平井内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年8月31日

(令和3年8月31日(火) 11:11~11:42  於:紀尾井町20階 記者会見室)

1.発言要旨


 今日の閣議後の閣僚懇談会において、総理の方から、デジタル庁の発足に当たってお言葉をいただきました。成長力の原動力、そして縦割りを廃止した思い切ったデジタル化を進めなければ日本を変えることができないという、強い意気込みも感じました。そして、三つの柱をご指示いただきました。
 まず一つ目が、行政のデジタル化ということです。これは、スマートフォン一つで、役所に行かずともあらゆる手続きがオンラインでできる社会を作るということで、そのためのシステムの統一・標準化、さらにデジタル化の基盤となるマイナンバーカードの普及等々について触れられました。
 第2に、医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化、オンライン医療・教育を実現して、日々の暮らしを便利に変えていくということです。ベースレジストリを社会で広く共有して、新しい雇用とか投資を生み出して、豊かに成長する経済社会を作るということであります。政府のデジタル職の採用もスタートしますが、デジタル庁が核となって、官民のデジタル人材を育成するというのが2番目です。
 3番目は、デジタル社会形成基本法の中でもうたいましたけれども、誰一人取り残さないデジタル社会の実現。年齢、地域、経済状況などによらず、全ての国民が情報にアクセスでき、そしてデジタル化の恩恵を享受できるようにしようということです。デジタル社会の実現に向けて、あらゆる改革にスピード感を持って取り組んでいただくよう、デジタル大臣を中心に、各閣僚と協力してやってくださいと、そういうご趣旨でありました。
 今日、私は、デジタル改革担当大臣としての記者会見は最後だと思います。まずは、昨年の9月から、皆様方には大変ご協力をいただきましてありがとうございます。
 振り返れば、昨年の9月16日に大臣を拝命して、そこからIT基本法の抜本的な見直しと、デジタル庁の新設という大変チャレンジングな任務であったと思うんですが、関係者の皆さんのご協力によって、何とか明日発足ということになったと思います。特に、デジタル庁の設置ということに関しては、カネもモノもヒトもない組織を、政府としてスタートアップ企業を立ち上げるような感覚で、スピーディーに、それもフロムスクラッチでやるということ。これは私自身も経験したことがないことですけれども、やればできるということではないかなと思います。
 「デジタル改革」というのは、まさに明日からが本番で、デジタル庁のミッションである誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化に向けて、職員一人一人が、スタートアップとして多くの挑戦から学び、デジタル改革を主導すること、あらゆる関係者を巻き込み・連携しながら、ユーザーの体験価値を最大化するサービスを提供することといった、これはビジョンですけれども、そのビジョンを実現することを目指して、日々の行動規範として今後策定するバリューを共有していく、そして、全体として高いパフォーマンスを発揮することが非常に重要だと思います。
 この1年間、いろいろなご指摘とか叱咤激励もいただき、ただし一方で、デジタル庁に対する期待も非常に大きくなっているので、明日以降は組織が正式にスタートするので、着実に成果を上げていくことと、この国の構造改革を5年かけてやるスケジュールを、きっちりと職員の皆さんとも共有しながら進めていきたいと思います。
 デジタル競争力ランキングで世界で27位という現実は、やはり真摯に受け止める必要があると思います。アジアということで考えてみても9位ですよね。マレーシアの下で、日本の下にはカザフスタンという、そういう順位では、これはやっぱり国民も納得しないのではないかなと思っています。その分、これから巻き返す余地が大きいので、そこはいろいろな形で成長戦略に結び付くようにしていかなきゃいけないと考えておりますし、デジタル化ということを抜きに、今後の政策というものはやっぱり考えられない時代になったという意味で、まさにデジタル庁が成長戦略の柱となれるように今後とも頑張っていきたいと、そのように思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)こちらに来て初めての記者会見ということなので、それに絡んだ質問で、大臣はずっと今まで8号館で執務をされて、1年近くされてこられたわけですけれども、今回紀尾井町に移ったわけですけれども、職場の環境とか雰囲気とかがガラっと変わったと思うんですが、どのように。
