地方公共団体担当者へのアドバイス~取り組もうとした理由・きっかけ~

 「孤独・孤立対策に関する地域連携推進モデル調査事業」(令和6年度地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業)に公募・採択された14市区町村の担当者からいただいた、これから孤独・孤立対策に取り組もうとしている地方公共団体担当者への生の声(アドバイス)を掲載しました。(令和7年10月末日時点)
 記載内容の詳細については、表中「問合せ先」に直接ご連絡ください。

【孤独・孤立対策全般】

取り組もうとした理由・きっかけ まず始めた
こと
取り組んで
良かった
こと、
苦労した
こと
問合せ先
京都市
  • 令和3年2月の担当大臣や担当室の設置等の国の動向を受け、庁内プロジェクトチームの設置等の取組が始まりました。
  • その後、プロジェクトチームが取りまとめた対策の方向性を踏まえ、令和4年度に孤独・孤立対策に取り組む関係団体等との連携協定締結や、「京都市版お悩みハンドブック」の運用開始などの一通りの取組が進んだ中、令和6年度の法施行を受け、更なる取組推進の機運が庁内で高まりました。

福岡市  令和6年4月に「孤独・孤立対策推進法」が施行されたことを契機に、関連領域が幅広い孤独・孤立に関する施策に対して本格的な対応を始めるきっかけとなりました。

熊本市  市においては熊本地震を契機に民間団体(NPO法人くまもと災害ボランティア団体ネットワーク(KVOAD))が、行政・社協・支援団体・地域団体等の情報共有や課題解決を目的とした「火の国会議」を発足し、孤独・孤立問題等の研究や情報共有等を開始していました。
 本市においても、地域社会において誰ともつながりがなく孤立してしまうことは、社会的に多くの問題を引き起こす要因になると考え、火の国会議への出席及び、NPO等との情報共有を開始しました。

千葉県
市原市
 市原市では、令和3年度から重層的支援体制整備事業を開始し、福祉課題を抱える方の孤独・孤立への対応を図ってきたところですが、孤独・孤立対策に対しては福祉分野を超えた様々な分野や団体の連携を必要とする課題が浮き彫りになり、課題解決の一つとして孤独・孤立対策をより一層推進する必要があるためです。

東京都
中野区
  • 当区が令和2年度に実施した「暮らしの状況と意識に関する調査」において、若年層から中年層の区民のおよそ3割が孤立感・孤独感を抱えていることが推測されました。また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、あらゆる年齢層において活動の制限や自粛が続き、心身の健康に大きな影響を及ぼした結果、「孤独・孤立」状態にある人が増加傾向にあると考えられます。
  • こうした状況を踏まえ、「孤独・孤立」状態にある方々を含め、誰一人取り残さない社会の実現を目指すためには社会的包摂という理念を共有し、庁内外で課題や今後のあり方について議論を深めていく必要があると考え、対策に取り組むこととしました。

神奈川県
座間市
 本市は生活困窮者自立支援制度を活用しながら包括的支援体制の整備に取り組み、市民の様々な悩みに対する相談体制の構築を進めてきたところ、相談の背景に社会的孤立の課題が潜んでいることがわかりました。
 また、第4次座間市地域福祉計画策定のための市民アンケートでは、孤独・孤立と考えられる層の存在が表面化しました。そのため、生活困窮や様々な悩みの一つである「本人が望まない孤独・孤立状態」「生きづらさ」にアプローチすることで、少しでも状況を改善しようと試みることにしました。

愛知県
岡崎市
 令和3年度から重層的支援体制整備事業を開始し、包括的相談支援や地域づくりを実施する中で、公的な相談窓口だけでなくインフォーマルな相談窓口との連携や課題を抱えている方が適切な支援を探すことができるポータルサイトが必要だと感じました。
 令和5年2月にポータルサイト「つなぎめ」をNPO法人コネクトスポットと共同運用を開始し、令和5年に孤独・孤立対策推進法が策定され、「つなぎめ」を拡充することが孤独・孤立対策ではないのか、「つなぎめ」の支援団体との連携がPFではないのかという想いが強くなりました。その後、つなぎめ支援団体のいくつかに「孤独・孤立」、「孤独・孤立対策」についてヒアリングを実施し、各団体の活動内容そのものが孤独・孤立対策だと感じたのと同時に市やPFの役割は活動支援だと意識しました。
 令和6年度モデル事業を活用し、孤独・孤立対策の周知とPFの設置を目指しました。
  • 令和3年度から重層的支援体制整備事業の開始
  • 令和5年2月ポータルサイト「つなぎめ」共同運用開始
  • 令和5年5月孤独・孤立対策推進法成立
  • 令和5年度「つなぎめ」支援団体ヒアリング
  • 令和6年度モデル事業受託

