甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成27年6月15日

(平成27年6月15日(月) 18:52~19:08  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告申し上げます。
 景気は、「緩やかな回復基調が続いている。」としまして、先月から判断を据え置いております。これは、これまで横ばいで推移してきました設備投資に持ち直しの動きがみられるものの、生産や輸出などには依然一服感がみられていることを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、雇用・所得環境の改善傾向が続くなかで、原油価格下落の影響や各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待されます。ただし、海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要があります。
 政府といたしましては、経済再生と財政再建の双方を同時に実現していくことといたしておりまして、このため、6月末頃までにいわゆる「骨太方針」、「規制改革実施計画」及び「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」を取りまとめ、「日本再興戦略」を改訂いたします。また、好調な企業収益を、政労使の取組等を通じて、設備投資の増加や賃上げ・雇用環境の更なる改善等につなげ、地域や中小・小規模事業者も含めた経済の好循環の更なる拡大を実現してまいります。更に、「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」及び平成26年度補正予算を迅速かつ着実に実行するとともに、平成27年度予算を円滑かつ着実に実施をしてまいります。日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待いたします。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)設備投資について、今回、判断を上方修正ということで、これまでも緩やかに回復してきて、それが増勢を増したというところについて、その背景と、先行きについて改めて御見解をお伺いしたいのですけれども。
(答)設備投資は、国内の製造業機器のビンテージが大分古くなってきています。経営者の意識が攻めの経営に変わっていくにつれて、生産性向上に向けた投資が行われていくと思います。若干その兆しが見えてきたと思いますが、引き続き経営者の背中を押していくような取組を、しっかりしていきたいと思っております。
 政府といたしましては、企業の高収益が賃金、下請代金の改善に回り、それが消費を支える、あるいは投資を支える、そして、リーディングカンパニー自身が設備投資、それから研究開発投資を加速するということを強く期待いたしておりますし、冒頭申し上げましたように、経営者の背中を押すようなことも、しっかりしていきたいと思っております。
(問)設備投資が、先ほど御説明がありましたように、一歩改善ということですけれども、一方で個人消費が、大分よくなってきているが、いまだなかなか実際の消費行動に結びついていないということですけれども、その辺についてはどのように分析しますでしょうか。
(答)3月がかなりよくて、4月に期待すると、今度は降雨量が例年の2倍になって、外出が控えられる、外食が控えられるなど、なかなか簡単にはいかないと思っています。
 ただ、賃金の改善が進んでおりますし、夏のボーナスも何年かぶりのいい数字が出るようであります。実質賃金がようやくプラスになったという報道もありますが、ようやく雇用環境から今度は賃金環境、給与環境が改善してくると消費の拡大の環境も整ってくるのではないかと期待いたしております。
(問)先ほど大臣が総理のところに、政調会長等々と一緒に入られていたと思うのですけれども、骨太の方針の方向が決着したということなのでしょうか。
(答)財政再建について、骨太ではしっかりその道筋を示すということになっております。党もかなり意欲的な方向性を示されております。財政再建に取り組む熱意が政府、そして与党と高まっているのは極めていいことだと思っております。
 いずれにいたしましても、安倍内閣の大基本方針は「経済再生なくして財政再建なし」ということでありますから、その趣旨を与党と共有しながら、間違いない財政再建の道筋を描いていきたいと思っております。
(問)そうすると、まだ具体的な決着には至っていないということでしょうか。
(答)党は党の方での考え方をお示しになる。そして、政府としては、その党の思いもしっかり受け止めながら、具体的な絵図を描いていくのは政府の方でありますから、しっかりとしたものを描いていきたいと思っています。