(答)民間のビルに入るという意味でいろいろと、今までの役所とは違う面もありますけれども、一方で、非常に解放感のあるオフィスで、職員の皆さんもフリーアドレスという形で、また、リモートで仕事をする環境も以前より全然整っているし、そういう意味で、デジタルの政策を進めていく拠点としては大変すばらしいオフィスだなと思いました。あとは、内部のコミュニケーションがしやすいように、打ち合わせをするようなスペースも十分にあります。
 あとは、まさにここで多くの職員が刺激を受け、学び、それを政策に移していくという意味では、そういう情報共有もやりやすい環境になったなと思います。まさに明日からということだと思うので、このスペースを十分に有効に皆さんに使っていただきたいと思っています。
(問)同じビルに入るヤフーだとか、オフィス機能縮小とか、リモートワークも、特にIT企業を中心に進んでいますけれども、その中でこの時期に発足するデジタル庁のオフィスの在り方というのを改めてお願いします。
(答)まずオフィスの在り方として、我々はどうしても機微な情報を扱うということになるので、ビルとオフィス、働く環境のセキュリティというのが非常に重要だと思います。あと、このデジタル庁というのは、単にシステム関連の仕事をするだけではなく、法律も今後作っていかなくてはいけないという意味で、両方の機能を持つと。今までの役所的な機能と、全く新しい、民間の力を借りながら進めるシステム開発等々がここも混在するような形になるという意味で、国会からの距離も非常に近いですし、そういう意味では、法律、法案等々にも対応できるということだと思います。
 あとは、職員の皆さんがやっぱり働きやすい環境ということ、ここを非常に重視をしたということだと思います。実は600人という方が一気にオフィスに来ると、はっきり言って手狭な状況です。ですから、民間企業ほどリモートワークを徹底するというのはできないかも分かりませんが、それでも、霞が関的にはやっぱりリモートワークを目指しているわけで。そういう意味で、デジタル庁ならではの、新しいデジタルワーキングスタイルみたいなものを今後作っていきたいと、そんなふうに思います。そういうことを実現するには、非常に条件の整ったオフィスであると、このように感じます。
(問)デジタル庁の特徴は、各役所にまたがっていたデジタル関連の機能、人員を集約して、いわば司令塔となることだと思うんですけれども、コロナ禍で特に明らかになった省庁間のシステムの乱立、VRS、V-SYSなど、そして地方自治体も同じような目的のシステムをばらばらに作っているのを、今後政府クラウドで標準化していくと。司令塔としてそういう標準化、共通化を進めていく意義について、改めてお聞かせください。
(答)一言で言うと、今までのシステム投資のやり方だと、要するに、全体最適化ということがほぼ不可能だという形になっていたということです。それぞれ独立したシステムが、その中で最適化は多少なりとも行ってきたんですけれども、全体最適化がなかった。そして、やっぱり一番大きな問題は、いざというときに情報連携ができない、end-to-endでつながらないために、国民が望むサービスを提供できないというようなことだと思います。
 そして、コストもほぼ、全てのコストとは言いませんけれども、よくいろんなところで出させていただいているのは、国の場合約8,000億円のうち約5,000億円が維持管理、そして残りの約3,000億円にしてもシステム改修に伴う開発ということで、最大目標がやっぱり現状維持になってしまっているということが一番問題だと。やっぱり、費用対コストという考え方から投資対コストというふうに変えていかなきゃいけないので、そのためのクラウド環境の導入であるとか、正しい技術の採用であるとか、国民が使い勝手のよいインターフェース、UI/UXを作っていくというようなことは、これからデジタル庁の挑戦だということで、デジタル化によって新しい価値を作れるような環境に、できるだけ早く持っていきたいというのが一つです。
 もう一つ、デジタルはあくまでも手段であって目的ではないということで、これからやっぱり各役所にお願いしていかなきゃいけないということに関して言えば、システムだけの話では物事は変わらないので、その政策の最終的な目標を明確にした上で、業務の見直しについて、これは行政改革本部とも連携しながらやっていこうと思います。
 ですから、あらゆる政策に関して、今デジタル化へのシステムの話を除いて進めるということはもうもはやできなくなっている時代だと思います。デンマークなんかも、デジタル法制局みたいなものがあるというのもそういうことだと思うので、ここは要するに、今後の政策判断の中に、デジタルというものを意識してもらうということが非常に重要だと思っていて、そういうことを各省と連携していくというのもデジタル庁の大きな仕事だと思います。
