甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年9月19日

(平成26年9月19日(金) 10:50~11:08  於:合同庁舎8号館1階S108会見室)

1.発言要旨

 私から2点の報告がございます。まず、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要であります。
 「景気は、このところ一部に弱さも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」とし、先月から下方に修正いたしております。
 これは消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動の影響が見られることに加えまして、天候の影響もあって、このところ個人消費の持ち直しの動きに足踏みが見られることなどを踏まえたものであります。ただし、雇用情勢が着実に改善していることなどから、景気の緩やかな回復基調は続いているものと見ております。
 先行きにつきましては、当面、一部に弱さが残るものの、雇用、所得環境の改善が続く中で各種政策の効果もあって、緩やかに回復していくことが期待されます。ただし、駆け込み需要の反動の長期化や海外景気の下振れなど、我が国の景気を下押しするリスクに留意する必要があります。
 政府といたしましては、いわゆる「骨太方針2014」に基づきまして、経済財政運営を進めるとともに、「『日本再興戦略』改訂2014」を着実に実行してまいります。また、引き続き、「好循環実現のための経済対策」を含めた経済政策パッケージを着実に実行し、平成26年度予算の早期実施に努めてまいります。
日本銀行には、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを期待しております。
 続きまして、9月23日(火)及び24日(水)にワシントンD.C.におきまして、私とフロマン米国通商代表との間でTPPに関する日米閣僚級協議が行われます。これは日米間の残された懸案について閣僚レベルでの協議を行うものであります。閣僚級協議へ向けて、事務レベルで電話会談であるとか、テレビ会談等の手段を利用して、日米間のギャップを狭めるべく、協議を行っているところであります。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)一時的ではあるかもしれないですが、消費が失速し始めているようにも見えます。景気を腰折れさせないように政府としてどのような対策をとられるのか教えてください。
(答)消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減の収束が長引いているということと天候要因が重なりまして、消費が弱含みで推移している。ただし、雇用情勢は堅調に改善しているわけであります。雇用者数も増えている。求人倍率も顕著に改善している。それから支払給与総額も増えているわけです。消費税率が上がった4月に実質賃金が落ちました。しかし、5月、6月、7月と実質賃金は改善しているわけです。7月はボーナスもあって、一時的にではありますけれども名目賃金だけでなくて実質賃金もプラスになりました。8月はその影響が剥落するということで、また若干戻ると思いますけれども、基調としては実質賃金も改善しているということであります。
 それらを総合的に見て、消費の回復動向をしっかり注視していく必要がありますけれども、全体としての基調は景気が改善基調にあると判断しております。
 もちろん政府・日銀が、次なる消費税率の引上げの判断も絡めて、何もせずにこの判断を行うということはないと思いますので、日本経済にとって、あるいは社会保障の継続性、財政再建等々、総合的にどの選択が一番正しい選択になるか、コストパフォーマンスがいい選択になるかを慎重に見極めていくということになろうかと思います。
(問)円安が急速に進んでいますが、日本経済への影響等、大臣の所見を教えていただければと思います。
(答)為替レートは日本経済の実力を適切に反映しているというのが一番いいのですが、どこが適切かというのはなかなか表現が難しい。ここのところ円安が急激に進んでおります。円安をプラスと受け止める業界もあれば、マイナスと受け止める業界もあります。国民生活にとって輸入物価が高くなるということはマイナスでありますし、輸出企業の収益が還元されるということはプラスであります。
 どのレベルが適切という表現は非常に難しいのですが、一つだけ言えることは、急激に為替が変動するということはいずれにしてもあまりプラスにはならないということです。実力に見合って、緩やかに一定の幅に安定していくということが大事だと思っております。
(問)TPPの閣僚協議についてお伺いします。
 先日、大江首席交渉官代理とカトラー米国次席通商代表代行の9日、10日の協議では、大江首席交渉官代理は大きな進展はないようにおっしゃっていたと思いますが、かねて大臣は事務協議でできるだけ詰めて、最終局面としての閣僚協議ということをおっしゃっていたと思います。今回フロマン米国通商代表と協議されるということは、それだけ大きく進展しているということなのかということと、今回の協議でどのように交渉を持っていきたいかという2点をお願いします。
