地方公共団体担当者へのアドバイス~取り組んで良かったこと、苦労したこと~

 「孤独・孤立対策に関する地域連携推進モデル調査事業」(令和6年度地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業)に公募・採択された14市区町村の担当者からいただいた、これから孤独・孤立対策に取り組もうとしている地方公共団体担当者への生の声(アドバイス)を掲載しました。(令和7年10月末日時点)
 記載内容の詳細については、表中「問合せ先」に直接ご連絡ください。

【孤独・孤立対策全般】

取り組もう
とした
理由・
きっかけ
まず始めた
こと
取り組んで良かったこと、苦労したこと 問合せ先
京都市

<良かったこと>
  • 庁内外の幅広い主体の共通課題であるため、福祉分野はもとよりそれ以外の主体も含め、分野・属性横断的な連携等のきっかけとなりました。
  • 近年、国として補助メニューを拡充いただいているため、新たな・試行的な取組にも比較的チャレンジしやすいです。
  • 並行して推進している重層的支援体制・包括的支援体制整備と重なるところが多々あるため、双方の枠組みをうまく使い分け・組み合わせすることで更なる推進の可能性があります。
<苦労したこと>
  • 関係する分野・主体・取組等が非常に広範なため、良くも悪くも際限がないことです。
  • 取組段階では、共通項の設定や、対象範囲の限定など、うまく工夫しないと、かなり抽象的・総論的な内容になりがちです。
  • 予防的な要素を多分に含むため、目標・指標の設定や効果の検証・提示が難しいです。

福岡市

  • 良かったと思ったこと
    孤立死防止のための企業等との連携を図ったことで、孤立死の予防や異変の早期発見につながっていることです。
  • 苦労したこと
    孤独・孤立に関する施策は関係領域が幅広く、縦割り組織において横連携が困難であることです。

熊本市

  • 良かったこと
    孤独・孤立の問題で悩む方への支援は行政・民間からのアプローチだけでは難しく、地域の方に孤独・孤立の問題について学んでいただき、身近な孤独・孤立な方をPFや関係機関に繋いでいただくことを目的として、本市では令和7年度からつながりサポーター養成講座を開始しています。
    講座受講者から「身近な人で孤立している人がいないか気にかけてみようと思う」という意見をいただいたことで、地域での孤独・孤立の防止に繋がっていると感じています。
  • 苦労したこと
    孤独・孤立対策は比較的新しい事業であり自治体によって取組事例が様々ある中、本市の特性に合わせた、庁内連携、庁外連携(PF)、市民向けの広報周知など多方面のアプローチで取組を実施していくことに難しさを感じています。

千葉県
市原市

【良かったと思ったこと】
 社会的なつながりづくりの重要性と、本市の地域資源の多様性を市民、関係者等に広く周知し、気づきと変化を促すための第一歩となりました。
【苦労した(している)こと】
 各NPOや企業等に赴いて事業の趣旨を説明にまわっているが、NPO、民間等からの参加が思うように増えないことです。(継続して現在も依頼をしています。)

東京都
中野区

  • 地方版PFモデル事業を活用したことで、シンクタンクによる伴走支援を受けながら、庁内の課題や目標を整理することができました。また、本事業を通じて制作したアニメは、庁内の関係部署で実際に活用されており、啓発の一助となっています。
  • PFの前身である「孤独・孤立対策部会」では、協定事業者のオブザーバー参加により、民間事業者等との連携の機会が増え、今後の対策メニューの拡充が期待できます。
  • 一方で、庁内での理解が十分に進んでおらず、関係部署との連携が思うように進まない場面もありました。
  • また、孤独・孤立対策の概念が広範であるため、どのようなサービスが効果的なのかを見極めることが難しいと感じました。

神奈川県
座間市

 市と支援団体との間で、孤独・孤立が今後の大きな課題であると共有することができました。
 令和6年度のモデル事業では近隣市との意思決定や調整に苦労しましたが、顔の見える関係づくりや連携ができました。
 事業を通じ、市民生活は必ずしも市域で完結している訳ではなく、孤独・孤立対策においては市域を越えた行政と地域団体の連携も必要であるという気づきを得ることができました。

