにしても今後の回復はやはり成長力、民需主導でいかにイノベーションを起こしていくか。いかにデジタルやグリーンの新たなところに投資をし、そういった経済構造、社会構造を作っていくかというところにかかってきますので、そういった面を頭に置きながら、強力な経済対策をまとめていきたいと考えています。
(問)1点ございます。
 欧米の感染再拡大による下振れ懸念というのはよく分かるんですけれども、これによって日本の輸出先として、アジアへの重要度が高まるということは言えるんでございましょうか。
 それとこれまで対中国では安全保障上の理由から、経済関係もしくはサプライチェーンの見直しという論点があったと思うんですけれども、ここについてその考え方も再考の余地が出てき得るのか。その直近の考え方をお願いします。
(答)日本の輸出は御案内のとおり対中国、対アメリカ、そして対アジアということが非常に大きいわけであります。中国、アメリカはこの間、経済回復をし、中国向け、アメリカ向けの輸出はかなり伸びてきておりますし、アジア全体は広いですから、感染状況のばらつきはありますけれども、当然アジアも大事な経済圏であり輸出先であります。
 そうした中で、RCEPが署名になったということは非常に大きな一歩だと思います。日本にとってみれば、いろんなレベルはTPPほどじゃありませんけれども、アジアの多くの国を含めて、中国、韓国も含めてこうした経済圏ができるということは、非常に大きな成果であり、今後の日本経済にとっては大きなプラスだと認識をしています。
 そうした中で当然、ASEANとはこれまでもEPA、FTAがありましたけれども、対中国、対韓国では今回かなり関税率が下がり、いろんなルールも、TPPほどの高いレベルのものではないにしても、一歩前進するわけでありますので、そういう意味で日本の貿易、投資にとっては、これは大きなプラスになると認識をしています。当然そうした中で経済の面からいえば、今回のRCEPを早く発効して、ぜひ日本経済にとっては大きな効果が出るようになっていけばいいということを期待しています。
 他方、サプライチェーンの再構築、これも今回の経済対策の1つの論点であります。やはりいざという時に、どこかで何か起こった時にサプライチェーンが切れてしまって、物資の供給ができなくなる。こうした事態を今回経験しましたので、これは医療に関わる物資もそうですし、部品が1つ届かないことによって、全体の生産に影響を与えるということもありました。
 そうしたことを踏まえて、いわばサプライネット。1つが切れてもネットですから、どこかがつながっているので、別のところから供給があるといったようなこと。それから今や人件費のウエイトよりも自動化がどんどん進んでいっていますので、そういう意味では国内の投資の可能性も大いにあるわけでありますので、全体のサプライネットを作る観点から、いろんな視点を入れながら強靱化していくという中で、国内への投資も是非促していきたいと考えていますので、そういった意味でサプライチェーンの再構築、強靱化というのも経済対策の中で是非取り上げて、議論を進めていきたいと考えています。
(問)雇用者報酬が前年同期比で、2四半期連続のマイナスだったんですけれども、この分析、御評価はどのようにされていますでしょうか。
(答)これは前年からの評価なものですから、今回はコロナの影響を受けておりますので、前期比で見ると戻ってきています。雇用についても着実に戻ってきています。まだ前年に比べて総労働時間もそうですし、賃金もそうですし、前年と比べるとまだマイナス、求人もマイナスでありますけれども、そのマイナス幅が徐々に縮小してきていますので、着実に雇用・所得の環境も戻ってきていると。
 もちろん大きく落ち込んだ分を雇用調整助成金で休業補償しながら、また、1人10万円の特別定額給付金もお配りしておりますので、家計の負担を支えていくという意味では、政策効果が十分に発揮されていると思いますけれども、これから雇用については非常に大事な局面になってくると思います。
 繰り返し述べておりますとおり、雇用は後から遅れて悪化していく遅行の指数でもありますので、まさに雇用を守りながら、そしてまた新しい産業を育て、そちらに失業なき労働移動、そういった面で雇用が増えていく。新しい産業でも雇用が増えていく。こういった対応も取っていかなければいけませんので、マッチングであるとか移動の支援であるとか、こういったところを頭に置きながら、今は経済対策の中で雇用についても議論を進めているところであります。
 ありがとうございました。

(以上)