(答)大江・カトラー間で事務協議をして進展がない。その状態のままでは閣僚協議は難しいと、私は判断しておりますので、事務協議が進むように、更にできることはないかという指示を関係当局に出したところであります。そこで今知恵を絞っていただいておりまして、その上で電話あるいはテレビ電話会談で事務協議を前進させるということになろうかと思います。
 閣僚級協議というのは、これは事務方の集いではなく、高度な政治判断が必要な部分に案件を極力絞って判断をする場です。閣僚級協議は課長級協議ではありませんから、そこはしっかり日米ともに閣僚級協議は閣僚としてやるという認識のもとに臨めるような環境を作っていきたいと思います。
(問)今度の日米間の閣僚級協議というのは、TPP全体の閣僚級協議、あるいはAPECでの首脳会議における大筋合意に向けた、その前段になると思うのですが、大臣としてはどういう位置づけで今回の協議に臨むおつもりでしょうか。
(答)もとはと言えば、各国が年内の大筋合意に向けて悲観的な雰囲気が出て以降、オバマ大統領が11月大筋合意、首脳間でそれを確認するということをいきなりぶち上げました。若干唐突感がありましたけれども。TPP協議に参加している国のうち、最大経済国であるアメリカの最高責任者がそうおっしゃったということでUSTRが急激に交渉加速を始めたという経緯がございます。でありますから、各国ともに年内大筋合意に向けて、かなり真剣に取り組み始めていると思います。
 日本は日米以外の二国間の交渉を大幅に進展させました。他の国との二国間交渉が進んでいっているのに日米が進まないということは、日本側だけに問題があるということではないと思います。日本側だけに問題があるのであれば、他の国との二国間交渉も加速度的に進んでいくはずがないのであります。そこはアメリカ側にもしっかり認識してもらって、お互いが歩み寄ってこそはじめて交渉は妥結する。現にほかの国とは最終合意に向かって進んでいっているのではないか。かなりのところまで来ているということはアメリカ側にも認識してもらいたいと思います。
 その上で先ほど申し上げました日本側の努力する点も当然ありますから、事務レベル折衝が進まなかった点を私から再度指示しまして、日本としてギリギリどこまで歩み寄ることができるのか、真剣に考えているところです。基本的にはTPPは12か国が交渉を成功させるために集まっているのであり、決裂させるために集まっている国はないと思いますから、その趣旨に従って最大努力をしてほしいと指示したわけであります。その上に乗って私がアメリカに行くということであります。
(問)スコットランドの件ですが、独立を巡る住民投票が今終わりまして、この動きの受け止めと、今現地の世論調査では反対派が優勢だと言われていますけれども、独立した場合の世界経済に与える影響を大臣としてどうお考えでしょうか。
(答)スコットランドの方々には歴史的・民族的な思い、文化に対する思いがあるのは理解いたします。しかし、300年間今の体制で現実に進んできて、いろいろな面での統合が進んできたわけであります。これをあえて分離させるという意味がそれほど大きな価値を有するのかということは、私にはなかなか理解が及びません。
 世界は経済を中心に統合の動きが進んでいるわけであります。それが民族意識だけで分裂してしまうと世界中に小国が溢れるということになってしまうと思います。スコットランドとイギリス等、いろいろなことが起きてくるわけでありますけれども、個々の地域の経済力、外交力、政治力を足し上げても、おそらく現在の連帯たるグレートブリテンには遠く及ばなくなってしまうのではないかと思います。
 独立投票はスコットランド自身の主体性でできますけれども、うまくいかなかったから、また元に戻してくれという投票はスコットランド自身のみではできないはずであります。これから子や孫の世代にどうであるかということを見越した冷静な判断が必要だと思っております。
 世界経済にとってどうかというのは、騒動が起きない方がいいに決まっていると思います。
(問)今日の株価についてお伺いしたいのですけれども、午前中に日経平均が続伸して、年初来高値を更新いたしました。円安やスコットランドの動きなどいろいろある中で、改めて大臣としてこの株価の動きについて、受け止めをお聞かせ願えればと思います。
(答)株価は低い方がいいか、高い方がいいかと言えば高い方がいいに決まっているわけであります。
 加えて日本の時価総額対純資産の比率で言えば、日本の株はお買い得です。まだまだ評価は低いと思います。
 今回は、アメリカの金融緩和政策が大きな転換を迎えていて、出口戦略が大きく進んできた。それ自身はいつかやらなければいけないことでありますし、正しいことだと思います。その工程の中で金利差が生じることを見越してドルが買われているということだと思います。これは冷静に見ていきたいと思いますし、日本の株価がどういう理由にせよ、本来の評価に近いところになっていくということは、歓迎していいことだと思います。

(以上)