甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年8月17日

(平成27年8月17日(月) 9:15~9:37  於:合同庁舎8号館1階S101・103会見室)

1.発言要旨

 本日公表しました2015年4-6月期GDP速報、いわゆる1次QEでありますが、実質成長率は前期比年率マイナス1.6%と、3四半期ぶりのマイナスとなりました。
 その要因といたしましては、中国を中心としたアジア向けや、アメリカ向けの輸出が減少したことに加えまして、消費者マインドの持ち直しの動きが緩やかになる中で、天候不順の影響であるとか、4月からの軽自動車税の引上げの影響もありまして、個人消費が前期比マイナスになったことなどが挙げられます。
 他方、名目成長率は前期比年率で0.1%のプラスとなりました。
 ただし、最近の我が国の経済の現状につきましては、企業収益は過去最高水準にありまして、雇用・所得環境の改善が続くなど前向きな状況が続いております。
 今後につきましては、労働需給が引き締まりつつあるなかで、正規化の動きが続くと期待されるほか、今年の春闘での賃上げ率が17年ぶりの高い水準、ボーナスは7年ぶりの高い水準となりました。これは連合調査ですと、300人以下の中小企業におきましても、17年ぶりの賃上げ水準と発表されております。
 さらに、最低賃金の引上げ目安額は政権交代後2年連続の大幅な引上げ額を更に上回るなど、所得環境の改善傾向も続きまして、個人消費は徐々に改善をしていくものと見込まれます。
 また設備投資についてでありますけれども、企業収益の改善等を背景にしまして、増加していくことが見込まれています。
 政府といたしましては、プレミアム付き商品券の発行など、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を具体化する平成26年度補正予算及び平成27年度当初予算を着実に実行してまいります。プレミアム付き商品券は、4-6月期の時点では実施率が4割弱でありましたが、7-9月期の計画を見ますと、9割強になっております。これが消費の後押しをしてくれるものと思います。
 また、より力強い賃金上昇の実現を促し、過去最高水準の企業収益から、投資を喚起することによりまして、経済の好循環を更に拡大、深化させてまいります。
 これにより、景気は緩やかに回復していくことを見込んでおります。引き続き経済動向を注視しまして、経済財政運営に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)消費と輸出についてお伺いします。
 先日来、中国の経済の減速や、人民元の切下げなどありましたが、中国向け輸出の更なる影響や、インバウンドへの影響なども懸念されますけれども、今後、7-9月期も含めた影響についてどのように考えるかお願いします。
(答)今回、GDP1次QEがマイナスになりました主要因は、輸出の減少、更に消費が若干弱含みということ、それから設備投資についても期待されたような上昇局面にないということだと思います。
 輸出につきましては、中国向けにつきましては、スマホ等を構成する電子部品等の輸出が伸びていないということであります。アメリカ向けには、この資源価格の低下傾向を通じて、アメリカへの資本財の輸出が伸びていないということが原因になっています。中国につきまして、中国経済の減速が中国自身、そして世界経済に与える影響を懸念する声があるということをよく承知いたしております。これは中国の適切な対応を注視するということになろうかと思っております。中国政府自身は、過去、特に日本のバブルの発生、それから崩壊以降の施策については、よく事前に勉強されているようでありますから、その轍を踏まないように、早め早め、先回りして対処するということをお話いただいているようであります。中国の対応をしっかり注視していきたいと思っております。
 アメリカ経済につきましては、基本的には回復基調であります。資源価格が低下している。これは日本経済にとっては、ある意味プラスに働いているわけでありますけれども、資本財輸出が思うように伸びていないということになってきますが、しかし、アメリカ経済自身は回復基調にありますから、これはそう懸念をする材料ではないと思っております。
(問)今回のGDPのマイナスの要因として、天候不順や軽自動車税の引上げというのを挙げられていますけれども、そうすると今回のGDPがマイナスになったのは、ある種一時的な要因の側面が大きくて、足元は順調に回復しているという認識でよろしいのでしょうか。