愛知県
岡崎市

 ポッドキャストとは別に有識者による対面インタビュー形式の孤独・孤立対策の在り方について調査・研究を実施しました。統計的な調査ではなく、ポッドキャストと同じように、個人の生活史の積み上げから岡崎市らしさを考えるものでしたが、人と人との関係や地域づくりが大切であるという報告もいただきました。孤独・孤立対策を実施しながら、自然と今まで関わりのなかった個人や団体の方とつながりができたことが大きな財産だと感じています。このつながりは、支援される側、する側両方にとってのメリットと考えます。

≪良かった≫
  • 今まで関わりのなかった団体との出会いとつながりができました。
  • 重層地域づくり事業など他事業などにも展開できます。
  • 孤独・孤立対策が、今後福祉内や福祉外の地域づくり、居場所づくり、まちづくり等の活動のハブとなり活動の幅が広がる可能性があります。(希望)
≪苦労≫
  • ポットキャスト「こどくのあわい」の公開収録のメンバーが固定されしまうことです。
  • 居場所、交流の場としてのあわいスタンドの開催方法については、現在も試行錯誤中です。

愛知県
春日井市

 孤独・孤立対策に取り組んで良かったことは、孤独・孤立は世代や分野にまたがるテーマなため、多様な世代・分野の事業者に参画を呼び掛けることが出来ました。一方でどの分野に声をかけるか、声をかけた上でどう主体的に参画してもらうか等、企画・運営の部分で苦労しました。

愛知県
豊田市

良かったこと
 「予防」に重点を置いた取組を実施したことで、これまで孤独・孤立を意識したことのない層に対してもアプローチすることができました。
苦労したこと
 孤独・孤立は社会全体で対応する必要があり、全庁的に取り組む必要があるが、他部署の理解を得るのに苦労しました。

兵庫県
播磨町

<良かったと思ったこと>
  • 様々な人の話を聞く機会が持て、横断的なつながりが生まれたことです。
  • 福祉分野でない部署が、孤独・孤立対策の視点を持って動いてくれることが増えたことです。
以下に、令和7年度孤独・孤立対策の取り組みとして横断的に実施できた内容を記載しています。

~庁内の例~
  • 債権管理課が滞納の督促状を送付する時に使用する封筒に、生活困窮等の相談ができる総合相談窓口の連絡先を載せたいと申し出があり、実際に相談先を載せた封筒を作成してくれました。
  • 会計室(住民が税金等を支払う窓口)では、会計室として何かできることはないかと相談があり、悩みの相談先を記載したグッズを、窓口に一定期間設置してくれました
  • 孤独・孤立対策強化月間の期間中、総務課が週2回の一斉退庁日の放送で、孤独・孤立について周知する放送を流してくれました。
  • 孤独・孤立対策部会にて、庁内全部署の職員で意見交換ができる機会がもてました。
~産学官の例~
  • 包括連携協定を締結しており、地方版PFにも参画いただいている「兵庫ヤクルト販売株式会社」が取り組む、経済産業省の令和7年度「産福共創モデル創出事業」に協働し、兵庫ヤクルト販売株式会社のコミュニティーナースと連携しながら、地域における孤独・孤立の予防を検討・実施していきます。
  • 兵庫県立大学人間環境学部と協働し、「転入者の孤独・孤立の予防」をテーマに2か月間のフィールドワーク演習を実施しました。「転入者カフェ」を3回実施し、転入者の声をまとめ、町長に届けました。
    ➡ その報告をもとに、孤独・孤立対策部会でグループワークを実施しました。11月に実施するイベントで、孤独・孤立対策のブースを設け「私のおススメの場所MAP」を作成します。(役場健康福祉課・社会福祉協議会・NPO法人ニュー☆ハリマの3者で実施)
~教育部局の例~
  • 教育委員会や学校に理解を得て、モデル事業でも実施した中学3年生対象の「社会保障を学ぶ授業」継続実施します。(1月実施予定)
<苦労したこと>
  • 横断的なつながりを重視し、複数の部署・機関が関わるため、意見の集約や日程調整が大変なことです。

鳥取県
鳥取市

 PFは、行政が民間に何か依頼する場ではなく、また民間が行政に何か要請する場でもないフラットな場であり、互いの知見やリソースを提供して、取組を推進していくという意義と仕組みを根付かせることができていることです。さらに、この孤独・孤立対策を鳥取市のみでなく「麒麟のまち圏域」で1市6町(鳥取市、周辺4町、兵庫県2町)が連携した「広域リージョン連携」として取り組むことができました。
 上記2点が、取り組んできた成果として挙げられます。