愛知県
春日井市
 地域支援研究会(※)の評価活動を通じ、社会的孤立やひきこもり、セルフネグレクト状態にある人々への支援の体制整備が大きな課題であることが分かりました。また、このような状況にある人々が抱える多様で複雑な生活課題を早期に発見し、予防的に対応するためには、これまで地域支援研究会で取り組んできた成果を地域に還元し、地域福祉の意識の醸成や住民に身近な圏域で相談を受け止める場を体系的に拡げていく必要があると考えたためです。
※ 地域支援研究会:重層的支援体制整備事業の一環として、こども・障がい・高齢・困窮・保健等各分野の行政関係、課と民間の相談支援事業者で組織した官民協働の研究会で、これまでに地域支援に必要な知識・技能を養成する研修プログラムの開発や既存の支援体制の評価活動等を実施。

愛知県
豊田市
 本市は、これまで自動車等の産業を中心に若いまちとして進んできましたが、地域特性上、就職を機に転入してくる人が多く、高齢化に伴い身寄りを頼ることができない方が比較的多いまちと認識していました。
 それらに対する対応として、令和3年から重層的支援体制整備事業を実施し、孤独・孤立を含む支援を必要とする人に対する体制整備や事業を推進してきましたが、令和5年に成立した孤独・孤立対策推進法の成立を契機に、これまでの取組を一層強化していきたいと考えたためです。

兵庫県
播磨町
  • 住民のニーズが多様化し、様々な施策や行政サービスを実施する中、必要な人に必要なサービスが届いておらず、潜在的なものも含め、地域で孤独・孤立の状態にある人が存在するという問題認識がありました。
  • 保健師の活動の中で、支援が必要だが、行政ともつながっていない、地域ともつながっていない、孤独・孤立の状態にある人を、しかるべき相談機関へつなぐ、アウトリーチの仕組みづくりが検討課題の1つでありました。
    ⇒「待つ行政」から「行動する行政」への転換
  • 令和6年3月「播磨町地域福祉計画」を策定しました。地域福祉計画を上位計画として、障害者計画や自殺対策計画等、各種計画において「誰ひとり取り残されないまち」をめざして、一体的に取組む方針を掲げました。
  • 令和6年6月 地域の現状を共有し、方向性を決定するため、総合相談(健康福祉課)、まちづくりアドバイザー(協働推進課)、社会福祉協議会、地域包括支援センターを加え、統括を福祉保険部長とする「アウトリーチ型相談体制のあり方検討会議」を設置しました。
  • これら保健師のアウトリーチについての検討が、内閣府が実施する「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」の1つとして捉えられるのではないかと考え、モデル事業に応募、採択され、孤独・孤立対策に取り組むこととなりました。

鳥取県
鳥取市
 8050世帯で事件化したケースを目の当たりにして、地域の自治会長、民生委員、支援機関などで、そうなったことに対して「悔しさ」を共有できたこと、そして、こういったケースの再発を防ぐために、アウトリーチ機能の創出と社会的孤立防止に向けて、市民ボランティアである「つながりサポーター」の取組が必要だと考えたことがきっかけです。

広島県
呉市
 令和6年4月1日より施行された「孤独・孤立対策推進法」により、社会全体で孤独や孤立の問題に取り組む必要性を強く感じたこと、また、孤独・孤立の問題を抱えている方を包括的に支える支援体制を構築するにあたり、重層事業の活用及び推進が目指されていることから、重層事業の実施においても、孤独・孤立対策の視点を組み入れていくことが重要だと考えたためです。
 呉市では、令和4年度に市内の民生委員を対象にひきこもり支援に関する調査を実施した結果、地域から孤立している世帯が存在し、その理由として「人に知られたくない」という心理的障壁があることが明らかになりました。
 さらに、令和5年度には福祉サービスを利用している世帯を対象にケアラー支援に関する調査を実施しました。その結果、ケアラー自身が支援を受けることを遠慮し、孤独感が強まっている状況が浮き彫りになりました。このような調査結果を受けて、地域で孤立し孤独を感じている世帯に対して、どのような支援が求められ、どのようにそれを届けることができるのかを明らかにするため、さらなる調査を実施する必要性を感じました。
 孤独や孤立を解消するためには、地域社会での包摂が不可欠で、市や関係機関、地域の事業者、自治会、NPOなど、多様な関係者が協力するプラットフォーム(PF)の設置が効果的だと考え、これを実現するためのノウハウや指導を受けるため、モデル事業に応募しました。

広島県
福山市
 既に各分野で孤独・孤立対策に通じる取組を進めていたため、行政内部、外部問わず、個別の課題に対する縦割りのアプローチが中心でした。横のつながりが十分とはいえない状態でした。
 地域住民の抱える課題が複雑化・複合化していることに加え、社会の様々な変化(核家族化等)によりつながりが希薄化し、望まない孤独・孤立に陥りやすい社会となっています。
 分野別の支援体制では解決できない事例もみられ、支援が必要な人の声をしっかり受け止め、地域で適切な相談と支援を行うことができる体制整備が必要です。令和6年度から重層的支援体制整備事業を実施しています。
 「孤独・孤立対策担当大臣」の設置、「孤独・孤立対策の重点計画」の策定、「孤独・孤立対策推進法」の成立等、国の動きを受け、本市の取組を強化した事も理由です。
 貧困の連鎖対策に取り組んできましたが、個別の課題解決に向けた支援のみでは貧困の連鎖に歯止めがかかっていません。孤独・孤立対策の理念をあらゆる分野に取り込む必要性を感じたためです。

