甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年10月7日

(平成27年10月7日(水) 12:32~12:52  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 先ほど、臨時閣議で辞表を提出してまいりました。第2次安倍内閣発足以降、2年9か月の長きにわたって、皆さんには大変に御指導、御鞭撻ありがとうございました。またいつの日かお目にかかれる日を楽しみにいたしております。
 先ほどのぶら下がりでも発言をいたしましたが、安倍総理にTPPの大筋合意の具体的内容について報告いたしました。総理より、今般の合意を踏まえまして、TPPが真に我が国の経済再生、地方創生に直結するものとするため、全閣僚をメンバーとするTPP総合対策本部を設置し、総合的な対策を検討するよう指示がありました。
 また、対策を検討するに当たっては、3点。
 まず、第1点といたしまして、大企業だけではなく、地方の中堅中小企業など、幅広い経済主体がTPPを活用して新たなグローバル・バリュー・チェーンを構築することができるようにすること。
 2点といたしまして、TPPにより多様な分野における生産技術の向上など、我が国経済全体の生産性向上につなげていくこと。
 そして、3点目といたしまして、TPPの影響による国民の不安を払拭するために、合意内容を正確かつ丁寧に説明するとともに、農林水産業について、引き続き再生産可能となるよう、強い農林水産業をつくり上げるための万全の施策を講ずることを基本的な目標とするよう指示がありました。
 総理の指示を具体化するために、早急に政府一体となって検討を進め、速やかに総合対策本部を開催し、基本方針を策定いたします。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)TPP交渉お疲れさまでございました。
 安倍首相からも基本方針の策定の取りまとめということで、3点ポイントを指示されたとのことですが、その中での大臣としてご重視していきたいポイントや、その取りまとめの今後のスケジュール感について、取りまとめの時期など見えていたら教えていただけますでしょうか。
(答)TPPは、非常に私自身も苦労しましたし、スタッフもこれ以上ない限界の交渉をしてきました。結果としてどこか1か国だけが得をしてあとは損という協定ではなくて、全ての国がその国なりに計算をしてみればプラスになる、ウインウインの関係の経済連携であった、そういう結果であったと思っております。
 そして、大事なことは、価値観を共有する12か国のこの基準が、世界の基準になっていく、その可能性が極めて高いということです。ウエィティングサークルには、もう、次、すぐ入れてくれという国が並んでいるわけでありますし、恐らく列をなすということになろうかと思います。
 参加する際には、我々が決めたルールを受け入れる国だけが入れるわけであります。今まで企業投資にとっても理不尽なパフォーマンスを要求されるなど、いろいろなことがあったと思います。そういうことはもうできない、してはいけないということを約束する国だけが入れるということでありますから、投資の透明性も大きく前進するわけであります。
 そして、我が国にとって、今まで農産品というのは守るという意識しかありませんでしたけれども、実際に外に出てみれば、こんなに魅力的な貿易商品であったのだということに気がつくわけであります。そして、それの障害になっているような水際措置を解決していく手だてもできたわけでありますし、検疫に関しましても、問題があれば専門家間で協議するという仕組みもできました。理不尽な対応には企業が政府に対して異議を申し立てる、それを第三者の機関で裁定するという仕組みもできているわけであります。今までにない、正にこれぞ21世紀型の通商基盤、ルールの基準が整備されたわけであります。
 そして、この基準が、基本的にたたき台として世界の基準になっていくであろうという、成長するTPP、成長するEPAであります。日本にとって、そして関係12か国にとって、正に歴史的な快挙であると、それぞれの国が理解していると思っております。
 そして、国内対策、これは、例えば農産品で言えば、輸出を武器にしていく。我々が国内的には気がついていない、そして、国際的には注目している強みをどうやって具体的な輸出の強化、生産の増強につなげていくかということ等々、強みをさらに加速させるような手当をしっかりとやっていきたいと思っております。もちろん、関係者が不安である部分には、不安に対応するような措置というのもきちんと手当をしていくことになろうかと思います。
 あわせて工業製品は、ほぼ100%関税がなくなるわけであります。国によっては、日本の輸出先が40%台の自由化率のところも、部門もあるわけでありますけれども、これを即時、そして時間をかければほぼ100%障壁がなくなる、関税障壁がなくなるわけでありますから、日本にとって大きく飛躍するチャンスだと思っております。
(問)今の御説明のところで、不安に対応する措置というのは、もう少し具体的に言うとどのような感じかというのが1点と、それともう一つ、TPPの署名と、それから各国の批准というのは、いつごろになっていくと考えていけばいいのでしょうか。
(答)不安が具体的にどういうものであるかは、対策本部を設置いたします。与党ともしっかり連携をとりながら、強みとして伸ばしていくところ、それから、関係者の不安に思っていること、それが浮き彫りにされてきますから、その不安を解消するために何をすべきかということも含めて対策の中に織り込んでいくことになろうかと思います。
 それから、署名でありますけれども、やはり関係国の中でひととおりそろう中で、長い期間がはっきりしているのがアメリカの90日というのがありますから、それをクリアするということになりますと、今から数えて少なくとも3か月先になります。いわゆる法令との整合性、リーガルスクラブという作業は並行してやってきました。それが署名を遅らせないようにチームがやっておりますから、早ければその90日を経た後に、関係国で署名ができるのではないかと思います。