広島県
呉市

 孤独・孤立対策に取り組んで良かったことは、庁内の関係課を含め、孤独や孤立の問題についての周知啓発を一定程度実施できたことです。この取り組みによって、関係者の理解が深まり、問題意識の共有が進んだと感じています。しかし、次のステップに進むことが難しい状況です。
 また、地域社会での包摂が必要不可欠であると認識しており、市や関係機関、地域の事業者、自治会、NPOなど、多様な関係者が協力できるプラットフォームの設置を検討していますが、現状では具体的な助言を得られる機関やノウハウが不足しており、具体的な進展が見られないのが苦労していることです。

広島県
福山市

〔良いこと〕
 孤独・孤立についての理解・意識や機運の醸成等のため、広報誌(紙・デジタル)での情報発信・普及啓発を実施しました。問題を抱える当事者の家族等から「孤独・孤立に関するフォーラムに参加して勉強したい」、「話を聞いてもらいたい」との反響がありました。支援の存在を知り、孤独・孤立の理解を深めることで、問題を抱える当事者が早期に相談や支援に繋がれるようになると感じています。
 「つながりサポーター」の養成に向けた取組は、普段から福祉に携わっていない方にも、孤独・孤立について知ってもらう良い機会です。受講者自身も相談できる場が増えました。もっと詳しく知りたいと関心を持ってもらえました。継続して開催してもらいたい等、良い意見を多数いただきました。
 庁内における孤独・孤立対策に通じる取組を実施する課との連携では、良かったと思う事の方が多いです。つながっていない人とつながることです。対話することでお互いが共感し合える関係性を構築できます。別の業務におけることでも不安や悩み等があれば、気軽に共有できます。あらゆる分野に共通する課題を発信する機会や、関係機関同士「互いの業務に関心をもって対話」する場を創出することができました。
〔苦労していること〕
 既存の取組は縦割りでの実施が中心となっています。「孤独・孤立」をテーマとする横串での取組について行政内部や各ステークホルダーの理解を得ることに苦労しています。行政・民間ともに、従来の福祉関係者だけでなく、まちづくり関連のステークホルダーと連携し、「交流の場づくり」を意識した取組をめざしたいです。孤独・孤立が人生のあらゆる場面で誰にでも起こりうる社会課題であることを認識してもらう事に苦労しています。専門分野以外への視野の狭まり等縦割りの弊害が生まれています。あらゆる分野が孤独・孤立対策の理念を理解し、他分野と重なり合った(気づいて・つなぐ)取組になっていないと感じています。

愛媛県
宇和島市

【良いこと】
 行政としてできることには限りがあり、NPO法人やその他の民間団体の取り組みを、本市が実施している重層的支援体制整備事業の枠組みの中で、「取りこぼしのない相談支援の充実」を目指して行っています。「孤独・孤立対策地域協議会」と「重層的支援会議」を同会議体に位置付けており、行政担当者とNPO法人担当者が月に1回開催される会議において顔を合わせ、情報を共有しながら相互に役割分業して支援実施していく中で連帯感が生まれ、会議体が日頃の支援の悩みを打ち明け合う場にもなり、自ずと支援者支援にも繋がっています。
【苦労したこと】
 連携先が多くあることで支援の幅が広がり、より個別具体的な支援強化を図ることができる反面、情報の集約化や機能の一元化が難しくなる一面もあり、対応がバラバラになったり、人によって対応の仕方が違い、当事者を困惑させてしまうなどの事例もあり、支援の目が増えることの利点と、当事者にとって安心と信頼のある支援のあり方が反比例してしまうことの懸念があり、調整の難しさが浮き彫りとなっています。

【地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの立上げ】

取り組もう
とした
理由・
きっかけ
まず始めた
こと
取り組んで良かったこと、苦労したこと 問合せ先
京都市

<良かったこと>
  • 福祉分野以外の団体や、小規模な団体等との連携・協働のきっかけとなりました。
<苦労したこと>
  • 設置後の具体取組や、参画のメリットの検討・創出です。
  • 参画団体の分野・属性・規模等が様々であり、共通項の設定や、対象範囲の限定など、運用に工夫が必要なことです。

福岡市

  • 良かったと思ったこと
    孤独・孤立に関心のある企業や団体との間で、施策や課題に関する情報共有が以前より図りやすくなったことです。
  • 苦労したこと
    庁内各部署で「孤独・孤立という状態の結果、生じた福祉課題」に対する施策等を実施する中で、「孤独・孤立そのもの」に対する取り組みイメージについて、関係部署との共有が図りづらかったことです。

