河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年8月20日

(令和3年8月20日(金) 11:29~12:01  於:―(オンライン形式))

1.発言要旨

 まず、冒頭幾つかございます。縦割り110番に「経済センサスの調査項目が確定申告の売上情報と重複しているので、税務情報を活用すれば回答負担が軽減できるのでないか」という要望がありました。
 経済センサスは5年に1度大規模調査を行いまして、全国の事業所全てを対象に、日本の経済活動を詳細に把握するための重要な統計であり、GDPの推計等に幅広く活用されているものですが、回答者や統計調査員の負担が大きいことが指摘されておりまして、調査の効率化が求められてきました。
 今般、縦割り110番への要望がありましたので、総務省と国税庁に検討いただきましたところ、税務情報でカバーできる範囲が大きいと思われる個人事業主を対象に、本人の同意の上で、e-Taxの税の申告情報を経済センサスに活用することについて前向きに検討していくことになりました。
 今月下旬から総務省、国税庁、行政改革事務局、それと私の直轄チームによる検討会を始めます。税のデータと経済センサスのデータに差がありますので、この検証、本人同意の方法の検討、そのほか実現に向けた論点・課題を洗い出して、来年度中には結果を示していきたいと思っております。
 前回の調査は5年前になりますので、今年調査中のデータを活用していくということで、本格的な検証は今年のデータを使って来年から行い、2026年実施の次回経済センサス調査に活かすことを目指していきたいと思っております。
 経済センサスは、調査対象の事務所数が約600万、そのうち個人事業主が約200万とされておりますので、この個人事業主の税に関する情報を使うことができれば、報告事項が大幅に減り、回答者、調査員の負担も軽減し、調査結果の精度の向上も期待できると思っております。
総務省、国税庁にはかなり迅速に果敢に決断をしていただきました。ようやくスタートラインに立ちましたので、検討の加速化を進め、調査の効率化、精度の向上をしてまいりたいと思います。
 2つ目、新技術食品やフードテックといわれているものについてです。健康志向、環境志向によって、食べ物に求める価値観が世界中で変わりつつある中で、食べ物の分野で新しい技術である、新技術食品やフードテックに関心が高まっております。ところが、日本の規制が追い付いておらず、新しい技術を使った食品の開発あるいは市場導入に影響があるという声が届いております。
 今般、プラントベース食品といわれる植物を原料とした食品の表示の明確化を行うことになりました。健康上の理由あるいは宗教上の理由から、食べ物が制約されている方がかなり増えてきております。そうした方々のために、大豆等の植物由来の原料で肉の味や食感を再現してつくる「代替肉」といった、様々な食品が開発されてきております。
 内閣府の食堂のメニューにも、時々「代替肉」のメニューがありますが、気付かずに食べると、「代替肉」だというのが全然分からなかったということが私自身も何回かこれまでありました。大豆からつくった「代替肉」だったと思います。
 それ以外にも主なアレルゲンであります牛乳や卵を使わない「代替チーズ」や「代替卵」、それから、普通のハチミツにはボツリヌス菌が混入しているケースがあるということで、私の父親が肝移植を受けて、当初、かなりの量の免疫抑制剤を使っていましたけれども、当初は「ハチミツは駄目です」と言われていたような気がいたします。「代替ハチミツ」は、このボツリヌス菌が入らないということで、リスクが取り除かれているそうです。
 このような植物由来の食品の普及が、食糧問題の解決あるいはカーボンニュートラルといった環境の維持にプラスに働くという効果があるということで、今後世界的に需要が大きく拡大すると見込まれております。
 イギリスのバークレイズ銀行の試算では、2029年までに世界で販売される肉全体の10%、15兆円相当が「代替肉」に置き換えられる、あるいは「代替肉」の市場が拡大するという試算もあるようで、今後消費に影響が出てくると考えられております。
 そのような中で、「肉や魚ではないけれども食品名に『肉』や『魚』という文言を使っていいのか」とか、「掲示やメニューの表示に関する規制が明確ではなく、事業展開の足かせになっている」という声が私のもとにも届いております。
