甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年9月25日

(平成27年9月25日(金) 10:03~10:32  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 2点報告を申し上げます。
 まず閣議後に開催されました「月例経済報告等に関する関係閣僚会議」の概要について、報告させていただきます。景気は、「このところ一部に鈍い動きも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」としております。
 これは、企業収益や雇用・所得環境は改善傾向にあるなど好循環は続いておりまして、「緩やかな回復基調が続いている」との景気認識に変わりはありません。
 一方で、消費者マインドの持ち直しの動きに足踏みが見られることなどを背景に、消費の改善テンポが鈍いことや、企業収益の改善に比べると、設備投資の持ち直しの動きが追いついていないことといった動きを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、各種政策の効果もありまして、緩やかに回復していくことが期待されます。ただし、アメリカの金融政策が正常化に向かうなかで、中国を始めとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクはあります。こうしたなかで、金融資本市場の変動が長期化した場合の影響に留意する必要があります。
 政策態度につきましては、先月から特段の変更はありません。
 次に、TPPに関してであります。
 先程、「TPPに関する主要閣僚会議」を開催しまして、30日から開催されるアメリカ・アトランタでのTPP閣僚会合に向け、交渉の状況について議論を行いました。
 次回こそ最後の閣僚会合にするという共通認識を持ちながら、各国が大詰めの交渉を継続してきております。知的財産や一部の市場アクセス等々、難しい課題が残されておりますが、各国のギャップを埋めるべく最大限努力したいと思います。
 我が国の国益にかなう最善の道を追及し、不退転の決意と覚悟で臨み、この会合で成功裏に交渉をまとめ上げたいと思っております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)月例経済報告の中でですけれども、今回の基調判断は、「景気は一部に鈍い動きが見られるが、緩やかな回復基調が続いている」です。先程、大臣は、回復基調であるという景気認識に変わりはないとおっしゃいましたが、これは基調判断としては、据え置きなのか、下方修正なのかといった判断はどうなのでしょうか。
(答)景気の基調判断は「緩やかな回復基調が続いている」ということは、変わりはないということです。
 先月と今月で何が違うかというと、景気の基調は「緩やかな回復が続いている」で変わりがない。先月は、一部にばらつきが見られるという表現でした。今月は、そのばらつきが続いているということであります。基調は、底流は「緩やかな回復基調」は変わりないということであります。
 ばらつきは上方に向かっているのもあれば、相変わらず下方が続いているのもあるということであります。上方に向かっているのは、第三次産業活動、サービスであるとか、あるいは企業収益、特に企業収益は最高値を更新しております。その一方で、消費や輸出がいま一つというところであります。
 設備投資は、マイナスという表現ではありませんけれども、そこそこの数字は出ていますけれども、企業収益が過去最高を更新しているのに比べれば、追いついていないということであります。減価償却に比して、それを置き換えるという程度でありますから、内部留保が急激に増えてきている。それが投資により積極的に使われるべきだと思っております。
 一方で、所得環境も伸びていますけれども、身の回り品、肌感覚での品物が上がっている。一方で、肌感覚でない電気、都市ガスなど、自動引き落としされるような、財布から直接出るものではない部分は下がっている。だから、上がっているものは肌感覚、下がっているものは肌感覚でないというところが、所得環境が改善しているにもかかわらず、それに見合った回復基調にないということだと思います。
 ですから、原資はしっかりあるわけです。そして、所得環境の改善は続いているわけであります。ですから、原資が好循環により強く反映されていくということが必要なのだと思っております。やるべきことはよく分かっておりますから、アベノミクス秋の陣では、しっかりそれを、ツボを押していきたいと思っております。