(問)600人の人員を抱える組織となることがほぼ固まりまして、大臣が民間人材から登用された方々が多くいらっしゃるので、どういったメンバーをそろえることができたか、ご感想をいただければお願いします。
(答)この辺りについては、明日全てオープンになると思いますし、今回は、各ポストといいますか、ジョブ・ディスクリプションに対して、多くの方々が手を挙げてくれたというのが何よりだと思います。ですから、やっぱり日本のデジタル化の遅れということを日々感じている皆さんにとって、是非力をそこで発揮したいと、自分のスキルや考え方をそういう中に反映したいと。それが国の未来につながっていくと感じている方が非常に多いということが非常にありがたかったと思います。
 あとは、デジタル庁の中で、民間から来た方々が誇りを持って仕事をして、十分な能力を発揮するためのマネジメントとかガバナンスみたいなものは、まさに今、途中経過なんですよね。やってみなきゃ分からないみたいなところが非常に多いんですけれども、それはやっぱり、十分なコミュニケーションが取れる風通しの良い組織文化がないと、そういうものも醸成されないと思うので、まずはそういうところから目指していきたいと思っています。
 だから、本当にすばらしい民間の方々に協力をいただいて心から感謝を申し上げますし、デジタル庁としては、常に人材を求める体制といいますか、通年採用のような形で、全てのポストがもう埋まっているわけではありません。そういうことですから、そんな感覚で、できるだけ多くの方々に参加してもらえるような、外部とのコミュニケーションも今後とも進めていきたいと、そんなふうに思います。
(問)組織の事務方トップとして石倉さんの名前も少し上がっているところであって、まだ公開されていない話ですので、一般論としてお願いできればと思いますけれども、どういった方だというイメージなどお持ちであれば、ちょっと教えていただければ。
(答)明日以降は十分お話しできるし、ご本人もインタビューにも答えると思うんですけれども。これ、本当は明日しゃべったほうがいいですよね、たった1日のことなので。手続上の話がやっぱりどうしてもあって、今日はデジタル改革担当大臣としての最後の記者会見ということなので、非常にしゃべりづらい中で発言すると、デジタル庁を作るに当たっては、本当に多くの外部の方々、国際的に活躍されている方々、海外のデジタル化というものを身をもって体験している方々から、多くのご意見とかアドバイスをいただいています。
 本当に今回、コロナ禍で全部リモートで、私は一切出張しないということで、コミュニケーションを深めることは、コロナ禍なのでWebということにも納得していただいた上で、随分やりました。そういう中でやっぱり、デジタル庁の意義というか、チャレンジしようとしていることに共感してくれるというところが一番大きなポイントだと思います。ですから、ものすごく大変な仕事だということを理解した上で、グローバルに活躍されている方は、日本にとっても今しかないだろうという、これはもうほとんど多くの方々が言われたことです。このタイミングを逃したら、もう日本は周回遅れのまま、なかなかデジタル化を進められないという危機感を持っている方がたくさんいらっしゃって、そういう方にデジタル監というポストには就いていただきたいと、常々思っていたということです。
 そういう意味で、先ほどお話しになった方も、グローバルに活躍をされていて、いろいろなアドバイスをいただいた方の1人であると思っておりますし、私はたまたま同窓ということもあって、私の卒業した学部・学科で言えば、やっぱりレジェンドですよね。すばらしい大先輩だと常々思っておりました。
(問)先週コンプライアンス委員会も立ち上がりましたけれども、オリパラアプリの発注をめぐっては、IT室の幹部の方が訓告や厳重注意の矯正措置にもなりました。この間、平井大臣のNECの、脅しておいた方がいいという発言もありましたけれども、国民から厳しい目線というのもあると思うんですが、マイナンバーも扱うデジタル庁として、国民から信頼される組織になるためにどうしていくべきかとか、そのあたりのお考えをお聞かせください。
(答)全てオープンにするということじゃないでしょうか。ですから、デジタル化のプロセスをオープンにすると。今回の調査委員会もその一環だと思います。私も、全てをオープンにしてしまえば、いろいろな誤解も生まれないんだろうと思っていて、一部の情報に基づく行動というものでは、やっぱりデジタル化のプロセスをオープンにしたことにはならないと思っているので、今後とも全ての情報を、できる限り、できるものについてはオープンにしていこうと、そんなふうに思っています。