 直轄チームと消費者庁で調整し、今回政府として初めて「プラントベース食品等の表示に関するQ&A」を作成することになりました。Q&Aでは、「代替肉」の食品名に「肉」に関する文言を用いる場合に、一般消費者が表示全体から肉ではないのに肉であるかのような誤認をしないようになっていれば、景品表示法上問題ないということを明確にしました。
 具体的には、「代替肉」の商品名を「大豆肉」とか「Not Meat」とした場合に、「大豆を使用したものです」とか、「肉不使用」といったことが併記されていれば問題ないということにしてあります。反対に「100%植物性」と表示をすると、全ての原材料が植物性であると誤認する可能性がありますので、食品添加物に植物由来でないものを使用している場合には、その旨を表示しなければならないということを明確にしました。Q&Aでは、代替乳飲料、代替チーズ、代替バター、代替魚、代替ハチミツ、またこれらの輸入品に関しても同じ考え方を採用しております。食物アレルギー表示等の食品表示法に関する考え方も明確にしたところです。このQ&Aは事業者向けですけれども、分かりやすく消費者にもチラシを作成して、あるいは消費者庁のホームページでも公開をしていくということになっております。
 井上大臣のリーダーシップの下、消費者庁の迅速な対応に改めて感謝したいと思います。
 ただ、この新技術食品、フードテック分野では、少量の細胞を動物の体外で増やして肉にする、つまり代替肉ではなくて肉そのものを培養して増やす、「培養肉」というものも開発が進んでいます。「培養肉」に関しては食品衛生上のリスク、それから表示に関するルールの明確化がまだできておりませんので、「培養肉」等の新しい分野についての規制の在り方あるいはルールづくりについて、政府を挙げてしっかり対応していきたいと思っております。
 3つ目は、タクシーの規制改革でございます。国交省は、今年の10月から11月にかけて、タクシーのソフトメーターとダイナミックプライシングの実証実験を実施することとなります。今日の14時からこの実証実験に参画する事業者を募集するという発表が国交省から行われる予定であります。この実証実験には、これまでのタクシー事業者のみならず、IT企業ですとか、製造業の事業者など、様々なプレーヤーに参加していただいて、よりよい制度の設計あるいはサービス、製品の提供につなげていきたいと思っております。
 タクシーのソフトメーターの導入に関して、今までタクシーはタイヤの回転数に基づいて距離を計測するメーターを使っておりましたが、GPS情報を基に走行距離を推定するメーターを導入することを認めていくものです。
 現在は計量法に基づいた固有のタクシーメーターを備える必要がありましたが、その必要がなくなれば、コストが下がり、意欲のある者の参入をより広く促すことができるようになると思っております。
 海外でUberを使ったことのある方は、このソフトメーターがどんなものか、経験されているのではないかと思います。
 もう一つは、ダイナミックプライシングと呼ばれるもので、天気やイベントあるいは時間帯で交通の需要、タクシーの需要が変化しますが、それに応じて需要が高いときは料金が高くなる、需要の少ないときには料金が下がるというように、タクシーの運賃を変動させることができる仕組みです。事業者が創意工夫することによって運賃を変動させ、様々多様なサービスが生み出されることが期待できます。
 一方で、利用者が受け入れられない高額な運賃になったり、運賃が事前に分からなくて不安だということがないように、事前に運賃がしっかりと公表されて合意されるという条件が求められることになると思っております。利用者の便益の向上あるいは事業者の負担軽減といった観点から、これまで規制改革推進会議で議論してまいりましたが、国交省に対応いただくことになりました。
 国交省の迅速な対応に感謝申し上げたいと思います。
 また、計量法が、タクシーメーターに限らず、電気代のメーターを含め、様々なメーターを指定しておりますが、新しい技術でこれらを置き換えることができるようになっているものが多々あります。今後もデジタル時代に即した規制改革、価値を生み出す規制改革に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 ワクチンの総接種回数は1億1,500万回近くになり、約4割の方が2回目の接種を終えられました。先日申し上げましたように、大学拠点接種へのワクチンのお届けは来週、職域接種はお待ちいただいている全ての会場に8月30日の週でお届けをすることができる見込みでございます。引き続き職域接種、大学拠点接種、それから自治体の大規模接種にしっかりとワクチンをお届けしていきたいと思っております。