 署名ができ次第、国会が開いていなければ別ですけれども、直近の国会で各国とも承認を得るという手続に入っていくのではないかと思います。
(問)これから年末にかけて予算の時期ではあるのですが、その対策を練っていくスケジュール的なものと、あともう一つ、TPPとは関係ないのですが、本日の日銀の金融決定会合についての受けとめをよろしくお願いします。
(答)対策は、実はTPPは大筋合意したらすぐ発効するみたいな認識を持っていらっしゃる方、誤解していらっしゃる方もいるかもしれません。少なくとも発効しなければスタートしないですし、発効しても、例えば関税に関しても、据え置き期間やステージングなどいろいろあるわけです。すぐにフル稼働するわけではない。これはフル稼働するには相当長い年月がかかるわけでありますから、その対策も複数年、長きにわたって対応していくということになると思います。
 ですから、いきなり初年度からどんと大きな金額が必要になるということではないですけれども、この強みを伸ばす、不安に応える、これについてはしっかりと現場の声に耳を傾けて、そして実効性を精査しながら、コストパフォーマンスのいい予算に仕上げていく必要があろうかと思います。
 日銀については、前々から申し上げていますとおり、日銀が掲げている政策目標の達成に中央銀行としての適切な判断の上でそれぞれ対応されていくものと思っております。特段私からのコメントはありません。
(問)マイナンバー制度についてですが、5日に制度がスタートしましたけれども、マイナンバーに便乗した詐欺被害というのも確認され、制度のスタートに向けてこれから不安や混乱というのもまだまだ生じていくのではないかという危惧もありますけれども、これから来年1月の運用の開始に向けて、政府として取り組むべき課題、対応策などについてお話し願います。
(答)10月5日にいよいよ作業がスタートしたわけであります。マイナンバー制度をまず正確に、正しく分かりやすく、そしてできるだけ迅速に国民の皆様に理解をしていただくということが必要であります。
 先般も、マイナンバーを使った被害が報告されました。これは、マイナンバーによる被害というよりは、正確に言えば、新しい事態を活用した悪だくみがまた起こったということだと思います。マイナンバーが電話で連絡がいくということは、絶対にありません。市町村から書留で御本人に渡る。御本人じゃない人に渡ることはありません。そして、その通知カードと書類をもとに、御本人の手によって、意思によって、具体的なカードの交付に向けての作業がスタートするわけでありますから、そのことをテレビ、新聞等々の広報メディアを使って、さらに新たな展開をしてまいります。
 私からは、広報の際に、今まで分かりづらいという指摘があった点を分かりやすく、具体的にどんなものが届くのか、こういう書類が届きますよということを分かりやすく伝えられるようにしたいと思っておりますし、手続についても、こういう手続ですからこれ以外のものはありませんということをしっかり御理解いただけるようにしたいと思っております。
 万が一私が再任された場合は、次の会見の際に新キャラクターの、新広報芸人の方も御紹介できればと思っております。
(問)本日、また総理からいろいろ新しい政策の発表があるかとは思うのですけれども、GDPの600兆円、総理が大体2020年ぐらいまでとおっしゃいまして、これも中長期試算と同じだとは思うのですけれども、経済界などから少し無理ではないかと、そういう声が出ているのですけれども、改めてこの実現の可能性と、どのようにそれを実現していくか、手段についてお考えを教えてください。
(答)近い将来に今の500兆円を2割増しの600兆円にという目標を、総理から掲げられました。これは、政府が掲げています成長目標に従えば、オリンピックを過ぎたあたり、2020年を少し過ぎたあたりには達成できる計算になっております。何事も計算通りにはいくかいかないかというのはありますけれども、その近傍で達成できるように対応していくということであります。
 幸い企業収益と雇用指標というのは、もうこれ以上ないくらいの改善を示しておりますが、実はその原資が正しく、正しくと言うと語弊があるかもしれませんけれども、適切に活用されないところに一番問題があるわけです。企業が、なかなか難しいのではないかとおっしゃる方は、自身の余力を使っていないということになるわけであります。あなた方がちゃんと適切な対応をすれば達成できるのですよと、そのために政府は大変な努力をしているわけです。
 TPPも、経済界からは何としてもやってほしいということでありました。私を始め、スタッフはそれこそ死ぬ苦しみでやってきたわけです。最終日に私が個々に報告を受けるのは、午前3時や午前4時半であります。ほぼ期間中、ほとんど睡眠をとらずに懸命な戦いをしてきたということは、その600兆円に向けて政府があらん限りの努力をしているということをしてきたわけであります。日本の案件に取り組むだけではなくて、仲介役もしてきましたし、途上国が苦しんでいる姿を間に割って入るということもありました。日本は自分だけのことではなくて、全体をまとめるためにこれ以上ない努力をしてきたわけです。  
 政府は環境整備をしました。ぜひ経済界も身を切る思いで日本経済を回復させるために努力をしていただきたいと思います。
(問)米国に出張されていて、その間に弱い雇用統計の数字でありますとか、IMFが世界経済見通しを引き下げたりなどがあったわけですが、アメリカ経済や出口戦略などについて、現状、どのような認識を持たれておりますでしょうか。
(答)IMFの見解は、中国経済が減速している影響が従来よりも多く世界経済に影響を与えるのではないかという考え方だと思います。それは確かに、世界第2位の経済が減速していく影響というのは、そんなに軽いものではないと思います。
 ただ、アメリカ経済は、基本的に堅調でありますし、EU経済も回復基調にあります。でありますから、日本経済は、内需を中心にやるべきことをしっかりやっていくということが重要だと思いますし、日本は今後、新3本の矢も含めて、常にとどまらずに新しい対策を次々打っていくというメッセージを国内外に発信をしていくことが重要だと思っております。
 それでは、またいつかお目にかかるのを楽しみにいたしております。

(以上)