 ですから、コンプライアンス委員会を27日にスタートして、まずいろいろなルールを決めたものを共有をしていくということですし、明日になりますと、当然職員の皆さん全員に誓約書にサインをしていただくというようなプロセスも当然あるわけで。そういう中で、デジタル庁は信頼される組織になりうるというふうに思っています。これはやっぱり、私の責任も非常に多いと思っていますので、今後とも誤解をされないように、できるだけ丁寧な言葉で、全てを説明していきたい、そのように思います。
(問)今回デジタル改革関連法の成立によってデジタル庁成立ということですが、法律が成立してデジタル庁ができるということで、理想としている形としては整うということになると思うんですが、実際国民が利便性を享受するようなサービスであったりデジタル化ということを実現していくに当たって、今後一番、いろいろ課題、まだ実際司令塔としての機能を発揮できるのかとか、内部のガバナンスですとか、あと誰一人取り残さないとか、あるいはマイナンバーカード、まだ普及率3割ほどということで、いろいろ課題はあると思うんですが。大臣として一番、今後実際船出するに当たって、多くの、ここは乗り越えなくちゃいけない課題だなと思われていることは何でしょうか。
(答)デジタル庁の存在意義をまず国民に理解してもらうことが非常に重要だと。なぜデジタル庁を作らなければならない状況だったのか。ですから、さっき言ったデジタル競争力のランキングみたいなものは、はっきり言ってあんまり嬉しい情報ではないんですけれども、そういうものもちゃんと受け止めた上で、じゃこれからどうするんだということを、国民の皆さんと一緒に考えながら進めていくということだと思います。
 一番大きなハードルは何かというと、デジタル敗戦から始まったと報道でもされているんですけれども、そこでやっぱり、今までの当たり前を当たり前にしないという。言い換えれば、今のままではだめだという現状否定というか、そういうことを敢えて受け止めて改革していくというように、意識を変えるということだと思います。
 これは、デジタル庁だけが変わったのではなかなか物事が進まないので、各役所やステークホルダーの皆さんと共にそういう意識を共有して進めると、ここが一番大きなハードルになるだろうと思います。そういう意味で、危機感を持って我々臨んでいますが、その危機感は完全に共有されている状況ではないので、そこのところを乗り越えるのが、まずは一番重要なところではないかと思います。
(問)閣僚としての会見で聞くのは大変恐縮なんですけれども、自民党の二階幹事長が交代をして、9月に党役員人事という報道が出ています。平井大臣、昨日のテレビ番組でも二階さんのことをレジェンドという言い方をされていましたが、改めて受け止めをお伺いしたいのと、解散総選挙も任期満了解散という案も浮上と言われていますが、そのあたりの受け止めもお願いします。
(答)ここは閣僚としての記者会見の場なので、そういう質問には非常にお答えづらいことと思います。ただ、結局、昨日の番組でもある程度はお話しさせていただいたんですが、政治家ってポストが人を育てるところがあるんですよね。そういう意味で、私も今までいろんなポストに就けていただいて、そこは汗をかいてきて、いろんなことを学びということがあるので、多くの皆さんがいろんなポストに就いて活躍されることによって、ひいては自民党の活性化にもつながるし、そのこと自体でまた国会の前向きな運営にもつながっていくんだろうと思います。
 人間は限られた時間の中で仕事をするというのがもう我々も皆さんも同じだと思っていて、政治的資源としての時間をどのように使っていくかという意味においては、全ての議員は同じ条件だと思います。だとしたら、やっぱり多くの皆さんにチャンスがあるというのが、政治の世界に限らず、組織としても望ましいのではないか、そのように思います。
(問)今日午前中に三輪CIOが総理大臣官邸に入られまして、政府CIOとしての職を解くということで、総理から辞令があったというふうに伺っております。大臣、三輪CIO退任ということになるのかと思うんですが、今までの活躍ぶり、どのように評価されていますでしょうか。また、デジタル庁発足後、三輪CIOはどのように関わっていかれるか、そのような方針等があれば教えてください。
(答)IT基本法、そしてそれを改正する中において、政府CIO、遠藤さん、三輪さんのお二人には大変ご尽力をいただいたと思います。業務の見直し、BPRであるとか、システム予算の、特に運営費をカットしていくことに関しては、両名とも大変ご尽力をいただいて、デジタル庁のように横断的な総合調整機能、予算の一括計上等々が法律でちゃんと決まっていない中で、大変力を発揮されたと思います。特に、運営費等々に関して言えば、3割削減という目標は、お二人のリレーで達成をできているということ、これも事実だと思います。
 そういうことで、これからも今まで政府の仕事に関わってこられた皆さんには、やっぱり大所高所からいろんなアドバイスもいただきたいと、今は本当にそのように思っています。

(以上)