 幾つかの都道府県等の大規模接種会場で、接種の加速化を目指したワクチンの供給の増量あるいは期間延長の要望をいただいておりますので、今後、今まで大規模接種を実施していなかったところも含め都道府県に状況をお伺いしながら、ワクチンの供給可能量の範囲内でしっかり供給をしてまいりたいと思っております。モデルナ社製ワクチンとファイザー社製ワクチンをうまく組み合わせて加速化をしていただくことに協力をしていきたいと思っております。
 特に緊急事態宣言の対象地域では、ワクチンの増量を早く希望される場合もあると思いますので、供給可能量の範囲で、可能な限り前倒しに取り組んでいきたいと思っております。
 前回お話をしましたが、妊婦を一律に接種対象から外しているような職域接種会場、あるいはかかりつけ医がいらっしゃるという連絡をいただいております。もう既に学会から「妊婦さんも接種できます」ということを打ち出していただいております。しっかりと妊婦にも接種をしていただきたいと思っております。
 また、1回目の接種をしたけれども2回目の接種の予約が取れないという方が出ないように、市区町村にはしっかりとした対応をお願いしたいと思います。
 また、都道府県には、都道府県内の自治体の様子を見ながら、2回目が打てない方が出ないように、必要ならば調整をお願いしたいと思っております。
 職域接種、大学拠点接種は、1回目を打った方がその後に退職、退学されても、2回目までは責任を持って打っていただくようにお願いをしております。
 また、早く終わってしまって、会場を撤収するような場合には、近隣の会場にきっちりと連絡をして、そこに2回目の接種の引き継ぎをしていただきたいと思っております。
 また、来月から新学期が始まりますが、東京都、福岡県をはじめ多くの都道府県あるいは市区町村では、学校における感染対策の観点から、教職員、生徒への接種等が行われております。もし、教職員等への接種が完了していない場合は、大規模接種会場や集団接種を活用して、希望する教職員への早期接種を地域の実情を踏まえながらお願いしたいと思います。
 最後に、海外でモデルナ社製ワクチンを1回打って日本に帰国した方、あるいは1回モデルナ社製ワクチンを打って引っ越しして、なかなか2回目の予約が取れないという方を対象に、モデルナ社製ワクチンの2回目接種がスムーズにできるような会場の確保、あるいは既存の会場の中で2回目用の予約をしっかり取っていただけるように、都道府県にお願いをしているところでございます。都道府県の実情に応じて、既存のモデルナ社製ワクチン接種会場あるいは新規のモデルナ社製ワクチン接種会場で対応できるように国としてもしっかり支援していきたいと思っております。

2.質疑応答

(問)2点お伺いします。まず、ワクチンに関して、緊急事態宣言が出ている地域には供給の前倒しをするという発言がありましたが、これはモデルナ社製ワクチンに限ったことなのか、それとも、市町村向けのファイザー社製ワクチンも含めて緊急事態宣言が出ている地域に対して前倒しするのでしょうか。また、まん延防止等重点措置の適用地域はどうされるのでしょうか。
(答)まず、モデルナ社製ワクチンを緊急事態宣言発令地域に出すことを考えております。ファイザー社製ワクチンにつきましては、もう既に第15クールまで基本枠の配分を終えてお知らせしております。そこには変化はございません。接種率が80%を超えるような地域があれば、あるいは市外、県外とのやりくり、その他、必要なところは調整枠で対応してまいります。
(問)まん延防止等重点措置の適用地域の方はどうでしょうか。
(答)取りあえず、現時点でまず緊急事態宣言発令地域からと考えております。
(問)それと、もう一点、別件ですけれども、自民党総裁選挙に関連してお伺いします。来月末に実施予定の自民党総裁選挙をめぐって、高市議員であるだとか、下村議員、あるいは岸田議員の出馬といったものが取り沙汰されています。大臣はかねてより総理大臣を目指すというふうに公言していらっしゃいますが、今回の自民党総裁選挙はどのように対応するおつもりでしょうか。
(答)まず、私の今の仕事をしっかりやりたいと思います。
(問)関連して、大臣は閣僚としてこれまで菅総理を支えていらっしゃいました。菅総理は、出馬することを先の会見で言及しています。総理が出馬される場合は、菅総理を支援されるという理解でよろしいでしょうか。
(答)総裁選云々より、まずワクチン接種をしっかり進め、規制改革を進めるという、今の仕事をしっかりやりたいと思います。