(答)はい。全てとは言いませんが、一時的な要素はかなり大きいと思います。天候不順、特に6月は低温で降雨量が非常に多かったわけであります。そこで夏物衣料品や、あるいはエアコンを中心とする白物家電の伸びがかなり落ちました。あるいはプレミアム商品券の消化率がまだ40%弱であります。7-9月期になりますと、これが9割以上の執行率になりますし、特に7月下旬、そして8月は非常に真夏日が連続して、記録更新で、エアコン需要も随分伸びてきたわけであります。それらを勘案しますと、回復見込みはかなりあるのではないかと思っております。もちろん、それが全てではないと思っておりますから、しっかりと市場の動向を注視しながら、適切な経済財政運営に努めていきたいと思っております。
(問)今回、設備投資がマイナスになっていますけれども、この背景についてどのように考えていらっしゃるのか。また、今後、期待されるように、設備投資が伸びていくかどうか、これはかなり注目されると思いますが、その辺のお考えをよろしくお願いします。
(答)御指摘の点は、政府として経済財政運営をする際に非常に注目をしている点であります。日銀の設備投資の見通しによりますと、今年度当然プラスということが出されていますから、そう心配はないと思いますけれども、しかし私自身が認識している大事な点は、企業収益が過去最高水準なわけです。では、企業水準を背景としたものが過去最高水準になっているかというと、伸びてはいるけれども最高にはなっていないわけであります。具体的に申し上げますと、賃上げであります。17年ぶりでありますけれども、企業収益の過去最高水準に見合ったとまでは行っていないのではないかと思います。
 特に、設備投資はプラスになって、進んではいますけれども、あるいはリーマンショックに戻していく、政府としての設備投資計画は順調に進んではいますけれども、もっとより力強いものがあってもいいのではないかと思います。どういう方向に設備投資をしていいか見定められないという企業の声も聞こえますけれども、生産設備自身のビンテージを見ますと、日本の生産設備、あるいは情報化投資についても遅れているし、ビンテージはかなり古くなっているわけであります。その点を見ても、日本の産業界の基礎的な競争力というのは落ちているはずであります。
 政府の施策効果によって収益を上げていく。それを自力の競争力につなげていくという認識を経営者にはもっと強く、危機感を持っていただきたいと思っております。 
 つまり、政府といたしましては、過去最高の収益を経済の好循環につなげていく努力がもう一段必要だと思います。賃上げと設備投資であります。
 この秋には、設備投資に関しての官民対話を、総理が主催で行うということにもなっています。そこで問題意識を共有して、環境整備に努めていきたいと思っております。強力な設備投資、そしてもう一段の賃上げ、この好循環をつくっていきたいと思います。
(問)今回やはり驚いたのは、思ったよりも個人消費が伸びていなくて、しかも、雇用者報酬などを見ると、やはり物価の上昇等々に賃金が追いついていないのではないか。前々からずっと指摘されていることですが、少し個人消費が弱いのはなぜだと分析されているのか。天候不順以外に、いろいろ要因があるのではないかと思うのですけれども、どう思っていらっしゃいますか。
(答)名目賃金は上がり続けています。賃上げが続いていることは確かです。そして、4・5月の総体で、実質総雇用者所得もプラスになっているという報告もあります。
 そこでどうして消費行動がそれに伴わないかといいますと、目先の生活必需品、つまり食料品、その中でも生鮮食品が上がっています。それが肌感覚として、物価の全体平均よりも高く物価が上がっているという消費者感覚、肌感覚になっているのだと思います。それに比べて、その比率からすれば、肌感覚での消費者物価の上昇からすれば、賃上げがそれに伴っていないという感覚、肌感覚があるのだと思います。それが消費行動を内向きにしているのではないかと思われます。
 そこは、やはり賃上げが続いていく、力強い賃上げが続いていくという、こっちも肌感覚で感じていただくということが大事だと思いますので、引き続き過去最大規模の企業収益を、過去に類を見ないような賃上げにつなげていくと、それが更に企業収益を堅調なものにしていくという好循環を、企業経営者に認識をどうしてもらえるかということが大事だと思っておりまして、政府としてはそこに全力を尽くしたいと思います。
(問)すみません、もう一つですが、輸出ですけれども、先程、景気の認識としては、今のところ一時的である、一時的な落ち込みであって、踊り場ということだと思うのですけれども、一方で輸出に関しては、かなり海外環境の厳しい状況があって、余り楽観できないのではないかという気がするのですけれども、その辺の見通しは若干甘いのではないかと聞かれたら、どのように大臣はお答えになりますか。
(答)アメリカ向けについては明るい見通しが持てると思います。アジア、なかんずく中国をどう見るかということだと思います。余り悲観的になり過ぎない方がいいとは思います。悲観的な環境が実体経済を悲観にするということを考えれば、余り悲観的に見ない方がいいと思います。