(問)となりますと、この基調判断というものでいうと、決して下方修正でもないし据え置きでもないということですか。
(答)悲観的になる必要はないということです。底流は、「緩やかな回復基調は続いている」ということでありまして、ただ、前月ばらつきが見られる。今月、そのばらつきは収束しているかというと、ばらつきは続いている。どこのばらつきかはよく分かっておりますし、どこを押せば、そのばらつきが解消していくであろうということもよく見えてきているということでありますから、10月にも開催されるであろう新たな対話の機会を通じて、そのよく分かっているツボをしっかり押していきたいと思っております。
(問)一方で、今日、消費者物価が2年4か月ぶりのマイナスとなったのですけれども、これについて大臣はどのように受け止められていますでしょうか。
(答)これも原因・結果がはっきりしているわけであります。エネルギー価格の下落です。物価がマイナスというのは生鮮食品を除いたコアをおっしゃっているのだと思います。変動が著しかったエネルギー価格も外しますと、内閣府試算ではプラス1.1、総務省でも0.8でしたか。これは前回と比べても、物価の上昇基調に入ります。ですから基調としては、特殊要因を外していくと、現状としてはプラス幅が伸びているという判断でいいかと思います。
(問)今、物価上昇のお話がありましたけれども、そうであると、一部マーケット等で言われている追加緩和の必要性というのは、今回のでは特段考えてはいないということですか。
(答)ここは私が指示するものでもありませんし、日銀、中央銀行当局が、適宜適切な判断と対応を、その都度されるのだと思っています。
(問)TPPですけれども、閣僚会合の今月末開催が正式発表されまして、今日、会議も経まして、その中のサンフランシスコの協議が行われた自動車や、バイオ医薬品のデータ保護期間、乳製品など残された課題の交渉の状況を踏まえて、今回の閣僚会合での大筋合意への見通しはいかがでしょうか。
(答)残されている3つ、4つの大きな課題、その課題によっては、前進は間違いなくいたしております。ただ、手放しで楽観的にいられる状態ではないということでありますから、日本が関わる問題については、引き続き事務折衝をしていきます。そして、CN(首席交渉官)会合でも、大臣会合に上げる残された課題は極力小さくするための努力が、数日間行われると思います。その上での閣僚会合であります。
 100%ということは、まだ言えませんけれども、全力で最後の閣僚会合にしたいと思っております。
(問)今月の月例についてお伺いします。
 これまで示されてきた基調判断の方向性について3種類、上方、下方、あるいは据え置き、これまで必ず示されてきましたが、今回は示されないということなのでしょうか。下方なのか据え置きなのか、どちらでしょうか。また示されないということであれば、その理由についてお伺いできればと思います。
(答)白か黒かというのを聞かれたいのだと思います。ただ、非常にバイアスがかかることになります。基調は緩やかに回復していて、回復を促進する要素は、しっかり蓄積されつつあると、それが回復基調をより大きくするための動きに、まだ一部しかつながっていないということであります。ですから、こういう表現にさせていただきました。白黒で表現しますと、そういう要素が失われていってしまうのではないか。やれ下方だ、というようなことになりますと、そういうマイナス要素が、そういう方向につながっていくという認識を持たれる危険性があると思います。
 しっかりとしたデフレ脱却をして、軌道に乗っていく過程にあるということを認識していただきたいと思います。
 原資はしっかり確保されている。しかも企業収益は過去最高値を、これをまた更新しているわけであります。賃金も実質がプラスに移行しつつあります。
 しかしながら周辺の状況、例えば中国経済や株の状況等々、あるいは肌感覚の物価の上昇等を見て、守りに入っている。基本環境は整いつつあるのに、それがマインドの不安で、そういう方向に向かってしまってはいけないということでありますから、非常に微妙な状況下にある。状況は完備しつつある。あとはボタンの押し方次第というところにありますから、その辺の理解をしていただきたいということであります。ですから、白黒判断ということは余り適切ではないのかなと思います。
(問)これまで示されてきたものを、今回示されない。今後も示されない方針であるのか。それとも一般の方に誤解を生むというような認識であるならば、それは大本営発表と捉えられかねないのではないか、信頼性がなくなるのではないかと思うのですが、それについてはいかがお考えですか。