愛媛県
宇和島市
 令和3年度より重層的支援体制整備事業を実施しており、「福祉にとらわれない包括的な相談支援」をモットーとしました。そのように、従来より分野限定的な実施体制ではなく、あらゆる分野を包含させながら取り組んでいたことから、孤独・孤立対策としても、重層の取り組みを活用した、より層の厚い支援が実施できるものと考え、自然な流れで取り組みに至りました。

【地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォームの立上げ】

取り組もうとした理由・きっかけ まず始めた
こと
取り組んで
良かった
こと、
苦労した
こと
問合せ先
京都市
  • 当初から市として対策にはNPOや地域との協力が必要と考えていました。
  • そのうえで、上述のプロジェクトチームが実施した、孤独・孤立対策に取り組む関係団体等への実態調査の結果、孤独・孤立対策に苦慮する理由として、課題が複雑・複合化しており、改善には支援団体間での連携強化が必要となったことから、対策の方向性の一つとして、関係機関・団体等の横のつながりの強化を掲げ、連携協定の締結を行いました。
  • 並行して、令和4年度、「地方版孤独・孤立対策官民連携プラットフォーム推進事業」の公募があったことから、同事業に積極的に参画し、当該連携協定を活かして(同PFと位置付けて)、関係機関・団体等の相互連携・情報共有の強化による取組推進を図ろうとしたものです。

福岡市
  • 「孤独・孤立」が様々な問題を生むことについて、関係間の認識共有や、支援ネットワーク・事業間の連携を図りたかったためです。
  • 「食をテーマとした多世代交流の居場所づくり」など、多様な主体が参画しやすい、リーディングとなる新たなコンセプトによる絆づくりと一体的に啓発を図り、孤独・孤立に関する意識の醸成を図りたかったためです。

熊本市  熊本地震を契機に発足した民間支援団体間での連携体制(火の国会議)が被災者支援の活動を行う中で、被災者・市民の「孤独・孤立」という観点の重要性を認識し、PF構築の構想が民間主導で芽生えました。
 また、NPOとの勉強会から、支援者においても活動が孤立化することが課題であり、PFのような支援者同士の連携の場が有効であることが分かり、地方版PFを設置するに至りました。

千葉県
市原市
 福祉分野で構成している重層的支援体制整備事業に係る相談機関連絡会を設置しており、その会議体をもとに設置が可能と考えたためです。

愛知県
岡崎市
  • 「つなぎめ」支援団体の個別の規模が大きなものではなく、活動地域が限定されるものもあったため、孤独・孤立対策を全市的に広め活動を強化するためには、各団体のつながりとしてのPFの設立が最適と考えたためです。
  • 「孤独・孤立対策」の機運を醸成したかったためです。

愛媛県
春日井市
 2022年度から重層的支援体制整備事業を開始したことで、行政組織内の連携(庁内連携)及び関係機関との連携(多機関協働)に加え、地域のボランティア団体や民生委員等との地域連携の重要性を認識したためです。

愛媛県
豊田市
 孤独・孤立を含む支援を必要とする人を対象とした支援を行う制度や団体は既存のものでもありますが、それらの団体同士等がつながり合うことで複合的な要因のある孤独・孤立の方に対して対応ができるようになると考えたためです。

兵庫県
播磨町
 令和6年3月に策定した「播磨町地域福祉計画」で掲げる、『誰ひとり取り残されないまち』を地域みんなでつくるきっかけ(体制整備)につながればと考えました。

鳥取県
鳥取市
 2017年、地域食堂運営団体、支援企業・団体、行政の官民で構成する「地域食堂ネットワーク」を設立し取組を展開してきました。「地域食堂ネットワーク」はまさに官民が連携するプラットフォームとして機能しており、この経験や知見を生かし、地方版PFを設置し社会的孤立防止に取り組もうとしたことが理由となります。

広島県
福山市
 地方版PF設置に向けて、現在、取組中です。
 孤独・孤立の状態は、重度な社会問題(自殺、虐待・DV、ひきこもり、健康問題等)へと発展しやすいため、問題となる前の「予防的取組」が重要です。
 PFでは、未然防止・予防・早期発見のための施策の充実に向け、関係機関・団体等のつながりを強化し、重層的な支援体制を構築したいと考えています。
 あらゆる分野の業務において、共通の視点として孤独・孤立対策について、考える場を設置することで、問題が起きる前の予防的な取組につなげていきたいです。

愛媛県
宇和島市
【孤独・孤立対策全般】参照