(問)先ほどの官邸の話ですけれども、総理、政調会長とお三方でお話になられたわけではないということで、よろしいでしょうか。
(答)そうではないです。党と政府が一字一句同じというわけには、それはいつのときもいかないわけでありますけれども、方向性、向いている方向が一緒であるならば、そこに到達する手法はより効果的なアプローチをお互い探すということだと思います。
(問)大臣も総理とそのお話をお二人でお話しなさったということでよろしいのですか。
(答)今こういう方向で骨太の方針をまとめつつありますという報告だけはさせていただきました。それこそ二、三分の話ですから。
(問)いわゆる経済の好循環に対して強く期待したいという御発言をされましたけれども、今現在はそういった経済の好循環の兆しが出ているのか、それともまだまだ見えていない、もう少し見えてこないと思っているのか、どのように現状を受け止めておられますか。
(答)もう確実に兆しは出ています。経済、雇用をあらわす各種指標、数字が、去年は数年ぶりや十数年ぶりという表現でしたけれども、昨今では、四半世紀ぶり、つまり20年ぶり、25年ぶりという数字がずっと並ぶようになりました。相当な経済指標、雇用指標に関して、そういう数字が並んでおります。間違いなく、好循環が回っているということだと思います。2巡目に入って、好循環の最後の、そして最大の課題とも言える実質賃金をプラスにしていくという姿も見えつつあります。まだ、速報値のことですから、これが改定値で、そして連続してプラスになっていく姿が出てくれば一段とデフレ脱却に近づいてくるということになろうかと思います。
(問)今のお答えに関連して、好循環の手応えについて別の角度からお尋ねしたいのです。それは、来年、特に再来年の消費税率を10%に引き上げるときの経済環境に、今の好循環が3巡目、4巡目とつながっていくのかどうかをお尋ねしたいと思います。
 というのは、今日の午後3時に公開された、先週10日の経済財政諮問会議の議事録の中で、麻生大臣はこんなことをおっしゃっています。財務省としては2017年に消費税率を引き上げられなかったら駄目である。そのために上げられるような雰囲気、景気状況だけは断固維持しておかなければ、元も子もなくなってしまうとおっしゃっています。
 先週金曜日の麻生大臣の会見では、消費税率が10%に引き上げられないような場合、仮にそういうことが起きるとすれば、GDPがマイナスであったり、株価がマイナスであったりするときに消費税率を引き上げたらいけないとおっしゃっていました。経済指標が何もかもマイナスという環境で消費税率を2%引き上げたら、そのときの反動の影響は、去年の4月どころではないということをおっしゃっています。甘利大臣も今好循環が2巡目に入ってきた段階でも、今後このような腰折れしてしまうような一抹の不安をお感じでしょうか。
(答)2017年に消費税率を10%に上げる、2018年が財政再建中間年として、一つの目安を置く。それをPB赤字マイナス1%と。これは従来申し上げているように、経済が成長すれば税収が増えるから歳出カットはそれだけ縮小できる。あるいは歳出カットを予定より多くしなければならないという状況になると、それは経済が堅調でなくて、税収が思うように上がっていないという相関関係にありますけれども、いずれにいたしましても、できるだけ税収を引き上げて、下押しに貢献してしまうような歳出カットではなくて、構造改革型でやっていけるようにする。ですから、そこはいわば連立方程式と申し上げました。
 それは2018年に至るまでの3年間を、3年間くくりで、柔軟な政策運営ができるようにするというのは、消費税率を引き上げた後の影響を最小限にする等々、この3年間の間に消費税率引上げという大きなイベントがあるわけです。3年目には中期検証目標というのがあるわけです。2つの大きなイベントがある。ですからその間、より柔軟な政策運営ができるようにしていかないと、初年度、次年度ガチンガチンに縛ってしまうと、まさに消費税率引上げができないような環境になってしまったら、歳出はカットしました、景気は失速しました、消費税率はとても上げられません。景気条項をはずしているわけでありますけれども、財務大臣がおっしゃるのは主要な経済指標が全て下向いてしまうようだと大変だということです。ですから、そういうことにならないように、その間の柔軟性はしっかり確保しなければならないということで、知恵を絞った5年間の財政再建のシナリオをつくっているわけでありますし、3年目の縛りは、とにかく消費税率引上げ、そして財政再建の中間年度の検証、そういう大きなイベントが2つありますので、その間の運営を、フレキシビリティーを縛ってしまうと、何もかも達成できないという最悪のシナリオになってしまっては元も子もないということであります。

(以上)