熊本市

  • 良かったこと
    PF会議を開催し、PF参画団体同士が顔の見える関係を構築できたことに、団体から良かったとの意見をいただけたことです。
  • 苦労した点
    PFに参画いただく団体の選定方法に苦労しました。
    令和4年度に、市内で孤独・孤立に関する支援活動を行っている民間団体(18団体)でPFを設置しました。令和6年度には熊本市内のNPOなどの団体にリソース調査を行い、孤独・孤立支援に連携が見込める団体を選定し、計34団体に加入いただいています。

千葉県
市原市

(再掲)
【良かったと思ったこと】
 社会的なつながりづくりの重要性と、本市の地域資源の多様性を市民、関係者等に広く周知し、気づきと変化を促すための第一歩となりました。
【苦労した(している)こと】
 各NPOや企業等に赴いて事業の趣旨を説明にまわっているが、NPO、民間等からの参加が思うように増えないことです。(継続して現在も依頼をしています。)

愛知県
岡崎市

≪良かった≫
  • PFという形ができたため、情報発信や活動の提案について連携がとりやすくなりました。
  • 特定の会議体ではなく、ネットワークであるため、活動の幅が制限されず動きやすいです。
  • 「つなぎめ」を通して各団体の活動が紹介できます。(予定)
≪苦労≫
  • 活動を指定していないため、孤独・孤立やPFへの参加意識そのものが希薄になりやすいです。
  • PFに参加することの明確なメリットを各団体に提示できないことです。
  • PFに参加することにより、直接的な補助や事業支援を期待されることもありますが、多くの団体がネットワークを形成することによる「お互い様」なつながりが事業メリットにつながることを検討していきたいです。

愛媛県
春日井市

 プラットフォームを設置して良かったことは、参加者同士の有機的な結びつきを生み出せたことです。苦労したことは、参加者がスピーディーに成功体験を積めるよう、プラットフォームの参加者から出たアイデアをすぐに取組化していたため、プラットフォーム運営の負担が大きかったことです。

取り組み例
  • 生活動線上で相談窓口に関するリーフレットを配布
  • つながりづくりを推進するイベントの開催
  • つながるノート「ぷらっと」の作成
  • ぷらっとMAPの作成
  • 孤独・孤立とつながりについて考えるシンポジウムの開催
  • つながりづくりを推進するイベントの開催

愛媛県
豊田市

良かったこと
 「地域のために何かしたい」と考える市民や団体が集まれる環境を整備でき、様々な活動をしている人がつながりを持つことができ、新たなつながりが生まれていたことです。

兵庫県
播磨町

<良かったと思ったこと>
 あらゆる機関・団体に孤独・孤立対策に取り組んでいくことの周知ができ、賛同いただけたことです。
<苦労したこと>
 参画団体が多い分、実際にどのように活用すればよいのか分からず、現在模索中です。

鳥取県
鳥取市

 振り返って見て、次の3点を学びました。
  • 縦割り・分野を超える
    分野が違っても同じ地域課題を把握しているため、巧みな制度設計に苦心するよりも、分かり合う努力をすることが大切である。線引をしない支え合いづくりを実現する。
  • 強み、知見、経験の共有
    モノとカネだけでなく、つながることで解決できる課題が多いため、ノウハウなどの共有も行う。
  • 価値観とビジョンの共有

広島県
福山市

 本市では、地方版PFは未設置です。
〔良いこと〕
 PF設置に向けて、各分野が水平的につながり、PFが形骸化せず、孤独・孤立対策の継続的な協議の場と機能し、孤独・孤立の問題が早期に発見され、多様な居場所へつながるような取組を進められたら、取り組んで良かったと思えると感じています。
 地方版PF設置によって、あらゆる分野で、孤独・孤立の問題に早期に気づき・多職種連携の強化による包括的な支援体制の構築につながると思っています。
〔苦労していること〕
 数多くのPFや協議会が存在しているため、既存の会議体等とスケジュールを合わせ、PFのメンバーに負担が生じないように留意する必要があります。
 地方版PFを設置することで、既存の会議体の構成員と重なっていることから負担が増えることを懸念しています。

愛媛県
宇和島市

【孤独・孤立対策全般】参照