 ただし、御指摘のように楽観視しているわけではありません。中国が適切な対応を、政策対応をとってくれることを期待しているということであります。
 あわせて、内需の力をより強くしていくという認識で政策運営をしていくということも、より重要になってくるのではないかと思っております。内需の力を伸ばしていくと、消費力を伸ばしていくということは、今まで以上に重要視していきたいと思っています。
(問)今、最後おっしゃったことですけれども、例えばこういうとき、与党からは補正予算をどうするのかという議論が、気が早いですけれども出かねないのですけれども、大臣は今のところどうお考えでしょうか。
(答)この時点で直ちに補正予算のような経済対策をということまでは想定しておりません。日本経済に内需を盛り上げていく原資は多々あるわけでありますから、その原資を有効活用していくための道筋を、しっかりつくるということと、その有効活用が更に国外経済を強化していくという認識を共通なものとしていくということが大事だと思います。
(問)賃上げが先月17年ぶりの高い水準になっているにもかかわらず、やはり賃金の伸びが物価の上昇に伴っていないというようなことでいくと、円安誘導で企業収益を高めていくというアベノミクスの政策に対して、国民の中からは、今回GDPのマイナス成長で、改めてそれは本当にうまくいっているのだろうかという疑問を感じる方もあると思うのですが、その問いかけに対して、本当にうまくいっているのだろうかということに関して、どうお答えになりますでしょうか。
(答)まず、誤解を受けないように。政府は円安誘導を目途としたものではありません。金融緩和政策、資金がしっかり回っていくような政策をとったと。その結果として、副作用として、そういう効果は出てきているということであります。
 それから、アベノミクスの経済政策が本当に効果を上げたのかと。これは全て、実質も名目もGDPが改善していると。特にGDPデフレーターは現下にあってもプラスになって、かなり伸びているわけであります。
 原点を認識する必要があると思いますが、何が一番悪かったかということは、デフレ経済だということです。デフレ経済を脱しなければ全てがうまくいかない。これは、経済関係に関わる者は基本中の基本として認識しておく必要があります。現象面でいろんなものが出たからデフレ脱却が間違っているのかといったら、これは木を見て森を見ないということであります。
 デフレを脱却する過程の中において、いろいろな現象は出てきます。しかし、それは、デフレを脱却し、健全な経済を回復していく過程におけるいろいろな現象だと認識する必要があります。
 もちろん、個々の現象が全体に与える影響が大きい場合には、それを極小化するという努力は必要でありますけれども、全体の道筋を間違ってはいけないというふうに思っております。
(問)個人消費のところで、住宅については少なくとも実質ベースで見ると悪くないようですが。
(答)そうです。
(問)ただ、一方で個人消費、耐久財・非耐久財はどれを見ても弱い感じですけれども、先程の賃金の回復、賃金は、実質雇用者報酬は4~6月期はプラス0.7と6四半期ぶりにプラスと見ているのですが、そこら辺の消費の中も、まだ強いところ、弱いところ、そういうところがあると理解すれば良いのか。
(答)そうです。
 住宅は、100万戸に近い、かなりの回復を見せてきております。これは好材料でありまして、消費者にとって一生ものの購入については、慎重でありましたけれども、購入する購買力というのはついてきているということだと思います。
 一方で、目の前に目につきやすい、皮膚感覚になりやすい食料品についての値上がりが大きいものでありますから、全体として、実質収入が下がっているような感覚になるのだと思います。一方で、原油価格等はかなり下げてきていますから。しかし、それは家計上の肌感覚では、食料品の値上げとエネルギー価格の下げというのを相殺するような感覚は働かないのだと思います。その辺の意識のギャップが具体的な消費行動にあらわれているのだと思います。
 しかし、その下がっているものと、上がっているものを相殺してくださいと政府がお願いするのではなくて、肌感覚として上がっているものがあるにせよ、賃上げは肌感覚として、それを凌駕していくような、将来に向けての期待が持てるという経済にしていくということが大事だと思っております。したがって、賃上げは何巡かしましたけれども、これで終わるのではなくて、賃上げというのは、企業業績がいい限りは、それを反映していくものであるというシステムが定着していく。それが正に好循環であり、実は企業側にとってみれば損をしているように見えるかもしれませんけれども、それが得になってくるという認識をどこまで共有できるかだと思っております。

(以上)