(答)全体の信頼性を失うようなバイアスのかかった白黒判断は適切でないということです。正確に現状をお知らせする必要があるということだと思います。むしろ大本営発表にならないような伝え方をしているつもりであります。
 それから過去、必ず白黒判断みたいなことが行われてきたわけでもありません。2007、2008年から、この判断が使われているようです。
(問)来月以降はどうされる御予定ですか。
(答)どうしましょうか。よく相談しましょうか。
(問)関連してなのですけれども、私の推測ですと、要するに景気判断を下げると、補正をやれであるとか、やれ財政出動しろという声が出てくるので、やりたくないというように、そのように言いたくないというように聞こえるのですけれども、現状では補正等々、いわゆる与党や、もしくは官邸の一部の人たちが求めているような経済対策、財政出動が必要ないと現状でお考えになっていらっしゃるかどうかを教えてもらえますか。
(答)現状は、繰り返しになりますけれども、底流は緩やかな回復が続いていて、これを力強くするための要素も整いつつあるわけです。ただ、不安心理が一部に働いて、この好循環の目詰まりを一部起こしている。ですから、目詰まりを取ってやるボタンを押す必要があります。それは準備しているわけでありますから、方向が逆を向いているという判断は、これはバイアスのかかった判断になってしまうわけでありますから、そこの要素は整っている、そして、ボタンの押し方も分かっている、ボタンを押すための環境整備も今整えているということでありますので、そこをしっかり見ていただきたいという思いであります。
 ですから、現時点で、補正を含めた経済対策を云々はしておりませんが、ただ、総理が三つの柱というのを掲げられました。これは具体的に、今現状500兆円の名目GDPを600兆円にするのだと。これは、かつて所得倍増計画というのがあって、国民に広く、肌感覚で成長している実感を持ってもらうということを目標に掲げました。形は違いますけれども、GDPはデフレ下では減っていく傾向にあった。現状維持以下でした。GDPというのは伸びていくものであるということを具体的な数字をもって、今よりも2割方伸ばしていくと。これは、目標として掲げている実質・名目成長率が続いていけば、オリンピックを過ぎたころには達成できるのではないかと思います。具体的な目標年次はこれからの議論になると思いますけれども、そういう見える形にして、成長を実感してもらいたいということです。
 それからもう1点、子育てと介護というのは我々が取り組むべき大きな政策の柱の一つであります。子供を持ちたいと希望する人が、その思いがかなえられるような環境を整備していくこと。これは財政的な支援もあるのだと思います。
 そして、3本目の介護離職者をなくしていく。これは、アベノミクスの効果が数字の上ではかなり出ていて、それを実感する人もかなり出てきておりますけれども、しかし一方で、まだ全国津々浦々というまでには、肌感覚で感じていないということだと思います。それを、肌感覚でアベノミクスの成果を感じていただくという政策にもつながっているのだと思います。
(問)前の三本の矢と今回の三本の矢というのは、前のものを否定して出てきたということではないとすると、どういう関係にあるということですか。
(答)経済の成長、経済の再生が最優先と、軸足をもう一度置きますということを宣言されています。この経済の再生の具体的な恩恵が、こういう形になっていきますということだと思います。
(問)文部科学大臣が新国立競技場計画の白紙撤回の責任をとって辞任を申し出たということですが、これについて御所見ございましたら、お願いします。
(答)直接彼があの案を採用したわけではありませんけれども、彼なりの結果責任の取り方の表明だと思います。
(問)昨日、総理が発表された新しい三本の矢と、前の三本の矢の位置付けについてなのですけれども、昨日の総理の会見では、前の一本目の矢であった金融緩和についての言及は特にありませんでした。アベノミクスの第2ステージでも、物価2%の目標は引き続き変わっていないという理解でいいのか。大臣のお考えをお聞かせください。
(答)もちろん変わっていません。
 三本の矢は、三本の矢を構成してデフレからの脱却を図るということです。それは安倍内閣の至上命題であります。脱却を図ったものが全国津々浦々、肌感覚で感じられるような政策の浸透をしていく、その大きな柱が日本の長期的、中長期的な、一番大きな課題である人口減少・少子化に応える政策、そして、高齢化社会の中の不安要因の介護難民をなくしていく。全ての国民が、アベノミクスによる経済成長を肌感覚で実感できるような環境整備、後押しをしていくということであろうと思います。