(問)2点ほどお伺いしたいです。8月18日に大臣は菅総理と小渕優子自民党沖縄振興調査会長の3人で会談されたと思うのですが、この会談ではどのような話があったのかというところと、もう一点が、先ほど大臣も言及された緊急事態宣言が発令中の地域へのワクチンの供給についてです。モデルナ社製ワクチンの供給を前倒しということですけれども、沖縄県は接種率がいまだ低い状況です。ワクチンの追加供給についてデニー知事から要請があったと思うんですけれども、沖縄県にどれぐらい出される予定なのかというところも併せてお伺いできればと思います。
(答)これから緊急事態宣言の出されている都道府県といろいろ相談して数量は決めていきたいと思っております。
(問)1点目はいかがでしょうか。
(答)コメントしておりません。
(問)海外でも取り沙汰されています3回目のワクチン接種について、どのようなお考えか、改めてお聞かせいただければと存じます。
(答)まず、希望される全ての国民の皆様が2回接種できるように、今のワクチン接種をしっかり進めていきたいと思っております。その上で、諸外国等で3回目の接種の必要性が取り沙汰されていることは承知をしております。3回目の接種については、田村厚生労働大臣がご判断されることでありますが、いざ3回目の接種をやるとなったときにファイザー社製ワクチンとモデルナ社製ワクチンの必要量については確保しております。
(問)今の話とも関連するんですけれども、先ほど田村厚生労働大臣が会見で、ファイザー社と1億2,000万回分の追加供給を前提に協議を進める旨、発表しました。この1億2,000万回分というのはどういう意味のある量なのか、大臣の考えを教えてください。
(答)来年度のブースター接種、その他の必要性を考慮して、1億2,000万回分ということになっております。
(問)それと、冒頭で大臣も言及もされていましたが、間もなく接種率が4割を達成するという状況になっています。これまで菅総理も8月末までに2回接種4割を目指すというふうに述べられていました。現時点のこの接種率について、どういう評価をされているのか、お考えをお聞かせください。
(答)7月末までに高齢者の接種完了というところからして、いいペースで打てているのではないかと思っております。
(問)最後に1点。今後は、これまでも大臣が言及されているとおり、現役世代ですとか、若年層への接種が課題となると思いますけれども、改めてどう取り組んでいくか、お考えをお聞かせください。
(答)今のワクチン接種は重症化するリスクの高い高齢者の次は、50代、40代というふうに、年齢の高いところから打っている自治体が多いと思います。若い世代は自治体による接種で打つにはもう少し時間がかかるかもしれません。また、大学拠点接種、職域接種では、年齢を問わず打っていただいておりますので、そうしたものを活用していただきながら、順番が回ってきたときには積極的な接種をお願いしたいと思います。
(問)冒頭のご発言で教職員に対する接種を促していらっしゃいましたが、夏休みが終わりに近づいています。より接種を加速化させるために、供給面で増やす等、呼びかけること以外のことは何か考えていらっしゃらないのか。また、中学生、高校生に対しては何らかの対応を考えていらっしゃるのでしょうか。
(答)教員に対しては、それぞれの自治体等で優先枠を作る等の対応されているところがそれなりの数あるようです。また、自治体によっては夏休み中に中学生、高校生の対象となっている方の枠をつくって打っている、あるいは曜日を決めて打っているという自治体もあると聞いておりますので、そこは自治体のご判断にお任せをしております。
(問)フードテックに関する規制改革について伺います。今回、プラントベース食品等の表示規制の明確化を実施する意義と、今後代替食品の世界的需要拡大が見込まれる中で、どのような規制改革、規制緩和が必要になるのか、大臣のお考えをお聞かせください。
(答)1つは、健康上の理由で肉を食べない、あるいは地球環境問題を考えて肉をやめるというような方が増えていらっしゃいます。もちろん宗教的な理由の方もいらっしゃると思います。そのように代替肉、植物由来の様々な新しい食品のニーズが拡大する中で、規制が明確でないために開発ができない、あるいは市場導入ができないという声がございました。新しい市場をつくっていくというのがこれからの日本経済に求められる中で、規制が不明確なのでできなかったというものがこれまでもいろいろな分野でありましたので、その轍を踏んではいけないということで、規制改革をしっかりやっていかなければいけないと思っております。これは、消費者の皆様の選択の幅を広げると同時に、新しい日本の産業をつくっていくということにもつながっていくと思っております。

(以上)