(問)昨日、FRBのイエレン議長が、年内の米国の金利の利上げが行われる可能性が高いと発言しているのですけれども、この発言についての受止めをお願いします。
(答)アメリカ経済は改定値で成長率3.7%、相当高い数字に改定修正をいたしました。アメリカ経済が力強く回復していくと、そういう過程の中にあって、未来永劫利上げをしないということでは当然ないわけでありますから、それはアメリカ経済の回復の力強さとあわせて、アメリカ中央銀行当局が適切な判断をされるのだと思います。
(問)昨日、安倍総理がGDP600兆円の目標を掲げましたけれども、このタイムフレームについてはいかがお考えでしょうか。
(答)先程申し上げましたように、向こう10年間、名目3%、実質2%の成長を掲げております。それが達成できるとすれば、オリンピックを超えたそう遠くない時期に、600兆円、今の名目GDPの2割増しは達成できるのではないかと思っております。
(問)先程の月例経済報告の件で、お考えはよく分かったのですけれども、事務方のレクチャーではそういう御説明があって、こちらが受止めとして下方修正と書くことは差し支えないということをはっきり聞いたものですから、このままいけば新聞にもそのように書こうと思っていたのですけれども、そうしたら、これは間違いになりますか。受止めでこちらが書くということでは。
(答)事務方がどういう意味でそうお伝えしたかというのは定かではありませんけれども、私は、先程来申し上げていますとおり、この表現は、回復基調が続いているということは先月も今月も変わらない。中身にどういう不安定要因があるかというと、ばらつきがあります、出っ込み引っ込みがありますということでした。今月は、その出っ込み引っ込みが、そのまま収束しないで続いていますということであります。それが全てであります。
 申し上げましたように、上方に向かっている部分の最たるものは企業収益であり、これは過去最高を更新しているということです。過去の企業収益の上昇のトレンドから見ますと、その上昇に比して設備投資等がかなり伸びていくのです。ところが、その企業収益の上昇と設備投資がどんどん乖離をしております。設備投資、主要業界で見ますと、償却分プラスアルファ程度でありますから、当然、内部留保はどんどん積み上がっていくわけであります。そこは企業の経営者のマインドがデフレから脱却をし切っていないという大きな点だと思います。それは、原資はありますし、賃金改善は続いておりますが、賃金環境も実質プラスというところに変わってきつつあります。これは27か月ぶりの変化です。ですから、間違いなく改善変化は続いているということですけれども、もっと大きな変化になっていいはずなのであります。そこの背中をしっかり押して、それから賃金が、上昇が一過性のものであるのではないかという不安心理を払拭して、賃金改善は経済が成長する中で未来永劫続いていくものであると、安心して消費をしてくださいということ。
 それからあわせて、不安要因である子育ての支援と、それから介護に対する支援、施設介護を少し増やしていくという予算措置もしていくことになろうかと思います。ですから、消費が伸びない、所得が増えているにもかかわらず消費が伸びない不安要因を解消しつつ、積み上がる収益を、より好循環に回す後押しをしていくということでありますから、原資はある、原因は分かっている、環境整備を全部整えて、総理が発表されたわけであります。
 いよいよ10月、第2ステージからそれを実行していきたいと思っています。
(問)引下げと書いたら、それは間違いになるということですね。
(答)それは皆さんの御判断です。
(問)判断で書く分にはいいということですか。
(答)私の意を御理解していただく表現になればいいなと思います。
(問)TPPの主要閣僚会合は今日行われまして、席上で総理から何か指示や激励と、何かお声掛けはあったのかということと、一部では、ニュージーランド側が、今回の閣僚会合で合意が少し難しいのではないかという見方もされているという報道もあるのですけれども、各国間の認識と日本側の気持ち、意気込みというところを確認させて下さい。
(答)総理からは、国益を踏まえて、全力で合意が達成されるように最大限努力してほしいという御指示であります。
 ニュージーランド側がいろいろなことをおっしゃっているという報道は承知いたしておりますが、交渉のいよいよ最後ですから、いろいろなゲームをされるのだと思います。このTPP交渉が頓挫して一番損するのはニュージーランドだということは、全ての参加国が承知しております。

(以上)